英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第24話
その後演習場内を見て回ったリィン達は待合場所であるヴァリマールの前でクレア大尉を待っていた。
~第四機甲師団・臨時拠点~
「――――お待たせしました、皆さん。」
リィン達がヴァリマールの前で待っていると旅装を身に纏ったクレア大尉がリィン達に近づいてきた。
「クレア大尉……」
「私服に着替えたんだ。」
「さすがにあの格好は余所では目立ちますから。おかしくはないでしょうか?」
「いやいや、とんでもない!」
「いや……本気で見違えたというか。」
「あはは……すごく似合ってますよ。」
「……ふふ、ありがとうございます。」
謙遜しているクレア大尉の旅装姿をリィン達はそれぞれ褒め称えた。
(やっぱり鼻の下、伸びてる。)
(まあ、クレア大尉は凄く綺麗な方ですものね……)
(うーん、男ってのは年上の綺麗なお姉さんに弱い生き物だからなぁ。)
(アタシには理解できない感覚ねぇ。)
その様子を見守っていたフィーの指摘を聞いたセレーネとトヴァルは苦笑し、セリーヌは呆れた表情でリィン達を見つめた。
「――――準備は整ったようだな。」
その時クレイグ中将が鉄道憲兵隊や部下達と共にリィン達を見送りに来た。
「父さん……」
「留守中のバックアップは隊員たちに指示してあります。何かありましたらそちらの方へ連絡を。」
「承知した。後のことは任せるがいい。後輩たる若獅子たちをしかと支えてやることだ。」
「イエス・サー。」
クレイグ中将の指示にクレア大尉は敬礼をして答えた。
「―――エリオット。たった1年足らずでよくぞここまで強くなった。お前は怒るかもしれんが……やはり士官学院に入れたのは間違いではなかったと思う。」
「あはは……怒るなんてとんでもないよ。おかげで、こうしてⅦ組のみんなと出会えた。今では父さんのことを心の底から感謝してるから。」
「エリオット……」
「……そうか。今のお前なら自分自身で道を切り開いてゆけるだろう。この内戦が終結し、帝国内のいざこざが解決し、そしてメンフィルとの外交問題がどんな形であれ、終結したら……その時こそ―――音楽の道に進む事を許そう。」
「……!」
「まあ……!」
「父さん、それって……」
クレイグ中将の口か出た予想外の言葉を聞いたリィンは驚き、セレーネは微笑み、エリオットは目を丸くした。
「なに、すぐに決める必要はない。先程のように仲間達と共に過ごす中で答えを出せばいいだろう。己自身でしっかりと悩み、導き出した答えならば少なくとも後悔はせぬ筈だ。」
「…………ぁ…………ありがとう、父さん。どうするかわからないけど……いずれ答えを出してみるよ。」
「うむ、頑張るがいい。おぬしらも壮健で―――くれぐれも気を付けるのだぞ!」
「はい……!」
「クレイグ中将もとうかお気をつけて……!」
「それじゃ。」
「失礼します!」
「父さんもどうか気を付けて……!」
そしてリィン達はヴァリマールの”精霊の道”によってユミル渓谷道に戻った。
~ユミル渓谷道~
「ここは…………」
「ユミルの裏手にある渓谷道の終点だ。どうやらちゃんと戻ってこれたみたいだな。」
「はい。これで一安心ですわね。」
周囲に戸惑っているマキアスにリィンは説明し、セレーネは安堵の表情で周囲を見回した。
「す、すごい……本当に飛んできたんだ。」
「なんだかまだ足元がフワフワしてる。」
「これが”騎神”の力ですか……あの”蒼の騎神”も同じ事ができるとしたら少々厄介かもしれませんね。」
”精霊の道”を体験したマキアス達が驚いている中、クレア大尉は真剣な表情で考え込んだ。
「まあ、いきなり目の前に出て来られたりしたら溜まったもんじゃないな。」
「霊力もそれなりに消耗するし、使える場所も限られてるけどね。戦術に組み込むにはあんまり向かないんじゃない?」
トヴァルの言葉にセリーヌが指摘したその時、ヴァリマールは地面に膝をついた。
「霊力ノ残量低下……コレヨリ休眠状態ニ移行スル―――」
「ヴァリマール……」
「大丈夫なのか?」
「戦闘と転位で霊力を使い果たしたみたいね。まあ、1日も休めばある程度は回復するはずよ。」
「そっか………おつかれさま。」
「ゆっくりと休んでくださいね、ヴァリマールさん。」
「おかげでみんなと合流できた……ありがとう、ヴァリマール。」
セリーヌの説明を聞いたリィン達はそれぞれヴァリマールを労った。
「礼ニハ及バヌ―――”起動者”ヨ。必要ナラバ再ビ呼ビ起コスガイイ――――」
そしてヴァリマールは休眠状態に入った。
「……さて、日が暮れる前に渓谷を降りるとしよう。みんな、足元に気を付けてくれ。」
「ん。」
その後リィン達は渓谷道を降り、ユミルに戻った後男爵邸に向かうとルシア夫人に迎えられ、シュバルツァー男爵の状態を確かめた。
~温泉郷ユミル・シュバルツァー男爵邸~
「……………………」
「父さん……だいぶ落ち着いたみたいだな。」
未だ眠り続けているが、顔色は良くなっているシュバルツァー男爵を見たリィンは安堵の表情をし
「教区長によると快方に向かっているそうです。目を覚ますまでは今少しかかるそうですが……」
ルシア夫人はリィン達にシュバルツァー男爵の容体を説明した。
「そうですか…………」
「その、手伝えることがあったらなんでも言ってください。」
「ん。お邪魔する以上、それが礼儀。」
「勿論、わたくしも引き続きお手伝いしますわ、ルシアさん。」
「ふふ、ありがとうございます。ですが皆さんもお疲れでしょう。今日もゆっくり休んでください。何だったら、明日くらいは1日休みにしてはどうかしら?」
「だけど……」
ルシア夫人の提案を聞いたリィンは迷っていたが
「まあ、いいんじゃないの?どっちにしろ、ヴァリマールも1日は霊力が戻らないだろうし。」
「だな、休める時に休んでおいた方がいい。」
「他の地方にいるみんなはちょっと心配だけど……」
「体調を万全に整えるのも確かに大事かもしれないな。」
「そうですわね。ケルディックでも色々とありましたし……」
「……わかった。みんなの言う通りだ。それぞれ、明日1日はゆっくり羽根を休めてくれ。」
仲間達の助言を聞き、休日を取る事を決めた。
「ラジャ。」
「私は早速、郷の通信設備の強化に取り掛かりましょう。」
ユミルで休息を取る事を決めたリィン達はそれぞれ休息の為に一端解散し、久しぶりの休息を満喫し始めた。
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