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やがて妖銃の弾輝

作者:コバトン
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異能1始まりの横須賀《街》

本当はわかっていたんだ。ずっと。
命にすら関わるほど危険で、やりたくもない―――何かが迫っている事を。















「ここが居鳳町か……」

―――中学までの俺は極端にいえばハ○ヒのエンドレスエイトのようにただ同じことを永遠と繰り返していた。
朝起きて、朝飯食って、洗面と着替えをして学校に行き、学校という閉鎖された社会で夕方まで過ごして帰宅して風呂に入り、夕飯食べて寝る。
特別取り柄もやりたいこともなかった俺は中学3年間を無欠席、無遅刻といった態度で過ごし部活は帰宅部を貫いた。
休日もチャリで夜道を走るか、ガンゲーを一日中やるのが趣味といえば趣味。
それ以外、俺は、特別なことは何もしない。
勉強も遊びも、程々でいい。やる気が出なければ、物事は先送りでいい。
金はあったほうがいいけどな。
それが俺、当導 弾輝(とうどう はじき)の本音だ。
明日は高校の入学式なんだが……。




「住む家が無くなるとか、いったいどうなってんだよ⁉︎」

俺は今京○線の駅前の不動産屋にいる。
今日からこの町。神奈川県横須賀市、居鳳町に住むことになったからだ。
初めての一人暮らしができると意気揚々に不動産に来た俺だが来てそうそう借りたアパートが火災により消失した事を告げられた。
原因は不審火だとか……。
代えの物件は空きがなく金の余裕もない俺はガックリとその場で大きくうなだれる事しかできなかった。
そんな俺に救いの手を差し出してくれたのは不動産屋の社長だった。

「坊主、シェアハウス……っていうほど、立派なもんじゃねぇが、同じ建物に複数人同居でよければ知り合いが貸してる物件を紹介できるぞ?」

白く染まった角刈りの頭をかきながらそんな提案をしてくれる。

「無理じはし「お願いします」……ハハ、即答か?」

そうして俺は社長が連絡してくれるのを待ち、相手の返答を待つことになった。
2時間程してようやく連絡が取れた相手にまずは社長が応対してくれて事の経緯や俺が明日から高校生になるという趣旨、同居の希望を伝えると相手は面を喰らっていたようだが社長と話していくうちに態度を軟化させていき了承をとれた。

「ありがとうございました」

社長や店員にお礼を言い俺は不動産屋から外に出た。
目的地はJR居鳳駅。
そこで同居人が待っているとか……。
あ~大丈夫かな?
俺、あまり人付き合いよくないんだよな……。
不安を抱えつつ待ち合わせ場所に向かうとそこには俺と同い年くらいの少年がいた。

「えっと……はじめまして?」

初めて会った相手にする挨拶ではないが、俺は妙な気視感(デジャヴ)を感じていた。
この少年とはどこかで会っている……。
会ったことがある。そんな気がする。
どこだ? どこで、会ったんだ?
……駄目だ、思い出せない。

「何で疑問系なんだ?
俺は原田 静刃(せいじ)だ。
よろしく、な‼︎」

静刃と名乗った少年は先に歩き出す。

「待てよ、俺まだ名乗ってないんだけど……?」

俺の声が聞こえてるのか、いないのか。はっきりしないままどんどん進む彼の後をついていった。
しばらく歩くと洋館が見えてきた。

「すげぇ……」

唖然とする俺に静刃は……。

「早く入れよ……すぐ飽きるさ」

苦笑いをしながら家の中に入るように言ってきた。
玄関の中に入ると……。
ぱたぱたぱた、とスリッパを鳴らして女の子がやって来た。

「お帰りなさい、お兄ちゃん」

生っちろい足で立ち、むっちりした臀部にセーラー服の短いスカートを履いている。セーラー服に重ねられた少女のエプロン、その胸の部分が破けそうなくらいぱっつんぱっつんになっている。
慌てて目を逸らしたが少女の顔もちら見した。
ロングの黒髪と童顔で甘ったるい顔つきだが……とんでもなく可愛い。

「おい祈、なんて格好してんだよ⁉︎」

「?」

(いのり)と呼ばれた少女は視線を静刃から自分の服に向けた。
自分がしている格好を確認して、首を傾げる。

「何って、お料理してたんだよ?
今日はね、お兄ちゃんが好きなハンバーグだよ‼︎」

「またか……」

静刃の呟きが聞こえたが……『また』ということは頻繁に出るのか?
ハンバーグ……。

「ところでお兄ちゃん、こちらの方はお客さん?」

やっと俺に気がついた。
よかった、空気にされてなかったよ……俺。

「あ~客ってよりな……」

「はじめまして、今日から同居させていただきます。
当導 弾輝です」

自己紹介を始めた俺だがなんだろう?
やけに静刃が焦ってるな?

「ど、同居人!?
祈、聞いてないよ!?」

ぶわっと泣き出してしまった祈さん。
対人関係が苦手な俺は対応がわからず、静刃に視線を向けた。
静刃とアイコンタクトで意思の疎通をはかる。
静刃の目はこういってる『ここは俺にまかせろ!!』と。
俺は静刃に……『後は頼む‼︎』と目力で伝えた。
よし、静刃が伝えやすいようにお膳立てしておこう。

「大丈夫だよ祈さん、例え同居人が増えようと静刃が君を守るから」

「ちょっ……お前何いっ「お兄ちゃ~~~ん」っ⁉︎」

静刃が怒鳴ってきた。
だが胸に祈さんが飛び込んできてそのけしからんボディを抱きかかえていやがる。
ちっ、リア充め……爆発しろ。

イチャラブ(俺視点)する二人を残して俺は二階の空き部屋を探す。

「日用品や生活雑貨とか買わないとなぁ~」

服とかは旅行カバンに詰めれるだけつめてきた。
後は高校生活の間にそろえないと。
荷物の整理をしていると部屋の戸をノックされた。
でると祈さんが立っていた。

「ひゃあ、ごめんなさい……。
に、荷物が届いてます……」

ビクビクサレテルガオレナニカシタカ?
ショックを受けながらも階下に下りて玄関にある『それ』を手に取る。

「す、すごい……力持ちなんですね?」

力持ち?
ただのダンボール箱だが……?
重さもほとんど感じない。
虚弱体質なのかな?
祈さんは華奢だからなるべく荷物持ってあげよう。
そんなことを思いながら俺はダンボール箱を抱えて自室に戻った。

「さて、誰からだ?」

ダンボールに貼られている伝票を見たが差出人は(まゆずみ)と書かれている。
だが黛という知り合いは俺にはいない。
強烈な予感がした。
開けなければいけない。
開けたら戻れない。
だけど開けないと……生き残れない。
そんな予感がしたんだ。

迷った挙句、俺は丁寧にダンボール箱を開封して中に入っている物を取り出した。
中に入っていたのは……。



一丁の大型リボルバー式拳銃と赤い弾丸と青い弾丸、通常弾が入ったケースだった。

「は?」

意味がわからなかった……。



中学時代、俺はその『何か』を避けるため、程々の俺であり続けた。
その『何か』に巻き込まれないために、交友関係もあまり広げなかった。
特に、女は入念に避けたつもりだった。
まあ、従姉妹や幼馴染とは普通に接していたけどな……。
おかげで当時は、根暗、草食系とか言われてたな。



―――だが、入学した高校が悪かった。
俺は……いや、俺達はとうとうその『何か』と対峙し、戦うハメになる。
見つかってしまったんだ。
その『何か』と関わる、よりによって、女達に。
そう、やがて魔剱のアリスベルとやがて魔弾のマリナーぜと呼ばれるようになる―――あの姉妹に。




























「な、何だよ。
何でこんな物が……」

古びた洋館のとある部屋のとある床に『それ』は置かれている。
段ボール箱に入れられていた『それ』は箱から出され床に無造作に置かれている。
漆黒の銃身に金色のラインが3本入っており形は歪でトリガーの先、銃身の先端へと行くにつれ三角形に広がっており金文字でデカデカとX(イクス)の装飾が彫られている。
リボルバーの弾数は8発でグリップの先には伸びる秘匿性のワイヤーアンカーが収納されていた。
銃弾は赤い弾と青い弾、普通の銃弾として.44マグナムが30発同梱されていたケースに入っていた。
赤い弾は紅色でまるで燃えてるかと錯覚させるような輝きを放っている。
青い弾は逆に見る者の心を萎縮させるような濃い青色をしている。
箱から出す時に手に取ったが漆黒の銃からは禍々しい炎が触れた瞬間発生した。
気のせいかと思ったが俺が触れるたびに銃身から黒い炎が出る。
気味が悪くなった俺はすぐさま物を段ボール箱に詰め、書かれていた伝票先の住所を確認した。
何度見ても宛先はこの館で宛名は俺の名前が書かれている。
送り主の欄には名前と住所が書かれていたが……ありえん。
書かれているのは俺の実家の住所だ。
無論、親兄弟、親戚、知人に黛なんて人はいない。

「どうなってるんだ?」

気持ち悪い。
ストーカーか? 嫌がらせか? 悪戯か? ドッキリか?
誰が何の為に?
どうして俺に送ったんだ?
駄目だ。
考えてもわからない。
気分が悪くなってきた……。
少し外の空気でも吸ってくるか……。


俺は財布と携帯を持って外出しようと1Fに降りた。
階下に降りると食堂(ダイニング)から原田兄妹の声がした。
覗くと……。

「はいお兄ちゃん、どうぞ」

静刃の前に祈さんがハンバーグが載っているプレートを寄せていた。

「あの、熱かったら言ってね?祈、ふーふーするから」

「……そんな事しなくていいって。熱かったら自分で吹く」

溜息を吐きながら静刃は食べ始めた。
傍から見てると兄妹というより完璧にバカップルだな……。
女が苦手な俺にはどうでもいい事なんだが……。
だが見てるとイラつくな……。
静刃爆発しろ!!
そんな事を思いながら俺は屋敷を出た。










駅前を歩いているとリサイクルショップが目にとまった。
使えるものが売ってないか冷やかす気持で入ろうとすると入口に置いてあったクロスバイクが目についた。
値段が信じられないくらい安い。
驚きの価格、なんと新品同様で7000円だ!!
これは買うしかない。
店内に入るとすぐに店員を探して購入の意思を示す。

「え?
あ、あのクロスバイクをですか!?
お客様、少々お待ちください。
て、店長を呼んできます」

何故か慌てた様子で裏の事務スペースに駆け込む店員。
すぐに店長がやってきた。

「購入希望者は君か?
悪いことは言わない……やめときなさい」

何故か販売拒否をする店長。

「え、あれ売り物ですよね?」

「そうだ。しかし、あれはもう売らない。
そう決めたんだ……」

売らないってそんな馬鹿な!?
そう思った俺は店長に理由を聞いてみた。

「あれは、あの自転車は呪われているんだ。
呪いなんてあるわけない?
私もそう思う。
いや思っていた……。
呪いなんて信じていなかった。
だがあれを買った客は24時間以内に死ぬ……死ぬんだ!」

おいおい、突然何言っちゃってるの?

「疑うのも無理はないけどな。
あれを売り出してから3か月で8人購入者がいて、8人全員死んだんだ。
だからもう誰にも売らない。
悪いが他の商品にしてくれ……」

売らないと言われるとほしくなる。

「頼む、売ってくれ!!」

店長と店員はなにやらごちょごちょと話し込んでいる。

「……条件がある」

「何だ?」

条件?

「そこにある42型のテレビとそこのアイロンも一緒に購入するなら売っ「買った!!」……まいど~♪」

なけなしの財産全てはたいて俺は自転車をGETした。
総支払額100000円。
……いい買い物をした。
店を出た俺は早速整備が終わったクロスバイクに乗って夕日が沈む町中を漕ぎだした。


あれ?
しかし、少し冷静になって考えてみると。
なんか損してないか?
冷静に考えたら……。
自転車に乗っただけで、死ぬなんてことあるわけないしな。


神奈川県横須賀市、居鳳町。
住宅地、学校、公園、コンビニ、ショッピングセンター―――何でも揃ってるがどこか閉鎖的な町だ。
あまり好きにはなれないな。
自転車で日が落ちて暗くなった街を走っていると俺と同じように自転車で夜道を走っていた静刃がいた。
一緒に夜道を、海辺の国道を走っていると……。

・・・・・・フッ、フフッ、フフフフッ・・・・・・
俺達を追い越すように、車道の明かりが次々と消えた。
停電か?
と思った時……
――――バッ、ババババッ―――!
妙な音が聞こえた。

岩場の方に誰かいる。
岩場の人影は変な形の物体……メカを身に付けた。
少女だけじゃない。
空中にツインテールの少女がいる。
目の錯覚か?
いや違う、俺だけじゃない。
静刃も同じ方向を見ている。
静刃の視線が国道先のガードレールの脇に向いた。
俺もそちらを見るとツインテールの少女が2人いた。
危ない。
ここから、このあきらかに異常なここから逃がさないと……。
そう思い俺は声をかけてしまった。

「「―――おい!!逃げろ!」

重なる俺と静刃の声。
声をかけられた彼女達は振り向く。

「「……? どうして『絶界』に人が……?」」










これが俺と魔弾のマリナーぜとの運命の出会いで、静刃と魔剱のアリスベルとの衝撃的な出会いだった……。


















とある商店街のリサイクルショップ(おまけ)

「店長やりましたね~」

「ああ、いいカモが来てくれたな。
まさか、本当に買うとは思わなかったけどな……」

「あのクロスバイクの話ホントなんですか?」

「はは……まさかな。
商店街にある自転車屋の親父が商店街の福引で出したんだが、あまりが出たからタダで貰ったんだ。
ぶっちゃけ誰もいらない残り物さ……。
だから7000でも十分元取れるんだよ」

「悪っすねぇ~」

「誰も損してないからいいだろ」

商売人は狡猾だ。 
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