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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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異伝~異なる『旅路』の始まり~

~?????始動より半年前・ノックス森林道~



「ん……?………!!大丈夫ですか!?」

警察学校の敷地内の森をランニングしていたロイドは悪魔のような容貌や翼を持つ男性が瀕死の状態で倒れているのを見つけ、その人物に慌てて近づいた。

「………グッ……………」

ロイドに呼びかけられた男性はわずかだが、弱弱しい声を上げた。

「今、手当てをしますので、気をしっかり持って下さい!」

そしてロイドは手持ちの薬等で男性の傷の手当てをし始めた。

(なっ………!ギレゼル!?どうしてこの世界に………!それにこの傷は一体………)

(ルファ姉?この人の事を知っているのか?)

ロイドが傷の手当てをしている中、驚いた様子のルファディエルの念話を聞いたロイドは念話で尋ねた。

(…………ええ。………それよりロイド、本当にギレゼルを助けるつもり?……その男は”悪魔”よ?)

(悪魔とかそんなの関係ない!助けられる命は助けて当然だろ!?それよりルファ姉、確か治癒魔術が使えただろ?頼む、この人の傷の手当てを手伝ってくれ!)

(………わかったわ。その男には聞きたい事もあるし、私も手伝ってあげるわ。)

「頼む……ルファ姉!」

そしてルファディエルはロイドに召喚された。

「フウ………この私がまさか悪魔の命を助ける日が来るとはね………癒しの息吹!!」

溜息を吐いたルファディエルは気を取り直した後、治癒魔術を悪魔のような容貌や翼を持つ男性――ギレゼルの傷を治療した。



「んあ……?」

「あ……目が覚めた………!」

「……………」

ギレゼルが目を覚ますとロイドは嬉しそうな表情をし、ルファディエルは警戒した表情でギレゼルを睨んでいた。

「どこだ、ここ……?それに何で生きてんだ……?あの時、メヒーシャちゃんと一緒にクリエイター共を葬っていて、力尽きたはずなんだが………」

「(ギレゼルがメヒーシャと……?どういう事………?)……それは私があなたの傷を治療したからよ、ギレゼル。」

ギレゼルが呟いた言葉を聞いたルファディエルは眉を顰めた後、真剣な表情でギレゼルを睨んで言った。

「お?ルファディエルじゃねえか!何でこんなとこにいるんだ?秀哉達と脱出したんじゃなかったのか??」

「………それはこちらのセリフよ。秀哉達と脱出……という言葉も気になったんだけど、あのメヒーシャがあなたと共闘するなんて考えられないわ。一体何があったのよ?」

「おいおい、何を言ってんだよ。秀哉達の提案の元、俺達悪魔とお前達天使はお互い争うのを一時休戦して、共通の敵を倒す為、秀哉達と一緒に敵の本拠地に乗り込んで、共に戦ったじゃねえか!」

「…………その話、詳しく聞かせて頂戴。」

「お?ま、いいぜ。その代り、そっちの話も聞かせろよ?」

ルファディエルに言われたギレゼルは自分が最後を遂げるまでの経緯――天使、悪魔が人間と共闘して、共通の敵を倒し、そして脱出する際、仲間達を逃がす為にある天使――メヒーシャと共に残って、襲い掛かって来る敵達を滅して行き、疲労の末、メヒーシャと共に最後を遂げた話を説明し、ルファディエルは人間が天使に保護を求め、そして人間達と共に戦って、悪魔達を滅ぼした事を説明した。

「ふ~ん………まさか、セルベルグ達を滅ぼすとはね~………さっすがは秀哉!!俺の目にくるいはなかったぜ♪それにあのメヒーシャちゃんが秀哉にメロメロとはね~……クク、その様子をぜひ、この目で見たかったぜ♪」

「…………まさか、こんな事があるなんて…………」

ルファディエルの話を聞いたギレゼルは陽気に笑い、ルファディエルは信じられない表情で呟いた。

「えっと……ルファ姉?ギレゼルさん?だっけ。その人とは知り合いじゃないの?」

2人の様子を見たロイドは戸惑いながらルファディエルに尋ねた。

「………この男――ギレゼルは私の知るギレゼルではなく、別のギレゼルよ。」

「??一体それって、どういう事??」

「ロイドだっけ?俺とルファディエル、お互いにとって俺達は”並行世界”の人物なんだよ。」

ルファディエルの話を聞いて首を傾げているロイドにギレゼルは何でもない風に答えた。

「”並行世界”!?嘘だろう!?」

「信じられないのは私も同じよ………けど、ありえない話ではないわ。………実際こうして目の前に私の知るギレゼルではないギレゼルがいるのだしね。」

驚いているロイドに同意するようにルファディエルは頷き、ギレゼルを見た。

「俺はお前が俺の命を助けた事に驚いたぜ~♪だって、お前の話だと、悪魔達はお前達に滅ぼされたんだろ?」

一方ギレゼルは興味深そうな表情でルファディエルを見て尋ねた。

「……確かにそうだけど、あなただけは消息不明よ。……”歪秤世界”では椎名沙夜音と行動をし、そのまま消息を断ったようだけど……鳴海の話では椎名沙夜音もいつの間にか元の世界に戻っていたと聞くわ……恐らく私が知るギレゼルは椎名沙夜音と共に行動をしているんじゃないかしら。」

「ふ~む……沙夜音ちゃんか。確かに俺なら秀哉の次に組むとしたら、沙夜音ちゃんかもな♪く~……羨ましいぜ、もう一人の俺!!けど、俺は秀哉と沙夜音ちゃんと一緒に組んだから、それ以上に面白かったけどな♪」

ルファディエルの話を聞いたギレゼルは嬉しそうな表情で答えた。



「え~と……それでギレゼルさんはこれからどうするんですか?」

「呼び捨てでいいし、口調ももっと軽めでいいぜ。お前が俺を見つけてくれたお蔭で生き延びれたんだからな。」

「わかった。………それでこれから、どうするんだい、ギレゼル。話に聞く所、君もルファ姉と同じくこの世界や俺の知る異世界とはまた異なる世界の出身のようだし……」

「ん~……そうだな。……………………………」

ロイドに尋ねられたギレゼルは呟いた後、ロイドの顔をジッと見た。

「え、えっと……?」

ギレゼルに見つめられたロイドは戸惑ったその時

「よ~し………決めたぜ!ロイド!俺様、これからはお前と共に行動をするぜ♪」

「ハアッ!?」

「………何を考えているのかしら?」

ギレゼルの答えを聞いたロイドは驚き、ルファディエルは警戒した表情でギレゼルを睨んで尋ねた。



「ロイドには俺様の命を助けた恩もあるし、何よりロイドからは秀哉とどこか似た感じがすると俺の勘が告げている!お前について行けば、何か面白い事が起こるという勘がな!現に”あの”ルファディエルがロイドにメロメロだしな~♪」

「……勘違いしないで頂戴。私はロイドの”姉”として見守っているだけよ。……せっかく助かった命……この場で消してあげてもいいのよ?」

からかうような表情でギレゼルに見られたルファディエルは杖を構えて、ギレゼルを睨んだ。

「おおー、怖い怖い。という訳で、ロイド!両手を出してくれ。」

「え、えっと……?」

ギレゼルに言われるまま、ロイドは戸惑いながらギレゼルの目の前に両手を出した。するとギレゼルはロイドの両手を握り、両手から伝わるロイドの魔力に同化して、その場から消えた。

「えっと………ギレゼル、ルファ姉と契約したみたいに消えたけど……本当にギレゼルも俺と契約を?」

「………ええ。呼べば出て来るわ。」

「わかった。……ギレゼル!!」

疲れた表情のルファディエルの答えを聞いたロイドはギレゼルを召喚した!

「堕天使ギレゼル、これからロイドの使い魔だ!さあ………ここからは俺様の真ルートだぜ♪」

「は、はは………まあ、これからよろしく。」

「ハア………まさかこんな事になるなんてね…………(……それにしても、まさかギレゼルのように”並行世界”のメヒーシャもこの世界にいるのかしら?)」

高々と言うギレゼルにロイドは苦笑し、ルファディエルは溜息を吐いた後、真剣な表情で空を見上げた。



~同時刻・アルテリア法国・某所~



「うっ…………ここは…………?」

ルファディエルが空を見上げたその頃、アルテリア法国のある部屋のベッドで所々包帯が巻かれている女性が目覚めた。

「あ……目が覚めましたか………!よかった………!」

その時部屋に入って来たある人物――エリィが目覚めた女性に気付き、安堵の表情で女性に近づいて来た。

「……人間か。誰だ、お前は。それにここはどこだ……?」

エリィを見た女性は静かに目を伏せた後、尋ねた。

「私の名はエリィ。エリィ・マグダエルです。………ここは七曜教会の総本山、アルテリア法国の宿泊施設の私が借りている部屋です。……よければ、天使様。貴女の名を窺っても構いませんか?」

女性に尋ねられたエリィは自己紹介をした後説明をし、女性――薄い青の髪を腰までなびかせ、頭上には光り輝く小さな光の輪、2対の美しい白き翼を持ち、水曜石のような青い瞳を持つ天使に尋ねた。

「……”大天使”メヒーシャだ。エリィといったな。……お前には聞きたい事がいくつかある。」

「はい、なんなりと。」

そしてメヒーシャは何故、自分がエリィが借りている部屋にいる事や手当てをされている事、そして自分がいる世界の事を尋ねた後、エリィの答えを聞いて考え込んだ。

「………フン。まさかこの私が異世界とはいえ、”人間”に命を救われるとはな……皮肉な話だ。………それにしてもよくその細腕で私をこの部屋まで連れてこれたな?」

エリィの話を聞き終えたメヒーシャは皮肉気に笑った後、エリィを見て尋ねた。

「……知り合いの方に手伝ってもらって、何とかベッドに運び終えました。」

「……そうか。いくら相手が”人間”とはいえ、命を救われた事に変わりはない。……感謝する。」

「いえ。……命が助かって何よりです。……しばらくは傷を治すのを専念して、ゆっくりなさって下さい。」

静かな表情のメヒーシャに感謝されたエリィは静かに頷いて言った。そしてメヒーシャは数日間、傷を癒すために身体を休め、完全に傷が治ったある日。



~数日後~



「……ようやく完治したか。」

傷が完全に治り、自分が普段から着ていた蒼き鎧を再び身に纏い、斧槍を片手に持ったメヒーシャは自分の身体の状態を確かめて呟いた。

「メヒーシャ様はこれからどうなさるおつもりですか?」

「…………………………」

エリィに尋ねられたメヒーシャは目を閉じて、考え込んだ後、やがて目を見開いてエリィを見て尋ねた。

「そういえば、エリィ。お前の姉は異世界の国の王に嫁ぎ、その縁でお前は異世界の国――メンフィルに留学するのだったな。」

「え、ええ。姉の結婚式が終わった後に留学するつもりですが………それがどうかしましたか?」

メヒーシャの突然の問いにエリィは戸惑いながら頷いた後、尋ねた

「………そうか。………”大天使”メヒーシャ、エリィ・マグダエルより受けた恩を返す為、しばしの間お前を守ろう。」

そしてメヒーシャは姿勢を正して厳かな口調で答えた後、斧槍を持っていない片手でエリィの片手を握り、手から伝わるエリィの魔力に同化してその場から消えた。

「え!?メ、メヒーシャ様!?」

メヒーシャの突然の行動に驚いたエリィはメヒーシャの名を呼んだ。するとメヒーシャがエリィの前に召喚された!

「あ、あの………先ほど私を守るとおっしゃっていましたが……それに今のは一体……?」

「……”契約”だ。しばしの間、私はお前の魔力と同化し、普段はお前の身体の中にいる。お前が私の名を呼んだり、お前自身危機に陥れば、この斧槍にてお前を守ろう。」

「は、はあ……天使であるメヒーシャ様に守ってもらえるなんて光栄ですが……なぜ……?」

メヒーシャの答えを聞いたエリィは戸惑いながら尋ねた。

「………例え相手が”人間”とはいえ、受けた恩を返さずに去る訳にはいかぬしな。……それに両世界を自由に行き来できるお前と契約していて、損はあるまい。……後、今後は私の事は呼び捨てで構わん。仮にもお前は私の契約主なのだしな。」

「…………わかったわ。しばらくの間、お願いね、メヒーシャ。」

メヒーシャの答えを聞いたエリィは静かに頷いた後、メヒーシャに微笑んだ。



~同時刻・レマン自治州・某所~



メヒーシャがエリィと契約したその頃、水色の髪を束ねて肩までなびかせ、黄色の瞳を持つ少女――ティオはある場所で瀕死の状態で倒れていた白熊のような姿で、一対の白き翼と頭上に光り輝く輪がある”能天使”――ラグタスの傷をアーツと治癒魔術を使って傷の手当てをし、目覚めたラグタスに自分や世界の事を説明した後、ラグタスから驚くべき提案をされて戸惑った。

「え……”契約”……ですか?」

「うむ。お前には我の命を救った恩もあるが………それに人間でありながらその身に秘める膨大な”闇”の力……ほおっておく訳にはいかぬ。」

「………!気付いていたんですか……さすがは”天使”と言った所ですか………」

ラグタスの言葉を聞いたティオは驚いた後、ラグタスから視線を外して答えた。

「フッ。お前と契約するのは”見張る”為ではなく、”見守る”為だ。その力を正しき方向へと導く為に……な。」

「…………わかりました。それならぜひ、お願いします。」

「うむ。」

ティオの答えを聞いたラグタスは頷いた後、ティオの両手を握り、両手から伝わるティオの魔力に同化してその場から消えた。

「………これが”契約”ですか。悪魔のような黒い翼を持つ私に天使が見守ってくれるなんて……おかしな話ですね。………ラグタス!」

ラグタスが消えた後、自分の状態を確かめたティオは複雑そうな表情で呟いた後、ラグタスを召喚した!

「”懲罰部隊”の長、”能天使”ラグタス、これよりティオ・プラトーの行く末を見守る。戦になれば、率先して我がお前の盾となろう。」

「………数ヶ月後に私が出向し、所属する”特務支援課”は野外での戦闘もあると聞きます。……あなたの力、頼りにしています。」

「うむ、任せておけ。」

静かな表情のティオに見つめられたラグタスは力強く頷いた後、空を見上げて、ある人物の事を思った。

(……我が生きているとなると……”死神”。まさか貴様も生きているのか………?)



~同時刻・クロスベル・西クロスベル街道~



ラグタスがある人物の事を思って空を見上げたその頃、青年――ランディは非番の日にクロスベル市に羽を休めに行き、その帰り道で頭に2本の角が生えていて薄い紫色の髪と妖しき紫紺の瞳を持ち、黒いローブ姿の女性が瀕死の状態で倒れているのを見つけ、女性の手当てをした後、女性は”死神”エルンストと名乗り、エルンストはランディから自分の知りたい事を聞いた後、意外な提案をした。

「”契約”?なんだそりゃ??」

「わかりやすくいえば、あたいがあんたの配下になるって事さ。呼べばいつでも戦ってあげるよ!」

自分の話を聞いて首を傾げているランディにエルンストは好戦的な笑みを浮かべて答えた。

「そりゃありがたいが………何で俺なんだ??」

「あたいの勘が告げているんだよ。……あんたはいつか”戦争”に巻き込まれるってね。それもとびっきりの面白い戦争さ!そんなあんたについていけば、あたいも楽しめるって事さ!」

「……………………………ハハ………冗談キツイぜ………………」

エルンストの答えを聞いたランディは呆けた後、皮肉気に笑った。

「で?どうするんだい?」

「……ま、これも縁と思って契約するよ。見た所俺より軽く実力が上のようだし……いざという時に頼むわ。」

「クク………よく言うよ。あんた………相当の修羅場を潜って来たんだろ?」

ランディの言葉を聞いたエルンストは不敵に笑った後、ランディを見た。

「…………………………」

エルンストの言葉を聞いたランディは目を細めてエルンストを睨んだ。

「クク……だんまりか。ま、いいよ。両手を出しな。」

「……ああ。」

そしてエルンストはランディの両手を握り、両手から伝わるランディの魔力に同化し、その場から消えた。



「……”死神”か。ハハ……ある意味俺にはピッタリな奴だな。………エルンスト!」

エルンストが消えた後、ランディは皮肉気に笑った後エルンストを召喚した。

「ま、これからよろしく頼むぜ。」

「ああ。”大蛮族”の長、”死神”エルンストの力………これからの戦いでタップリと思い知らせてあげるよ!」

ランディの言葉にエルンストは好戦的な笑みを浮かべて答えた後、空を見上げてある人物の事を思った。

(クク………あたいが生きているって事はラグタス、あんたも勿論生きているんだろ?今度出会った時は敵か味方か……どっちにしてもあたいにとっては最高の展開だよ………!)



こうして……4人の人物達はそれぞれ異なる世界の天使や悪魔と契約した……………!




 
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