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五歳児が行くVRMMO

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ぷろろーぐ†あばたーさくせい†

 君はこの世界で何を見て、何を感じるのだろう。とても小さな君が一人で、どんなことをしていくのか、怖くて、楽しみで、不安だ。それでも君は笑顔でその地に降り立った。しっかりとした自分を持って。

『ようこそ、■■■ online へ』

 無機質な声が君の居る空間に響く。君はそれがどこから聞こえてくるのか分からなかったのか、不思議そうに辺りを見渡した。そして、首をかしげながら声を上げる。

「誰かいるの?」

 と。だが、答えは返ってこない。返ってきた言葉は「■■■ online」というものについて説明する無機質な声。

『冒険者、盗賊、学者、何になろうと貴女の自由、だが、忘れることなかれ、この世界は都合のいい世界ではないということを』

 そんな答えを聞かされた君はキョトンとした顔で首をかしげた。言っている意味が分からなかったのだろう。それでも、すぐに笑顔でとても気持ちのいい返事をした。

「なにかわからないけど、がんばります!」

 その返事に無機質な声から返事が返ってくるわけもなく、君のいる場所の景色がパッと切り替わる。真っ黒だった空間から真っ白に。そして、君の目の前には小さな可愛らしい姿をした妖精がいた。

「わー! なにこれ可愛い!!」

 君は妖精を見た瞬間にパッと笑顔になって駆け寄り両手で掴む。そして、その妖精の顔をじろじろと見ながら可愛い、と声を上げて頬ずりした。そこで、ようやく妖精が声を上げた。

「ちょっとちょっと! いくら私が可愛いからってこの扱いは酷いわ! 私は人形じゃないのよっ!?」

 ぷんぷん、と口で言いながら妖精は君の手の中で暴れる。君は妖精がしゃべったことに驚いて目を見開いた。そして、わぁ、と感嘆の声を上げて目をキラキラとさせる。

「しゃべった! そらにうかぶにんぎょうがしゃべったぁ!」
「誰が人形よ、誰が!」

 私は妖精、と大きな声で主張しながら妖精は君の手の中からするりと抜け出す。君は妖精が抜け出したことに頭が追いついていないのか自分の手の平をじっと見つめていた。

「もうっ! 何でこんなに小さい子がこのゲームには入れてるのかしら? もしかして保護者は違う部屋で設定しているの? こんな子の親はさぞかし貴女に甘いんでしょうねぇ……」

 妖精はぶつくさと文句を言いながら手元に何か白い板を出現させた。君は今度はその白い板に興味を奪われたようでじぃっと食い入るように見つめている。

「なによ。そんなにこれが気になるの?」

 妖精は君にそういったけれど、君は聞こえていないのか無視したような形で白い板を見つめていた。そのことに苛立ったのか妖精はぶっきらぼうに今からしていくことを話していく。

「いまからあなたのキャラメイクを始めるわ。とりあえず名前教えてくれる?」
「なまえ? しらないひとにおしえちゃだめだっておかあさんいってた!」
「っ……私は妖精のティーよ。貴女は?」

 妖精が名乗ると君は嬉しそうに人形さんティーって言うの、可愛い名前、と言ってはしゃいだ。妖精はそのことにキレる。

「そんなこといいからさっさと名前教えなさいよっ!」
「いいよー。はーちゃんはねぇ、たなか はおんって言うの!」
「ふーん。じゃあ、貴女は今からハーノね」
「はーの?はーちゃん、はーのになったの?」
「そーそ。貴女はハーノよ。決定ね」

 妖精はそう言って白い板に向かって何かを操作した。そうすると、君の目の前に妖精と同じような白い板が出てくる。そこには君の新しい名前、ハーノ、と書かれていた。そして、次々に情報が足されていく。そして、いくつかの情報が足されたあと、これでよろしいですか、と君の目の前に文字が出てきた。君は何も分からず首をかしげながら、はい、を選択する。そうすると、妖精は小さく溜息を吐いて君に言葉を送った。

「色々必要なことは私が決めたから、貴女は好きなように生きなさい」
「すきなように?」
「そうよ。自由に生きていくといいわ」
「じゆう? はーちゃんじゆう?」
「? ええ、そうよ」
「そっかー! はーちゃんじゆうなのかー」

 君は満面の笑顔でそういったあと少し悲しそうな顔をして、俯いた。妖精は不思議そうにしながらも何も聞かずに君を転移させる。

「新しい世界。新しい街、新しい人。全てが全て優しくできていないわ。気をつけて」
「? きをつけて? どういうこと……」

 君は妖精に手を伸ばして聞こうとしたけれど、視界が一瞬で切り替わって聞くことは出来なかった。

 
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