英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第194話
~トリスタ~
「えっと……シャロンさんて何者なんだ?」
「アリサさんはシャロンさんがエリゼお姉様のようにメイドなのに、凄く強いのは知っていたのですか?」
「わ、私の方が知りたいわよ!?母様は詳しい経歴を知っているみたいだけど……」
リィンとセレーネに尋ねられたアリサは疲れた表情で答えた後戸惑いの表情で考え込んだ。
「しかし……これでようやく勝機が見え始めたな。」
「ああ……レオンハルト教官の助太刀には驚いたけど、それでも不利な状況である事は違いない。」
「やはり我らも出るしかなさそうだな……」
ユーシスとマキアスの会話を聞いていたラウラが提案しかけたその時何かに気付いたガイウスとフィーが後ろへと振り向いた。
「これは……」
「……微かだけど……」
「まさか……」
「そ、そちらは帝都とは反対方向ですが……」
何かに気付いた二人を見てある事を察したリィンは血相を変え、エマは戸惑いの表情で言った。
「ガーちゃん!」
「――――」
そしてミリアムはアガートラムを召喚してアガートラムの片腕に乗ってアガートラムを浮遊させた。
「デカブツ2機、近づいてくる!青いヤツと、緑のヤツだよ!」
「そんな……!」
「フン……随分な念の入れようだな。」
「どうやらトリスタを両面攻撃するつもりみたいね……」
ミリアムの報告を聞いたセレーネは表情を青褪めさせ、ユーシスとアリサは厳しい表情をした。
「……サラやレーヴェたちは向こうの8機で手一杯……」
「だったら……選択肢は一つしかないな。」
「ああ……」
フィーとマキアスの言葉に静かに頷いたリィンが神剣アイドスを鞘から抜くと仲間達もそれぞれ武器を取り出し
「みんな―――覚悟を決めるぞ。」
「おおっ!」
リィンの言葉に力強く頷いた後東口に急行した!一方その頃、2体の機甲兵がトリスタに向かっていた!
「―――トリスタ東口を確認。戦力は見当たらない。」
「フフ、かなりの使い手が集まっているという情報だけど。今頃ヴァルカンたちに制圧されている頃合かしら。まあいいわ、街に用はない。”C”の指示もある事だしこのまま学院に乗り込んで全学生を拘束しましょう。」
「了解、同志”S”。――――っ!?」
機甲兵の中にいるスカーレットの指示に頷いたテロリストだったが何かに気付いて驚いた。
「なんだ、あれは……」
「……?あらあら……フフ、少しは楽しませてくれそうじゃない……トールズ士官学院―――特科クラス”Ⅶ組”!」
街道で待ち受けているリィン達を見たスカーレットは不敵な笑みを浮かべて声を上げた!
「――――状況開始。”Ⅶ組”総員、これよりトリスタ東口の防衛を開始する。まずは先頭の機体を狙うぞ!」
「応!!」
「フフ、本気でこちらに立ち向かうつもりみたいね。2機がかりじゃ大人気ないしまずは相手をしてあげたら?」
「承知……!我らの大義を邪魔した報い、せいぜい受けてもらおう……!この機甲兵”ドラッケン”でな!」
スカーレットの指示に頷いたテロリストは機甲兵を操作してリィン達と戦闘を開始した!
未知なる兵器―――機甲兵との戦いは激戦となったが、リィン達は苦戦しながらも協力し、何とか1機を動けなくした!
「くっ……しまった……よもや学生ごときが……ここまでやるとは……!何だというのだ……こいつらの”力”は……!?」
地面に膝をついた機甲兵の中にいるテロリストは信じられない表情で声を上げた。
「はあはあ―――やったか!」
「……やはり関節部が狙い目だったようだな……!」
「後1機ですね……!」
リィンは息を切らせ、ガイウスは口元に笑みを浮かべ、セレーネは真剣な表情でスカーレットが操る機甲兵を見つめた。
「フフ、さすがは”C”のクラスメイトという所かしら?」
するとその時スカーレットが操作している機甲兵がリィン達と対峙した!
「ちっ……」
「その嫌味っぽい声……」
「帝国解放戦線の”S(スカーレット)”か。」
「フフ、鉄鉱山ではお相手できなくて失礼したわね。ガレリア要塞での借りもあることだし……お次はこの隊長機”シュピーゲル”で遊んであげましょうか?」
スカーレットはリィン達との戦闘を望むかのように剣をリィン達に向けた!
「くっ……?」
「な、なんだ……さっきのヤツとは違うぞ!?」
「隊長機……特別な装備でも積んでいるの!?」
「フフ、とっておきをね。無駄だとは思うけど……せいぜい足掻いてみなさいな!」
そしてリィン達はスカーレットが操作する機甲兵―――シュピーゲルとの戦闘を開始した!
シュピーゲルは特殊な機能―――”リアクティブアーマー”という結界を展開した為、アーツは一切効かず、更にはアガートラムの攻撃も一切通さなかったが、リィンが持つ凄まじい霊圧を秘めた神剣やアリサ達がかつてマルーダ城でもらい受けた”匠王”ウィルフレド・ディオンによって創られた強力な威力や魔術効果を秘める武器は”リアクティブアーマー”をも貫いてダメージを与えた。しかしリィン達は前の戦いのダメージや疲労が残っていた事に加えて、スカーレットはテロリストと比べると機甲兵の操縦も上手かった為、リィン達は敗北し、地面に膝をついた。
「そ、そんな……」
「わたくし達の攻撃は通じていましたのに……!」
「やっぱり連戦が祟ったね……!」
地面に蹲っているエリオットやセレーネ、フィーは悔しそうな表情をし
「さ、さすがに反則だよ~……というか何でリィン達の攻撃は効いているんだよ~。」
ミリアムは悲鳴を上げた。
「リアクティブアーマー。操縦士の意志で展開できる防御結界みたいなものね。本来は対戦車用の装備だけどこういう使い方もできるってわけ。でもリアクティブアーマーを貫いた事は正直、驚いたわよ?”C”から貴方達がかの”匠王”が作った武器を使っている事は聞いていたけど、まさかリアクティブアーマーをも突破するなんてね。まあ、頑張った方だから、悔しがることはないわ。」
「くっ……」
「”第五開発部”……何てものを作ったのよ……」
スカーレットの説明を聞いたユーシスとアリサは唇を噛みしめた。
「レン、そろそろ助太刀しますよ。」
「待って、サフィナお姉様。リィンお兄さんが”何か”しようとしているわ。」
一方その様子を飛竜に乗って上空で見守っていたサフィナはパテル=マテルの片腕に乗っているレンに視線を向けたが、何かに気付いたレンが制した。
「…………………………」
リィンは静かに立ち上がった!
「リィン……?」
「お、おい……」
リィンの様子を見たアリサとマキアスが戸惑ったその時、リィンの全身から凄まじい闘気がさらけ出された!
「……まさか………」
「”あれ”を解き放つつもりか……!?」
「だ、ダメです……!」
「やめるのだ、リィン……!」
「今の状態で”あれ”を解放するなんて、危険すぎます……!」
リィンの様子を見て何かを察した仲間達は血相を変えてリィンに制止の声をかけ
「ふふ、”C”が言ってた黒髪のボウヤの潜在能力……この”シュピーゲル”相手にどこまで通用するのかしらねぇ?」
スカーレットは不敵な笑みを浮かべてリィンと対峙した!
(多分……限界まで引き出せば命はないだろう……だが、それでもみんなを……大切なものが守れるなら……!)
(ちょっと、ご主人様!?何馬鹿な事を考えているのよ!?)
(私達の存在をお忘れですか?)
(リィン様が無理する必要はありません!)
(リィン……!)
決意の表情をしているリィンの様子を見たベルフェゴールとリザイラは血相を変えて念話を送り、メサイアとアイドスは悲痛そうな表情をした。
「駄目だよ、リィン!」
「やめてえええっ!!」
「お兄様―――ッ!!」
そして仲間達が悲鳴を上げたその時、リィンのアザがドクンと呻き、謎の声が聞こえて来た!
汝、力を求めるか?
「え――――」
声を聞いたリィンが呆けたその時、リィンは謎の空間にいた。
我が選び、汝が選べば、”契約”は成立する―――求めるのであれば、我が名を呼ぶがいい―――
”焔”を刻まれし者……”起動者”よ。
「こ、この声は……」
「――どうやら全ての条件が揃ったみたいね。」
リィンが声に戸惑っているといつの間にかセリーヌがリィンの足元にいた。
「セ、セリーヌ……まさか……お前が喋っているのか!?」
「あー、はいはい。今はどうでもいいでしょう。それより集中しなさい。アンタはもう”彼”の名前を知っているはず―――あの『異界の戦場』でね。」
「……!」
セリーヌの指摘を聞いたリィンは旧校舎の最下層での決戦の際、戦場から自分達が消滅する瞬間に見えたある名前を思い出した!
「(……そうだ……確かに俺は知っている……”彼”の名を……懐かしさすら覚えるあの名前を……)来い―――”灰の騎神”ヴァリマール!」
そして名前を思い出したリィンは片手を挙げて叫んだ!
リィンが名前を叫んだ瞬間、旧校舎の最下層に地面に膝をついて微動だにしなかった謎の人形兵器は突如立ち上がった後、エレベーターまで移動した。そしてエレベーターは上へと上がり、人形兵器は跳躍して飛びあがった!
一方その頃、リィンは謎の結界に包み込まれていた。
「クッ、なんだ……?」
「結界……?」
「リィン……動かなくなっちゃったけど……」
リィンの様子を見たユーシスやセレーネ、エリオットは戸惑い
「セリーヌ……!どうなってるの!?」
エマはリィンの足元にいるセリーヌに視線を向けた。
「しっ……集中させなさい!」
「ほえっ……!?」
「セ、セリーヌ……」
「猫が喋ったあっ!?」
そしてセリーヌが喋った事に仲間達は驚いた!
「……何をやっているのかしら。まあいいわ、そろそろケリを付けるとしますか。」
一方リィンの様子を伺っていたスカーレットは機甲兵を操縦して再び戦いの構えをした。
「さあ、お遊びは終わりよ!死にたくなかったらとっととそこを退きなさ―――」
スカーレットがリィン達に警告したその時、何かの音が聞こえて来た!
「今のは……領邦軍の砲撃?あ、あれは……まさか……”C”が言っていた……!」
スカーレットがふと空を見上げると何と旧校舎にいた謎の人形兵器が空を飛んでリィン達の元へと向かっていた!
「ふええええっ!?」
「な、なんだぁ!?」
正門でリィン達を待っていたトワとジョルジュは飛び去って行く人形兵器を見て驚いた。
「来た―――」
そしてリィンを包んでいた結界が消えるとリィンは空を見上げた。するとその時人形兵器―――”灰の機神”ヴァリマールがリィン達の目の前に現れた!
「なっ!?あれは一体……!?」
「うふふ、何だか面白い展開になってきたわね♪」
ヴァリマールを見たサフィナは驚き、レンは小悪魔な笑みを浮かべた。
「あ……」
「……これは……」
「機甲兵ではありませんよね……?」
「帝国に伝わる巨大な騎士の伝承……」
「その正体というわけか……」
「……巨いなる力を体現する”器”の一つ……灰色の機神”ヴァリマール”……」
ヴァリマールの存在に仲間達が戸惑っている中、エマは真剣な表情で呟いた。
「くっ……話が違うじゃない!まだ動かないんじゃなかったの!?」
ヴァリマールの登場にスカーレットが狼狽えている中、リィンとセリーヌはヴァリマールに近づき、何と光に包まれてヴァリマールの中へと入って行った!
リィンがセリーヌと共に操縦席に現れるとリィンは目の前にある端末を操作した。
「な、なんで解かるんだ……?まるで身体が覚えてるみたいに……」
「”起動者”となった時点で基礎知識は入ってくるからね。―――それより備えなさい!この”騎神”はまだ武器を持っていないんだから!」
「……!」
そしてセリーヌの警告を聞いたリィンは一気に詰め寄ったシュピーゲルを見て真剣な表情をした。
「ハッ、貰ったわ……!」
一気にヴァリマールに詰め寄ったシュピーゲルは強烈な突きを放ったが何とヴァリマールは回避した!
「……!?」
攻撃が回避された事に驚いたシュピーゲルは慌ててヴァリマールから距離を取った。
「剣の体捌き……!」
「リィンと同じ動き……!」
その様子を見たガイウスとフィーは驚き
「よし……やれそうだな。」
「リィン……!」
「こ、この人形を動かしているのか……!」
「凄いです、お兄様……!」
「はは……凄いや……!」
ヴァリマールからリィンの声が聞こえてくるとアリサとマキアスは驚き、セレーネとエリオットは明るい表情をした。
シュピーゲルと対峙したヴァリマールは格闘技の構えをし
「八葉一刀流”無手”の型……」
「フッ……味なマネを。」
ヴァリマールの構えを見たラウラは驚き、ユーシスは静かな笑みを浮かべた。
「へえ、何かイケそうね?」
「剣を失くした時に使う”第八の型”……ユン老師に徹底的に叩き込まれたもんだよ。」
「せいぜいその先生に感謝しときなさい―――って、くるわよ……!」
「わかってる……!」
そしてリィンが操るヴァリマールはシュピーゲルとの戦闘を開始し、リィンは初めて操縦するにも関わらずシュピーゲルを圧して行き、シュピーゲルを戦闘不能にした!
「くっ……しまった……!せめてラインフォルトの連中が”法剣”を完成させていれば……!」
地面に膝をついたシュピーゲルの中にいるスカーレットは悔しそうな表情で唇を噛みしめた。
「これ以上の戦いは無意味だ!西口を攻めている連中とまとめて撤退してもらうぞ!」
そしてリィンはスカーレット達に撤退するように指示した。
「リィンさん……」
「そうだそうだー!とっとと行っちゃえー!」
「よし、この調子で行けば西口の方も……!」
その様子を見ていた仲間達は明るい表情をした。
「ちっ……」
そしてスカーレットが舌打ちをしたその時!
「オイオイ……何か忘れちゃいねえか?」
聞き覚えのある青年の声が聞こえて来た!
「……!」
「こ、この声は……」
「クロウさん……!」
「来るぞ―――!」
そして仲間達が声が聞こえた方向を見つめると空から飛んできた蒼の人形兵器―――”蒼の騎神”オルディーネがヴァリマールと対峙した!
「あ……」
「蒼い騎士人形……」
「ま、まさかもう一体目覚めていたなんて……」
「”C”―――いいタイミングじゃない!」
オルディーネの登場に仲間達が青ざめている中、スカーレットは明るい表情で声を上げた。
「”蒼の騎神”……あいつが”起動者”だったなんて。くっ、”あの女”が導き手を務めたわけか……」
「クロウ……クロウなのか!?」
セリーヌが舌打ちをしている中、リィンはオルディーネを睨んで叫んだ。
「ああ、久しぶりだな―――って昨日の夜、一緒にメシを喰ったばかりだったか。だが、ずいぶん遠くに来ちまった気がするぜ。」
「くっ……どうして………何故こんな事を!?宰相を撃ったのもクロウなのか!?それに………その人形は一体どこで……!?」
「そもそも士官学院に入ったのは”帝国解放戦線”の計画のためでな。いずれ”鉄血”の首を狙う時の足場にするつもりだったわけだ。まあ予想以上に楽しんじまって、失った青春を謳歌しちまったが……俺の本分は”C”―――学院生クロウ・アームブラストはただの”フェイク”さ。」
リィンの問いかけに対し、クロウは苦笑した後冷めた表情で答えた。
「ッ―――ふざけるな!俺達と一緒に過ごした時間も!トワ会長やアンゼリカ先輩、ジョルジュ先輩との関係も!ぜんぶ偽物だって言うのかよ!?あの学院祭のステージも―――嘘だったって本気で言うのかよ!?」
「それは……ああ―――その通りだ。」
リィンの怒声を聞いたクロウは一瞬言いよどんだが冷めた目つきで答えた。
「リィン……」
「お兄様……」
「……クロウもどうして……」
二人の会話を聞いた仲間達が悲痛そうな表情をしているとオルディーネは近くに刺さっていたシュピーゲルの武器である剣を抜いてヴァリマールに投げ渡した。
「ラインフォルト製の機甲兵用ブレード……お前の刀に比べりゃナマクラだが我慢してもらうぜ。そろそろケリを付けようじゃねぇか?」
そしてオルディーネはダブルセイバーを取り出した!
「”C”の得物……」
「本当に……先輩が”C”なのか……」
オルディーネの得物を見た仲間達はそれぞれ辛そうな表情をした。
「悪いが、その”灰の騎神”に粘られると後々面倒なんでな。士官学院共々、ここでブッ壊させてもらう。お前らを含めた学院関係者はまあ、全員軟禁ってトコか。メンフィルの貴族のお前やセレーネを軟禁すればそれを口実にメンフィルが戦争を仕掛けてくるかもしれねぇが……こいつや機甲兵の前では勝てねぇよ。」
「そうか―――だったら……俺が勝ったらどうするつもりだ?」
「っ……!クク……お前が勝ったら50ミラの利子を耳を揃えて返してやるよ。何だったら、今度はお前の後輩になってやってもいいぜ?」
「わかった、それで行こう。言っておくけど利子は莫大だからな?そして後輩は先輩の言う事に従うのが筋だ……戻ってきてもらうぞ―――クロウ。」
「クク……ナマ言いやがって。だがまあ―――そのあたりが落とし所ってヤツだな。」
互いに武器を構えて対峙した2体から凄まじい霊圧がさらけ出された!
「こ、これは……」
「二人の闘気に連動した膨大な霊力……」
「ッ―――おおおおおおおおおっ!!」
「らああああああああッ!!」
そして2体の騎神は一騎打ちを開始した!
クロウ操るオルディーネは手強く、ヴァリマールは一進一退の戦いを続けていたがようやくオルディーネに膝をつかせた!
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