普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ソードアート・オンライン】編
138 〝少女A〟
前書き
遅まきながらご報告を。
先週の9月4日をもちまして、累計UAが100万に達しました。
モチベが上がるよやったね作者!
SIDE 《Teach》
「……よくイン出来たな」
「まぁ、な」
ジトり、と意外そうな顏こちらを見てくるキリトのそんな言葉へ口少なに返しながら〝BoB〟に対しての〝気組み〟を練りながら頭と左頬に残る幻痛を堪える様に頭と頬を撫でた。
―歯ぁ、食いしばれ―
―馬鹿っ!―
そんな悲痛ともつかぬ怒号と共に放たれた〝父の愛〟と〝母の愛〟。……ここは【ガンゲイル・オンライン】──云ってしまえば〝仮想世界〟なのに、それらの痛みが未だに残っていると錯覚してしまうのは、〝さすがは親の愛〟──と云うことなのだろう。
……いくら、〝やがては人の為になる〟と確信していたとは云え、母さんや父さんからしたら〝そこはそれ〟──〝理解と納得〟とは別だったようだ。
「どうせなら、〝本戦〟にも出たいからな。……母さんと父さんから〝一週間VRMMO禁止〟をくらったが割り切った」
「……【ALO】ならともかく〝BoB〟だもんなぁ…」
キリトのそんなボヤきに首肯する。……昨日行われた〝予選〟を勝ち抜いてきた30名──A~Oの、〝計15の各ブロック上位2名〟に当たる〝28名〟は、目に闘志を──キリトですら燃やしていた。
キリト、シノン、ピーチの三人を引いた〝25人〟の名前こそ知らないが直ぐに〝本戦〟への参戦者と云う事が判った。……何しろ、目には爛々とした──キリト達と同じ様な闘志が宿っていたからだ。
……ちなみに、〝28人〟と云うのは俺主観の話であるので〝28人〟に入らない他者からすれば、〝気組み〟を練っている俺もまた〝28人〟の中に加わり、本当のところは〝29人〟となるのだろう。……あと、〝加えるべきもう一人〟については判らない。どうにも欠場するらしい。
閑話休題。
ともあれ、かくして〝第三回BoB本戦バトルロイヤル〟は開催された。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
〝第三回バレット・オブ・バレッツ〟の決勝戦会場となった【GGO】内に存在する孤島──その名も【ISLラグナロク】。〝本戦〟の舞台となるそのステージには山、森、砂漠──果てにはなぜか廃墟都市すらある複合ステージで、各プレイヤーがそのマップ内にランダムに配置されて戦闘が開始される。
「……っと、まずは位置の確認確認──うし、〝地の利〟はあるみたいだな」
そう感じているのは俺だけなのかもしれないが、〝お約束〟な転移後特有の酩酊感を感じて、マップで位置を確認すれば小山の頂上付近。そうごちてはこれからの展望について平行思考の1つを使って思考を沈める。
(とっとと動きますか)
〝本戦〟参加者各位には“サテライト・スキャン端末”と呼ばれるアイテムが自動配布され15分に一回、上空を監視衛星が通過するという設定で、その時全員にマップ内の全プレイヤーの存在位置が送信される。
……早い話が、他プレイヤーから奇襲されるのを回避したいのなら、一箇所に潜伏し続けられるのは15分が上限となる。
「……一人発見、っと」
出来るだけ遠くを見渡せる様に場所を居た山の頂上付近から頂上へと移し──そこの一番高い木の上から辺りを見渡せば、視界の端、距離にして500メートルと云った所にちょろちょろと動くもの──プレイヤーを発見する。直ぐに木の上から飛び降りた。
……会敵して瞬殺するまで残り2分26秒前の事である。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「残り10人か。……しかもピーチが落ちるとはな」
〝本戦〟が開始されてから大体1時間弱。早くも──なのかは判らないが、この【ISLラグナロク】に生き残っている人数は半数を切っていた。〝端末〟で見た中で生き残っている中で目ぼしい名前はキリト、シノンくらいなもの。
……どうやらピーチはこの15分の間に敗退してしまったようだ。……最後に〝端末〟を見た時、キリトがピーチの近くに居たので、恐らくはキリトが〝アレ〟でピーチを落としたのだろう、と推測しておく。
一方、俺がこの一時間で落としたのは4人。……どうにも俺やキリトみたいに弾丸を斬り伏せながら接近していくと云うトンデモ戦法は、思考の凝り固まった【GGO】プレイヤー相手には相性が良かった様である。……脳筋とか云うなかれ。
……一人──〝端末〟によればペイルライダーなるプレイヤーが、面白い──アクロバティックな戦い方を〝魅せて〟くれたが、回避先予測射撃余裕だった。
(……来たっ)
――ドギュ!
一瞬〝特有の殺気〟が俺を襲い、俺は直ぐに頭を下げる。すると形容し難い音が地面から聞こえる。狙撃である。……この廃墟エリアに入った時から視線は感じてはいた。
聞き覚えのある弾丸の音。ザザたちの様な〝本当の殺気〟。……俺が知っている人物の中にはこれらの条項が当てはまる人物は一人しかいない。
「……シノンか」
シノンと出会って数日。数日もあればシノンと一緒に狩りをする事もあれば、敵のプレイヤーにも会することがあって──その時から気付いていた。……プレイヤーへの〝トドメの一撃の瞬間〟にシノンから〝本当の殺気〟が洩れているなんて事には気付いていた。
そこで〝シノン〟と云うプレイヤーについて掘り下げてみると、シノンは間違いなく〝女性プレイヤー〟で、〝年下(?)〟──シノンのついて知っているのはそれくらい。
……だがしかし、ユーノから〝知識〟を授かっている俺からすれば〝シノン=〝少女A〟〟と云う等式が自ずと出てくる。
(……ま、俺に言える事は無いか)
〝殺人〟については色々思うところはあるが──内心そう断じて、先ほどの射撃の射線からシノンの位置を割り出し、そこらを睨めつけるも──やはりと云うべきか、そこには誰も居なかった。……先の射撃を俺に避けられた時点で直ぐ様行動に移したようだ。
(さすがはシノン──てかね?)
シノンの経験を讃えて、〝ライトセイバー〟を抜いてシノンとの持久戦の始め──ても別に良かったのだが、俺は〝敏捷(AGI)〟振りのステータスで一気に〝シノンが隠れているであろう建物〟に駆け寄った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(7…6…5…4)
シノンが射撃したであろう廃墟の中頭の中でカウントしながら歩く。数えるのは〝その部屋に到着するまでの秒数〟である。
(3…2…1──今だ…!)
「ふっ!」
その〝部屋〟に入った瞬間、俺の鳩尾目掛けて飛んできた──見馴れた速度な剛弾を〝カゲミツ〟の一振りして斬り捨てる。〝見聞色〟で〝彼女〟からの声が聞こえていた俺は射撃のタイミングが判ったので、銃弾を斬ることが出来た。
「……やっぱり当たらなかったか…」
「……なんで動かなかったんだ?」
奇襲を外したからか、〝諦念〟を浮かべつつそんな事を宣う──水色髪の女性プレイヤーはシノンだった。……結果を述べてしまうのなら、シノンは俺を狙撃してきたは建物から動いていなかった。……狙撃点からはさすがに動いていた様だが、その建物自体からは動いていなかった。
「……〝私なら動かない〟──貴方がそう予想したと私は予想した」
(……〝だからこそ〟の失敗例か…)
〝私を知っている俺だからこそ〟──と云う〝逆説〟を読み間違えた様だ。……俺もたまには策を弄さないと云う時もあると云うのに。……こんな狭い──廃墟の室内ではシノンの〝ヘカート〟は使えない。……シノンからしたらそんな俺の気まぐれは最大の不幸だった。
一歩──また一歩と近付く度にシノンの顔から感ぜられる諦念が強くなる。軈て〝カゲミツ〟の一振りがシノンに届く範囲に入るとすると──シノンは意を決した様な表情になり…
「ねぇこれだけは訊かせて」
「……こう言ったらシノンは嫌がるかもしれないが、誼もある。だから構わない」
「……どうして貴方は──いいえ、貴方やキリトはそんなに強くなれるの…?」
(〝強い〟ねぇ…)
「……たしかにシノンからしたら〝強い〟の範疇に入るのかもな」
ここでよくある主人公とかなら、〝俺は弱いよ〟とか言えるのかもしれないが、どう言い繕っても〝尋常〟とは云えないほどに俺の積み上げてきた〝功夫〟はそんな謙遜を許さない。……もちろんの事ながら〝精神的にも〟だ。
……平和な世界線であるこの世界でこそ鍛練はそこそこにしてはいるが、それでも他の人からしたら〝強い〟事には間違いがないだろうから。
「……〝BoB〟の10位以内って十分にシノンも強いだろう」
「違うっ! 私は貴方たちみたいな理不尽なまでの強さが欲しいのっ! 弱い自分に克ちたいから…っ!」
(……なるほど…)
そんなシノンの慟哭は、俺にある種の納得を与える。……シノンはある意味〝有り得た俺〟で、シノンは──〝少女A〟は、先の〝かの事件〟で心的外傷を負っていたのだ。……百年以上昔、俺も軽くダウナーになりかけたが、ドライグからの激励に依って〝殺した事を忘れない〟と云う答えに辿り着けた。……しかし、シノンはどうだろうか。
……あの事件については概要と世間の反応を軽く調べただけで、〝少女Aの近辺〟は調べていなかった俺には判らない事である。……尤も、シノンの〝現状〟を診れば、好ましい状況だとは云えないと云う事は一目瞭然であるが…。
「シノン、俺はお前を肯定する」
さっきは俺に言える事はないと思った。けれどもここまでシノンの話を聞いてしまったら、〝同情〟が涌いた。……そんな〝同情心〟すらも隠さず俺の気持ちを、〝PSY(サイ)〟を──〝心波〟を使ってまで正直に伝える。
「……っ!!」
シノンは押し付けた形になってしまった俺の〝心波〟から何かを感じたのか、瞠目して俺を見る。……それはシンパシーとも呼べるもの。〝驚愕〟の色が強かったシノンの視線は〝仲間〟を探す様なそれになる。
「もしかして貴方も──そう」
首肯すれば何やら納得した様な表情のシノン。
「話したい事はあるかもしれないが──」
「そうね…。……後で軽く時間を作ってもらおうかしら」
「了解した」
「あ、それと──私に勝ったんだから優勝しなさいよね」
頷き、左切り上げ気味に剣線を走らせる。……激励の言葉──それがシノンの〝第三回バレット・オブ・バレッツ〟に於ける最後の言葉だった。
SIDE END
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