英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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外伝~奇跡の結婚式~後篇(SC篇終了。3rd篇に続く)
~マルーダ城内~
「えへへ……お色直しに着ているイリーナさんのウエディングドレス……すっごく綺麗だよね、ヨシュア。」
パーティー会場でエステルはさまざまな人物達に祝福の言葉をかけられているリウイとイリーナを見て、表情を輝かせて隣にいるある姿をしたヨシュアに言った。
「……そうだね。」
「うむ、当然だ!余が認めた友であり、いまや同盟国となった領主――ウィルとその仲間達が力を合わせて作ったドレスだ!両世界に一つしかない最高のドレスであり、異種族達が力を合わせて作ったドレスだ。メンフィルの理想の礎となったイリーナ様が着るのにまさに相応しいドレスだ!」
一方ヨシュアはどこか疲れた様子で答え、その横にいるリフィアは胸を張って頷いた。
「へ~!あのドレスって、ウィル達が作ったんだ………ウィルって何でも作れるんだね、ヨシュア!」
「……そうだね。」
はしゃいでいるエステルにヨシュアは同じ様子で答えた。
「もうヨシュアったら~、な~んでそんな生返事しかしないのよ!こんな凄いパーティー、滅多に体験できないのよ!?もっと他に感想があってもいいじゃない!それにレーヴェやプリネがいるのに何で嬉しそうにしないのよ?」
一方エステルは頬を含ませてヨシュアを見て尋ねた。
「………確かにこんなパーティー、初めてだし、姉さん達と会えるのは嬉しいけど………この恰好で参加したくなかったよ!」
ヨシュアの今の姿はかつて学園祭の時や女王宮に潜入する時のように腰までなびかせる黒のウィッグをかぶらされて、さらに化粧までされた完璧な”女性”になっていて、そして学園祭の時に着たセシリア姫のドレスに似た白いドレスを着ていた。
「フフ……凄く似合っているわよ、ヨシュア♪」
「ハハ……こいつは驚いたな。まさかここまで似合うとは思わなかったぜ。」
「わあ……!ヨシュアお兄ちゃん、すっごく似合っているよ!」
「いや~、驚いたで、ヨシュア君。まさかここまで似合うとは思わんかったわ。男なのがホンマに残念やな~。」
「ええ。フフ……主ならヨシュアさんのようにドレスを着たら、凄く似合うかもしれませんね。」
ヨシュアのドレス姿をシェラザード、ジン、ティータ、ケビン、リタはそれぞれ褒め
「う~……貴族だった頃のボクより似合っているじゃないか……男のヨシュアに負けるなんて、なんか悔しい~!」
「………ハア………アホくさ………」
ジョゼットは悔しがり、アガットは溜息を吐いた。
「うむ、皆も楽しんでいるようで何よりだな!」
「うふふ、さすがリフィアお姉様♪ヨシュアにとって最高の罰を与えると同時にエステル達を喜ばせているんだから♪」
一方リフィアは自慢げに胸をはり、レンは口元に笑みを浮かべて言った。
「シクシク……まさかよりにもよってこんな罰だなんて、最悪だよ………それでリフィア。いつまでこんな恰好をし続けなければならないんだい?1秒でも早く着替えたいんだけど。」
「着替える?何を寝ぼけた事を言っている、ヨシュア。」
ヨシュアに尋ねられたリフィアは意外そうな表情で言った。
「え”。」
「そのドレスが余がお前の為にウィルに頼んでわざわざ用意したパーティー用の正装なのだから、少なくともこのパーティーが終わるまで着てもらうぞ。でなければ、イリーナ様のドレスを用意すると同時にそのドレスを用意したウィルに失礼だろうが。」
「そ、そんな……!お願いだよ、リフィア!どんな厳しい罰でも受けるから、これだけは勘弁して……!」
リフィアの話を聞いたヨシュアは顔を青褪めさせて嘆願したが
「さて。他の招待客達にも挨拶をしておかないとな。エステル。お前達は楽しんでいってくれ。」
リフィアはヨシュアの嘆願を無視して、エステルを見て言った。
「うん。ありがとう、リフィア。」
「ではな。行くぞ、レン。」
「は~い。皆さん、パーティーを最後まで楽しんでいってね♪」
そしてリフィアはレンと共にどこかに向かい、他の招待客達と会話を始めた。
「…………………………」
一方ヨシュアはどこか哀愁を漂わせて、呆けていた。
「さ~てと。リフィアさんが言うようにせっかくのパーティーなんだから楽しまないとね。こんな所でボーッとせずにお酒を呑まないと、損ね♪」
「そうだな。俺も付き合うぜ。」
「……式でジッとしているのは疲れたからな。疲れた分を補う為にたらふく食うとするか………」
「せっかくやし、オレも仲間にいれて下さい、みなさん。」
「ボ、ボクも!他に知っている人達がいないし………」
「えへへ……ミントちゃんやツーヤちゃん達と話してこようっと!」
「私はマリーニャちゃんとエクリアちゃんを探します。式で見かけたから、このパーティー会場のどこかにいると思いますし。」
そしてシェラザード達はそれぞれの行動に移って、パーティーを楽しみ始めた。
「ヨシュア、いつまで呆けているのよ。」
「………エステル。今からでもいいからリフィアに頼んで!他の罰にしてくれって。」
「え?何寝ぼけた事言っているの?乙女の純情をもてあそんだ挙句、ファーストキスを”あんな形”で奪っておいて、”その程度”で済んでいるんだからありがたいと思わないの?」
「そ、そんな………」
意外そうな表情のエステルに尋ねられたヨシュアは絶望した表情をした。
(フフ……メンフィルの皇女も面白い罰を考えたわね。)
(クク……奴の今の顔を見ると、少しだけ溜飲が下がったな。)
(そうね♪)
(あ、あはは………)
一方エステルの身体の中にいたパズモやサエラブ、ニルは面白がり、テトリは苦笑していた。そして固まっているヨシュアから離れて、ウィル達やカーリアン達に挨拶をした後、ある人物に話しかけられた。
「あの………もしかして貴女が”ブレイサーロード”―――ファラ・サウリン卿ですか?」
「へ?………って、誰??」
自分に話しかけた人物――エリィに気づいたエステルは驚いた後、尋ねた。
「初めまして。私の名はエリィ・マグダエル。イリーナ皇妃の実妹です。」
「イリーナさんの!?……っと。挨拶がまだだったわね。あたし、エステル。エステル・ファラ・サウリン・ブライトよ!あたしの事は”エステル”って呼んでね!”ファラ・サウリン”卿だなんてあたしじゃないみたいに聞こえるし。」
「は、はあ。それでエステル様に聞きたい事があるのですが………」
気軽な態度で話しかけてきたエステルにエリィは戸惑いながら尋ねた。
「あたしに?あ、後その前にその”エステル様”っていうのもなしね。エリィさん、見た所あたしとそれほど年が変わらないでしょ?」
「は、はい。」
「じゃ、これからよろしくね、エリィさん!」
そしてエステルはエリィに握手を求めるかのように片手を差し出した。
「(……噂通り、自分の身分を笠に着ない方ね。……民に人気があるのもわかるわ……)はい、こちらこそよろしくお願いします、エステルさん。」
エステルに手を差し出されたエリィはエステルの笑顔を見て感心した後、微笑んでエステルと握手をした。
「それであたしに聞きたい事って何なの?」
「あ、はい。エステルさんと契約している異種族――”六異将”の中に天使の方がいらっしゃるとお姉様から聞いたのですが……」
「…………………へ?”六異将”?何それ??」
エリィの言葉を聞いたエステルは呆けた声を出して尋ねた。
「それは勿論、エステルさんと契約している異種族の方達の事です。……”小さき守護者”パズモ。”業炎の疾風”サエラブ。”森の妖精姫”テトリ。”聖の守護者”ニル。”蒼翼の水竜”クー。”破壊の炎獣王”カファルー。……先ほどお祖父さまから聞いたエステルさんと契約している方達の異名で、その方達を総称して”六異将”と呼ばれているんです。」
「ア、アハハ…………………パズモ達、世間からそんな異名で呼ばれているんだ……(というか、その”ブレイサーロード”っていうのも正直、慣れないのよね~……シェラ姉達みたいに”遊撃士”としての異名なら慣れるけど、あたしの場合、なんか貴族としてのイメージで呼ばれているし………)」
(フッ。エステルだけでなく我等の事も知られているのか。)
(なんか、恥ずかしいわね……)
(あう~……影が薄いのは嫌ですけど、目立つことも嫌ですよ~……)
(フフ……別にいいじゃない。そんな異名を持つニル達がエステルの傍に常にいるという事で、エステルを狙う者達への威嚇代わりに使えるし。)
エリィの説明を聞いたエステルは苦笑した後溜息を吐き、エステルの身体の中にいたサエラブは口元に笑みを浮かべ、パズモとテトリは溜息を吐き、ニルは微笑んでいた。
「っと。それよりあたしが契約している天使――ニルの事ね。確かに契約しているけど、どうしてそんな事を聞きたいの?」
「はい。私が契約している方がどうしてエステルさんと契約しているのかを聞きたいらしくて……」
「へ!?エリィさん、あたしみたいに誰かと契約しているの!?」
「はい。……メヒーシャ!」
驚いているエステルに頷いたエリィはメヒーシャを召喚した。
「わっ、天使!……じゃあ、あたしも!……ニル!」
メヒーシャの召喚に驚いたエステルはニルを召喚した。
「へ~……ニルみたいに人間と契約している変わり者の天使は他にもいたのね。」
召喚されたニルは興味深そうな表情でメヒーシャを見つめて言った。
「……第8位”大天使”メヒーシャと申します。”力天使”であるニル様に一つ尋ねたい事があるのですが。」
「何かしら?」
「……なぜ、中位の天使である貴女が人間との契約を?」
「それは勿論、エステルがニルを破った強き者であると同時に面白い娘だからよ。」
「……”異能”もない人間が中位の天使を破った……だと……!?」
ニルの話を聞いたメヒーシャは信じられない表情でエステルを見つめた。
「まあ、あの時はパズモ達の助けもあったから、あたし自身が勝ったとは言えない気がするんだけどね。」
「フフ……そんな細かい事はどうでもいいじゃない。」
「………………(人間と天使があそこまで親しくなるなんて………ルファディエル様でもある程度の距離を敷いて接していたというのに………)」
楽しそうに会話をしているエステルとニルをメヒーシャは驚いた表情で見つめていた。
「メヒーシャ、どうしたの?」
メヒーシャの様子に気付いたエリィは首を傾げて尋ねた。
「……何でもない。」
「そう。……せっかくのパーティーだし、貴女も楽しんだらどうかしら?」
「結構だ。天使である私に食事等不要だからな。」
「ニルも最初はそう思ったけど、食事って結構いいわよ?エステルに進められて、エステルのお母さんのオムレツ?だったかしら。それを食べて、何でこんなすばらしい事を今までしなかったのかと後悔したわ♪」
「えへへ……さすがお母さんね!天使に食事のすばらしさを教えたんだから!」
ニルの話を聞いたエステルは嬉しそうな表情で言った。
「という事で、メヒーシャ……だったかしら。今、この場で何かを食べて食事の素晴らしさを知りなさい。」
「ハ?なぜ、そんな事を……」
「同じ天使である貴女にも食事の素晴らしさを知って欲しいからよ♪」
「いえ、しかし……」
ニルの言葉を聞いたメヒーシャは戸惑った様子で言いよどんでいた。
「……私もできたらメヒーシャに食事の素晴らしさを知って欲しいわ。せっかく常に私と一緒にいるんですもの。一緒に食事とかしてみたいわ。」
「エリィ。だが天使の私に食事は………」
エリィの言葉を聞いたメヒーシャが何かを言いかけようとしたその時
「隙あり~♪はい!」
「モガ!?」
エステルが近くのテーブルに並んでいたデザート――”苺のパフェ”をとって、スプーンですくって開いていたメヒーシャの口に押し付けた。
「ン………な、何をする!」
口に入れていたものを呑み込んだメヒーシャはエステルを睨んだ。
「そんなの荒療治に決まっているじゃない♪それでどう?味の方は。」
「…………呑み込むのに必死で覚えていないに決まっているだろう!」
「そっか。じゃあもう一口♪」
「断……」
「あら~?第8位が第5位の言葉を無視するつもりかしら?」
「グッ……わかった。自分で食べるからスプーンを貸せ!」
エステルの言葉を聞いたメヒーシャは断ろうとしたがニルのからかうような言葉を聞いて唸った後、エステルからスプーンをひったっくって、スプーンにすくわれていた苺とアイスクリームを食べた。
「ん、んんっ…………美味しい………!」
メヒーシャは口の中に伝わる冷たさと甘みを感じて体を震わせた。そして持っていたスプーンを使って、食べかけのパフェを一心不乱に食べていた。
「うんうん!メヒーシャも乙女なんだからスイーツの素晴らしさは知っておかないと駄目だよね、エリィさん!」
「フフ、そうですね。」
メヒーシャの様子を見たエステルは満足げに頷き、エリィは微笑んだ。
「美味しかった………ハッ!?」
パフェを食べ終わったメヒーシャは呟いた後、微笑ましそうに自分を見ているエステル達に気付いた。
「料理はまだまだあるから、たくさん食べて大丈夫よ、メヒーシャ♪」
「どう?食事って素晴らしいでしょう?」
「…………はい。これほど心が豊かになるなんて、初めてです………」
ニルに尋ねられたメヒーシャは自分自身を信じられない様子で呟いた。
「フフ……これからは毎日一緒に食事ができるわね、メヒーシャ。」
「……百歩譲って共に食事をするのは構わないが、何も毎食共にすることは………」
「ああ、そうそう。スイーツなら私の得意分野だから毎食デザートを作るわ。」
「クッ……………わ、わかった。ただし、肉や魚等他の命を犠牲にする食物に関しては口に入れるつもりはないからな。」
「フフ、わかったわ。私はもう少しだけエステルさんと話しているから、貴女も好きな料理を食べて食事の素晴らしさをもっと知って。」
「…………そ、そうか。何かあれば念話ですぐに呼んでくれ。」
エリィの言葉を聞いたメヒーシャはデザートが並んでいるテーブルに向かい、さまざまなデザート料理の皿をとって、食べ始めて、何度も幸せそうな表情をしていた。
「フフ……メヒーシャのあんな幸せそうな顔、初めて見ました。……メヒーシャに食事の素晴らしさを教えてくれてありがとうございます、エステルさん、ニルさん。」
「気にしないで。ニル達の好意だし。……エステル、ニルも食べて来ていいかしら?」
「うん、いいわよ。」
「ありがとう。」
エステルの答えを聞いたニルはメヒーシャのように料理が並んでいるテーブルに向かって、食事をし始めた。
「ついでに………テトリ、永恒、パズモ!」
そしてエステルはテトリ達を召喚した。
「せっかくだし、みんなもパーティーを楽しんで!」
「あ、はい。じゃあお言葉に甘えて一旦失礼します。」
(我はウィル達の元で食事をしている。何か用があれば、ウィル達の所に来てくれ。)
(また後でね、エステル。)
エステルの言葉を聞いたパズモ達はそれぞれ行動に移った。そしてエステルはエリィと別れた後、ある人物――エクリアを見つけて声をかけた。
「あの~……ちょっといいですか?」
「?私の事でしょうか。」
エステルに話しかけられたエクリアはエステルを見て尋ねた。
「うん、そう。……初めまして、”姫将軍”エクリアさん。」
「!?どうしてその呼び名を………!」
エステルの言葉を聞いたエクリアは驚いた表情でエステルを見つめた。
「えっと実はあたし………」
驚いているエクリアにエステルは自分がラピスとリンの転生した人物であり、2人の記憶も持っていることを説明した。
「………そうだったのですか。まさかイリーナだけでなく、ラピス姫達も転生していたなんて………それで私に何の御用でしょうか?」
「うん。……リウイとの事について。」
「!!」
エステルの話を聞いたエクリアは目を見開いてエステルを見た。
「ニル達に聞いたけど、エクリアさんは昔の自分――”姫将軍”だった頃を後悔しているのよね?」
「…………はい。それがどうかしましたか?」
「リウイ達に今までの事を謝って………和解するつもりはエクリアさんにはない?」
「……和解なんて……私にはもう、そんな資格はありません………私はリウイ様とイリーナに裁かれるべき存在なのですから………」
「……本当にイリーナさんがエクリアさんを裁くつもりだと思っているの?だったら、イリーナさん、エクリアさんを今回の結婚式に呼ばないよね?」
「それは………」
エステルに尋ねられたエクリアは返す言葉がなく、言いよどんだ。
「あのね、エクリアさん。あたし、イリーナさんにエクリアさんの事を今はどう思っているか聞いた事があるの。」
「!!それでイリーナは何と………?」
エステルの言葉を聞いたエクリアは目を見開き、身体を震わせながらエステルを見た。
「『エクリアお姉様今でも私にとって大切なお姉様です。だからこそリウイといつか和解して、3人で笑い合う日が来てほしい。』……こう言っていたわ。」
「そ……ん………な………どうして………」
「多分だけどイリーナさん、自分を殺したエクリアさんの事を最初から恨んでいないと思うわ。もし恨んでいたら、さっきあたしが言った事、絶対に言わないだろうし。」
「…………………………………」
「それでエクリアさん。リウイと和解するつもりはある?」
「そんな奇跡のような出来事………絶対にありえないと思いますが………もし、リウイ様が私を許してくれるのなら……和解したいです………」
「そっか。それを聞けただけでも十分よ。エクリアさん、あたしでよかったらいつでも力になるからね!」
「………その気持ちだけでも十分です。イリーナの今の気持ちを伝えて頂き、本当にありがとうございます、エステルさん…………」
エステルに微笑まれたエクリアは涙を流しながらエステルに頭を下げた。
「えへへ………あ、そうだ。”神殺し”―――セリカの使徒のエクリアさんに聞きたいんだけど……セリカは今でもサティアさんとした”約束”を覚えているの?」
「!?どうしてエステルさんがセリカ様の事を………!それにその”サティア”や”約束”とは一体………?」
「うん、あのね………」
驚いているエクリアにエステルは自分が持つ神剣――”誓いの神剣”が見せたセリカの過去やセリカが”神殺し”になった経緯や剣に”誓った”事を説明した。
「そ、そんな……!まさかセリカ様の過去を詳しく知る方がこんな形で現れるなんて………!」
エステルの話を聞き終えたエクリアは声を震わせながらエステルを見つめた。
「それでエクリアさん、さっきあたしが話した”約束”―――『2人で生きていこう』っていう”約束”……セリカ、覚えている?」
「…………………セリカ様はただ”生きる”という事しか覚えておりません。」
「そっか。まあ、気の遠くなるような年月が経っているんだから仕方ないといえば、仕方ないわね~。」
エクリアの話を聞いたエステルは溜息を吐いた。
「……エステルさん。いつかセリカ様の屋敷に来て頂き、先ほど私にして頂いた話をセリカ様にしていただいてもよろしいでしょうか?」
「うん、いいわよ。いつかセリカがいる国――レウィニアにも行くつもりだから。」
「……重ね重ね、本当にありがとうございます………もし屋敷にいらっしゃったら、皆で最高のおもてなしをさせて頂きます。」
「あはは、そんなにかしこまらなくてもいいわよ。」
頭を深く下げ感謝しているエクリアをエステルは苦笑しながら言った。そしてエステルはエクリアと別れ、パーティを楽しみ始めた。
「……………」
エステル達がパーティーを楽しんでいる一方、イリーナはバルコニーで優しい微笑みを浮かべて自分達を祝い、祭り状態になっている城下町を見下ろしていた。
「はぁい、お妃様♪」
そこにカーリアンが話しかけてきた。
「カーリアン様。………行かれるのですか?」
「あら?もしかして私が近い内、メンフィルを離れる事を気付いていたの?」
「ええ……私が記憶を思い出せば、なんとなくですが、貴女は行かれると思っていましたから………。新たなメンフィルを建国した時もそうでしたし………」
「フフ……本当に敵わないわね、貴女には。……手、出して。」
イリーナに微笑まれたカーリアンは苦笑しながら言った。そしてカーリアンの言葉に答えるかのようにイリーナはカーリアンの目の前に両手を出した。
そして差し出された両手をカーリアンは自分の手で軽く叩くように触れた。
「リウイの事……お願いします。じゃあね♪4,5年に一回ぐらいは顔を出すわ♪」
「フフ……私やリウイもそうですが、貴女の娘のカミーリさんや孫娘のリフィアも寂しがりますからせめて年に1回ぐらいは顔を出して下さい。」
「お妃様やリウイはともかく、あのリフィアが寂しがるかしらね?それにカミーリも寂しがるような年頃じゃないでしょ。……ま、考えておくわ。」
イリーナの言葉を聞いたカーリアンは苦笑した後、イリーナに背を向けて去ろうとしたが
「……どちらの世界を旅するおつもりですか?」
イリーナに声をかけられ、立ち止まった。
「そうね……せっかくだし異世界を放浪するわ。お妃様の”今の故郷”がどんな所なのかも興味があるし。」
「そうですか。………お元気で。」
「ええ。リウイと共に幸せにね。」
こうしてリウイ達の結婚式は滞りなく終わった。余談だがオリビエはヨシュアの女装姿を見て、ヨシュアとわかっていながらも求愛をし続け、ヨシュアは凄みのある笑顔で断り、さらにやけになったかのように次々と自分に求愛してくるメンフィルの貴族達を凄みのある笑顔で追い返し、その様子をエステルやリフィア達は笑いながら見ていた。
そしてさらに2ヶ月後、エレボニア領空を飛ぶ豪華飛行客船”ルシタニア号”……その船上の一角で新たな冒険の幕が開こうとしていた………!
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