英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~露店風呂の異変~前篇
~温泉郷ユミル・鳳翼館~
「こんにちは、バギンスさん。」
「いつもご苦労様です。」
「おお、若!それにエリスお嬢様も!もしや依頼の件で来てくださったのですか?」
「ええ、まずは話を聞かせてもらおうと思って。」
「最近、ここの露店風呂で不審なコトが起こるってー?」
「はい、それも夜な夜な……実に様々な現象が。どこからともなく、奇妙な音が聞こえたり……壁に映った導力灯の影が動いたり……空に向かって”白い影”が飛んでいくのを見たという報告もあります。」
「それはまた……」
「幽霊……でしょうか……?」
「マ、マサカのそっち系!?」
支配人から話を聞いたリィンは目を丸くし、エリスは不安そうな表情をし、ミリアムは表情を引き攣らせて声を上げた。
「そう言えばミリアムは……幽霊の類が苦手なんだったか。」
「べ、別に苦手じゃないもん!得意じゃないってだけだし!」
「それは同じことなのでは……」
(……理解できません。それならば何故”幽霊”の私やクラウ=ソラスには平気で接しているのですか。)
強がっているミリアムの答えを聞いたリィンは苦笑し、アルティナはジト目になった。
「はは、お気持ちはわかります。」
「それでその異変に……心当たりはないんですか?」
「ええ、お恥ずかしながらまったくもって。まだ手がかりすら掴めていない状況です。」
「その……メンフィル軍の方々に相談はしなかったのですか?今は郷を護ってくれているのですし……」
ある事が気になったエリスは真剣な表情で支配人に尋ね
「一応考えてはいるのですが実害はまだ出ていない為、正直実害も出ていないのに郷を守護してくださっている方々のお手間を取らせるのはどうかと思い、悩んでいるのです。」
尋ねられた支配人は複雑そうな表情で答えた。
「そうですか……すると調査するなら実際に夜に待ってみる必要がありそうですね。」
「ってことは、みんなでお泊り?」
「ええ、実はそう思って準備もさせてもらいました。若たちがお忙しいのは重々承知なのですが……お願いできますでしょうか?」
「ええ、それじゃあ引き受けさせてもらいます。」
「それはよかった。どうもありがとうございます。」
「ニシシ、それじゃあみんなをここへ呼ぶ?」
「ああ、とりあえず全員で集まって話をしよう。」
その後待機メンバーを呼び寄せたリィン達は鳳翼館で働いている従業員から詳しい話を聞き始めていた。
「さてと―――これでみんな揃ったか。それでバギンスさん。昨夜も異変が起こったそうですね?」
「はい、それについてはウチのパープルが。」
「えっと、ではお話しさせていただきますね。昨日は確か……夜の11時くらいでした。仕事を終えて、露店風呂に入らせていただいていたのですが……ふと、誰かの視線を感じて……その方向を向いたんです。ですがやはり、誰もいらっしゃらず……にも関わらず雪の上には真新しい足跡が残っていたんです。それで私、気になってしばらく眺めていたんですけど……そしたら何もない所に……足跡だけサクサク、次々に浮かびあがってきて……」
「それで怖くなって裸のまま飛び出して―――私に見つかっちゃう、っていうのね。」
「ちょ、ちょっとメイプル。そこは内緒にしておいてって約束したじゃないですか。」
「え、えっと……」
「それはまた……大変でしたね。」
「メ、メイプルさん……」
従業員達の話を聞いて仲間達と共に冷や汗をかいたエリオットは困った表情をし、アリサは苦笑し、エリスは表情を引き攣らせた。
「コホン、話が微妙にしまらないのは置いといて……何もないところに足跡だけが浮かび上がる、か。」
「ふむ、まさかとは思うが……」
「そう言えば、この辺りは元々霊的な気配が強い土地柄だったわね。」
「となれば、あながち……」
「実際幽霊になってユミルに現れたアルティナさんという例がありますものね……」
「ワー、ワー!」
ラウラ達の話を否定するかのようにミリアムは必死の表情で声を上げた。
「ミリアムが面白い。」
「フフ、何とも賑やかなことだ。」
「うるさいの間違いだろう。」
ミリアムの様子をフィーやガイウスは微笑ましそうに見守り、ユーシスは呆れた表情をし
「……どうしてそんなに幽霊を怖がるの?」
「フフ、こちらはこちらで心強いですね。」
不思議そうな表情をして首を傾げているゲルドをシグルーンは微笑ましそうに見つめていた。
「ふぅ、これじゃせっかくの怪談話も台無しだわ。まあ、いずれにしてもやるべことは一つって感じね?」
「ええ、とにかく今夜は交代で露店風呂を見張りましょう。」
その後夕食を取ったリィン達は男子と女子に別れて露店風呂に入って見張る事にした。
~露店風呂~
「ふぅ、やっぱり露店風呂は落ち着くな。」
「ああ、本当に最高の気分だ。」
「でも、調査といいつつこんな贅沢していいのかな?」
「フフ、まあたまにはいいのではないか?」
「ああ、むしろこのくらいは当然だろう。それにしても……特に何も起こる気配はないが。」
リィン達と共に露店風呂に入っているユーシスは周囲を見回した。
「うーん、夜な夜なって話だから待っていれば出るんだろうけど……」
「はは、もしかすると男には興味のない幽霊だったりしてな。」
「ちょっと、みんなくつろぎすぎー!」
エリオットの言葉にマキアスが答えると湯着姿のミリアムが現れた。
「ちょ、ミリアム!」
「おい、何を勝手に―――」
ミリアムの登場にマキアスは慌て、ユーシスは目を細めて注意しようとしたが
「あはは、ユーシスってば慌てちゃってウブだなー。」
「……何の話だ。」
ミリアムの言葉を聞いて呆れた表情をした。
「それはともかく、ミリアム。流石にこれは女性として……」
「もう、だったらちゃんと時間に上がりなよー!」
「あ、そう言えばもう交代の時間なんだっけ。」
「ふむ、思わず忘れてしまっていたようだ。」
「はは……それは申し訳なかったな。」
その後リィン達は女性達と交代し、今度はアリサ達が露店風呂に入り、見張りを開始した。
「ふぅ、男子ったら何をのんきに寛いでいたのかしら。」
「あはは……まあ、気持ちはわかりますけどね。」
アリサの言葉にエマが苦笑しながら答えているとフィーとミリアムはラウラやエマ、セレーネとアリサの胸に注目していた。
「それにしても……」
「うん、やっぱり大きい。」
「アリサさんも最初にトリスタで会った時と比べて大きくなったのではありませんか……?」
フィーとミリアムは真剣な表情でエマ達の胸を見つめ、エリスはジト目でアリサの胸を見つめた。
「うっ……」
「な、なんのことですか……?」
「ふむ、乳房は女性の象徴と言うが……」
「え、えっと……その……」
エリスに図星を突かれたアリサは疲れた表情で唸り声を上げ、フィーとミリアムの言葉を聞いたエマやラウラは苦笑し、セレーネは言葉を濁していた。
「……ま、向こうも反則だけどね。」
その時フィーはサラ教官とシグルーンに視線を向け、フィーにつられるようにアリサ達も二人を見つめた。
「なになに?揉んで大きくして欲しいの?というかアリサの場合は間違いなくリィンに揉んでもらいまくったお蔭で大きくなっていると思うのだけど~?前の小旅行の時の露店風呂で見た時より確実に大きくなっているでしょう?というかこれからも揉まれるでしょうから、ひょっとしたら最終的にあたしより大きくなるんじゃないかしら~?」
「な、なななななななっ!?い、いいいいい、一体何の事ですか!?」
「フフ、あまり過剰に反応していては自分で答えを言っているようなものですわよ。」
口元をニヤニヤさせるサラ教官の言葉に顔を真っ赤にして慌てて必死に誤魔化そうとしているアリサの様子を見たシグルーンは苦笑しながら指摘した。
「今は……さいですが……まだ成長期ですからアリサさんくらいの年齢になれば……絶対……なっているに決まって……今後兄様に愛してもらう時は……もっと胸を……必要がありますね……」
「エ、エリスお姉様……」
顔を湯に俯かせて小声でブツブツ呟き出したエリスに気付いたセレーネは冷や汗をかき
「?どうしてリィンに胸を揉んでもらったらアリサの胸が大きくなるのかしら?」
「え、えっと……それは……」
「フム……何と答えればよいのだろうな……」
不思議そうな表情をしているゲルドの疑問を聞いたエマは冷や汗をかき、ラウラは困った表情をした。
「ていうか、ゲルドも結構大きいよね~?」
「普段はローブや外套で厚着をしているからスタイルはほとんどわからなかったけど、実際にこうして見ると裏切られた気分。いいんちょ、ゲルドの胸っていくつ?ゲルドの予備の下着を用意する時とかに測ったよね?」
ミリアムと共にゲルドの胸に注目したフィーはジト目になった後エマに尋ね
「そ、その……さすがにそれを言うのはちょっと……」
尋ねられたエマは答えを濁した。
「確か……86だったわ。」
「ゲ、ゲルドさん!」
「本人は気にしていないのですし、この場には女性しかいないのですからそれ程大した問題ではないので、そんなに慌てる必要はないかと思いますよ。」
自分が濁していた答えを迷いなく言ったゲルドをエマは慌てた様子で声を上げ、シグルーンは苦笑しながらエマに指摘した。
「私の胸ってそんなに大きいのかしら?アリサ達と比べれば小さいと思うのだけど。」
ゲルドは不思議そうな表情をして首を傾げて自分の胸とアリサ達の胸を見比べ
「ゲルドさんの場合は比較対象がおかしいんです!18歳でバストが86もあったら十分大きい部類です!というかどうして兄様の周りには胸の大きい女性がこんなにも多いのですか!?胸が大きい女性の比率が高すぎです!」
エリスはゲルドに指摘した後取り乱した様子で大声を上げた。
「お、落ち着いてください、エリスお姉様!お兄様達にまで聞こえてしまいますわよ。」
「エリスが壊れた~!?」
(エリスの気持ちはちょっとだけわかるわ……リィンはいつも”する”時必ず胸を揉んでくるし、胸でしてあげる時もいつも凄く興奮しているものね……)
取り乱し始めたエリスの様子を見たセレーネは慌てた様子で諌め、ミリアムは目を丸くし、アリサは苦笑しながらエリスを見つめていた。
「確かに言われてみればあたしを含めたⅦ組の女性陣は半分以上が胸が大きいし、リィンと契約している連中も大きい部類に入る娘達ばかりだからエリスが焦るのも仕方ないわよね~?」
「フム……意図して大きくなった訳ではないのだがな。」
口元をニヤニヤさせるサラ教官の言葉を聞いたラウラは困った表情をし
「それ、胸の小さいわたし達に喧嘩売ってるよ?」
「フィ、フィーちゃん。」
ジト目でラウラを見つめるフィーをエマは諌めていた。
「ふぅ……ほんと騒がしいわね。」
そしてセリーヌが溜息を吐いたその時物音が聞こえて来た。
「だ、誰……?」
「あそこ―――」
アリサ達が視線を向けるとそこには誰もいないにも関わらず、真新しい足跡が現れ始めた。
「誰もいないのに……」
「なんとも面妖な……!」
「はわわっ、オ、オバ……!」
「いいえ、よく見なさい―――」
サラ教官の言う通りその場をジッと見つめると真っ白な羽毛で包まれた羊型の魔獣がいた!
「羊型の魔獣―――」
「まさか、あれが幽霊の正体?」
「なるほど……羽毛が保護色の代わりをしていた為、今まで誰も気付かなかったのですね。」
フィーは真剣な表情で呟き、アリサは目を丸くし、シグルーンは警戒の表情で魔獣を見つめながら考え込んでいた。するとその時別の魔獣が露店風呂に飛び込んできた!
「きゃあッ――――!」
「もう一体いたみたい。」
「みんな、大丈夫か――――!」
アリサが悲鳴を上げたその時服を身に纏っているリィンが駆け付けて来た。
「やはり魔獣が……ここは俺達に任せて―――」
リィンはアリサ達に指示をしようとし
(アハハハハハハハハ!さすがご主人様!どうせ今夜もやると思っていたわ!)
(ふふふ、本当に混浴と縁がある方ですね。)
(リ、リィン様……アリサさん達の身が心配なのはわかりますがもう少し状況を考えてから飛び込んでくださいよ……)
(まあ、リィンはアリサ達が心配だから駆け付けただけなんだろうけど……)
(……不埒すぎます。)
その様子を見ていたベルフェゴールは腹を抱えて笑い、リザイラは静かな笑みを浮かべ、メサイアは疲れた表情をし、アイドスは苦笑し、アルティナはジト目になった。
「リィン、流石にそれは……」
「ああ、少し焦りすぎだろう。」
「え…………」
そして男湯から聞こえて来たエリオットとマキアスの声にリィンが呆けたその時女子一同はリィンを見つめていた。
「リィン、そこに直れ!」
「覚悟してもらう。」
「に・い・さ・ま~~~~~??」
ラウラとフィーはリィンを睨み、エリスが膨大な威圧を纏って微笑んだその時魔獣はどこかへと去って行った。
「それより魔獣が――――」
「しかも二匹か。お仕置きは後―――今は魔獣を追いかけるわよ!」
その後急いで着替えてリィン達と合流したアリサ達は魔獣達の後を追った。
~ユミル~
「逃げたのはこの先で間違いなさそう。」
「坂の下か……となるとボートで追った方が早そうだ。まずは俺が一足先に後を追いかけるよ。」
「あ、だったらボクもガーちゃんと一緒に先に行くー!魔獣ってわかっちゃえばこっちのモンだし!それとリィン、アルティナとクーちゃんを呼んでくれないかな~?あの二人ならボクとガーちゃんみたいにリィンと一緒にいけるし。」
「わかった。―――力を貸してくれ、アルティナ!」
ミリアムに視線を向けられたリィンはアルティナを召喚し
「えへへ、どっちが早いか競争だね、アルティナ、クーちゃん!」
「――――?」
「ですからクラウ=ソラスを変な名前で呼ばないで下さい。というか目的が完全に変わっています。」
無邪気な笑顔を浮かべるミリアムの言葉を聞いたクラウ=ソラスは戸惑った様子で機械音を出し、アルティナは呆れた表情で指摘した。
「ではあとからお三方の応援に3人―――残りのメンバーは待機と言う形にしましょうか。」
「ああ、それで問題ないだろう。」
「だったら、すばやくメンバーを決めちゃいましょう。」
そして応援にマキアス、エリス、シグルーンを選んだリィンはボードで追い、2体の魔獣達を捕まえた。
~ユミル郊外~
「二匹とも捕まえるとか―――さっすが、リィン!こうなったらもう、こっちのものだよねー♪」
「クラウ=ソラス、戦闘準備を。」
「――――」
「ああ、油断はできないがな。」
「ニシシ、もう逃げられないからねー。」
「――ああ、観念してもらう!悪いが、人里に現れた魔獣を放っておくわけにはいかないんだ。」
リィン達が戦闘を開始しようとすると応援のメンバーが駆け付けた。
「兄様、ご無事ですか?」
「待たせたな、リィン!」
「助太刀させて頂きますわ。」
「はは―――いいタイミングで来てくれたな。」
リィン達が魔獣達との戦闘を開始しようとすると突如その場が振動し始めた。
「こ、この振動は―――」
するとその時巨大な羊型の魔獣が現れた!
「わわわっ……すっごいや!」
「魔獣の親玉か……みんな、気合いをいれてくぞ!」
「応!」
そしてリィン達は魔獣達との戦闘を開始した!
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