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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第53話

12月12日――――





~ユミル・転移魔法陣の間~



翌朝、朝食を食べたリィン達はセントアークに向かうエステル達を見送ろうとしていた。

「男爵さん、短い間でしたがお世話になりました!」

「突然の来訪をしておきながら、鳳翼館の部屋まで手配して頂き、本当にありがとうございました。」

「フフ、”特別実習”の時に息子達の窮地を救ってくれた上レグラムの時も息子達を支えてくれたのだから、私としてはむしろ足りないくらいだ。」

エステルとヨシュアにお礼を言われたシュバルツァー男爵は苦笑し

「もしユミルにまた寄る事があれば、ユミル自慢の温泉をゆっくりと堪能してください。―――もちろんエイドスさんも機会があれば、是非ユミルに寄って下さい。」

ルシア夫人は微笑んだ後エイドスに視線を向けた。



「ご丁寧にありがとうございます。私も自分の用事が終わった後、夫の許に帰る前に両親達と一緒に家族旅行をしようと思っていますので、その時に是非よらせて頂きますね♪」

ルシア夫人の言葉を聞いたエイドスが微笑むとリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「な、なにそれ!?あたし達も初耳よ!?」

「お願いしますから、少しは自重してください……」

エステルは驚きの表情でエイドスに指摘し、ヨシュアは疲れた表情で指摘した。



「め、女神様がか、家族旅行って…………」

「自由過ぎんだろ……」

「呆れを通り越して、もはや感心に値するぞ。」

「”こんなの”がゼムリア大陸の人々が遥か昔から崇め続けていた”空の女神”だなんて、今でも信じられないわ……」

「七耀教会が知ったら、間違いなく全員頭を抱えるでしょうね。」

「そりゃ、”女神”とは思えない程自由気ままな性格だもんね~。」

「ま、まあまあ。性格は人それぞれと言いますし。」

「ア、アハハ……」

「お願いしますから、これ以上私達の”空の女神”のイメージを壊さないで下さい~!」

「うふふ、お嬢様?エイドス様は”空の女神”ではなく”ただの新妻”ですわよ?」

一方エリオットは表情を引き攣らせて呟き、疲れた表情で呟いたトヴァルとユーシス、サラ教官とセリーヌ、興味ありげな表情でエイドスを見つめるミリアムの言葉と仲間達を諌めるセレーネの意見を聞いたエマは苦笑し、疲れた表情で声を上げたアリサにシャロンは微笑みながら指摘した。



「……というか、”空の女神”に両親がいる事自体がビックリ。」

「た、確かに言われてみれば……」

「エイドスさんの両親……一体どのような人達なのだろうか?」

「フフッ、機会があれば我らも是非お会いしたいな。」

「七耀教会が知ったら、間違いなく七耀教会が”空の女神”と共に崇める事になる存在なのでしょうね……」

「た、確かその可能性はありそうですね……」

フィーの言葉を聞いたマキアスは冷や汗をかき、ガイウスは考え込み、ラウラは静かな笑みを浮かべ、疲れた表情をしたクレア大尉の言葉を聞いたリィンは冷や汗をかきながら頷いた。



「フウ………―――皆さん?先程から私の事を”空の女神”と呼ばれる”女神”のように扱っていますが、私は名前が同じだけの”ただの新妻”です。い・い・で・す・ね~~~~~~~?」

その時溜息を吐いたエイドスは膨大な威圧を纏って微笑みながらリィン達を見回し

「は、はいっ!!」

エイドスの微笑みに圧され、”目の前の女性に決して逆らってはいけない”と本能で感じたリィン達は反射的に姿勢を正して返事をした。



「ハア……目的を果たした後に”七耀教会”でしたか?そこにも文句を言う必要があるかもしれませんね。後もし私の気に入らない規則があったら、それも変えさせないといけませんね。」

「ちょっ、エイドス!?」

「貴女がそんな事をしたら七耀教会に大混乱が起こりますので、お願いしますから止めて下さい……」

溜息を吐いた後ジト目になって呟いたエイドスの言葉を聞いたエステルは慌て、ヨシュアは疲れた表情で指摘し、リィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「え、えーと、エイドスの言っている事は気にしないでね?”ただの戯言”だから。」

「ハ、ハア………」

(とてもそんな風には見えないわよね?)

(むしろ本気のように感じたぞ。)

エステルの言葉にリィンは苦笑しながら答え、アリサは疲れた表情をし、ユーシスは呆れた表情でエイドスを見つめた。



「ハア……―――で?あんた達はしばらくセントアークで活動するのかしら?」

その時溜息を吐いた後気を取り直したサラ教官はエステル達に尋ねた。

「ううん、本部からの応援が到着したらロイド君達――――”特務支援課”のみんなの力になる為に、クロスベル解放を手伝うつもりよ。」

サラ教官の質問に答えたエステルの話を聞いたリィン達は血相を変えた。



「エステルさん達がロイドさん達―――”特務支援課”を……!?」

「クロスベルの”解放”と言っていたが、それは一体……」

リィンとラウラは驚きの表情でエステル達を見つめ

「えっと……確かトヴァルさんの話では”特務支援課”の人達はクロスベルの国防軍に拘束されたそうですけど……」

「……まさか、監禁状態から脱出したメンバーがいるのか?」

エリオットは戸惑いの表情をし、トヴァルは驚きの表情で尋ねた。



「ええ、”特務支援課”のリーダー―――ロイドが警察の拘置所からの脱出を成功させ、他の場所に監禁されている仲間やはぐれた仲間達との合流の為にクロスベル中を動き廻っているそうです。――――”Ⅶ組”のように。」

「あ……………」

「……なるほどね。それに”闘神の息子”あたりなら、自力で脱出してそう。」

ヨシュアの話を聞いたリィンは呆け、フィーは静かに呟いた。



「し、しかし先程エステルさん達はクロスベルの”解放”を手伝うって言っていましたが、それは一体どういう意味なんですか?」

「ギルドからの情報なんだけどクロスベルの市民達もディーター大統領のやり方に不満を持っているらしくてね。クロスベル警察も国防軍にこき使われまくっている立場である事や、市民達同様ディーター大統領のやり方に相当頭に来ていて、反撃の機会を窺っているそうよ。」

マキアスの疑問にエステルは答え

「――更に失踪した”六銃士”達もクロスベル全土に散って、反撃の機会を窺っているんだ。ちなみにセリカさん達は今、ロイド達と合流して彼らに力を貸しているんだ。」

「ええっ!?セ、セリカ殿達までですか!?」

「ほえええ~っ!?何その超戦力過剰なメンバー!?」

ヨシュアの説明を聞いたリィンとミリアムは驚いて声を上げた。



「……あの。先程クロスベル中を廻っていると仰っていましたが、特務支援課の方々は一体どうやってクロスベル中を廻っているのですか?彼らの敵勢力――――”国防軍”の目を掻い潜ってクロスベル中を廻りながら仲間達との合流をする事は、至難の技かと思うのですが。」

その時クレア大尉は真剣な表情で尋ねた。

「え、え~と……それについてはどう言えばいいかな……」

「―――”七耀教会”がロイド達に手を貸していると言えば、聡明なクレア大尉ならお分かりになるかと。」

「七耀教会が…………?」

「!!」

(七耀教会と言う事は”星杯騎士団”ね……それも星杯騎士団の移動手段と言えば”天の(メルカバ)”しか思い当たらないから、恐らく”守護騎士(ドミニオン)”が力を貸しているのでしょうね。)

(なるほど……”あの方達”ですか。しかしクロスベルはエラルダ大司教が”あの方達”の介入を固く禁じておられるはずですが…………)

「あー、”あの人達”か~。」

エステルが答えを濁している中、ヨシュアが代わりに答えるとガイウスは不思議そうな表情をし、心当たりがあるクレア大尉は顔色を変え、セリーヌは目を細め、シャロンは静かな表情で考え込み、ミリアムは呟き

(移動手段があるって事は恐らく”メルカバ”を所持している”守護騎士”が力を貸しているようだな……)

(ええ……以前、エオリアが星杯騎士の連中達と行動しているって言ってたけどまさか”守護騎士”クラスと行動していたとはね……)

トヴァルとサラ教官はそれぞれ小声で会話していた。



「え、えっと……?」

「その様子だとクレア大尉達には何か心当たりがあるようですね?」

一方クレア大尉達の様子が変わった事にアリサは戸惑い、リィンは真剣な表情で尋ねた。

「ええ……ですが―――」

「―――やめときなさい。この内戦に”連中”は関わってこないと思うから興味本意で知ってはいけないわ。」

「セ、セリーヌ……?何か知っているの?」

クレア大尉が答えかけたその時、セリーヌが制止の声を上げ、セリーヌの様子を見たエマは戸惑いの表情で尋ねた。



「……まあね。”光”と”闇”は対になっている存在で決してどちらかが欠ける事はない。―――七耀教会もそれと同じって事よ。」

「そ、それって………」

「”光”と”闇”――――つまり、七耀教会の”闇”の部分か……」

「もしかしたら、七耀教会に裏組織のような存在があるのかもしれませんね。」

セリーヌの説明を聞いて何かを察したエリオットは不安そうな表情をし、ラウラとセレーネは真剣な表情で考え込み

「……正直七耀教会にそのような部分がある事には驚いたが……――――その事について”貴女自身”はどう思っているのです?」

シュバルツァー男爵は重々しい様子を纏って呟いた後真剣な表情でエイドスを見つめて尋ねた。



「別に興味はないですね。だって”今の所”私は七耀教会とは無関係の”ただの新妻”なのですし♪」

しかし重苦しい空気を粉々に壊すかのような脱力する発言を笑顔を浮かべて口にしたエイドスの答えを聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力し

「きょ、興味はないって……」

「し、しかも七耀教会とは無関係って……」

(ケビンさん達がさっきのエイドスの言葉を聞いたら卒倒するかもしれないわね。)

(ハ、ハハ……)

「ア、アンタね……!いつまでそのふざけた態度を取り続けるつもりよ……!?」

リィンとアリサは表情を引き攣らせて呟き、ジト目のエステルの小声を聞いたヨシュアは苦笑し、セリーヌは顔に無数の青筋をたてて口元をピクピクさせながら指摘した。

「……エイドスさんもエステルさん達と共にクロスベル解放を手伝うのか?」

その時ある事が気になっていたガイウスは尋ねた。

「ええ。クロスベルにて”私の戦い”が待ち受けているのですから、エステルさん達と共にその”戦い”に挑むつもりです。」

「ええっ!?め、女神様……じゃなくてエイドスさんがクロスベルの解放を手伝うのですか!?」

「うわ~……超反則の最強助っ人じゃん。」

「それだけクロスベルでは尋常ではない事が起こっていると言う事でしょうね……」

エイドスの答えを聞いたエリオットは驚き、ミリアムは表情を引き攣らせ、クレア大尉は真剣な表情で呟いた。



「―――リィンさん、でしたか。一つ聞きたい事があるのですが。」

するとその時ある事を思い出したエイドスがリィンを見つめた。



「俺に?何でしょうか。」

「貴方はその身に眠る”力”を自覚していますか?」

「!!……………はい。」

「リ、リィンに眠っている”力”って……」

「”あの力”か……」

エイドスの指摘を聞いたリィンは驚いた後重々しい様子を纏って頷き、エリオットは不安そうな表情をし、ガイウスは重々しい様子を纏って呟き

「リィン………」

「…………もしや貴女はリィンの身に眠る”力”の正体を知っておられるのですか?」

ルシア夫人は心配そうな表情でリィンを見つめ、シュバルツァー男爵は真剣な表情で尋ねた。



「あ…………」

「た、確かにエイドスさんなら知っていてもおかしくないかも……!」

「というか確実に知っているでしょうね。」

「……そう言えばマクバーン様もリィン様の事について何か知っているような口ぶりでしたが……」

「確か……”混じって”いるとか言っていたな。」

シュバルツァー男爵の指摘を聞いたリィンは呆け、アリサは血相を変え、セリーヌは真剣な表情でエイドスを見つめ、シャロンとユーシスは真剣な表情で呟いた。



「ええ……―――ですが実際に刃を交えてわかりましたが、あの人は”極一部”しか”混じって”いないリィンさんと違い、恐らくは”全部”混ざっているのでしょうね……―――”魔の因子”が。」

「”魔の因子”…………」

「何それ。アタシも聞いた事がないわよ。」

「”魔”と言う事は”魔人”に関係しているものですか?」

エイドスの説明を聞いたリィンは呆け、セリーヌは不思議そうな表情をし、ヨシュアは真剣な表情で尋ねた。



「ヨシュアさん。確かお母様の話ではヨシュアさんは”影の国”のお父様達の試練の時に、魔人化したファクト家の者と剣を交えたとお聞きしましたが。」

「ええっ!?”影の国”の時の”試練”!?」

「”影の国”のアドルさん達の試練で僕が…………――――!”彼”ですか…………と言う事は”彼”のような”力”がリィンに…………」

エイドスの問いかけにエステルが驚いている中すぐに察しがついたヨシュアは真剣な表情でリィンを見つめ

「!!あ、あの!その”魔の因子”というのは何なのですか!?」

リィンは血相を変えてエイドスを見つめて尋ねた。



「―――生きとし生ける者達全てには”闇”が潜んでいます。”魔の因子”はその”闇”が具現化したようなもの。普通の人でしたら”魔”に属する者達による”誘い”に乗らない限り、具現化する事はないのですが……―――極稀に生まれながら”魔の因子”が最初からある人がいるんです。」

「………………」

「お兄様……」

「……ちなみにその”魔の因子”にはどんな力があるんですか?」

エイドスの説明を聞いて胸を抑えているリィンを見たセレーネは心配そうな表情をし、エマは真剣な表情で尋ねた。



「解かりやすく言えば”異能”、ですね。私と戦ったマクバーン、でしたか?彼のようにアーツや”聖痕(スティグマ)”による力でもないのに、焔を出せる事もそうですが、一番代表的な”力”はやはり”魔人化(デモナイズ)”ですね。」

「デ、”魔人化(デモナイズ)”!?」

(おい、それって例の”教団”の……!)

(ええ……”殲滅天使”と特務支援課のあの子が持つ”異能”ね……)

エイドスの言葉に心当たりがあるエステルは驚き、トヴァルとサラ教官は厳しい表情をし、小声で会話していた。



「その……”魔人化”してしまったら、一体どうなってしまうんですか……?例えば”獣”じみた何かに呑み込まれ、”変化”させるんですか……?呑み込まれない方法はないのでしょうか……?」

「リィン…………」

「…………………」

辛そうな表情でエイドスに問いかけるリィンを見たルシア夫人は辛そうな表情をし、シュバルツァー男爵は真剣な表情で黙り込んでいた。



「……………―――申し訳ありませんが、”呑み込まれない”方法はリィンさん、”貴方自身が気付かなければならない”のでこれ以上は教えられ……――いえ、教えては”達する事ができない”のです。」

「俺自身が……………」

「”達する事ができない”……」

「意味不明なんですけど……」

エイドスの答えを聞いたリィンは呆け、ラウラは考え込み、エステルは疲れた表情で指摘した。

「……―――ありがとうございます。自分の事が少し理解できた気分です。」

「私からも礼を言わせて頂く。リィンもずっとその事に悩んでいたからな。」

「本当にありがとうございます…………」

リィンに続くようにシュバルツァー男爵とルシア夫人もエイドスに感謝し

「フフ、一晩泊めて頂いた”お礼”ですよ。貴方達に”イース”の加護を。」

エイドスは微笑みながら答えた後リィン達を見つめて祈り

(”イース”も”魔の因子”同様初めて聞く言葉ね。)

(一体何を意味しているのかしら……?)

エイドスの言葉が気になったセリーヌとエマは小声で会話していた。



「あ、別れる前に渡しておきたいものがありますので、エマさんとラウラさんはちょっと前に出てもらえますか?」

「フム?」

「え?は、はい。」

エイドスに突如名指しされたラウラとエマは戸惑いながら前に出るとエイドスが二人に近づいた後まずエマの両手を握った。するとエイドスの両手から放たれた白き光がエマの両手を伝ってエマの身体の中に入って行った!



すると”空の女神(エイドス)”が習得しているある強力な魔法(アーツ)の”知識”や”術式”等をその身に受け取ったエマは”空の女神”直伝の強力な魔法(アーツ)を習得した! 
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