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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第72話

~ヴァリマール~



「リィンさん、これからどうするんですか?」

「ユミルに戻ります。あそこにみんながいますから。」

「リィィィ―――――――ンッ!!」

ユミルに向かって飛行しているとアリサの声が聞こえて来た。



「この声は……アリサ!?一体どこに……―――――!あれは……”カレイジャス”!?」

「あ…………!」

自分達の視界に現れた”カレイジャス”に気付いたリィンは目を見開き、アルフィン皇女は明るい表情をした。

「リィン!リィンよね!?」

「聞こえていますか、お兄様!」

「ああっ!今そちらに向かう!」

そしてヴァリマールは”カレイジャス”に向かい、”カレイジャス”の甲板に着地し、リィンとアルフィン皇女がヴァリマールの中から現れると甲板にアリサ達に加え、オリヴァルト皇子やアルゼイド子爵、更にはトワやジョルジュがかけつけてきた!



~カレイジャス・甲板~



「リィン!」

「お兄様!無事でよかった!」

「アリサ……セレーネ……」

アリサとセレーネはリィンに抱き付き

「ええっ!?ア、アルフィン殿下!?」

「ま、まさか”パンダグリュエル”に殿下もいたのですか!?」

アルフィン皇女の姿を見たエリオットとエマは驚いた。



「はい♪リィンさんのおかげで無事脱出できましたわ♪」

「フッ、その様子だとどうやらリィン君との逃避行を満喫していたようだね?」

「お兄様……グス……うふふ、それはもう。」

オリヴァルト皇子にウインクをされたアルフィン皇女はオリヴァルト皇子とようやくあえた安堵で涙を流しながらも嬉しそうな表情で頷き、アルフィン皇女の答えを聞いたその場にいる全員は脱力した。



「ふぅん。お楽しみだったみたいだね。」

「ふむ、そうなのか?」

「ま、まったく、人が心配していれば……」

「ふふ、リィンらしいな。」

フィーはジト目になり、ラウラは不思議そうな表情をし、マキアスは疲れた表情をし、ガイウスは苦笑した。



「いや、言葉の綾だから!」

「フン、アタシを放り出して何をやってたんだか。」

慌てている様子のリィンを見たセリーヌは呆れ

「フフ……何はともあれ、よくぞ殿下と共に帰還したな、リィン。」

「はは、久しぶりだね。」

「子爵閣下…………ジョルジュ先輩……それにトワ会長も……」

アルゼイド子爵とジョルジュに話しかけられたリィンは明るい表情でアルゼイド子爵達を見回した。



「っ……!」

するとその時トワはリィンに駆け寄り、リィンの胸に寄り添った。

「か、会長……!?」

「ううっ……よかった、リィン君が無事で!せっかく生きているってわかったのに、貴族連合の船に連れ去られちゃうなんて……!ずっと……ずっと心配してたんだよっ!?」

「……すみません、会長。心配をおかけしました。でも……会長たちも無事でいてくれてよかったです。学院の正門で別れてからずっと気がかりでしたが……―――なんとか俺も”約束”を守ることができました。」

「あ………ふふっ……そうだね。”死なない”って……約束してくれたもんね。そんな約束を、リィン君が破るわけないよね……!」

リィンの言葉を聞いて校門でリィン達を見送る時に送った言葉を思い出したトワは笑顔を浮かべた。



「ハハ、信じた甲斐があったみたいだね。元気そうでよかった、リィン君。あの戦いを生き延びてくれていたなんて……今でも信じられないくらいだ。」

「ジョルジュ先輩も……ご無事で何よりでした。でも、どうして二人までこの”カレイジャス”に……?」

「ああ、それも含めてあらためて情報交換をしよう。」

「上のフロアに会議室がある。そちらに移動するとしようか。」

その後リィン達は会議室に移動した。



~ブリーフィングルーム~



「―――この”カレイジャス”が今回の遊撃活動を開始したのは帝都が占領される直前のことでね。貴族連合の動きを察知し、最低限の人員だけを集めてから何とか子爵閣下と合流し……そのままトリスタ―――”蒼の騎神”と戦う君達の元へ駆け付けたわけさ。」

「それが一ヵ月半前の出来事……この艦がトリスタに現れた経緯というわけですね。」

「―――あれ以来、父上たちの行方はわかりませんでしたがいったいどちらへ?」

「うむ、帝国各地を密かに回りつつ、そなた達を迎えるべく動いていた。」

「わたしたちが合流したのはついこの間……学院長が密かに連絡をとってこちらに送ってくれたの。」

ラウラの質問にアルゼイド子爵とトワがそれぞれ説明をした。



「学院長が……そうだったんですか。」

「学院の方もやっぱり心配ね……」

「皆さん、ご無事でしょうか……」

「そういえば……ミュラー少佐はどちらに?お兄様と一緒ではないんですか?」

周囲を見回してある人物がいない事に気付いたアルフィン皇女はオリヴァルト皇子に尋ねた。



「ああ、彼の方は今は別行動を取っていてね。”第七機甲師団”を率いて帝国西部で独自に動いている。君達の元軍事教官であるナイトハルト少佐とも連携しているようだ。」

「ナイトハルト教官が……!」

「そうでしたか……西部の方に。」

「連絡があったとは聞いてたけどちょっと安心したかも……

「ふふ、さすがは第四機甲師団のエースだけあってしぶといわね。」

オリヴァルト皇子の話を聞いたリィン達はそれぞれ安堵の表情をした。



「しかし西部と言えば四大名門・ハイアームズ候の治める南の”サザーラント州”―――そしてあのカイエン公が統治する”ラマール州”のある場所です。……伝え聞いた話ではそちらの戦況は東部よりも激しくなっているそうですが。」

「うむ、正規軍の残存戦力もそれなりに残っているようだが……貴族連合の猛攻によって劣勢に追い込まれている状況だ。そして―――幾つかの町が戦火に巻き込まれかなりの被害が出ている。」

「そこまで……」

「くっ……噂には聞いてたが。」

「主力である第四、第三機甲師団が東部に追いやられている状況……貴族連合も、その隙を狙ってたたみかけるつもりのようですね。」

ユーシスの質問に答えたアルゼイド子爵の答えを聞いたエマは不安そうな表情をし、トヴァルとクレア大尉は厳しい表情をした。



「でも、正規軍だって当然、必死に抵抗するだろうしねー。」

「……ちょっと読めないかな。」

「うむ、西部の戦局はまったく予断を許さぬと言えるであろう。メンフィルは今の所自国領に避難して来る民達を受け入れてくれているようだが……正直、いつ拒否してもおかしくない状況だ。」

「さすがにボクたちも困ってしまっていてね……―――そこでだ。君達に聞きたいんだが。いまだ戦の”焔”が燃え広がり、混迷を極めるこの帝国の地で―――君達”Ⅶ組”や、士官学院はこれからどうするつもりだい?」

「あ……」

「まさにその話をしている最中でしたが……」

「…………それは…………」

オリヴァルト皇子の問いかけに対し、リィン達は互いの顔を見合わせ、答えに詰まったがやがてリィンが代表して答えた。





「―――この内戦は、帝国全体の問題……当然、学生の身である自分達に解決することなど叶いません。でも……俺達は実習を通じてこの国のままならない”現状”に何度もぶつかってきました。そんな俺達―――”Ⅶ組”なら。”現状”を少しでも良くする手伝いができるのではないか……そんな風に思えて来ました。」

「リィン君……」

「ふむ……」

「……………………」

リィンの言葉にトワは明るい表情をし、アルゼイド子爵とオリヴァルト皇子はリィンの目をジッと見つめた。



「クロウと決着をつけることも含めて……自分達にはそれぞれ、集まった”理由”があります。それらを成し遂げるためにも―――この”現状”を良くしていきたい。たとえ内戦の状況がどんなに厳しくなったとしても……今、自分達に手伝えることは最大限の努力をもって成し遂げたい。それが自分の―――自分達”Ⅶ組”の総意です。」

「うん……そうだね!」

「私達も同じ気持ちです。」

「それぞれ身分や立場の違いはありますけど……」

「いや、だからこそ僕達にしかできないことがあるはずだ。」

「何より、この帝国に存在する”大切なもの”を護るためにも。」

「そして、この内戦に自分なりの”答え”を見出すためにもな。」

「うん、己の道を信じて進んでゆくのみだろう。」

「わたくし達はずっとそうでしたし、これからも変わりませんわ。」

「ま、結構大変っぽいけど。」

「ボクたちみんな揃ってれば怖いモノなんてないよね!」

「アンタたち……」

「皆さん……」

「ふふ、それでこそⅦ組の皆様ですわ♪」

Ⅶ組の決意を知ったサラ教官とアルフィン皇女は驚き、シャロンは微笑んだ。



「―――”Ⅶ組”だけでなくわたしたちも同じです。何と言ってもトールズの士官学院生の座右の銘は……”世の礎たれ”ですから。」

「あ。」

「入学式の時の……」

「獅子心皇帝の言葉か。」

「フフ、考えてみればそうであったな。」

「はは、君達が凄いのは自分達でその結論に辿り着いたことだと思うよ?」

「うん、誇っていいと思う。―――そして現在、かなりの数の学院生が帝国各地並びにメンフィル帝国領内に散っていますが………気持ちは皆、同じだと思います。」

リィンに微笑んだトワはオリヴァルト皇子を見つめた。



「そうか―――……殿下。」

「ああ、まさかここまでの答えが聞けるとは思わなかった。これで決まりだろう。」

「御意。ならば―――そなたたちにこの艦を預けよう。”紅き翼”―――飛行巡洋艦”カレイジャス”を。」

アルゼイド子爵の口から出た予想外の言葉にその場にいる多くの者達は驚いた。



「え……」

「――――ええええええっ!?」

「か、艦を預けるとは……?」

「フフ、そのままの意味だ。カレイジャスの運用は今後、そなたたちに一任する。”現状”を良くするためには足掛かりは必要であろう?」

「そ、それは確かにそうですが……」

「学生のわたくしたちには不相応だと思うのですが……」

アルゼイド子爵の指摘を聞いたラウラは戸惑い、セレーネは不安そうな表情をした。



「で、ですが……子爵閣下や殿下達はどうされるのですか?」

「我々は艦を降りた上で帝国西部へ向かうつもりさ。その上で、第七機甲師団や他の中立勢力と連携して活動しつつ、メンフィルと何とか交渉をしようと思っている。これ以上、罪なき民草を戦火に巻き込まない為……そして内戦に巻き込んだメンフィル帝国に対する”罪”を償っていくためにもね。」

「それを遂行するにあたってこの艦はいささか目立つのでな。そなたたちに預けた上で―――帝国東部を任せたいのだよ。」

「あ…………」

「………………」

「……なるほど。この上なく合理的ですね。」

「これで東部と西部の双方に”第三の風”を吹かせられる………」

「ハハ、なんつーかギルド顔負けの発想ですね。」

オリヴァルト皇子とアルゼイド子爵の話を聞いたリィン達が黙り込んでいる中、クレア大尉は頷き、サラ教官は静かな笑みを浮かべ、トヴァルは苦笑した。



「フッ、君も含めて葡陶を受けているからね。――そして、アルフィン。」

「は、はいっ!」

「できたら君にはこの艦に残ってもらいたい。”カレイジャス”の所有者は父上であり、アルノール皇家。皇族の後ろ盾があれば彼らも動いやすいだろうからね。」

「あ…………」

オリヴァルト皇子の話を聞いたアルフィン皇女は考え込んだ後やがて微笑みを浮かべた。



「ふふっ……わかりましたわ。今後、皆さんの活動の正当性はわたくしが保証してみせます。エレボニア帝国皇女―――アルフィン・ライゼ・アルノールの名にかけて……!」

「殿下……」

「はわわっ……」

「……勿体ないお言葉。」

「フッ、これはもう肚を括るしかあるまい。」

「ああ……そうだな。」

そしてリィン達は互いの顔を見合わせて頷いた後トワが代表して言った。



「飛行巡洋艦”カレイジャス”―――謹んでお預かりします……!」

「帝国東部のこと……自分達にお任せ下さい!」

「ああ―――よろしく頼む。」

「フッ、期待させてもらうよ。」

トワとリィンの言葉にアルゼイド子爵とオリヴァルト皇子が頷いたその時

「うふふ、”そっち”のお話は纏まった事だし、次はレン達のお話を聞いてもらうわよ?」

何とレンがシグルーンと共に会議室に入って来た! 
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