英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第87話
~双龍橋~
「行け!!”灰色の騎士人形”を討ち取り、我らがアルバレア公に捧げるのだ!!」
「「イエス・サー!!」」
シュピーゲルの指示によって闘志を高めたヘクトルとドラッケンはヴァリマールへと向かい
「フフ、後ろががら空きでしてよ!瞬迅槍!!」
「うおっ!?な、何だ、貴様は!?」
ルチアに騎乗したシグルーンはシュピーゲルの背後から強襲した。
「隊長!?」
「翼がある馬にのる騎士だと!?クソッ、生意気な……!」
シュピーゲルの様子に気付いた2体の機甲兵達はシュピーゲルを助けようとしたが
「お前達の相手は俺だ!ハァァァァ……業炎撃!!」
「ぐあっ!?」
「クッ、小僧が……!」
ヴァリマールからの背後の奇襲を受け、再びヴァリマールとの戦闘を開始した。
「撃ち落してくれるっ!」
シグルーンと対峙したシュピーゲルは騎兵槍に見立てた巨大な槍でシグルーンを攻撃した。
「ルチア!」
「ブルル!」
しかしシグルーンを乗せたルチアは繰り出される攻撃を急降下して回避すると共にシュピーゲルの股下を通って一瞬でシュピーゲルの背後へと回り
「旋月槍!!」
「ガッ!?」
ルチアがシュピーゲルの頭の部分まで近づくとシグルーンは首筋の部分に聖槍による強烈な一撃を叩き込み
「三散華!秋沙雨!!」
「グッ……!?」
一撃を叩き込んだ部分に技を放って集中攻撃をした!
「ク、クソ……ッ!」
背後からの奇襲を受けたシュピーゲルは方向転換をして反撃をしたが、巨大な機体の為、方向転換はすぐにできず、方向転換した頃にはシグルーンを乗せたルチアはシュピーゲルと距離を取っていた。
「き、機甲兵相手に生身で圧倒しているよ……」
「……まあ、”蒼の騎神”とも生身で互角以上に渡り合ったサフィナ元帥や生身で”蒼の騎神”の腕を破壊したエフラム殿下達の件があるから、”今更”かもしれないが……」
「実際にこの目で見るとやはり驚きますわよね……」
「……それに天馬の手綱さばきも見事だ。ノルドの民でもあれ程の馬の手綱さばきはできないと思う。」
生身で機甲兵相手に圧倒的な強さで渡り合うシグルーンの戦いを見ていたエリオットとマキアスは表情を引き攣らせ、セレーネは苦笑し、ガイウスは真剣な表情でシグルーンを見つめ
「フン、あたしなら地上からでも一体くらい余裕で相手できるわよ。」
「条件は同じでも結局はあの騎士の方が速く仕留めると思うけど。」
「なんですって~?」
「サ、サラ教官。戦闘中ですよ?」
ジト目でフィーを睨むサラ教官の様子を見たエマは疲れた表情で指摘した。
「……さすがはメンフィルの天馬騎士の中でも一、二の実力を争う使い手と言った所か。そう言えばユーシスも天馬に似た聖獣と契約しているが……中将に空中戦の指導をしてもらったらどうだ?シグルーン中将程の乗り手に教えてもらえる機会は滅多にないと思うぞ?」
「今は”協力者”だから頼んだら教えてくれると思うよ~?実際、エリスだけじゃなくボク達の訓練とかもみてくれるし。」
「……ああ。作戦が完了してから、指導を頼むつもりだ。」
ラウラとミリアムの指摘を聞いたユーシスは静かな表情で頷き、今後の戦いの為にシグルーンの戦いを集中して見ていた。
「セイッ!」
「ぐおおおおおっ!?しまった、視界が……!」
シグルーンが振るった槍によって両目の部分が破壊され、両目が破壊された事による視界のセンサーが破壊され、何も見えなくなってしまった機甲兵は混乱し
「止めですわ!活伸槍――――円舞!!」
その隙を逃さないかのように光の闘気を纏った槍を構えたシグルーンは足の関節部分に集中攻撃をした。すると関節部分は破壊され―――
「ば、馬鹿な……!?」
関節部分が破壊された事によってバランスを失った機甲兵は地面に倒れて戦闘不能になった!
「ハァァァァ……!」
ヴァリマールとの戦闘を開始したヘクトルは溜めの動作をしたが
「させるか!一の型―――閃光斬!!」
「グアッ!?」
ヴァリマールによる閃光の速さの斬撃を受けて中断した。
「このっ!」
「グッ!?」
その時棍棒のような巨大な武器を両手に持ったドラッケンがヴァリマールを攻撃し
「ハアッ!!」
「クッ!?」
ヴァリマールが怯んだ隙を逃さないかのようにヘクトルは剛腕をヴァリマールに叩きつけた。
「今助けます、兄様!女神よ……!」
「ありがとう、エリス!」
するとその時ヴァリマールとARCUSで繋がっていたエリスは自分のクラフトを騎神専用のアーツとして放つ『ホーリースコール』でヴァリマールが受けたダメージを回復した。
「私に変わって、エリス。」
「はい!」
「―――頑張って、リィン。」
その時エリスと交代したゲルドはヴァリマールと自分のARCUSをリンクさせて自分の思念を送り
「!これは……!」
ゲルドの思念を受け取ったヴァリマールの中にいるリィンは目の前の機甲兵達の次の攻撃が脳裏に映って驚いた。
「喰らえっ!!」
その時ドラッケンが2連続攻撃を仕掛けたが
「甘い!―――ハアッ!」
「グアッ!?」
ゲルドの予知能力を受け取ったヴァリマールは回避した後反撃し
「潰れろっ!!」
「遅い!――――セイッ!!」
「馬鹿なっ!?」
ヘクトルの突進攻撃も回避した後反撃をしてヘクトルを怯ませた。
「反撃よ、リィン!」
「ああ!―――ロードフレア!!」
「ぐおおおおっ!?」
そしてアリサとリンクを結んだヴァリマールはアーツを発動してヘクトルを怯ませ
「そこだっ!三の型――――天衝斬!!」
「ガアッ!?」
続けて剣でX(エックス)に斬りつけた後斬り上げを行ってヘクトルの体勢を崩し
「止めだっ!」
「グッ!?そ、そんな馬鹿な……!?」
止めに剣をヘクトルに叩きつけ、ダメージに耐えきれなかったヘクトルは戦闘不能になり、地面に膝をついた。
「後1体残っているわ!油断しないでっ!」
「クソッ!?よくもやってくれたな……!喰らえっ!」
「グッ!?」
セリーヌが警告したその時残っていたドラッケンが強烈な一撃をヴァリマールに叩きつけてダメージを与えたが
「まだまだだっ!さあ、かかってこい!」
すぐに立ち直ったヴァリマールはクラフト――残月を発動し、迎撃の構えをした。
「小僧が!舐めるな――――ッ!!」
ヴァリマールの挑発に乗ったドラッケンは左右の腕に持つ武器を次々と振り下ろしたがヴァリマールは全てを回避し
「ハアッ!!」
「グウッ!?」
反撃に薙ぎ払い攻撃を叩きつけて怯ませた。
「チャンスよ!一気に決めちゃいなさい!」
「ああ!エリス!」
「はい、兄様!」
「「神技――――月光剣!!」」
セリーヌの助言を聞いたリィンは神秘的な光を纏った剣で強烈な一撃をドラッケンに叩きつけ
「ぐあああああっ!?お、おのれ………!」
騎神と”準契約者”の協力技である強烈な一撃を受けてしまったドラッケンはダメージに耐えられず、戦闘不能になって地面に膝をついた!
「フフ、どうやら援護は不要だったようですわね。」
戦闘を終えたシグルーンは2体を無力化し終えたヴァリマールを見て微笑みながら感心していた。
「よし―――!」
「やった……!」
「さっそく突入するわよ!リィン、先導をお願い!」
「了解しました!」
そしてヴァリマールは砦内へと侵入し、ヴァリマールに続くようにアリサ達も砦内に侵入した!
一方その様子を遠くからフードを被った男が見守っていた。
「フフ……突入できたようですね。まあ、念の為に保険をかけておくとしましょうか。」
ヴァリマール達の様子を見守ったフードの男はどこかへと去って行った。
こうしてリィン達は双龍橋内部に入り込み―――混乱する守備兵達を後目に砦の本体へ潜入したのだった。
突入班のメンバーであるリィン、アリサ、エリス、ゲルド、エリオット、ガイウス、サラ教官が中央区画に入ると、陽動班である残りのメンバーがリィン達の背後を護るかのように、迎撃の構えをしていた。
~双龍橋・中央区画~
「よし……潜入成功だ!」
「後はエリオットさんのお姉様を見つけるだけですね……!」
リィンの言葉に続くようにエリスは呟き
「うん、姉さんはこの砦のどこかにいるはず……!」
エリオットは力強く頷いた。
「手薄とは言え、ここからが本番よ!迅速に、確実に行くわよ!」
「ええ、了解です!」
「風と女神の導きを……!」
「―――行きましょう。」
サラ教官の号令にアリサとガイウスは頷き、ゲルドは静かな表情で呟き、リィン達と共に司令官室に向かい始めた。リィン達が砦内を進んでいる中、陽動班は援軍である領邦軍の兵士達や軍用魔獣、人形兵器の混合部隊に激戦を繰り広げていた。
「石化弾、発射!―――そこだっ!!」
「グアッ!?」
「か、身体が……!?」
マキアスのクラフト―――ソリッドカートを受けた事により、身体が石化したかのように動かなくなった兵士達は怯み
「斬ッ!!」
「グアッ!?」
「ユ、ユーシス様……何故、我らを……」
その隙を逃さないユーシスはクラフト―――ルーンブレイドを叩きこんで兵士達を気絶させた。
「愚か者どもが……!」
気絶した兵達をユーシスが睨んだその時
「ブレイクショット!!」
「ギャンッ!?」
ユーシスに襲い掛かった軍用魔獣にマキアスがショットガンによるチャージショットを放って怯ませ
「ハァァァァァ……セイヤッ!!」
「ガッ!?」
ユーシスがクラフト――クイックスラストを叩き込み、魔獣を絶命させた!
「気持ちはわかるが余所見をするな!」
「フン、余計な真似を。お前こそ、余所見をして俺の足手纏いになるなよ。」
「こ、この男は……!せっかく心配してやっているというのに……!」
ユーシスの言葉にマキアスは顔に青筋を立てていたが、それでもユーシスと共に絶妙なコンビネーションで戦い続けた。
「やれやれ。あの二人は相変わらずだ……ねっ!!」
二人の様子を見たフィーは呆れた表情をしながら人形兵器達にクラフト―――クリアランスを放って怯ませ
「フフ、こんな状況でも変わらずにいるのはある意味尊敬に値するがな。―――烈震天衝!!」
フィーの言葉に苦笑しながらラウラは怯んだ人形兵器達に止めを刺した。するとその時軍用魔獣が数体ラウラに向かってきたが
「獅吼―――滅龍閃!!」
「ギャンッ!?」
「ガッ!?」
ラウラは魔剣で周囲を薙ぎ払うと共に蒼き獅子の闘気を飛ばして吹き飛ばし
「――――止め。」
吹き飛ばされた魔獣達にフィーはクラフト―――スカッドリッパーで急所を貫いて止めを刺した。
「遅いわよ!」
「グッ!?」
「ガッ!?ク、クソッ!?一体どこに―――」
一瞬で詰め寄って来たヴァレフォルによる一撃離脱の攻撃を受けた兵達は攻撃した相手であるヴァレフォルがいない事に混乱し
「吹っ飛べ~!」
「――――――」
「グアッ!?」
「ガハッ!?」
その隙を狙ったミリアムの指示によって振るったアガートラムの一撃をまともに受けた兵達は気絶した。
「―――雷雲より来たれ、裁きの剣!サンダーブレード!!」
「雷光よ、我が手に宿れ!サンダーストライク!!」
「――――!?」
エマの特殊魔法によって発生した雷の剣とセレーネが片手から放った雷光をまともに受けた人形兵器達はショートして動きが鈍くなり
「聖なる光よ!―――煌めけ!昇閃!!」
その隙を狙ったシグルーンが光の魔力を纏った細剣を振るって人形兵器達に止めを刺した!
「右翼、前に出過ぎています!次の応援が来るまでにすぐに所定位置に戻りなさい!」
「す、すみません……!」
「フン……!」
人形兵器達を片付けたシグルーンはマキアスとユーシスに指示をし
「左翼は逆に下がりすぎです!もう少し前に出なさい!」
「承知。」
「了解。」
続けてラウラとフィーにも指示をした。
「さすが親衛隊の副長をやっているだけあって、戦場での指示が的確だよね~。」
「ええ………加えて私達のフォローも完璧ですから、本当に心強い方ですね。」
「レン姫の仰った通り、確かにわたくし達にとっては強力な戦力になっていますわね。」
「ん~……ワタシが知っているレウィニアの女騎士団長と良い勝負をしているかもしれないワね。」
次々と指示を出すシグルーンの様子を見ているミリアムの言葉にエマとセレーネは頷き、ヴァレフォルはシグルーンを見つめてある人物を思い出していた。
「ええっ!?女性でありながら騎士団長を務めているのですか!?」
「”レウィニア”?そんな国の名前、聞いた事ないよ??もしかして異世界の国?」
「”レウィニア”……確か特別実習で異世界に行った時――――」
ヴァレフォルの言葉を聞いたエマは驚き、ミリアムは首を傾げ、セレーネは考え込んだが
「そこ!私語は慎みなさい!まだ戦闘は終わっていないのですよ!?」
「はーい!」
「「す、すみません!!」」
(ああいう所に関してはレヴィアと似ているワね……)
シグルーンに注意されて考え込むのを止めてミリアムやエマと共に返事をし、ヴァレフォルは苦笑しながらシグルーンを見つめていた。一方時折立ち塞がる領邦軍を蹴散らしながら進んでいたリィン達はようやく司令官室に到着した。
~司令官室~
「エリオット……!?」
司令官室に突入すると聞き覚えのある女性の声が聞こえて来た。
「あ……!」
「姉さん―――!!」
声が聞こえた方向に視線を向けるとそこには領邦軍の司令官と共に両手を拘束されたフィオナがいた。
「エリオット……!Ⅶ組のみんなやサラさんまで!」
「フィオナさん!お久しぶりです……!」
「ふふっ、助けにきたわよ!」
「ありがとう……!何てお礼を言ったら……エリオットも……しばらく見ないうちに立派になったみたいで……ううっ、お姉ちゃん嬉しいわ……」
「姉さん……」
「ええい、黙れ小娘!状況がわかっておるのか!?」
リィン達と再会を喜んでいるフィオナの様子を見た司令官は怒鳴った後鞘からサーベルを抜いてフィオナの首筋に突きつけた。
「貴様らも……これ以上、近づかぬことだ!この娘の命が惜しくばな!」
「ね、姉さん!」
(……理解できません。彼女に危害を加えた後の自分の身がどうなるかも予想できないのでしょうか?)
「……言っておくが状況がわかっていないのはあんたの方だ。その女性を傷つけたが最後、無事で済むと思うなよ……?」
司令官の行動を見たエリオットは声を上げ、アルティナは呆れた表情で呟き、リィンは司令官を睨んで警告した。
「どうやら猟兵団も他の拠点にいるみたいだし、完全に詰んだみたいね。加えて撤退するにしてもバリアハート方面、トリスタ方面共にメンフィル領のケルディックを通過しなければならないから、国境で待ち構えているメンフィル軍によって問答無用で殲滅させられると思いますよ?メンフィル軍は貴族連合に対しては容赦はしないでしょうからとっとと降伏した方が身のためだと思いますけど?」
「ぐ、ぐぐぐ……どいつもこいつも愚弄しおって……!!この”双龍橋”にノコノコとやってきたことを後悔させてくれる!!」
サラ教官の忠告に唇を噛みしめた司令官が片手を挙げて何かのスイッチを押すと突如壁が地面まで下がり、装甲を身に纏った巨大な軍用魔獣が2体リィン達の前に現れた!
「え、えええええっ!?」
「な、なんて大きさ……!」
「この魔獣は……!?」
「領邦軍はこんな魔獣まで手懐けているのですか……!?」
軍用魔獣達の登場にエリオット達が驚いている中、エリスは信じられない表情をした。
「バリアハートの地下水道で戦った軍用魔獣か!?」
「―――気を付けて。二体による集中攻撃をされる所が”見えた”わ。」
見覚えのある魔獣にリィンは厳しい表情をし、ゲルドは仲間達に忠告した。
「エリオット、みんな!!」
「ははは、そこらの軍用魔獣と一緒にせぬことだ!ゆけ、ガイザードーベンども!その雄々しき顎をもって侵入者を噛み千切るがいい!」
「アンタたち、行くわよ!―――アンタも手伝いなさい、バルディエル!!」
「了解です!力を貸してくれ―――アルティナ!!」
バルディエルを召喚したサラ教官の号令に頷いたリィンは続くようにアルティナを召喚した。
「姉さん……!すぐに助けてあげるから!」
そしてリィン達は戦闘を開始した!
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