英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第50話
~ユミル・シュバルツァー男爵邸~
「お帰りなさい、リィン。どうやら無事に皆さんと再会できたみたいですね?」
「はい……!」
「ふう、かなり大変な道中でしたけど。」
「フフ、今回もいい導きがあったようだ。」
「……そうだな。」
「とにかく、そなたたちのおかげでここまで辿り着く事が出来た。改めて礼を言わせてもらうぞ。」
「ふふ、セリーヌにも感謝しないといけないわね。」
「はいはい、どういたしまして。」
仲間達の再会を喜ぶⅦ組のメンバーはレグラムにいたメンバーに次々と声をかけた。
「おかえり、3人共。」
「ひと悶着あったようだが……君もまあ、戻ってきて何よりだ。”憎まれっ子世にはばかり”というし、無事だったのもうなずける。」
「フッ、お前の方こそ。あっさりと領邦軍あたりに捕まったと思ったが、悪運だけは強いらしいな。」
「な、なにおう!?」
マキアスとユーシスはかつてのように互いに睨み合い、口喧嘩を始めた。
「あはは、それじゃあ――――!」
その時ミリアムが勢いよくユーシスに抱き付いたがユーシスは身体を横に背けてミリアムを避けた。
「あ。」
「え、えっと……」
「避けちゃいましたね……」
それを見たエステルは目を丸くし、ヨシュアとエイドスは苦笑し
「な、なんでよけるのさー!?」
ミリアムは不満げな表情で声を上げた。
「抱きつこうとするからだ。暑苦しい。」
「ぶー、照れ屋なんだから。」
ユーシスの答えを聞いたミリアムは頬を膨らませた。
「しかしまさかサラも戻ってくるとはな。ま、お前のことだから絶対に無事だと思ったが。」
「はいはい、そりゃどうも。」
「エステル達も一緒に戻ってきたのは驚いたが……もしかしてリィン達に協力してくれるのか?」
「ううん、あたし達は今晩だけ泊まってユミルにある転移魔法陣からセントアークに向かう事になっているから、リィン君達に協力するのは無理なの。」
「ギルドからの応援要請なんです。力になれなくてすみません。」
トヴァルに視線を向けられたエステルとヨシュアは申し訳なさそうな表情で謝罪し
「そうか……なら仕方ねぇな。」
トヴァルは残念そうな表情で呟いた。
「そう言えば先程から気になっていたのですが……そちらの女性はどなたですか?」
「え、え~と……」
「フム……何と言えばいいか答えに困るな。」
「ア、アハハ……そちらの方の事を知れば誰もが答えに困りますよ。」
クレア大尉がエイドスに視線を向けるとアリサとラウラは困った表情をし、エマは苦笑し
「……あたしもまだ何が何だかサッパリわかんないのよ。あんた達、一体どこでその自称”ただの新妻”とか言っている訳のわかんない女―――”エイドス”と知り合ったのよ?」
サラ教官は疲れた表情で答えた後リィン達に尋ねた。するとその瞬間空気は凍った!
「え、えっと……?」
「き、きききき、教官!い、いいいいいい、今ありえない人物の名前で呼びませんでしたか!?」
「”エイドス”、って言ってたね、サラ。まさか本物の”空の女神”?」
「オイオイオイ……ッ!?一体何がどうなっていやがるんだ!?」
「え~と…………一応確認しておきたいのですが、貴女はゼムリア大陸の方々が崇める女神――――”空の女神”なのでしょうか?」
そして我に返ったエリオットは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、マキアスは混乱し、フィーは目を丸くし、トヴァルは信じられない表情で声を上げ、セレーネは冷や汗をかいて苦笑しながらエイドスを見つめた。
「違います♪私の名前はエイドス・クリスティン。”空の女神”と名前が同じなだけの24歳の”ただの新妻”です♪」
エイドスが笑顔で自己紹介をするとその場にいる全員は大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「ほええええええっ!?”空の女神”って結婚してたの!?」
「ミ、ミリアムちゃん……気にする場所が間違っていますよ……いえ、確かに”空の女神”が結婚している話も気にはなりますが……」
目を丸くして驚いているミリアムの指摘を聞いたクレア大尉は呆れた後混乱した様子で小声でブツブツ呟き始めた。
「あ、ああああああ、あのっ!本当に貴女はめ、めめめめめ、女神様なのですか!?」
「ふ、ふふふふふふ、普通に考えて、”空の女神”が僕達の目の前にいるなんてあ、ああああ、ありえなくないかっ!?」
「そうかな?実際フェミリンスやアイドスとか本物の”女神”にも出会っているんだから、”空の女神”がわたし達の目の前にいてもおかしくないと思うけど。」
「フィ、フィーさん……フィーさんはよく冷静でいられますよね……?」
エリオットとマキアスは混乱した様子でエイドスを見つめ、フィーの指摘を聞いたセレーネは冷や汗をかいた。
「た・だ・の・に・い・づ・ま・だ・と・な・ん・ど・言・え・ば・わ・か・る・ん・ですか~~~~~?」
「ヒッ!?ご、ごごごご、ごめんなさい、ごめんなさい!」
「す、すすすすすす、すみません、すみませんでした!どうか、どうかお許しを!」
そしてエイドスが膨大な威圧を纏って微笑むとエリオットは悲鳴を上げてマキアスと共に反射的にペコペコと何度も頭を下げて謝り
「わかればいいんです、わかれば。皆さんも私が”ただの新妻”だと言う事がわかりましたね?」
「は、はいっ!」
エイドスが微笑みを浮かべてエリオット達を見回すとエリオット達は姿勢を正して答え
(な、何なんだよ、あの滅茶苦茶な性格は!?あんなのが俺達が崇めて来た”空の女神”だなんて、あ、ありえねえ…………まあ、アインだったら動じず、逆に大声で笑った後、飲み屋に誘うかもしれねぇが……)
トヴァルは疲れた表情で溜息を吐き
(脅迫して無理矢理わからせる人のどこが”ただの新妻”よ。)
(本人に聞こえるからやめなって、エステル……)
ジト目でエイドスを見つめるエステルの小声を聞いたヨシュアは疲れた表情で指摘した。
「フフ、随分と賑やかになったものだな。」
その時気を取り直したシュバルツァー男爵は微笑ましそうにリィン達を見回した。
「はは……本当に。父さんもだいぶ動けるようになったみたいですね?」
「ああ、まだ万全ではないが……トヴァル君やクレア大尉が郷の護りや、各方面の連絡を引き受けてくれていたからな。おかげで私も療養に専念できている。」
「はは、別に大した事じゃ。」
「とにかく、回復されて何よりでした。」
「皆さんには本当に、何とお礼を言っていいのか……リィン、あなたもよく頑張りましたね。ここまで、さぞ大変な道のりだった事でしょう。」
「ええ、みんながいてくれたからここまでこれたんだと思います。」
ルシア夫人の言葉を聞いたリィンは静かな笑みを浮かべて頷いた。
「ふふ、さて……客人をこんな玄関先に留めておくわけにもいかん。”鳳翼館”の部屋を用意したから今日はそちらで休むといい。」
「”鳳翼館”…………」
「以前、小旅行の折に滞在させて頂いた宿ですか。ああ、諸君もここ数日で相当疲れが溜まっているはずだ。」
「ふふ、露天風呂のほうも修繕が終わったそうですし。今夜はしっかりと滋養を取って身も心も休めるといいでしょう。」
―――こうしてリィン達は、ここ数日の疲れを癒すため”鳳翼館”に向かった。支配人の厚意もあってほぼ貸切状態で夕食や温泉などを堪能してから……明日の午後―――”今後どうするか”を皆で話し合うことを決めてから、それぞれ休む事にし、仲間達が寝静まったその頃、寝付けなかったリィンは一人で露天風呂に浸かっていた。
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