英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
外伝~オーバルギア開発計画~中篇(前半)
翌日、目覚めたティータはダンの朝食を食べた後、中央工房に向かい、途中で出会ったマードックに2人の居場所を聞き、エリカに昨日から気になっていた事を聞く為にエリカがいる演算室に向かった。
~中央工房・演算室~
「……これが”パテル=マテル”。見た所、まだ10%も実力を発揮していない……成る程、確かにこれはすざましいスペックね……」
ティータが来る少し前、エリカは”カペル”のあるデータを見て真剣な表情で呟いた。
「お母さん!」
その時、ティータが近づいて来た。
「あれ、それって……パテル=マテルのデータ?」
そしてエリカが見ているデータに気付き、尋ねた。
「あらティータ、丁度よかったわ。ねえティータ。実際に見たんでしょ、コレ。」
「え……?う、うん。えっと、見たし、それに詳しいスペックも知っているけど……?」
エリカに尋ねられたティータは戸惑いながら答えた。
「本当!?ねえ、全部教えて教えて~!!」
「え、ええっと…………ごめんなさい。例えお祖父ちゃんやお母さん達でも言っちゃダメっていう約束をして特別に見せてもらったから、教えられないよ。」
「あー………メンフィル軍の機密事項って事ね………それなら、仕方ないか………」
ティータの話を聞いたエリカは残念そうな表情をした。
「あの、お母さん………どうして、パテル=マテルのデータなんか見てるの?えっと、新発明の方は……?……………も、もしかして……!」
エリカに尋ねたティータは周りを見回した後、ある事に気付いたその時
「そのとおりじゃ。」
「こちらも準備完了。すぐにでも作業に入れるよ。」
博士とダンが2人に近づいて来た。
「よし、揃ったみたいね。……これより我々はパテル=マテルに対抗し得る人形兵器の開発に着手します。………”オーバルギア”計画、始動!」
博士とダンの言葉を聞いたエリカは頷いた後、大声で宣言した!
「ええ~~~~~~っ!?」
エリカの宣言を聞いたティータは声を上げて驚いた!
「”パテル=マテル”………どうしてだろ、どうして………」
誰もいない演算室でティータはパテル=マテルのデータを見つめて呟いた後、背を向けて物思いに耽った。
(新しい発明って聞くと、いつもは凄く嬉しくなる。それで何もかも忘れて、お祖父ちゃんと一緒に夢中になっちゃうのに……今日はちょっとだけ、悲しい気がする………)
ティータは自分は本当の意味で友達だと思っているが、対する相手は表面上は自分を友達として接してくれているが、実際は自分の事を本当はどう思っているかわからない少女――メンフィル皇女、レンの姿が浮かび上がった。
「………これで、いいのかなぁ………レンちゃん。」
その後、ティータはエリカ達の所に向かい、手伝いを申し出た所、ある用事――帰国書類をマードックに作るよう頼まれ、いつもマードックが通っている七耀教会に向かった。
~ツァイス市・七耀教会~
ティータが教会に到着すると、そこではマードックが強く祈りをささげていた。
「………工房長さん?」
マードックに近づいたティータは首を傾げて声をかけた。
「ああ、エイドスよ。無力な我等を守りたまえ……!………?やあ、ティータ君。どうしたのかね?」
強く祈りを捧げていたマードックはティータに気づいて尋ねたが、ティータが答える前に推測を始めた。
「も、もしや実験に失敗して有毒ガスが発生したのかね!?そ、それとも今度は大爆発して工房の半分が吹き飛んだとか………」
「あ、あの………ごめんなさい、工房長さん。お祖父ちゃんもお母さんもいつも迷惑かけちゃって……でも大丈夫です。今日はまだ何も……」
「そ、そうか………よかった………女神への祈りが通じたのかもしれない。明日の分もした後、アーライナやイーリュンにも祈っておかないと……」
ティータの話を聞いたマードックは心の底から安堵の溜息を吐いた後、また強く祈り始めた。
「あ、あの工房長さん。……実はお願いがあるんですけど……」
「お願い、かね……?」
そしてティータは事情を説明し、両親の帰国書類を用意してくれるよう頼んだ。
「なるほど、今回は空を飛んで帰って来たのか。それではティータ君が驚くのも無理はない……」
事情を聞いたマードックは微笑みながら頷いたが
「み………密入国ッ…………!?」
「あ、そうかも………」
ある事に気付き、顔を青褪めさせ、ティータはマードックの言葉を聞いて気付いた。
「はあぁ、参ったよ。急いで認可証を提出しないと……ティータ君、私の代わりにお祈りしておいてくれないか。今回の発明が、何事もなく終わりますように……とね!」
「あ、はい。………わかりました。」
「よ、よろしく頼むよ!」
そしてマードックは急いでどこかに向かった。
「えっと………(お母さんとお祖父ちゃんが無茶しませんように………)」
マードックを見送ったティータは振り返って祈った。祈り終わったティータは不安げな表情をした。
(……でも、わたしに何ができるんだろう……エステルお姉ちゃんやミントちゃん達みたいに強くないのに………レンちゃんの悲しい過去やわたし達が”四輪の塔”に行っている時や”結社”に襲われた王都に行っている間に人を一杯殺した事を知った時だって、何も言ってあげられなかった………わたしは……本当にレンちゃんの事をわかっているのかな……?)
暗い表情でレンの事を思っていたティータはある事を決意した。
(……そ、そうだ!わたしもオーバルギアの開発に入れてもらおう。パテル=マテルと同じくらいの力があるオーバルギアがあれば……レンちゃんの事が少しでもわかるかもしれない……!そしたらいつかレンちゃんと本当の親友になる事だって……!よ、よしっ!お母さんに頼んでみよう!)
そしてティータは急いで中央工房に向かった。
~中央工房・工作室~
「この工作機は新型での、従来の1/10精度で加工が行えるのじゃ。」
「チッ。こんなものがあったとは……これは基本設計を見直す必要がありそうね!」
ティータが部屋に入る少し前、博士とエリカは相談していた。
「あ、お母さん!ここにいたんだ。」
その時、ティータが部屋に入って来た。
「あら、ティータ。そっちの方は上手くいった?」
「うん。帰国書類の方は大丈夫。工房長さん、すぐに用意してくれるって。それでね、お母さん……わたしもオーバルギアの開発に入れてほしいな。」
「ティータを……?」
ティータの頼みを聞いたエリカは驚いた後、ティータを見つめた。
「うん、あのね。手紙には書かなかったけど、わたし、レンちゃんとしばらく一緒にいたことがあったし、”リベル=アーク”では一緒に戦ったこともあるし………レンちゃんはメンフィルのお姫様だけど、それでもわたしの友達なの。」
「レン………どこかで聞いたことがあると思ったら………パテル=マテルを”結社”から強奪して、今の操縦者になった子ね。」
ティータの話を聞いたエリカは真剣な表情で考え込んだ。
「あー、エリカ。ワシの方から補足しとくがの……」
その様子を見た博士はエリカに話しかけたが
「補足ぅ?」
エリカは怒りの表情で博士に近づき、博士を掴みあげた。
「お、お母さん!?あの……」
その様子を見たティータは慌てた。
「これはどーゆー事かしらね。アルバート・ラッセル………ティータがメンフィル皇女の中でも最も残虐な性格をしている皇女と一緒にいたですって……?そんなこと、資料には書いてなかったわよ!」
「あー、いやのー………書きにくいんじゃよ、こういうことは………他人の目に触れた時を考えればメンフィルの皇女と友達同士とはさすがに書けんじゃろ?」
エリカに問い詰められた博士は気まずそうな表情で答えた。
「そういう意味じゃないわ。ティータをあれだけ危険な目にあわせた挙句この始末………テメー、可愛い孫とどーゆー接し方してたんだ!!……その皇女の事は他のメンフィル皇女達のように噂で聞いた事があるわ………年齢が幼いながらも殺人に喜びを見出し、さまざまな謀略を考え、プリネ様の妹でありながら、真反対の性格をしている皇女―――”殲滅天使”レン・マーシルン。資料で読んだけどあの皇女だけ性格が一番悪い上、殺人を躊躇うどころか喜んでいるような残虐な性格をしている皇女と何で関わらせたのよ!」
そしてエリカは博士に怒鳴った後、怒りの表情で言った。
「お、お母さん!わたしも開発に入れて!わたしには力はないけど、レンちゃんとちゃんと話がしたいんだ。そのオーバルギアって、パテル=マテルと対抗できるんでしょ?わ、わたしもエステルお姉ちゃんみたいな力がほしいの……!」
一方ティータは必死の表情で言った後、大声で叫んだ!
「…………ティータ?まさかあなた………オーバルギアを使って、パテル=マテルと………”殲滅天使”と共に戦場で戦う気なの?」
ティータの話を聞いたエリカは博士から手を放して、静かな表情でティータを見つめて尋ねた。
「え……?そ、そういう意味じゃなくてわたしは………」
「…………ティータ。オーバルギアを作るってどういう事かわかる?」
自分に問いかけれて不思議そうな表情をしているティータにエリカ静かな表情では問いかけた。
「えっ………う、うん…………ちらっと見ただけだけど、二足歩行タイプで……」
「そうじゃないの。オーバルギアは兵器なの。たとえどんなに美化してもね。つまるところ、人を傷つける道具なのよ。」
「で、でも………お母さんだって、そんなつもりで作ってるんじゃないでしょ……?警備飛行艇だってリベールを守る為にあるんだし……」
エリカの言葉を聞いたティータは戸惑いながら反論を言ったが
「”そんなつもり”は関係ないの。実際に兵器を使うのは私達じゃないんだから。自分が作った機械で、たくさんの人が悲しむことになる。ティータ、あなたはそんな事を考えたことある?それでも力が欲しいって言える?」
「う………」
エリカの説明を聞き、不安そうな表情をした。
「私達のやっていることは、その可能性を含んでいるのよ。私もティータのことは大好き。友達のことを大切に思うのもわかります。でも、だからこそティータの参加を認める訳にはいきません。……あなたはこんなモノに関わる暇があったら、メンフィルに留学して”魔導”を自分の知識としなさい。その方があなたの為になるし、メンフィルに留学できればそのレンちゃんって娘とも会う機会が増えるんでしょ?その時に話し合いなさい。……わかってくれるわね、ティータ?」
「………でも………わたしだって…………か、軽い気持ちで言ってるんじゃ、ないもん……!」
真剣な表情のエリカの言葉にティータは小さな声で呟いた後、涙を流して叫び、そしてどこかへ去った。
「エリカよ、今回の件はティータにもいろいろと思うところがあるんじゃろう。もーちっと尊重してやらんかい。」
ティータが去った後、博士はエリカを見て言った。
「だからって、兵器の開発なんかに入れる訳にはいかないでしょ。………自分の手を離れたものが後々どのように使われても、研究者は口出しできない。私達はそこんとこ、ハラ括ってやるしかない。」
「……まあの。」
エリカの言葉を聞いた博士は目を伏せて頷いた。
「あの子の思いもわかるけど、オーバルギア計画に触らせるわけにはいかないわ。……私やあんたを超え、両世界の技術を扱える世界一の技術者になれるかもしれないという輝かしい未来が待っているあの子は、こんなことで悩まなくてもいいんだから……」
そしてエリカは寂しそうな表情で呟いた。一方ティータはダンにエリカに言われた事等を相談するために、ダンがいる場所に向かった。
~中央工房・地下実験室~
「……お父さん!」
「ティータ?ああ、ちょっと待って。今そっちに行くから。」
ティータに気付いたダンは作業の手を止めて、ティータの元に向かい、ティータから事情を聞いた。
「そうか……エリカさんは、開発に入れてくれなかったか……」
「うん……お母さんの言う事もわかるし、全然反論できないけど……でも、悔しい………」
「……エリカさんはお義父さんとは違って、明確な研究思想を持っているからね。情熱に突き動かされるのではなく、明確な動機を持って行動する……特に今回は、リベールの国防がかかっているんだ。確かにティータの話では太刀打ちできないかなぁ……」
肩を落としているティータにダンは静かな表情で語った後、苦笑した。
「…………でもわたし、レンちゃんとちゃんと向き合いたいんだ!わっ、わたしが言ってることは子供っぽいかもしれないけど!」
「ティータ……(こんな真剣な顔を見るのは初めてかもしれないな……)ティータの言ってることは、子供っぽいっわけじゃないと思うよ。でも、オーバルギアの開発にはやっぱり関係ないかな。たとえオーバルギアがあっても、その子と向き合うのはとても難しい事だろうし……ティータ、人と正面から向き合うという事はとても大変なことなんだ。多分、ティータが想像しているよりずっとね。ティータは優しい子だけれど、優しさだけでわかってくれるとは限らないから……」
ティータの真剣な表情を見たダンは驚いた後、静かな表情で諭した。
「うん……やっぱり、わたしにはレンちゃんと話をするのは無理なのかな……わたし、また何もできないよ……」
「……………さっきティータはエリカさんに掛け合って、逆に説得されてしまったんだろう?それはエリカさんが強い信念を持っているからだ。もしその子に深い事情があるのなら、ティータはそれ以上に強い心を持たないといけない。でないと、お互いに本音をぶつけ合えないから……」
「………そういえばアガットさんが言ってた……『ケンカは気合いだ!』」
「い、いや、気合というか……(……アガット君……君も中々不安をそそるね……)えっと……この場合は覚悟、かな。その子と正面から向き合って、ぶつかりあえるほどの覚悟……口で言うほど、簡単なことじゃないけれどね。」
ティータの話を聞いたダンは冷や汗をかいた後、言った。
「………確かにレンちゃんはお姫様だけど躊躇いなく戦争に参加して、楽しそうに人を殺す人間だし、パテル=マテルは強すぎる……わたしにはエステルお姉ちゃん達みたいな力はないし、レンちゃんを引き取り”家族”として接しているプリネさん達みたいな事はできないし……わたしの言葉なんか、届かないかもしれない……
でもやっぱり、レンちゃんもパテル=マテルも放っておくわけにはいかない!」
ダンの言葉を聞いたティータは肩を落として呟いた後、決意の表情になり、ダンを見つめた。
「あ、あのね、お父さん。レンちゃんはリベールに迷惑をかけたり、躊躇いなく人を殺していたけど……わたしはレンちゃんの側にいて、一緒にお買い物とかに行ったことがあるからわかるの。レンちゃんは優しいよ。演技や義務とかじゃなくて、本当に優しいところがあるんだ。お店でかわいいペンダントを見つけたときは、思わずミントちゃんと一緒に3人ではしゃいじゃったし……わたしが転んじゃったときにはしょうがないわねって言いながら手を貸してくれたり……レンちゃんは本当にいい子なんだ。わたしはレンちゃんを親友だって思ってる。……でも、レンちゃんもパテル=マテルもわたしには遠すぎて全然手が届かない……でも……今なら近づけるかもしれない。オーバルギアがあればレンちゃんが何を見ていたのか少しはわかるかもしれない………レンちゃんも心を開いて話をしてくれるかもしれない……だから、だから……わたし、この計画に関わりたい!」
「(そうか………ティータはもう……)………………エリカさん、どう思う?」
ティータの決意の表情を見たダンは優しい微笑みを浮かべえた後、静かな表情で呟いた。
「えっ………お、お母さんっ!?いつから聞いてたのっ!?」
ダンの言葉を聞いて驚いたティータが振り返ると、そこにはエリカがいた。
「……最後のトコだけね。」
驚いているティータにエリカは苦笑しながら答えた後、ティータに近づき、そして真剣な表情で問いかけた。
「ティータ、一つ聞いていい?」
「う、うん………何?」
「もしそのレンちゃんがティータのことを友達だと思っていなかったら………ティータはどうするの?」
「……何も…………何も変わらないよ、お母さん。わたし、もうレンちゃんと関わっていくって決めたんだから。わたしは、エステルお姉ちゃんやプリネさん達みたいになれないけど………レンちゃんやパテル=マテルのことを知ったり、オーバルギア計画を手伝ったり………そしていつかはメンフィルに留学して、レンちゃんの今のお父さんやお母さんや、レンちゃんのお姉さんのプリネさん達から色んな話を聞くことができる………こんなことなら、わたしにだってできる。こんな形なら、わたしもレンちゃんと関わっていけるし、いつかはミントちゃんとツーヤちゃんのようにレンちゃんとお互いの事がわかる親友になる…………そうしたい。それがわたしの気持ちだから。」
エリカに問いかけられたティータは優しい微笑みを浮かべた後、決意の表情で言った。
「…………そう。ま、いいわ。ちょっと甘い気もするけど……計画に参加するだけの理由はあるみたいだし。」
ティータの話を聞いたエリカは頷いた後、口元に笑みを浮かべてティータを見た。
「えっ………!?」
エリカの言葉を聞いたティータは驚いた。
「ほーら2人とも、グズグズしない!……ダン!設計図書き直してるからチェックよろしく!!……ティータ!!私達は結晶回路の試作に入るわよ!!」
「………お母さん、それって…………わたしも開発に参加していいの………?」
そして口元に笑みを浮かべて指示するエリカをティータは嬉しそうな表情で見つめて尋ねた。
「……この子ったら、なに嬉しそうな顔してるのよ。参加したからにはキリキリ働いてもらいますから。」
「う、うん………任せて、お母さん!!」
「それじゃあ、行きましょうか。」
こうしてティータはオーバルギア計画に参加することになった。幾度となく出入りしていた中央工房も仕事場となると、新しい緊張感を感じさせる。ティータは大人たちに混じって一人の技師として働いた。特にエリカの要求は厳しく容赦ないものであったが………そんな厳しさもティータにとっては嬉しいものであった。―――そして数週間後。
~数週間後~
「完・成!よしっ、起動実験に入るわよ!」
エリカは完成した”オーバルギア”の試作機を見た後、振り返って言った。
「エ、エリカさん。少し休憩しよう………もう3日も働き詰めじゃないか。」
「お、お母さぁん………どうしてそんなに元気なの?」
「もう、2人とも何へばってんのよ!開発の醍醐味はここからじゃない!……特にティータ!!」
疲労感を見せているダンとティータにエリカは近づいて言った後、ティータを見て声をあげた。
「ふ、ふえっ………!?」
「今回の試作機は座席が小さくてあなたしか乗れないんだから。実験にも最後まで付き合ってもらうわよ!」
「う、うんわかってる………でも、ちょっとだけ寝かせて………」
エリカの言葉に頷いたティータは地面に座りながら眠り始めた。
「ま、しょうがないわね。こんな状態でミスられても困るし、起動実験は明日に回しましょうか。」
「ティータはよくやったと思うよ。ベテランの技術者でも、エリカさんのペースにはついていけないからね。」
眠っているティータをエリカは苦笑しながら言い、ダンは優しい微笑みを浮かべて言った。
「あ~ら、失礼ね。私はそんな体力バカのつもりはないけど。ええっと……28日の金曜日、起動実験………っと。」
ダンをジト目で見たエリカはティータに背を向けてメモをしながら呟いた。
「ん、んんん………お、お母さん………もしかして、明日って金曜日!?」
その時、ティータが目覚めて嬉しそうな表情で尋ねた。
「え、ええ。そうだけど………?」
「大変、お料理しなくっちゃ!」
エリカの言葉を聞いたティータはどこかに向かって走り出した。その様子を見たエリカとダンは首を傾げた。その時、ティータは実験室にエレベーターで降りて来た博士と鉢合わせした。
「おやティータ、どうしたんじゃ?」
「あ、お祖父ちゃん。明日は月末の金曜日だよ。」
「ああ、そうか……アガットの奴が来る日じゃったの。」
「うんっ、今日のうちにお料理の下準備をしとかないと。」
「そうじゃのー、ワシからのリクエストは………」
博士と嬉しそうな表情でティータが会話をしていたその時、空気が凍った!
「アガット……?」
「えっと……『月末の金曜日』とか聞こえましたけど……」
ティータ達の会話を聞いていたエリカは凄味のある笑顔で呟き、ダンは戸惑いながらエリカと共に2人に近づいて尋ねた。
「……あ、そっか。お父さんとお母さんはアガットさんに会うのは初めてだよね。えへへ、アガットさん月に一度は家に来てくれるんだよ。それでね……」
事情がわかっていない2人にティータは嬉しそうな表情で説明をしていたその時
「あがっとサンガ来ル日……ウフフ、丁度起動実験の日だったなんてね。………彼も運がいいわ。アハハハハハ!!」
エリカは笑顔で呟き、そして声を上げて笑った!
「えっと………お母さん??」
「ああ、ティータ。実はエリカさん、その………」
エリカの様子に首を傾げたティータにダンが説明しようとしたその時、エリカは自分の近くにあった木箱を破壊した!
「………ダン?私、いい事を思いついたわ。今回の実験には生け贄を使います。ククク……我が家に遊びに来るくらいだもの。それなりの人間性は要求されて然りよね………」
そしてエリカはダンを見つめて、とんでもない事を言った後、不敵な笑みを浮かべ
「アガット・クロスナー!!」
目を妖しく光らせて声を上げた!
「えっと……えっと……?」
「エ、エリカさん。つまり、アガット君に実験の手伝いをしてもらう……ということかな?」
エリカの様子にティータは戸惑い、ダンは驚いて尋ねた。
「あー、何じゃエリカ。アガットのやつはメカオンチでの……手伝いなんぞ勤まらんと思うが……」
一方博士は意見を言ったが
「………手伝い?フッ、生温い。」
エリカは口元に笑みを浮かべた後
「彼にはこの実験に、人生を捧げてもらうのよ!!」
声を上げて言った!
「ええ~~~っ!?」
「あ、あはは……大袈裟だなぁ………でも、協力してもらうのはやぶさかでもないかな。僕も……彼とは一度ゆっくりと話がしてみたいし。」
エリカの言葉を聞いたティータは驚き、ダンは苦笑した後言った。
「お、お父さんまで!?」
ダンの言葉を聞いたティータはさらに驚いた。
「決まりね。明日はきっと、いい日になるわ……」
「えっと、えっと………」
2人の様子をティータは慌てて見回した後
(も、もしかして………アガットさんのこと、何か勘違いしてる………??)
不安げな表情で思っていた。
そして翌日……………
ページ上へ戻る