英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第77話
~カレイジャス・ブリーフィングルーム~
「さてと。色々と話が逸れちゃったけど……―――オリヴァルト皇子並びにアルフィン皇女。この”戦争回避条約”を呑むのかしら?それとも最後の一兵まで殺されてでも一矢は報いる覚悟で、全力で”無駄な抵抗”をするつもりなのかしら?」
「そ、それは…………」
「……本来なら皇帝である父上が判断すべき事だが、そんな”言い訳”は聞くつもりはないのだろう?」
不敵な笑みを浮かべたレンに問いかけられたアルフィン皇女は表情を青褪めさせ、オリヴァルト皇子は真剣な表情で尋ねた。
「当たり前よ。皇帝の返事を待つと言う事は内戦が終結するまで待つ必要があるって事じゃない。メンフィル帝国がエレボニア帝国との開戦を決定するまでに、エリスお姉さんの返還を含めた様々なメンフィルの”当然の要求”に応える為に約2週間も猶予を与えた上要求を呑まなかった場合戦争を仕掛ける事を3回も警告したのに、”今更”そんなに待てる訳がないでしょう?」
「お言葉ですが皇帝の返事を貰いたいのなら、どうしてエリス君を救出するついでに陛下達も救出してくれなかったのですか!?」
レンの問いかけを聞いたマキアスは厳しい表情で尋ねたが
「え?逆に聞くけど貴族派と革新派を纏めきれなかった優柔不断な皇に国の”衰退”か”滅亡”を今すぐ選べって迫って、選べると思っているのかしら?レンの予想では色々と”無駄な言い訳”をして、この条約の内容をもう少し緩和して欲しいとか言うだけで、”時間の無駄”になるだけだと思うけど。」
「なっ!?」
不思議そうな表情をしているレンのユーゲント三世に対する最大の侮辱と言ってもおかしくない指摘に信じられない表情で声を上げ
「っ……!」
「うわっ、そこでボク達のせいにするんだ。」
クレア大尉は辛そうな表情で唇を噛みしめ、ミリアムは目を丸くして驚いた。
「レン姫!恐れながらさすがにお言葉が過ぎます!」
「ひ、酷すぎるよ……!」
「陛下達も被害者なのですよ!?」
リィンは厳しい表情で声を上げ、エリオットは不安そうな表情をし、ラウラは怒りの表情で指摘したが
「みんな、貴族連合によって幽閉の身になったユーゲント三世を含めたエレボニア皇族達も”被害者”だって言って同情しているみたいだけど、皇帝を含めた皇族は民達を纏める”義務”があるわ。―――皇帝や皇族の威光を使ってでも貴族派と革新派を無理矢理黙らせて纏めなかったユーゲント三世を含めたエレボニア皇家であるアルノール家も内戦を引き起こした”元凶”の一部の人達だと思うのだけど?」
「それは……っ!」
「……逆に尋ねさせて頂きますが、もしメンフィルは同じ状況だとすればどうなさると言うのですか?」
レンの正論に唇を噛みしめて反論できず、アルゼイド子爵は厳しい表情で尋ねた。
「それは勿論”力”で黙らせるに決まっているじゃない♪メンフィルは今まで説得が不可能と判断した相手にはそうしてきたし、これからもそれだけは変わらないと思うわ♪」
「―――我ら親衛隊は誇りある皇族の守護者。皇族の方達が命令をするのならば、躊躇いなくかつての仲間達と剣を交える覚悟もありますわ。」
「チッ、圧倒的な”力”で解決して来た”ゼムリア大陸真の覇者”と恐れられている大国らしい考えだな。」
「そしてメンフィルが今”力”で黙らせる相手はエレボニア帝国と言う訳ね…………」
笑顔で答えたレンと真剣な表情で答えたシグルーンの答えを聞いたトヴァルは舌打ちをした後メンフィルに対する皮肉な言葉を口にし、サラ教官は厳しい表情をした。
「…………………………――――わかった。メンフィル帝国が提案した”戦争回避条約”をエレボニア帝国は全て呑む事を私――――オリヴァルト・ライゼ・アルノールが現皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノールの代わりに確約する事を宣言する。必要なら今この場でサインもする。アルフィンもいいね?」
「…………はい。元よりメンフィルとの外交問題はわたくしがユミルに滞在した事で起こった事なのですから、わたくしも異存はありません。――――現エレボニア皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノールと皇妃プリシラ・ライゼ・アルノールの娘たるアルフィン・ライゼ・アルノールもメンフィル帝国が提案した”戦争回避条約”を現皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノールの代わりに確約する事を宣言致しますし、サインもします。」
「殿下………………」
「姫様………………」
「………ッ………!」
「……………………」
「そ、そんな……これしかメンフィル帝国との戦争を避ける方法はないの……?」
「お嬢様…………」
オリヴァルト皇子とアルフィン皇女の宣言を聞いたリィンとエリスは辛そうな表情をし、ユーシスは唇を噛みしめて身体を震わせ、アルゼイド子爵は重々しい様子を纏って黙り込み、不安そうな表情をしているアリサをシャロンは心配そうな表情で見つめた。
「―――で、皇族達が”戦争回避条約”を呑む事を約束するから、戦争は止めてくれって言いたいんでしょう?言っておくけど、それは無理な相談よ。」
「そ、そんな……!何故ですか!?」
「……皇族の方達が約束をしたのに、何故戦争を止めないのですか?」
レンの言葉を聞いたセレーネは悲痛そうな表情をし、ガイウスは真剣な表情で尋ねた。
「―――”戦争回避条約”の最後の一文を読んでください。」
「”最後の一文”……?」
エリゼの指摘を聞いたジョルジュは不思議そうな表情をして仲間達と共に書類を読み直した。
「えっと……『以上の内最低二つを即実行後、メンフィル帝国が定めた期間以内に内戦を終結させて残りの全てを実行するのならば、メンフィル帝国はエレボニア帝国に対する侵略行為を中止し、和解にも応じる』…………あ。も、もしかして……!」
「今この場でこの条約の中から最低二つを実行しなければならないのですか!?」
文章を読み直してある事に気付いたトワは表情を青褪めさせ、クレア大尉は厳しい表情で尋ねた。
「そ、そんな………どれも無理だよ………」
そして表情を青褪めさせて書類を読んでいるエリオットが呟いたその時
「―――いや、少なくても”一つ”は確実に実行できる。」
ユーシスが静かな表情で申し出た。
「ユーシス!?お前、まさか……!」
「ユーシス様自身を指名した”第6項”を実行するおつもりですか……」
ユーシスの申し出を聞いてすぐに察したリィンは血相を変え、シャロンは複雑そうな表情をし
「でしたらわたくしも今すぐわたくし自身を指し示した”第7項”を実行致します!それなら、二つを実行した事になりますわよね!?」
「姫様…………」
「二人とも待ってくれ。その前にレン姫に一つ聞きたい事がある。」
アルフィン皇女の申し出を聞いたエリスは心配そうな表情でアルフィン皇女を見つめ、オリヴァルト皇子は二人を制した後レンを見つめた。
「何かしら?」
「仮に今すぐこの場で二つを実行したとしても、この『メンフィル帝国が定めた期間以内に内戦を終結させて』とあるが、この”期間”はどのくらいになるんだい?」
「あ…………」
「確かにタイムリミットも設定されてあるね。タイムリミットはいつ?」
オリヴァルト皇子の質問を聞いたエリスは呆け、フィーは真剣な表情で尋ねた。
「うふふ、やっと”その話”にも移れるわね。――――待たせたわね。3人共、出番よ。入ってきて。」
「―――失礼します。」
そして小悪魔な笑みを浮かべたレンが出入り口に視線を向けるとルイーネ、マルギレッタ、リ・アネスが部屋に入って来た!
「え…………」
(あら?あの娘……メサイアに似ていないかしら?)
(え――――お、お母様にリ・アネス様……そ、それに……元ユン・ガソル王国の”三銃士”のルイーネ様!?)
マルギレッタの容姿を見たリィンは呆け、ベルフェゴールは首を傾げ、メサイアは信じられない表情で声を上げ
「騎士……?あの尾のようなものは一体……」
「もしかして異種族?」
「竜の尻尾のようにも見えますが……」
リ・アネスを見たラウラは戸惑い、フィーとセレーネは不思議そうな表情をし
「っ……!なんて霊力……!」
「あの姉さんをも超える霊力を持っているなんて……」
マルギレッタから感じる膨大な魔力を感じ取ったセリーヌは目を細め、エマは驚きの表情をし
「ほえっ!?」
「貴女は……!」
「何故貴女がこの場にいるのですか!?”六銃士”の”微笑みの剣妃”――――ルイーネ・サーキュリー!」
ルイーネの姿を見たミリアムとガイウスは驚き、クレア大尉は信じられない表情で声を上げた。
「ええっ!?じゃ、じゃああの人は以前の”特別模擬戦”の時に特務支援課の人達と一緒にいたメサイアのお父さんと同じ……!」
「”六銃士”だと!?」
「彼らが例の……」
「な、何でクロスベル警備隊の上層部がここにいるんだ!?」
クレア大尉の言葉を聞いたエリオットとユーシスは驚き、アルゼイド子爵は真剣な表情になり、マキアスは信じられない表情をし
「やっぱり”六銃士”とメンフィルは繋がっていたのか!?」
「………………一体何故このタイミングであたし達の前に現れたのかしら?」
トヴァルは厳しい表情で声を上げ、サラ教官は真剣な表情でルイーネ達を見つめた。
「うふふ、まず3人共自己紹介をしてもらってもいいかしら?」
「―――わかりました。ではまず、私から……―――私の名はルイーネ・サーキュリー。既にご存知の方もいらっしゃると思いますがクロスベル警備隊の一佐を務める者です。……フフッ、久しぶりね、ガイウス君?以前会った時と比べて随分と背が伸びたのじゃないかしら?」
レンに促されたルイーネは自己紹介をした後ガイウスに微笑んだ。
「ええっ!?」
「ガ、ガイウスの知り合いなの!?」
「ああ……以前にも話したと思うがノルドで魔獣に包囲された父さん達を助けてくれた恩人――――ギュランドロスさんとその仲間の人達の中にいる一人が目の前の女性―――ルイーネさんで、ルイーネさんはギュランドロスさんの奥方なんだ。」
エリオットは驚き、アリサに尋ねられたガイウスは頷いて答え
「そう言えば……以前大旦那様から今でも印象に残る4人の旅人とノルドの地にて邂逅した話を聞いた事がありますが……―――まさか。」
「恐らくギュランドロスさん達だろう。ギュランドロスさん達も4人だったしな。―――お久しぶりです、ルイーネさん。お元気そうで何よりです。」
シャロンの推測に頷いたガイウスはルイーネに会釈をした。
「フフ、ガイウス君も元気そうで何よりよ。ラカンさん達はご無事かしら?エレボニアが内戦状態に陥ってしまった事でノルドの地も他人事じゃないと思うけど。」
「はい、父さん達もみんな無事で元気に生活をしています。今のノルドの地は仮初とは言え、戦火に包まれず平和を保っています。」
「そう………それはよかったわね。それと……貴女ともこうしてまた顔を合わせるのとは思いませんでしたよ、クレア・リーヴェルト大尉。」
ガイウスに優しげな微笑みを浮かべたルイーネは次にクレア大尉に視線を向け
「……それはこちらのセリフです。何故クロスベル警備隊、警察の上層部である貴女達がメンフィルに手を貸しているのですか?」
ルイーネに視線を向けられたクレア大尉は厳しい表情で尋ねた。
「フフ、その件については後でレン姫が説明してくれます。―――お久しぶりでございます、オリヴァルト殿下。行方不明と聞いておりましたが、ご無事で何よりです。」
「………心遣い、痛み入る。ヴァイス達は元気かい?」
「ええ。ちなみに2ヶ月前に起こった例の襲撃でリセルさんとも再会できましたわ。」
「!彼女まで、ヴァイス同様現代に生まれ変わっていたのか……フフッ、とんでもない偶然だね……」
ルイーネの話を聞いて目を見開いたオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべた。
「お、お兄様……?確かそのお二人の名前は”影の国”という場所で出会ったという……」
「ああ。私の親友同然の男と彼に仕えている副官だ。二人とも遥か昔の時代に存在している人物だった為、もう再会する事はないと思っていたのだが……どうやらその様子だと彼らや貴女達は何らかの方法でメンフィルを味方につけて、再び”覇道”を歩もうとしているようだね?」
アルフィン皇女に尋ねられたオリヴァルト皇子は懐かしそうな表情をしたがすぐに表情を引き締めてルイーネを見つめた。
「フフ……それについてはこの後すぐにわかるかと。次はお二人の出番ですよ。」
「――ではまず、私から。私の名はリ・アネス。龍人族のマルギレッタ様にお仕えしている騎士です。以後お見知りおきを。」
「―――私の名はマルギレッタ・シリオス。クロスベル警察の局長ヴァイスハイト・ツェリンダーの”覇道”を共に歩む者の一人です。以後お見知り置きをお願いしますわ。」
ルイーネに促されたリ・アネスとマルギレッタはそれぞれ自己紹介をした。
「!?あ、あの……まさかとは思いますが貴女はメサイアの…………」
マルギレッタが名乗り終えると目を見開いたリィンは信じられない表情でマルギレッタを見つめ
「フフ、貴方が”並行世界の私の娘”と契約している方ですね?ヴァイス様より貴方の事は聞いておりますわ。」
マルギレッタは微笑みながらリィンを見つめた。
「ええっ!?メ、メサイアの……お母さん!?」
「た、確かによく見てみればメサイアと容姿が似ている……というか、似すぎているぞ!?」
「姉妹と言ってもおかしくないくらい似ていますわよね……?」
「むしろ目の前の女性の方が”妹”と言っても違和感がない程若すぎるぞ……」
マルギレッタがメサイアの母と知ったアリサやマキアスは驚き、セレーネは戸惑い、ユーシスは信じられない表情をした。
「うふふ、色々と驚く事はあるでしょうけど、悪いけどそういう事に関しては本題が終わってからにしてもらうわね。」
「……彼女達が君達と一緒にいる事が先程の条約の”期間”とどう関係があるのだい?」
レンの話を聞いて表情を引き締めたオリヴァルト皇子は真剣な表情で尋ねた。
「大有りよ。だって、その”期間”というのが”クロスベル独立国滅亡後に新たに建国されるクロスベル帝国と共にエレボニア帝国に戦争を仕掛けるまでが期間”なんだから♪」
「え……………」
「何ですって!?」
「”クロスベル帝国”だと!?」
「フン、”独立国”の次は”帝国”か。自治州が”帝国”を名乗るとは呆れを通り越してもはや感心に値するぞ。」
レンの説明を聞いたリィンは呆け、サラ教官とトヴァルは厳しい表情で声を上げ、ユーシスは鼻を鳴らしてルイーネ達を睨んだ。
「確かに今の領地だけでは”帝国”を名乗るには相応しくありませんが……クロスベルには戦争を仕掛ける理由がある大国が二国も存在する為、その二国をメンフィルと共に制圧すれば帝国を名乗るのに相応しい広大な領地を手に入れますわ。」
「!!」
「に、二大国というのはまさか……エレボニアとカルバードの事ですか!?」
「そ、そんな!?クロスベルまで一緒に攻めてくるなんて!?」
「一体何があってそうなったんだ……?」
「うわっ!?よりにもよってメンフィルと手を組んだんだ!」
「一体何故!?メンフィルには何の”利”もないというのに!」
ルイーネの説明を聞いたオリヴァルト皇子は厳しい表情をし、アルフィン皇女とトワは表情を青褪めさせ、ジョルジュは考え込み、ミリアムは驚き、クレア大尉は信じられない表情をし
「……………………ねえ、今とんでもない事が聞こえたのだけど……私の聞き間違い?」
「い、いえ……私にもちゃんと聞こえました……―――クロスベルがメンフィルと共に二大国―――エレボニア帝国とカルバード共和国に戦争を仕掛けると……」
「あ、あの……レン姫……何故メンフィルはクロスベルと同盟を組む事にしたのですか……?」
呆然とした様子のアリサの言葉を聞いたエマは不安そうな表情で答え、エリスは信じられない表情でレンに尋ねた。
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