ユーノに憑依しました
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厄介事がやってきました
厳重な警備がされている教会の施設、幾つかのボディーチェックを受けてその扉の前まで来た。
「ユーノ・スクライア参りました」
「はい、いらっしゃいユーノ」
高そうな、いや実際に高価なんだろうけど、その机にちょこんと座る一人の女性。
聖王教会の騎士カリム。
「今日はどのようなご用件で?」
「ユーノの言っていた聖王のゆりかごが見つかりました」
「は?」
「ですから、ゆりかごが見つかったんです」
「早くないですか? 確かに場所は予測しましたけど、こんなに早く見つかるなんて不味くないですか?」
「現在所有を聖王教会に移そうと色々調べてる所です」
「その辺りの法律や手続きは面倒臭そうなのでお任せします」
現時点で評議会を敵に回すなんてとんでもない。
「手伝って頂けると助かります」
「俺はまだ生きなくちゃいけないので、ヤバイ裁判に顔を出す訳には行かないんです」
「でも、もうユーノ・スクライア名義で申請出してしまいましたし、諦めて下さい」
おいおい、何て事してくれたんだこの人。
「それって、三脳から凄い勢いで指名手配掛かってない!?」
「ああ、そちらはもう終わりましたから大丈夫ですよ?」
「終わった?」
「はい、終わりました」
「何が?」
「???」
可愛く首を傾げても意味わかんねえよ。
「いや、何が終わったんです?」
「――お亡くなりになりました」
「……は?」
「色々と調べて見たんですけど不正の山と言うか、多少の必要悪というよりは悪の親玉そのものだったのでご退場頂きました」
「いや、いやいやいや、管理局の体制を見直すとかそう言う布石とか未来は?」
「それは現在進行形なのでご心配なく」
カリムがなにやら手元で操作するとモニターに電源が入り現在放送中と思われる番組が始まった。
【――我々は管理局地上本部としての……】
レジアスのおっさんが演説していて番組テロップには地上本部の不正告発とか記者会見の文字が躍っていた。
「……――何コレ?」
「現在生放送中の地上本部不正に関する記者会見です」
「――スカリエッティは? ――ナンバーズはどうなるの?」
「しっかり逮捕してありますよ? 貴方のおかげですユーノ」
「……――いや、まだ生まれてない子が居るでしょ? ――その子達どうするの生まれないの!?」
「安心してください、12名までちゃんと揃えさせますから」
「どうやって!?」
『こう言う事だよ』
その声と共にモニターが切り替わりスカリエッティの姿が映し出される。
『君がユーノ・スクライア君か、今回の勝者に敬意を』
「――おいちょっと待て!! 敬意も勝者も、戦った覚えもない奴に何を言ってるんだ?」
『いやいや――流石は私の計画に正面から挑もうという猛者だ……戦うまでも無い――私は敗北したのだよ』
「だから、まだ戦っちゃいないだろ、人の話を聞けよ!? 何が言いたいんだ!?」
「君の未来知識に関するレポートは見せて貰った――そのデバイスもね……私や娘達の事を偉く気に入ってくれているようだ」
「――……別に特別意識してる訳じゃない、ちょっと別世界の未来知識があっただけだ、この世界の事じゃない」
この世界にはユーノ・スクライアではなく俺が居るのだ、未来なんてとっくに崩壊している。
「くっくっく、そう言う事で良いだろう――残りの娘達は必ず完成させよう。
私から君へのプレゼントだ――元々タイプゼロのデータが手に入ったのは、君が未来知識を披露してくれたからだしね」
「――貰っても嬉しくないな、俺は戦闘機人の情報を流してお前を利用しようとしただけだ、それに本人達の意思もあるだろう」
「かまわんさ、好きにすると良い、君と話すのもこれが最後だろうし少し言わせてくれ、彼等から開放してくれてありがとう」
「……もう少し自由でいたかったとか、そう言うのは無いのか?」
「あそこに私の自由は無かった、そして娘達が完成したら私は極刑だ、それに従おう」
……極刑って、原作では軌道拘置所に放り込まれて一生大人しくしてる筈だろ? ――此処まで未来が変わるのか?
スカリエッティの表情はどこか憑き物が落ちたような、狂喜が感じられなくなっていた。
「――二番は?」
「……自分の目で確かめたまえ」
「どういう意味だ!?」
スカリエッティは何も答えずモニターから消えて電源も落ちた。
「先ほど、彼が極刑などと言っていましたが、管理局はそんな酷い所ではありませんので、安心して下さい」
「騎士カリム、二番はどうなった?」
「心配ですか?」
「死んでたら後味悪いだけだ」
「……入って来て下さい」
カリムの声で入って来たのは二人、二番と五番だった。
「初めまして、ユーノ・スクライア、ナンバーズ二番、ドゥーエです」
「同じく、ナンバーズ五番、チンクだ」
ドゥーエはアニメで見たよりも若い気がする。
そしてチンクは小さい、今の俺よりも小さい、幼女そのものだな。
こいつらが拘留されずに此処に居るって事は教会に協力を申し出たのか?
「彼女達は貴方の秘書として働いて貰います」
「ちょっと待て、色々待て!! 秘書って何だ!?」
「秘書は秘書です、ユーノのサポートですよ」
「俺に何やらせる気だよ!?」
ナンバーズの二人を使わなきゃいけない依頼って何だよ!!
「実はジュエルシードの件なのですが……」
「……何かトラブルか?」
「大変申し訳ないのですが、情報を漏らしていた方が居て、現在ジュエルシードと共に行方不明です」
「……は? 何で?」
「直前まで同行した者の話ですと……未来知識を持つ少年が欲しがる奇跡の石だと勘違いしている節があったそうで」
何それ?
「……うわー、うわー、何処かの取引現場で魔力暴走して次元震引き起こすビジョンしか浮かばないわー」
「平行してレリックの発掘もお願いしますね、放置して良い物ではありませんし」
レリックもか……まあ当然だよな。
「……ヴィヴィオは?」
「大丈夫です、確保してあります……ですが不完全です、フェイトさんの情報が必要になりそうです」
「足りなきゃエリオの分もか」
「ええ」
最悪の場合は聖王の遺伝子情報をばら撒いて成功例や失敗例を色々試す事になる。
「ジュエルシードを持って逃げた奴の足取りは掴めてるのか?」
「ユーノが紹介してくれた可愛い義弟が追ってくれてます」
「スカリエッティのアジトもアイツにやらせたのか」
「ノリノリでしたよ――恩が返せるって」
「茶菓子で手を打ったって言ったのにな……」
「頑張って下さいね――後ろの二人の分もまだ残ってますから」
振り返ると微笑むドゥーエと顔を真っ赤にしたチンクが目を逸らした。
「とりあえず、地球に行って来ますジュエルシードの情報が漏れてるなら海鳴の事も漏れてそうだし」
「大切なんですね」
「俺のせいで滅ぼされたくないだけです」
「はい、そう言う事にして置きましょう」
微笑むカリムの顔が何時にも増してムカつく……もういい。
「ドゥーエ、チンク、行くぞ、お仕事の時間だ」
「はい、よろしくお願いしますマスター」
「世話になる」
とりあえず海鳴市へ……面倒くさい。
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