英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第132話(終章終了)
崩れ落ちる浮遊都市”リベル=アーク”からアルセイユ、山猫号、モルテニア、グロリアスは周回しながら離れて行った。
~山猫号・ブリッジ~
「お願い、キール兄!このままじゃヨシュアたちが……!」
「駄目だ、ジョゼット……。……あの様子じゃ、もう……」
ジョゼットの懇願にキールは悔しそうな表情で答えた。
「そんな……」
「……クソッ……最後の最後でなんで……。こんな時に……女神達は一体何やってやがる!」
キールの答えを聞いたジョゼットは悲しそうな表情をし、ドルンは悔しそうな表情で叫んだ。
~モルテニア・ブリッジ~
一方その頃、リウイ達も崩れ落ちる浮遊都市を見守っていた。
「お父様!お願いします!どうかエステルさんを………ヨシュアを助けて下さい!」
「余からも頼む、リウイ!」
ブリッジにいたプリネとリフィアは血相を変えてリウイに詰め寄り、懇願した。
「…………先ほど俺が言った助言をエステルが気づき、実行していたのなら、2人が無事である可能性はある。」
2人の懇願にリウイは崩れ落ちるリベル=アークを見つめながら、静かに答えた。
「それって一体どういう事なの、リウイ?」
リウイの言葉の意味がわからなかったカーリアンは尋ねた。
「………エステルが契約している者の中で、一人だけ2人を助けれる者がいるだろう。」
「え………あ………!」
「フフ、なるほど。エヴリーヌ達が助けに行かなくても、よさそうだね。」
リウイの言葉を聞いて呆けたプリネだったがある事に気付き、エヴリーヌは微笑んでいた。
~アルセイユ・ブリッジ~
「そ、そんな……」
「ま、間に合わへんかったか……」
「………エステル…………」
「う、嘘だろ……」
一方アルセイユで崩れ落ちるリベル=アークを見つめていたシェラザード、ケビン、リタ、アガットは信じられない表情や無念そうな表情をし
「や、やだ……。そんなのやだあああっ!」
「ママ――――――!!パパ――――――!!」
ティータやミントは泣き叫んだ。
「ユリアさん!どうかお願いします!避難通路の方向から考えてエステルさんたちは北西の端にいるはずです!どうかアルセイユをそこへ!そしてリウイ陛下やルース将軍にも連絡して下さい!私自ら嘆願します!」
「……申し訳ありません……。いくら殿下の命令でもそれは……従いかねます。」
「……アルセイユの推力も完全には戻っていない状態だ。今、再び都市に近付けば間違いなく崩壊に巻き込まれる。それは無事であるモルテニアやグロリアスも同じ事。そうですな、ラッセル博士?」
クローゼの必死の懇願にユリアは悔しそうな表情で答え、ミュラーも静かに答えた後博士に尋ねた。
「……その通りじゃ。」
「……そ、そんな…………」
「はは……参ったな……。場を和まそうと思っても頭が真っ白だよ……」
「……ああ、俺もだ。」
博士の言葉を聞いたクローゼは絶望した表情をし、オリビエは肩を落として溜息を吐き、ジンは無念そうな表情で頷いた。
「あいつら……うう……。これからだってのに…………こんな事になっちまって……」
「エステルちゃん……。……ヨシュア君……。あれ~……?」
アルセイユのメンバーが悲しみに暮れる中、ドロシーが声を上げた。
「おい……ドロシー……。こんな時くらい……大人しくしてろっての……」
ドロシーの声を聞いたナイアルはドロシーに注意した。
「いえ、その~……。なんだかジーク君が嬉しそうに飛んでいったなあって。」
「へ……」
「あ……」
ドロシーの言葉を聞いたナイアルは驚き、ユリアは何かに気付いて声を上げた。するとジークが飛んでいった先にはエステルとヨシュアを乗せて飛行しているカファルーとその隣にはカシウスを乗せた古竜――レグナートが飛行していた!
~リベール領空~
「ちょ、ちょっとレグナート!どうしてあなたがこんな所に……。それにどうして父さんまでここにいるのよっ!」
「なに、王国全土の導力がようやく回復してくれたんでな。モルガン将軍に後事を任せてこうして彼に乗せてもらったんだ。………それにしても驚いたぞ。まさかレグナートともいい勝負をする存在すらとも契約していたとは。」
「グオ。」
驚いて尋ねるエステルにカシウスは笑いながら答えた後、苦笑しながらカファルーに視線を向けた。
「の、乗せてもらったって……」
「さすがに驚いたよ……。……初めまして、レグナート。あなたの事はエステルから聞いています。わざわざ僕達を助けに来てくれてありがとうございます。」
カシウスの答えにエステルは呆れ、ヨシュアはレグナートを見てお礼を言った。
(フフ、礼には及ばぬ。新たな風が吹いたのでな……そのついでに翼を運んだだけだ。まあ、我の必要はなかったみたいだがな。)
「えへへ……でも、お礼を言っておくわ。来てくれてありがとう。……あれ、そういえば……確かあなたって、人を見守るだけの存在なのよね?あたしたちを助けてよかったの?」
レグナートの念話を聞いたエステルは苦笑しながらお礼を言った後、ある事に気付いてレグナートに尋ねた。
(それは”輝く環”を前におぬしらが答えを出すまでのことだ。そして答えが出された今、古の盟約は解かれ、禁忌も消えた。ゆえに”剣聖”の頼みに応じ、こうして迎えに来たというわけだ。)
「古の盟約……」
「訳、分からないんですけど……」
「安心しろ、俺にも分からん。何しろこの堅物ときたら肝心な事はロクに喋ってくれないのだからな。」
レグナートの念話を聞いたヨシュアは驚き、エステルはジト目になり、カシウスは疲れた表情で溜息を吐いて答えた後、レグナートに視線を向けた。
(フフ、許せ。竜には竜のしがらみがある。……まあ、お前達の傍にいる竜達のような例外の竜達もいるようだが…………ただ一つ言えることは運命の歯車は、今まさに回り始めたばかりということだ。そして、一度回り始めた歯車は最後まで止まることはない……。心しておくことだな。)
「そうか……」
「ちょ、ちょっと待って……!」
「また同じようなことがリベールで起こるというの?」
レグナートの念話を聞いたカシウスは真剣な表情で頷き、エステルは血相を変え、ヨシュアは真剣な表情で尋ねた。
「いや、その運命は別の場所で、別の者たちが引き受けることになるだろう。―――とにかく今回はお前たちも本当によくやった。今はただ何も考えず、ゆっくり休むといいだろう。かけがえのない仲間と共にな。」
しかしカシウスはエステル達を安心させるかのような優しい表情で2人を見つめて言った。
「あ……」
カシウスの言葉に驚いたエステル達がカシウスが向けた視線を追っていくと、そこには甲板に出たアルセイユ、モルテニア、山猫号のメンバーの達が嬉しそうな表情でエステル達を見つめたり、手を振ったりしていた。
こうしてエステル達はリベールの異変を食い止める事に成功し、そしてエステルを含めた仲間達はそれぞれの新たな道へと歩み始めた。
~数ヶ月後・ハーメル村~
リベールの異変より数ヶ月後、エステルとヨシュアはハーメル村のカリンの墓碑を訪ねていた。
「……姉さん、ただいま。」
エステルの隣にいたヨシュアは花束を墓碑に置いて黙祷した後、エステルも続くように黙祷した。
「あのさ、ヨシュア。」
「何、エステル?」
黙祷が終わり尋ねられたエステルにヨシュアは尋ね返した。
「何でカリンさんのお墓参りをしているの?」
「何でって………ここに姉さんが眠っているのは違いないだろう?」
エステルに尋ねられたヨシュアは不思議そうな表情でエステルを見て言った。
「あたしが言いたいのはそういう事じゃなくて……」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルはジト目になった後、ある場所に身体を向けて指をさした。
「カリンさん、今は生まれ変わってああして生きているじゃない!」
「ア、アハハ………」
エステルに指をさされて叫ばれたプリネは苦笑した。
「………姉さんの”死”に囚われないという”けじめ”の為にもどうしても最後に一度だけよっておきたかったんだ。」
「ヨシュア……」
「……………」
ヨシュアの言葉を聞いたプリネとレーヴェは静かにヨシュアを見つめた。
「えっと………改めて言うのもなんですけど、あたし、エステル。エステル・ファラ・サウリン・ブライトっていいます。弟さんの家族で、こ、恋人です!」
そしてエステルは姿勢を正して、緊張した様子でプリネを見つめて言った。
「フフ、別にそんなにかしこまらなくてもいいですよ。私とエステルさんは友達なんですから。ヨシュアの姉としてエステルさんのような素敵な方がヨシュアの恋人になってくれて、とても嬉しいですよ。」
「えへへ………」
プリネに微笑まれたエステルは恥ずかしそうな表情で笑った。そしてプリネはヨシュアに視線を向けて尋ねた。
「ねえ、ヨシュア。ちなみにエステルさんのどんな所を好きになったのかしら?」
「ちょ、ちょっとプリネ………!」
プリネの言葉を聞いたエステルは慌てた。
「エステルを好きになったのは色々あるけど………一番はいつも明るく、前向きでお日様みたいに輝いてて……。そんな所が好きになったんだ。」
「!!」
そしてヨシュアの言葉を聞いたエステルは顔を赤らめて、背を向けた。
「ま、まったくもう……。よくそんな恥ずかしい言葉をシレッと口にできるわね……」
「あれ、嬉しくない?」
「嬉しいわよ!わ、悪かったわね!」
「怒られても……」
「クスクス………」
「フッ…………」
エステルとヨシュアの痴話喧嘩にプリネは優しい微笑みを浮かべ、レーヴェは口元に笑みを浮かべていた。
「そういえば、プリネはともかくレーヴェはよく”こっち”の世界に来られたわね。女王様が下したレーヴェへの判決ってレーヴェが結社で活動していた年数分、監視役がいない限り、こっちの世界に来ては駄目っていう罰でしょう?」
「ああ。勿論俺一人では不可能だから、”覇王”が信頼する家臣の一人が俺の監視役として俺とカリンの傍にいただろう?」
エステルに尋ねられたレーヴェは静かに頷いて言った。
「2人の傍にいた人ってツーヤよね?まあ、確かにツーヤは皇族の一人――プリネの世話兼護衛役だし、しかも皇家と縁深い”ルクセンベール”家の当主だから、信頼されていると言えば信頼されているわね。しかもツーヤ、マーシア孤児院の事もあるからレーヴェの事、完全には許していないだろうし。」
「………ああ。俺はカリンを守る女性――ルクセンベール卿にとって大事な孤児院を燃やした一味を率いていた張本人だ。孤児院に住む者達を助けたとはいえ、それだけで許される事ではない。………これから償っていくつもりだ。」
「レーヴェ…………」
エステルに尋ねられたレーヴェは静かに答え、それを聞いたプリネは目を伏せた。
「それと気になったんだけどさ………2人って結婚できるの??こういう言い方はあんまり好きじゃないけど、今の2人って身分がかなり離れているじゃない。」
「……………………」
エステルが尋ねた言葉を聞いたヨシュアは何も答えず、心配そうな表情で2人を見つめた。
「………ええ。エステルさんの言う通り、家族や親族のほとんどの方達からはあまりいい顔をされていません。中には結婚するのをやめたほうがいいという方達もいらっしゃいますし………」
「………それは当然だろう。結社を抜けたとはいえ、俺はメンフィルの同盟国、リベールより預けられた”重罪人”だ。俺がリベールに与えた被害も詳細に知らされているし、そんな男との結婚を許す者等、いなくて当然だ。………むしろ”闇の聖女”や”癒しの聖女”、”聖魔皇女”、そして”覇王”の正妃が賛成していたのが不思議なぐらいだ。………4人のお蔭で俺は今、こうしてカリンの傍にいる事が許されているからな……最も、”魔弓将”からは毎日会ったら殺気を向けられる上、時には攻撃をされるがな。」
エステルの言葉を聞いたプリネは表情を暗くして答え、レーヴェは静かに答えた後、苦笑した。
「お母様やティアお姉様、リフィアお姉様とイリーナ様は私の幸せを純粋に願ってくれているから………エヴリーヌお姉様は多分、ずっと可愛がってきた大事な妹である私を取られて嫉妬しているんだと思うわ。」
「ハハ………エヴリーヌの気持ちは僕もわかるよ。」
プリネの言葉を聞いたヨシュアは苦笑しながら言った。
「………それでもお父様、レーヴェの事を私の伴侶として認めていないけど、”戦士”としては認めてくれていると思うわ。実際レーヴェの腕をお父様自身が確かめて、本気のお父様の攻撃を何度も防いだ腕を認めて今の身分にしてくれたんだから。」
「………そうは言うが、俺は反撃どころか防ぐのに精一杯だった上、防げたのはわずか3回だぞ?」
「へ?それってどういう事??」
「……今の俺の立場はカリン――メンフィル皇女プリネ・カリン・マーシルンの”見習い護衛騎士”という立場だ。まあ、ルクセンベール卿のように叙勲はされていない上、信頼もされていないがな。」
プリネとレーヴェの話を聞き首を傾げたエステルにレーヴェは苦笑しながら答えた。
「へ~………それでもプリネに傍にいれるじゃない。よかったわね!」
レーヴェの話を聞いたエステルは嬉しそうな表情をした。
「ああ。だが、カリンとの仲を認めてもらう為にも今以上の力を………”神格者”になる為にある方の元で修業をしている。」
「へ!?レーヴェ、し、”神格者”になるつもりなの!?」
「………そういえば姉さんの結婚条件でその条件はあったけど………本気なの、レーヴェ?確か話によると”神格者”は”神”に与えられる力だから、どの宗教も信仰していないレーヴェには無理なんじゃあ………」
レーヴェの話を聞いたエステルは驚き、ヨシュアは信じられない表情で尋ねた。
「それなんだけど、一人だけ自らの力のみで”神格者”になった方がメンフィルにいるのよ。」
「へ!?…………あ!確かにいたわね!えっと………ミラさん………だったわよね?」
ヨシュアの疑問に答えたプリネの言葉を聞いたエステルは驚いた後、ある人物を思い出して声を上げた後、プリネに尋ねた。
「ええ。ミラ・ジュハーデス………お父様の師匠であり、ブレアード迷宮の闇の闘技場の主です。あの方にはあの方と古い知り合いであるお母様に頼んでもらって、レーヴェの”神格者”へとなる修行を付けさせてもらっているんです。」
「最も並大抵の修行ではないがな。彼女や”剣皇”達と実際戦った上”剣皇”達のさらに上の強さを持つ者――”神殺し”という存在を知って、世界はいかに広いかを思い知ったな。」
「まあ、ミラさんはシルフィア様とも互角に戦えてもおかしくない強さだから、しょうがないわよ~。」
レーヴェの話を聞いたエステルは苦笑しながら言った。
「………それで”神格者”になれれば、姉さんとレーヴェ………結婚できるのかい?」
「ええ。お父様も”神格者”なら、私の身分とも釣り合うし、国にとっても”神格者”が増える事は喜ぶべき事だから、その時は認めると言ってくれたわ。」
ヨシュアの疑問にプリネは明るい表情で答えた。
「そっか…………頑張って、レーヴェ。応援しているよ。」
「ああ。」
ヨシュアの言葉にレーヴェは静かに頷いた。
「あ、そうだ………ここで姉さんに返す物があったんだ。」
そしてヨシュアはある事を思い出して、呟いた。
「私に返す物?一体、何かしら?」
ヨシュアの言葉を聞いたプリネは首を傾げて尋ねた。
「…………それは勿論、これに決まっているよ。」
そしてヨシュアは懐からハーモニカを取り出してプリネに手渡した。
「え………これは………」
「そのハーモニカは………」
「あ……それってヨシュアの………ううん、カリンさんの遺品の………」
プリネは手渡されたハーモニカを見つめて呆けた声を出し、ハーモニカを見たレーヴェは驚き、エステルは驚いた表情で呟いた。
「姉さんが逝ったあの時、手渡されたハーモニカ………ずっとそれを姉さんの代わりとして持っていたけど、姉さんが生きている以上それは僕が持つ物じゃないよ………それにやっぱりそのハーモニカは姉さんが持つべき物だもの。」
「ヨシュア…………ありがとう…………」
ヨシュアの話を聞いたプリネは優しい微笑みを見せて、ハーモニカを両手で大事そうに包み込んだ。
「……そうだ!ねえねえ、プリネ!せっかくだし、”四輪の塔”に行く前にした約束……今、果たしてよ!」
「フフ、そうですね…………わかりました。」
「約束?一体姉さんと何の約束をしたんだい、エステル。」
エステルとプリネの会話の意味が分からなかったヨシュアはエステルに尋ね、そしてエステルは”四輪の塔”に行く前にした約束の事を説明した。
「そんな約束をしていたんだ………ありがとう、エステル。」
「フッ、久しぶりにカリンの”アレ”が聴けるな………」
エステルの説明を聞いたヨシュアは驚いた後微笑み、レーヴェは口元に笑みを浮かべた。
「ちなみに確認しておきますけど、本当に”星の在り処”でいいんですか、エステルさん。他の曲もたくさん吹けますが………」
「うん!他の曲なんていらないわ!」
「だって姉さんには………」
「俺達が好きなあの曲………”星の在り処”が一番似合っているからな。」
プリネに確認されたエステルは力強く頷き、ヨシュアが言いかけた所を口元に笑みを浮かべたレーヴェが続けた。
「…………もうっ……………」
3人の答えを聞いたプリネは恥ずかしそうに笑った後、ハーモニカで優しい微笑みを浮かべながら”星の在り処”を吹き始めた。
~~~~~~~~~~~~♪
その後、入口で待っているミントとツーヤと合流したエステル達はメンフィルに戻るプリネ達に見送られ、道を歩いていた。
「………ねえ。今更聞くのもなんだけど、2人共僕に付き合う形で本当にリベールから離れてもいいの………?」
道を歩いていたヨシュアは止まって、心配そうな表情でエステルとミントを見て尋ねた。
「「…………………」」
ヨシュアの言葉を聞いた2人は立ち止まって、静かにヨシュアを見つめた。
「”結社”時代の償いのため、大陸各地を回るのは僕の問題だ。レーヴェに追いつくため、もっと強くなりたいっていうのも。君達を巻き込んでいいのか正直……まだ迷っているんだ。」
「まったくもう………肝心なところで抜けているんだから。」
「そうだよね~。」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルは呆れた表情で溜息を吐き、ミントは頷いた。
「え………」
「レグナートも言ってたけどこれから先、いろいろなことがこの世界で起こるかもしれない。また、”身喰らう蛇”が何をしでかすかわからない。そのためにも、あたし達は父さんやリウイ以上に強くなっておきたい。あたしにとってはその修行の旅でもあるんだから。」
「ミントはママの”パートナー”なんだから、どんな所でも付いて行く。それが”パートナー”なんだから!」
驚いているヨシュアにエステルは答え、ミントは嬉しそうな表情で答えた。
「父さんやリウイ陛下以上って………また大きく出たね。」
「どうせなら目標は大きくよ。プリネ達の約束やこの神剣――”誓いの神剣”に誓ったセリカとサティアさんを再び会わせるという”誓い”もあるし、見たことのない土地を旅するのもすごく楽しみだし、後はリウイの正妃となったイリーナさんの口添えで今はメンフィルに留学しているけど、いずれクロスベルに帰るっていうエリィさんやエリィさんが契約している大天使――メヒーシャにも再び会ってたくさん話したいし………それに………」
苦笑しているヨシュアにエステルは胸を張って答えた後、ヨシュアの手を握った。
「エ、エステル?」
「そもそもあたしとヨシュアが一緒にいるのに理由なんて必要?」
「あ…………。…………………うん………そうだね。そんなもの………必要ないかな。」
「ミントは2人の娘なんだから、勿論ミントも一緒だよ、パパ!」
エステルの言葉を聞いて静かな笑みを浮かべているヨシュアのもう片方の手を握ったミントが可愛らしい微笑みを見せて言った。
「ハハ………確かにそうだね。」
ミントの言葉を聞いたヨシュアは苦笑した。
「でしょ?ほんとにヨシュアってば肝心なところで抜けているんだから。」
「はは………本当にそうだな。」
そしてエステルの言葉にもヨシュアは苦笑した。そしてヨシュアは決意の表情で2人を見て言った。
「――行こう、エステル、ミント。道はどこに通じているのか今はまだわからないけど………きっとその先に何か見えてくると思うから。」
「うん………!あたし達のペースで一歩一歩、歩いて行こうね!」
「出発進行~!」
そしてエステル達は新たなる道を進み始めた。
~レウィニア神権国・王都プレイア・セリカの屋敷~
「……………!」
一方その頃、レウィニア神権国の王都――プレイアにある”神殺し”セリカ・シルフィルとその使徒達が住む屋敷の自室で夕焼けのような色を赤髪を持ち、海のような蒼い瞳を持ち女性と見間違うほどの美貌を持つ男性――”神殺し”セリカ・シルフィルは何かに気付いたかのように立ち上がって、窓の外を見た。
(どうしただの、セリカ?)
それを見たセリカの愛剣でありかつては”神”であるセリカの身体を狙って死闘をし続けた魔神であり、死闘の末セリカの愛剣となった”地の魔神”――ハイシェラはセリカに念話を送った。
「………誰かが俺を呼んだ気がした。それと新たな戦いの予感がした………それだけだ。」
(フム…………”七魔神”達との戦いを終わらせ、お主の過去を清算した上で新たな戦いか…………クックック………たえぎってくるの………!ここしばらくは戦いもなく、暇を持て余していたからな……)
セリカの言葉を聞いたハイシェラは不敵に笑っていた。
「………俺としては迷惑な事だが………俺達を襲う者は誰であろうと”生きていく”為に斬る。………それだけだ。」
(その時は我も存分に力を貸そうぞ、セリカ。)
「ああ。」
ハイシェラの念話にセリカが頷いたその時、ドアがノックされる音が聞こえてきた。
「ご主人様、入ってもよろしいでしょうか?」
「シュリか。別に構わん。」
「………失礼します。」
セリカの返事を聞いて部屋に入って来たのは茶色の髪と青い瞳を持つメイド姿の女性――セリカの第3使徒シュリ・レイツェンだった。
「昼食の準備ができました。」
「そうか。すぐに行く。」
シュリの言葉を聞いたセリカは頷いた。
「フフ………今日の昼食はレシェンテが頑張って作ったんです。マリーニャさんが味見をした所、美味しいって褒めていましたから、楽しみにしていて下さい。」
「レシェンテが………」
(クックック………女神の料理を口にする者等、世界広しといえどもお主だけであろうな、セリカ。)
シュリの言葉を聞いたセリカは若干驚いた表情をし、ハイシェラは口元に笑みを浮かべていた。
「………今のレシェンテは女神ではなく俺の”使徒”だ。」
(クク………わかっておる。ほれ、早く行け。他の者達も首を長くして待っておるだろうが。)
「わかっている。」
ハイシェラの言葉を聞いたセリカはシュリと共に食堂に向かった。
(………それにしても、さっき感じた事の中には誰かと再び出会う感じた気配も感じたが………何だったんだ………?)
(フム、もしかしたらお主が過去に出会ったもしくは契約した者達かもしれんな。何にしても、面白くなって来そうだの………!)
セリカの念話を聞いたハイシェラは答えた後、不敵に笑っていた。この時、後に懐かしい人物達との再会や予想外の人物達と出会う事になるとはセリカは気づかなかった。
――――リベル=アーク崩壊より半年後、リベル=アークよりある光の欠片が零れ落ちる―――
―――光の欠片はさまざまな出会いや奇跡を起こす―――
――――少女は2人の”王”と再び邂逅し、そして”世界の禁忌”ともついに邂逅する――――
―――覇王もまた再び、因縁の相手との再会を果たす。因縁の相手と再び再会した時の覇王の選択とは………そして聖王妃は何を望むか――――
――――”世界の禁忌”と邂逅した少女は何を思うか――――
――――そして失われし自分の過去を、”約束”を知る少女と邂逅した”世界の禁忌”は何を思うか―――――
――――光の欠片は両世界の人物達を巻き込んで新たなる冒険への扉を開く――――
――――”太陽の少女”、2人の”王”、”世界の禁忌”………4人の真の英雄達が邂逅する時は近い―――
語り尽くせぬ幾多の思いが光と闇の”真実”の、そして次なる舞台へと繋ぐ新たな”軌跡”を描き出す………!
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