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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第39話

~湖畔の町・レグラム~



「―――レグラムに着いたか。」

リィン達がレグラムに到着すると、レグラムは特別実習の時より遥かに濃い霧に包まれていた。



「レグラム………以前の実習以来か。」

「ここがラウラの生まれ故郷なのね。幻想的で綺麗な場所……」

始めてみる光景にアリサは呆けていた。



「”霧と伝説の町”……ラウラが言っていた通りの場所だよな。とにかく、行動を開始しよう。まずはレグラム方面にいる二人の手掛かりを探さないと。そう言えば、トヴァルさんから言付けを頼まれていたな。まずは”遊撃士協会(ブレイサーギルド)”に顔を出した方がいいかもしれない。」

「ふふ、よさそうですね。ギルド方面なら何かしら情報があるかもしれませんし。」

「決まりね。さっさと行くわよ。」

まずギルドを訪ねる事にしたリィン達はギルドに向かい、ギルドの扉をノックした。



~遊撃士協会・レグラム支部~



「―――ごめんください。」

「おや、お客様のようですな。」

「開いてますよ。どうぞ、入って下さい。」

「あ……!」

リィン達がギルド内に入るとそこには見覚えの人物が受付らしき青年と共に一緒にいた為、その人物―――クラウスを見たリィンは驚いた。



「やあ、”遊撃士協会”レグラム支部にようこそ。何かお困りかい?町の人ではなさそうだが……」

「おや……?あなたがたはもしや。お嬢様と同じ、Ⅶ組の皆様ではありませんか?」

「クラウスさん……!」

「ご無沙汰している。」

「おや、お知り合いですか?」

クラウスと親しげに話すリィン達を見た受付の青年は不思議そうな表情でクラウスに尋ねた。



「ええ、お嬢様の大切なご学友の方々です。いやはや、このような場所でお会いできるとは……」

「じゃあ、この人がラウラの家で家令を勤めてらっしゃる……」

「ふふ、メイドのわたくしとは同業者のようですわね。」

「あらためまして―――アルゼイド子爵家に仕える執事のクラウスと申します。皆様、本当に無事で何よりでした。お嬢様がたもきっとお喜びになるでしょう。」

リィン達と再会した時のラウラの喜びを想像したクラウスは微笑みを浮かべてリィン達を見回した。





「あ……!じゃあ、やっぱりラウラはレグラムに……!?」

「ええ、エマ様と共にしばらく滞在しておられます。つい先程エステル様達と共に出かけてしまったばかりではございますが……」

「そうか、君達が例の”Ⅶ組”の子達か。話はトヴァルやエステル達から聞いているよ。僕の名前はマイルズ。今はこのレグラム支部で受付を担当しているんだ。色々と込み入っているようだが詳しい話を聞かせてもらえるかな?」

そしてリィン達は青年―――マイルズと情報交換をした。



「それでは……ラウラ達は内戦が始まってすぐに?」

「ええ、エマ様達とご一緒に帰郷なさいまして。以来、こちらに身を置いてらっしゃいます。」

「そうか……君達は仲間と再会するために来たのか。しかし、まさか内戦の裏でそこまでのことが起きていたのか。特に”灰色の騎士人形”―――噂になっているあれの正体が君達だったとはね。ケルディックやノルドでの活躍は耳に入っているよ。」

「もうですか……!?」

「ま、話が早くて助かるけど。」

ギルドの情報を手に入れる速さにリィンは信じられない表情で声を上げ、セリーヌは動じていない様子で呟いた。



「しかし……皆様が各地で見てきたとおり。やはり内戦の裏で”何か”が起きているのは確かのようですな。レグラム周辺で起きている異変も何かしら関係があるのかもしれません。」

「異変………?」

「どうやらよからぬことが起きているみたいですわね?」

「ああ……近頃、不可思議な出来事が立て続けに起こっていてね。街道には見た事もない魔獣が現れているし……この濃霧も、すでに1ヵ月近くも晴れない状態が続いているんだ。」

「それは……確かにおかしいですね。霧が出やすい地形とは言え、さすがに1ヵ月続くとなると……」

マイルズの説明を聞いたリィンは真剣な表情で考え込んでいた。



「はい、単なる異常気象と片付けるには少々不気味でして。町の住民たちも少しずつ不安が広がっています。せめてお館様がいてくだされば、人々の支えとなるでしょうが。」

クラウスの言葉からアルゼイド子爵が未だ行方不明である事に気付いたリィン達は血相を変えた。

「”光の剣匠”……行方がわからなくなってるの?」

「ええ、およそ1ヵ月近くになります。内戦が始まる祭、カレイジャスで帝都方面に向かったあと完全に連絡が途絶えてしまい……」

「それじゃあ、トリスタに駆け付けてくださった時から……」

クラウスの説明を聞いたアリサはトリスタで現れたカレイジャスを思い出し、心配そうな表情をした。



「子爵閣下のことですし滅多な事はないと思いますが……」

「ええ、わたくしどももお館様を信じております。おそらく今は、いずこかで機を窺っているのではないかと。」

「子爵閣下がいないのはレグラムにとっては痛いけど……幸い、貴族連合の支配もこちらまでは届いていなくてね。今は周辺の”異変”に集中して、クラウスさんと協力しながらなんとか対応をしている感じさ。エステル達は勿論、ラウラお嬢さんとエマさんも色々と手伝ってくれていてね。」

「ラウラと委員長が……ところで二人は今、どこにいるんですか?」

「さっき”ブレイサーロード”達と出かけたとか言ってたわよね?」

「ああ、ついさっきの事なんだが……エマさんが”ローエングリン城”に”何かの気配”を感じたらしくてね。急いでエステル達とボートに乗り込んで、調査に向かってしまったんだ。」

マイルズの話を聞いたリィンとガイウスはローエングリン城であった不思議な出来事を思い出した。



「あの湖の古城か……以前の実習の時もオレたちで向かったが。」

「たしかリィン達も前に探索したのよね?」

「ああ、あの時も何やら不可思議な異変が起きていた。そんな場所に、遊撃士の中でも相当な使い手であるエステルさん達がいるにも関わらず二人も向かってしまったんですか?」

「ええ……わたくしやエステル様達もお止め差し上げたのですが。”この程度の事を片付けられなくては仲間との再会は果たせない”―――他ならぬお嬢様方がそのようにおっしゃいまして。」

クラウスの話を聞いたリィン達はクラウス達に反論しているラウラやエマの様子をふと思い浮かべた。



「ええ……目に浮かぶようだわ。」

「……ったく、あの子も強情っぱりなんだから。」

「やはりここは、わたくしたちもご加勢に向かうべきかと。」

「ええ、行きましょう―――ローエングリン城へ!」

シャロンの言葉にリィンは力強く頷いた。



「はは……さすが聞いていた通りだな。君達が行ってくれればお嬢さん方やエステル達も心強いはずだ。」

「皆様……お嬢様がたをよろしくお願いいたします。古城へ向かうためのボートはすぐに手配いたします。準備を整えた上で、船着き場へお越しください。」

「わかりました。どうかお任せ下さい。」

「よろしく頼むね。……あ、そうだ。エステル達に会うならエステル達と一緒にいる”正体不明の謎の協力員”である”彼女”の事も今の内に教えておくよ。」

ある事を思い出したマイルズはリィン達を見回した。


「エステルさん達と一緒にいる”正体不明の謎の協力員”、ですか?」

「”彼女”と言う事はその人は女性なんですか?」

マイルズの言葉が気になったリィンとアリサはそれぞれ不思議そうな表情で尋ねた。

「ああ。応援要請でセントアーク支部に向かったミントとフェミリンスさんと入れ違いの時期になるんだけど……どこで出会ったのかエステル達も教えてくれないある女性がエステル達と一緒に今もいるんだ。エステル達の話だと何でも彼女達と古い知り合いだそうなんだが……エステル達にその女性の詳しい事を色々聞いても誤魔化すんだよ。」

「エステルさん達も教えてくれない出身不明の謎の女性ですか……」

「少し気になるな。」

「そうですわね……かの”剣聖”のご息女であられ、”リベールの異変”を解決した立役者であられるエステル様達のお知り合いなら怪しい方ではないと思うのですが……」

マイルズの説明を聞いたリィンとガイウス、シャロンは考え込んだ。

「ちなみに自己紹介の時に本人は『2ヶ月前に結婚したばかりの”ただの新妻”です』って嬉しそうに言っていたけど……」

「は、はあ……」

「なにその意味不明な自己紹介。」

マイルズの話を聞き、仲間達と共に冷や汗をかいたリィンは答えに困り、セリーヌは呆れ

「というか今も一緒にいるって言ってましたよね?その女性の方、戦えるんですか?」

ある事が気になったアリサは尋ねた。



「勿論でございます。実際私も剣を交えて見てわかったのですが、試合の合図がかかるとその女性の槍にて為す術もなく一瞬で剣を弾き飛ばされ、敗北しました。あの方の強さは私如きでは量れません。……恐らくはお館様をも軽く超えていると思われます。」

「なっ!?」

「”光の剣匠”を軽く超えているって……一体何者よ?」

クラウスの話を聞いたリィンは驚き、セリーヌは目を丸くした。



「ハハ……名前を聞いたら絶対に誰でも驚くと思うよ?――――なんせ、”空の女神”と同じ名前なんだから。」

「なっ!?」

「ええっ!?」

「ハアッ!?」

「”空の女神”と……」

「”空の女神”と同じ名前と言う事はその女性の名前は”エイドス”なのですか?」

マイルズの説明を聞いたリィンやアリサ、セリーヌは驚きの表情で声を上げ、ガイウスは呆け、シャロンは目を丸くして尋ねた。



「はい。――――”エイドス・クリスティン”。件の女性はそう名乗ってらっしゃっています。エステル様のご説明によると何でもエイドス様はエステル様達―――”ブライト家”の遠い親類に当たるとの事です。」

「…………でも正直な所滅茶苦茶怪しいんだよね、その人。エステルやあのカシウスさんの遠い親戚で子爵閣下を軽く越えるクラスの強さを持っている人の上、ゼムリア大陸なら絶対に目立つ名前―――”エイドス”なら遊撃士協会(うち)の情報網に絶対引っかかっているはずなんだけど、僕も初耳なんだよな………しかもセントアークのギルドでリベールから応援で来ているシェラザード達の紹介で”協力員”として手伝っている人達の中で男性一人に対し、女性二人が奥さんっていうちょっと変わった若い夫婦と同じファミリーネームでエイドスさんが言うにはその人達は両親だそうなんだけど…………セントアークのギルドの情報だと、自分の年齢を24歳って申告をしているエイドスさんとその夫婦の年齢を比べると、どう考えても釣り合わないんだよなぁ……まあ、エイドスさん自身が母親だって言っている”フィーナ・クリスティン”という名前の人は異種族だそうだから、そのフィーナさんとやらが見た目とは裏腹に相当の年齢で、エイドスさんがそのフィーナさんの連れ子とかなら一応納得できるんだけど…………」

クラウスの説明の後にマイルズは疲れた表情で答えた。

「だ、男性一人に対し、女性二人が妻ですか……」

「うふふ、その方達の光景は未来のお嬢様達の光景ですわね♪」

「シャロン!」

マイルズの説明を聞いたリィンは表情を引き攣らせ、からかいの表情のシャロンに見つめられたアリサは顔を真っ赤にして声を上げ



「だが………確かに気になる情報だな。」

「ああ……エステルさんの遠い親戚でエステルさん達が詳細な説明をしてくれない女性で、それもあの”空の女神”と同じ名前か……」

「もしかしたら本物じゃないのか?実際オレ達は既に異世界の本物の”女神”とも出会っている。」

考え込むリィンにガイウスは自分の推測を口にし

「アハハ……リィンが契約しているアイドスと異変が起きた旧校舎の探索にエステルさん達と一緒に手伝ってくれたフェミリンスさんね。」

「もし本物でしたら、ゼムリア大陸にとって色々な意味で一大事ですわね♪」

ガイウスの推測を聞いたアリサは苦笑し、シャロンはからかいの表情になった。

「………………確かに気になる情報だけど、今はエマ達との合流が先決じゃないかしら?」

「そうだな……―――それじゃあ準備を整えてから船着き場に向かおう。」

そしてリィン達はラウラ達の加勢に向かう為の準備をし始めた。



~同時刻・エペル湖~



「クシュン!」

同じ頃、エステルとヨシュアやラウラとエマと共にボートに乗ってローエングリン城に向かっているセルリアンブルーの髪を腰までなびかせ、神々しい雰囲気を纏い、整った容姿を持つ女性はくしゃみをした。

「?どうしたの、エイドス。もしかして風邪とか?」

「エ、エイドスさんが風邪って……普通に考えてありえないんじゃあ……」

女性に尋ねたエステルの言葉を聞いたヨシュアは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「もう……ヨシュアさんは私を何だと思っているんですか。」

ヨシュアの答えを聞いたエイドスは溜息を吐いた後不満げな表情でヨシュアを見つめ

「え、えっと……(”本物”の”空の女神”です。)」

女性の”正体”を知っていたヨシュアは言葉を濁して苦笑しながら心の中で女性に指摘した。



「フフ、もしかしたら誰かがエイドス殿を”空の女神”と勘違いして祈っているのかもしれないな。」

「アハハ……エイドスさんはあの”空の女神”と同じ名前なのですから、エレボニア帝国の人々が内戦の終結を願って”空の女神”に祈っているからかもしれませんね。」

一方ラウラの推測を聞いたエマは大量の冷や汗をかきながら苦笑し

「ハア………確かにそれが一番ありえそうですね……………(……一体誰が”私”を”女神”として崇める宗教を広め始めるという私にとっては大迷惑な事をしたのでしょう?)」

女性は心底嫌そうな表情で溜息を吐いて頷いた後ジト目になって小声でブツブツと呟き

(ちょっ、エイドス!?二人に聞こえたら不味いでしょうが!?)

女性の隣の席にいた為、女性の小声が聞こえていたエステルは冷や汗をかいて焦った。

「?……―――見えて来たぞ。皆、上陸の準備を整えてくれ。」

二人の様子を不思議に思ったラウラだったが、目の前にうっすらと見えるローエングリン城を見て気を取り直した。



その後エステル達が上陸し、ローエングリン城に向かった頃には準備を整えたリィン達がボートでローエングリン城に向かい始めていた。 
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