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機械の女

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2部分:第二章


第二章

「います」
「そうですか。それは何よりです」
「こういう方ですが」
 係りの者はすぐに一枚の写真を出してきた。見れば綺麗な赤いショートヘアのボーイッシュな美女だった。赤い髪とは正反対の青い目が映えている。顔立ちはまるでギリシア彫刻の様に整っている。
 その写真を見てだ。スルーは気分よく言うのだった。
「よし、それで」
「お顔はいいのですね」
「顔はタイプです」
 にこりとした顔での言葉である。
「いや、本当に美人ですよね」
「そうですか。実はですね」
「実は?」
「向こうもそう仰っています」
「この写真の美女の方もですか」
「はい、そうです」
 まさにそうだというのである。スルーはその話を聞く中もその彼女の写真を見ている。それは立体写真であり全身像が浮き出ている。ぴっしりとしたスーツに包まれた身体はスリムでありこれも彼の好みだった。
 そのスタイルも見てだ。彼は内心でさらに彼女を気に入っている自分にも気付いたのである。
「貴方のお顔もスタイルもタイプだと」
「そうですか。向こうもなのですね」
「どうですか?会われますか?」
「勿論」
 返答はもう言うまでもなかった。
「それで御願いします」
「はい、それではそういうことで」
「いや、これだけの美人がです」
 彼は上機嫌で自分の前に向かい合って話すその係りの者に自分から言ってきた。
「僕のことをタイプだとは」
「願ったり叶ったりですね」
「はい、その通りです」
 まさにそうだというのだった。彼にしてもだ。
「それでは」
「そういうことで」
「ええ、それで手配を御願いします」
 この美女と会うことの手配である。それが終わってから数日経って携帯のメールに連絡が来た。そこに書かれてあったのはその会う場所である。
 ある名前の知られた喫茶店だった。そこでだというのだ。
「よし、これでいいな」
 スルーはそれを見てあらためて頷いてであった。そうしてそのうえで指定された日のその時間に喫茶店に行った。白い綺麗な、シンプルだが今流行のシンプルな店の中である。その合理的というか機能的な席の一つにだ。その彼女がいたのだ。
「あの」
「スラット=スルーさんですね?」
「はい」
 その美女がいた。彼女はメゾソプラノの声で彼に応えてきたのである。
「そうです」
「そうですか。私はですね」
 スルーの言葉を聞いてから彼女も名乗ってきたのだった。
「エリザベス=フローニンといいます」
「フローニンさんですか」
「エリザベスでいいです」
 にこりと笑って彼に言ってきた。
「それで御願いします」
「そうですか。ではエリザベスさん」
「はい」
「それでなのですが」
 ここから詳しい話をした。こうして二人の交際ははじまった。彼女はあるIT会社に勤めている。そこで中々優秀な人材として知られていることもわかった。
 付き合ってみて彼女は聡明でしかも落ち着いた女性であることがわかった。それもまた彼の好みだった。しかもしっかりとした性格だ。見事なまでに大人の女性だった。
 そして彼女にとっても彼の性格は好みだったらしくてだ。二人は忽ちの間に親しい間柄になっていた。
 そんな彼を同僚はだ。笑いながら茶化す日々だった。
「どうだよ、いい出会いになっただろ」
「御前の言ってることもたまには当たるんだな」
 ここでは憎まれ口をわざと出すスルーだった。
「本当にたまにはな」
「また随分な言い草だな」
「御前の言うことだからな」
 また憎まれ口を言ってみせた。
「その通りだとは思わなかったさ」
「俺は嘘は言わないぜ」
「嘘は言わなくても間違えることはあるだろ」
「おっと、そうだったか?」
「そうだよ。まあとにかくな」
 言葉を一旦止めてだ。彼ににこりと笑って言ってみせたのである。
 
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