英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第66話
~シュバルツァー男爵邸~
「ええっ!?メンフィル帝国は本当にエリスお姉様が監禁されている場所を見つけた上エリスお姉様が無事な様子を確認したのですか!?」
シュバルツァー男爵の話を聞いたセレーネは驚きの表情で尋ね
「ああ。―――帝都ヘイムダル近郊にある”カレル離宮”。そこにエリスやユーゲント皇帝陛下達――――エレボニア皇族の方々に加え、貴族連合によって逮捕されたレーグニッツ知事閣下も監禁されているらしい。」
「父さんもですか!?」
「”カレル離宮”ですか……確かに貴賓クラスの方々を幽閉するには最適の場所ですね。」
シュバルツァー男爵の説明を聞いたマキアスは驚き、クレア大尉は真剣な表情で考え込んだ。
「それにしてもメンフィル帝国はどのような方法でエリス様達の様子を確認したのでしょう?」
「その事なんだが……エフラム皇子殿下達の話によるとメンフィル帝国が雇っている”銀”と言う諜報に長けた人物がカレル離宮に潜入してエリス達の無事な様子を確かめて来たらしい。」
「”銀”ですって!?」
「……驚いた。メンフィルは”銀”まで手駒にしているんだ。」
「ほえっ!?確か”銀”って”黒月”に雇われていなかったっけ!?」
シャロンの疑問に答えたシュバルツァー男爵の答えを聞いたサラ教官は厳しい表情をし、フィーは目を丸くし、ミリアムは不思議そうな表情でクレア大尉に視線を向け
「いえ……例の”通商会議”の件で”黒月”が”クリムゾン商会”と共にクロスベルから追放された後、”ラギール商会”に鞍替えした可能性があるという情報が入っています。まさか本当に”ラギール商会”―――メンフィルに鞍替えしていたとは…………」
「なるほどな……東方の伝説の暗殺者なら、警備が厳重な帝都付近にあるカレル離宮の潜入すらもお手のものだろうな。」
クレア大尉の説明を聞いて頷いたトヴァルは真剣な表情をした。
「あ、あの教官。その”銀”っていうのは何なのですか……?」
「暗殺者……と言っていたが……」
その時ある事が気になっていたエリオットは不安そうな表情で尋ね、ガイウスは真剣な表情でサラ教官を見つめ
「……”銀”っていうのはね――――」
サラ教官はⅦ組の面々に東方に伝わる伝説の暗殺者――――”銀”という人物の事について説明した。
「カ、カルバード共和国に伝わる伝説の暗殺者!?」
「まさかカルバードにそのような存在がいるとは……」
「そしてそのような存在までメンフィルは手駒にしていると言う訳か……」
説明を聞き終えたアリサは驚き、ラウラは真剣な表情をし、ユーシスは厳しい表情で考え込んだ。
「………それと殿下達も仰っていましたが、”パンダグリュエル”にいる整備員や領邦軍の兵士、そして操縦士の中にメンフィル兵達が紛れ込んでいるとの事です。」
その時ルシア夫人は複雑そうな表情でとんでもない事を言った。
「なんですって!?」
「何だと!?」
「あ、あの戦艦の中にメンフィル兵が……」
ルシア夫人の説明を聞いたサラ教官とユーシスは驚きの表情で声を上げ、マキアスは信じられない表情をし
「――なるほど。だからこそ貴族連合の動きが最初からわかっていた為、絶妙なタイミングでリウイ陛下達が現れたのですね。」
「い、言われてみれば陛下達が現れたタイミングがまるで狙いすましたかのような絶妙なタイミングでしたよね……?」
「つまりは”リィンが連れて行かれる事も計算に入れて”あのタイミングで現れたって訳ね……」
「お兄様……」
シャロンは納得した様子で頷き、エマは不安そうな表情をし、セリーヌは目を細め、セレーネは心配そうな表情をした。
「……そうなると。メンフィルはリィンさんとエリスさん……どちらの居場所も掴んでいる事になりますから、いつでもお二人の”救出作戦”を同時に行えるという事にもなりますね……」
「あ…………」
「……ユミルに現れたあの戦艦を使えば幾ら貴族連合の旗艦とはいえ、制圧されるだろうね~。」
「しかも内部にもメンフィル兵達が潜んでいるから、内部からも混乱を起こせる上リィンの脱出の手助けもできるな……」
クレア大尉の推測を聞いたアリサは呆けた声を出し、ミリアムとトヴァルはそれぞれ推測した。
「し、しかしカレル離宮は幾ら何でも難しいんじゃないのか?」
「帝都近郊にある事もそうだが、陛下達を幽閉しているのだから間違いなく警備は厳重だろうな。」
その時マキアスは不安そうな表情で呟き、ラウラは真剣な表情で推測したが
「………………その事なのだが……殿下達の話ではメンフィル軍が帝都を襲撃し、そちらに貴族連合軍を惹きつけ、手薄になった隙に別働隊がカレル離宮を奇襲してエリスを奪還する作戦だそうだ。」
「なっ!?」
「ヘイムダルを襲撃するだと!?」
重々しい様子を纏うシュバルツァー男爵の説明を聞き、ユーシスと共に厳しい表情で声を上げた。
「…………今の状況を考えると普通なら”不可能”と思われますが、ユミルに現れたあの戦艦を使えば可能になるのでしょうね……幾ら貴族連合といえど、あのクラスの戦艦は”パンダグリュエル”しか所有していないはずです。」
「ええ……ちなみにあの時現れた紅き戦艦――――”紅の方舟グロリアス”は元々”結社”が所有していた戦艦だったのですが……リベールの”異変”の際、メンフィル帝国に強奪されたのです。私が知る限り、”グロリアス”には一国の軍隊を圧倒できる武装が施されてあります。正直、”グロリアス”だけでも貴族連合軍と互角以上に渡り合えると思いますわ。」
「戦艦一隻でい、一国の軍隊を圧倒するだって!?」
「メンフィル帝国に強奪されたと言う事はメンフィル帝国の技術によって色々追加されている可能性もあるわよね……?」
「そ、そんな……帝都が襲撃されるなんて……もし姉さんがそれに巻き込まれたら…………」
「ひょっとしたら、ユミル襲撃に対する”報復”のつもりかもしれないわね……」
クレア大尉とシャロンは重々しい様子を纏って呟き、マキアスは信じられない表情で声を上げ、アリサとエリオットは不安そうな表情をし、サラ教官は厳しい表情で呟き
「………………」
「ユーシスさん……」
辛そうな表情で身体を震わせているユーシスに気付いたエマは心配そうな表情をした。
「あ、あの。エリスお姉様が監禁されている場所の事を聞いてから気になっていたのですがメンフィル帝国は、もしかしてエリスお姉様”しか”救出しないのですか?」
「?どういう意味よ?」
「あ…………ま、まさか父さんやエレボニア皇族の方達を助けるつもりはないって事ですか!?」
セレーネの質問を聞いたセリーヌは不思議そうな表情をし、ある事に気付いたマキアスは驚きの表情でシュバルツァー男爵達に尋ねた。
「…………はい。ちなみにカレル離宮への奇襲はリフィア殿下やエリゼが率いる親衛隊が襲撃し、カレル離宮を守護する兵士達を”皆殺し”にしながらエリス”のみ”を救出するそうです。」
「……私もユーゲント皇帝陛下達も救出して欲しいと嘆願したのだがエフラム皇子殿下達より”メンフィル帝国に対して敵対行動を何度も取ったエレボニア帝国の皇族達や民を救出する義理はない”という理由で断られた。」
「そ、そんな……ついでに父さん達も救出してくれてもいいのに……!」
「ケチだね。」
男爵夫妻の話を聞いたマキアスは悔しそうな表情をし、フィーはジト目で呟き
「……混乱のどさくさに紛れて皇族の方達やレーグニッツ知事を救出するってのは無理よね?」
「はい……救出作戦がいつ行われるかわからない事に加えて、正規軍はそれぞれ帝都から離れた位置に陣取っていますし、強力な飛行戦力を保有しているメンフィルと違い、数機の軍用飛行艇のみしか所有していない正規軍ではまず帝都に辿り着く事自体が不可能です……」
サラ教官に視線を向けられたクレア大尉は暗い表情で答え
「……確かにメンフィルの言っている事は正論だが、幾ら何でも帝都を襲撃した上、離宮を護る兵達を皆殺しにするのは間違っているぞ……!」
ラウラは厳しい表情で呟いた。
「――――フン、メンフィル帝国は大使館を通じてエリス返還を含めたメンフィルの要求を呑まなければエレボニア帝国にメンフィル帝国軍が侵攻すると”警告”もしている。それ以前に二度に渡りメンフィル帝国領であるユミルを襲撃した卑劣な国如きが我々を責める権利はない。」
その時不愉快そうな表情をしているヒーニアスが部屋に入って来た。
「あ―――――ッ!嫌味な……ムググ……ッ!」
(口を慎んでください、ミリアムちゃん!)
ヒーニアスの登場に仲間達と共に驚いたミリアムは声を上げたがクレア大尉に口を抑えられて呻いた。
「ヒーニアス殿下。何か御用でしょうか?」
「ああ。貴様ら――――トールズ士官学院特科クラス”Ⅶ組”の”迎え”が来ているから伝えに来てやった。ありがたく思え。」
シュバルツァー男爵に尋ねられたヒーニアスはアリサ達を見回して答え
「え…………」
「ぼ、僕達の”迎え”……?」
ヒーニアスの説明の意味がわからなかったアリサは呆け、エリオットは不思議そうな表情をした。
「―――”カレイジャス”が現在ユミル領空にいる。先程通信をした所エレボニア帝国皇子オリヴァルト・ライゼ・アルノールが出て、お前達”Ⅶ組”を迎えに来たと言っている。」
「へっ!?」
「オリヴァルト殿下が……!」
「と言う事は父上も……!」
ヒーニアスの答えを聞いたマキアスは驚き、ガイウスは目を見開き、ラウラは明るい表情をした。
「竜騎士達に貴様らを”カレイジャス”の甲板まで送るように指示をしておいた。荷物を纏めてとっとと外に出ろ。」
そしてヒーニアスはアリサ達を見回して指示をした。
その後竜騎士達にカレイジャスの甲板まで送ってもらったアリサ達はオリヴァルト皇子達と再会し、情報交換を始めた。
翌日、パンダグリュエルの客室にいるリィンは外の景色を見つめて考え込んでいた。
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