英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第21話
~ガレリア要塞跡~
「なっ!?チィッ……!」
突然の出来事に驚いたゼノだったが、レオニダスの攻撃を回避した。
「おい、レオ!何で俺を攻撃すんねんや!?頭でも打ったんか!?」
「……………………」
ゼノはレオニダスに必死に呼びかけたがレオニダスは何も返さず、無言でゼノを攻撃し
「チィッ!―――おい、そこの翼の姉ちゃん!まさかあんたの仕業か!?」
レオニダスの様子がおかしいのはベルフェゴールの仕業だと気付いたゼノはレオニダスの攻撃を回避しながらベルフェゴールに視線を向けた。
「大正解♪その男は私が操っているから、今のその男は私の命令以外耳に入らない”生きた人形”よ♪」
「なんやと!?」
「ええっ!?」
「ベ、ベルフェゴールさんがあの猟兵の方を操っているんですか!?」
「まさか……―――”暗示”か!?」
ベルフェゴールの説明を聞いたエリオットとセレーネはゼノと共に驚き、何かに気付いたトヴァルは厳しい表情をし
「……………………」
「レオ……………」
「そ、そう言えばバリアハートやヘイムダルでの戦いの時もベルフェゴール、敵を操って撤退させたり、自殺させたりしていたな……」
「……エマがあのプリネって娘に頼んで異世界から持ち帰ってきた異種族達についての本に書いてあったけど…………睡魔族は魅了系もそうだけど、暗示系の魔術に秀でているそうよ。しかも睡魔族を束ねる王族種であり、”魔王”クラスの中でも最高位に値する”七大罪”の一柱の”魔王”でもあるその女の暗示をただの人間が逃れる事なんてできる訳がないわ。恐らく”魔女”としての能力が桁外れなヴィータですら彼女の暗示は逃れられないと思うわ。」
リィンは口をパクパクし、フィーは複雑そうな表情をし、マキアスは表情を引き攣らせ、セリーヌは静かな口調で呟いた。
「クソッタレ!俺の相棒になにしてくれてんねん!?人を操って同士討ちをさせてその様子を面白がるなんて、容姿はとんでもない美人の上、本物の”天使”の癖に笑いながら犯罪者を罠に嵌めて捕まえているって噂のクロスベルの”叡智”って女刑事並みの腹黒女やな!?」
レオニダスの攻撃を回避しながらゼノはベルフェゴールを睨み
「うふふ、”戦い”は殴り合いが全てじゃなく、相手を錯乱させる同士討ちも立派な戦術でしょう?というかお金の為なら何でもする”傭兵”がそんな事を言うなんて、あまりにも可笑しすぎて笑いが止まらないわ♪アハハハハハハッ!」
睨まれたベルフェゴールは不敵な笑みを浮かべた後腹を抱えて大声で笑い、その様子を見守っていたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「え、えっと……確かに戦いに”勝つ”ために敵を”毒”等の”状態異常”にして、こちらの戦況を有利にする事は実戦技術の基本ですけど…………」
「何だか今のベルフェゴール、おとぎ話とかで出てくる”魔王”とかに見えるよね……?―――って、あ。ベルフェゴールはその”魔王”だったね。アハハ……」
「ったく、これじゃあどっちが悪党なのかわかりゃしねぇぜ……」
セレーネと共に困った表情をしたエリオットはすぐにある事に気付いて苦笑し、トヴァルは疲れた表情をし
「―――でも、ベルフェゴールの言う事も一理あるわよ。それより彼女のお蔭で向こうが同士討ちをしてくれているんだから、わざわざアンタ達が無理して戦わなくても同士討ちをしているあの二人の内の片方が沈黙した後、残りの弱ったもう片方を叩けばいいんじゃないのかしら?」
「い、幾ら何でもそれは卑怯じゃないか!?」
セリーヌの指摘を聞いたマキアスは表情を引き攣らせた状態で指摘した。
「……ま、セリーヌやベルフェゴールの言う通り、魔法や戦技で敵を”混乱”状態にして同士討ちをさせて、同士討ちの後に残った方を制圧するのも”戦術”の一つだ。漁夫の利を狙うみたいなやり方で制圧するのはちと気が咎めるが、そうも言ってられない相手だ。お前らもいつでもあの二人のどちらかが倒れた瞬間、残った一人を奇襲できるように構えておけ。」
そして複雑そうな表情をしていたがすぐに気を取り直したトヴァルはARCUSを構えてリィン達に指示をし
「………………わかりました。」
「ちょっと可哀想な気もしますが、これも”実戦”ですものね。」
指示を聞いたリィンとセレーネはそれぞれ複雑そうな表情をしていたがすぐに気を取り直して武器を構え、エリオット達もリィン達に続くように武器を構えた。
「……………………」
「クソッ!目を覚ませ、レオ!うおっ!?」
「……………………」
同士討ちをしている二人の様子を見たフィーは辛そうな表情をし
「フィー…………――――ベルフェゴール。二人の同士討ちを止めさせて、あの二人をこの場から撤退させてくれないか?」
フィーの様子に気付いたリィンはベルフェゴールに視線を向けた。
「あら?今後もあの二人がご主人様達の前に立ち塞がるかもしれないのに、逃がしてもいいのかしら?危険な”芽”は潰せる内に潰しておくべきだと思うけど。」
リィンの指示を聞いたベルフェゴールは目を丸くして尋ね
「……確かにベルフェゴールの言っている事は正しいさ。俺達6人を相手に本気も出していない状態でたった一人で互角以上に戦った”西風の旅団”の猟兵……もしまた剣を交える時が来れば、間違いなく苦戦するだろう。だけど俺達―――”Ⅶ組”の今の目的ははぐれた仲間達と合流する事で、”貴族連合”と戦う事じゃない。必要のない犠牲は避けるべきだ。」
「リィン……………」
ベルフェゴールの問いかけに対するリィンの答えを聞いたフィーは驚きの表情でリィンを見つめた。
「敵にまで情けをかけるなんて相変わらず甘いわね~。まあ、ご主人様らしいと言えばらしいか。」
一方ベルフェゴールは溜息を吐いた後苦笑しながら再び膨大な魔力を纏った眼で二人を見つめて指を鳴らした。すると二人は戦いを止めて、虚ろな目をした状態で立っており
「―――自分達の拠点に戻りなさい。」
「「…………………………」」
ベルフェゴールが命令をすると二人はその場から去って行った。
「猟兵の方達が去って行きましたわね……」
「こいつは驚いたな……あんな一瞬であんな事まできるのかよ……」
その様子を見守っていたセレーネは呆け、トヴァルは目を丸くし
「あ、相変わらずとんでもないな、ベルフェゴールは……」
「ベルフェゴールが味方で本当によかったよね……」
「まあ、ヴィータでもあれくらいなら簡単にできると思うわよ?」
マキアスとエリオットが驚いている中、セリーヌは一切動じていない様子を見せた。
「……ありがと、リィン。」
「ハハ、フィーにとってあの二人は”家族”なんだろう?」
「ん……この恩はいつか返す。」
苦笑するリィンの言葉にフィーは静かな口調で答えた。
「別に”恩”だなんて思わなくていいさ。それよりベルフェゴール、あの二人の暗示は後で解けるんだよな?」
「ええ、拠点に戻った瞬間に術の効果は切れるようにしてあるわ。」
「……ん、それを聞けて安心した。じゃ、演習場の方に――――」
ベルフェゴールの答えを聞いたフィーが頷いて提案しかけたその時
「―――貴様ら、何をしておるか!」
突如声が聞こえ、声が聞こえた方向に振り向くと何と機甲兵の部隊が現れた!
「き、機甲兵……!?」
「しかもあの先頭の機体は……!」
「”帝国解放戦線”の幹部が乗っていたのと同じ機体か……!?どうして間道方面から!?」
機甲兵を見たエリオットは驚き、機甲兵の中にいる”シュピーゲル”を見たセレーネとマキアスは真剣な表情をし
「……そういうことか。横断鉄道方面は陽動……最初から側面からの奇襲を仕掛けるつもりだったみたい。」
フィーは真剣な表情で機甲兵が現れた理由を推測した。
「なぜ民間人がここに……?」
「ええい、作戦の邪魔だ!民間人はどけ!」
一方機甲兵達はリィン達に警告した。
「……どうする?ゼノたちは離脱したけど……ちょっとマズイね。」
「くっ、あの時は何とか1体は倒せたが……」
「こ、この人数であれだけの数は…………」
「お、お兄様?どうして武器を収めるのですか?」
フィーたちが機甲兵を警戒している中、太刀を鞘に収めたリィンに気付いたセレーネは戸惑った。
「―――下がっていてくれ、みんな。」
「リィン。」
「まさか……」
「”アレ”をよぶの!?」
「ああ……それしかない!来い―――灰の騎神”ヴァリマール”!」
そしてリィンは手を空へと掲げて自分の心強き”仲間”の名を呼び
「応―――――!」
自然公園の奥地でずっと待機していたヴァリマールはリィンの呼びかけに応じ、その場から高く跳躍してリィンの元へと飛び去って行った!
~ケルディック・領主の館~
「あら?この音は一体……」
一方その頃、館のバルコニーで休憩していたプリネは何かの駆動音に気付いて首を傾げ
「――――あそこだ。」
「え…………」
レーヴェの視線につられるように視線を向けると何とヴァリマールがどこかに向かって飛び去って行った!
「あ、あれはまさか……!」
「話にあった”灰の騎神”とやらだな。パテル=マテルに録画されていた姿とも一致している。」
「そして”灰の騎神”が起動者―――リィンさんの元に向かっているという事は、”灰の騎神”を使わざるを得ない状況になっているという事ね……(無事に切り抜けて下さい、皆さん……)」
飛び去って行くヴァリマールを見たツーヤは驚き、レーヴェは目を細め、プリネは静かな表情で呟いた後仲間達の無事を祈った。
そしてリィンの元へと向かっていたヴァリマールはリィン達の目の前に着地した!
~ガレリア要塞跡~
「なっ……!?」
「は、灰色の――――騎士人形!?」
「馬鹿な……どうしてこんなところに現れる!?ま、まさか貴様たちは―――」
ヴァリマールの登場に機甲兵を操縦している領邦軍達は混乱した。
「……………………」
「ほんとに来た。」
「や、やっぱり凄いや……!」
「はい、さすがはお兄様ですわ!」
「すまん、あとは頼んだぜ!」
「ええ、任せてください!」
「うふふ、お手並み拝見といかせてもらうわよ、ご主人様?」
そしてベルフェゴールはリィンの身体に戻り、リィンとセリーヌはヴァリマールの元へと走って行き、光に包み込まれた後ヴァリマールの中に入って行き、ヴァリマールは格闘技の構えをした。
「お、おのれ小癪な!―――行け、我らが誉れ高き竜騎士たちよ!所詮は武器を持たぬ木偶……一斉攻撃で片をつけてやれ!」
「「ハッ!!」」
シュピーゲルの指示に答えた2体のドラッケンはヴァリマールと対峙した。
「よし……今回は存分に動けそうだ。」
「あの数はさすがに厄介ね。何とか武器を調達すればよかったんだけど……どうする?魔王達に1体か2体程、相手してもらう?」
「いや……問題ない。武器なら―――”目の前にある”。」
「フフン、なるほどね。だったらまずは1体、確実に片付けなさい!」
「ああ、わかってる。―――行くぞ、ヴァリマール!」
「応――――!」
そしてヴァリマールは2体のドラッケンとの戦闘を開始した!
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