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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第185話

~裏庭~



「なるほどな………にしても、セリカ達がミシェルに嘘の報告をしていたのも驚いたが、まさかエオリアがセリカ達と一緒に行動していたとはな……」

「あたしも最初エオリアを見た時は驚いたわよ。しかも旧校舎の件が終わって事情を聞こうと思ったら、いつの間にか”嵐の剣神”達と一緒に行方をくらましやがったのよね……!」

一方その頃、互いに情報交換をしていたトヴァルは考え込み、サラ教官は疲れた表情で答えた後顔に青筋を立てた。

「俺達に言えないよほどの事情があるかもしれないな……しかし、ちょいと面倒なことになったな……エオリア達のエニグマに連絡しようにも、あいつら、メンフィルが量産したっていう独自の”ARCUS”を使っているから、連絡しても繋がらない可能性が高いな……」

「フフ、そこの所は大丈夫よ、さっきエステル達に会った時、今日の学院祭で見かけたって話は聞いているから、あの娘の性格を考えたらどこにいるかはおおよそ予想がついてるわ♪」

真剣な表情で考え込んでいるトヴァルを安心させるかのようにサラ教官は笑顔で答えた。



~ギナジウム・練武場~



「お、おい……今の挑戦者の点数って、何点だ?」

「に、230点だ……!」

「あの人って何者なの!?」

「身体の動きや反射神経が人間とは思えないくらい、早すぎだろ……」

”みっしぃパニック”の出し物を経営しているⅤ組の生徒達は挑戦者―――エオリアが叩き出し続けている信じられない点数に驚き

「…………娯楽に”使徒”の力を使う等大人気ないにもほどがあるだろうが。」

(クク、”使徒”になった事で手に入れた驚異的な身体能力を娯楽に使う等、奴が初めてだの。)

セリカは呆れた表情で見つめ、ハイシェラは笑いをかみ殺していた。



「フウ……結構面白い出し物だったわ。」

その後アトラクションを終えたエオリアはアトラクションのステージから降りた。

「お、おめでとうございます……330点……新記録達成です。点数が300点を越えましたので”みっしぃのぬいぐるみ”に加えて”特別賞”の”みーしぇぐるみ”です。」

「ありがとう♪フフ、クロスベルにしばらく帰れない間は貴方達がレシェンテちゃん達と一緒に私を癒してね♪」

生徒からぬいぐるみを二つ受け取ったエオリアは嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめたが

「へえ?あんたがクロスベルにしばらく帰れない”理由”を是非、今から教えてもらおうじゃない?」

「え”。」

聞き覚えのある声を聞いたエオリアが表情を引き攣らせて後ろへと振り向くと膨大な威圧を纏って微笑むサラ教官がエオリアの手に肩を置いてエオリアに微笑んでいた。



「サ、サラさん……一体何故ここが……」

「あんたの性格を考えたら絶対にここに来るってわかってたわよ。さてと、ちょっと裏庭に行って”色々”話してもらうわよ?」

「え、え~と……何の話ですか?私、遊撃士は今休業中なんですが……」

サラ教官に微笑まれたエオリアは大量の冷や汗をかいて答えた。

「誤魔化しても無駄よ!ミシェル達に黙って姿を消した事とかも含めて全て吐いてもらうからね!」

「いたたっ!?わかりました!わかりましたから、強く掴まないでください……!」

そしてエオリアはサラ教官に引きずられてその場から去り、その様子を周りの人々は呆気にとられた様子で見守っていた。



「全く、何をしている……」

その様子をセリカは呆れた様子で見守っていたが

「おいおい、”何をしている”はあんたにも言える事だぜ。祖国に帰ったはずのあんたが何でここにいるんだ?」

「………………」

自分に近づいてきたトヴァルの問いに何も返さず黙り込んでいた。

「悪いが、ちょっとだけ付き合ってもらうぜ?」

その後セリカとエオリアは裏庭でサラ教官とトヴァルと対峙した。



~裏庭~



「で?まずは行方をくらました理由を吐いてもらうわよ、エオリア?」

「サ、サラさん。そこまで怒る事はないと思うのですが……」

サラ教官に睨まれたエオリアは冷や汗をかき

「まあ、行方不明と聞いて心配していた者が呑気に娯楽に興じていたのだから、怒りを覚えるのも仕方ないだろう。」

「あのな……それをエオリアの行方不明と関わっていると思われる張本人のお前が言うか?」

「ああん!?あんたも他人事のようにふるまってんじゃないわよ!?」

静かな表情で呟いたセリカの答えを聞いたトヴァルは呆れ、サラ教官はセリカを睨んだ。



「少しは落ち着け、サラ。エオリア、何でお前がセリカ達と一緒にいるんだ?」

「その……私、この間セリカさんの愛人になったので、一緒にいるんです。」

サラ教官を宥めたトヴァルに尋ねられたエオリアは恥ずかしそうに答え

「ハアッ!?」

「ヘッ!?」

「おい……何だ、その滅茶苦茶な言い訳は。」

エオリアの答えを聞いた二人が驚いている中、セリカはエオリアを睨んだ。



「え?似たようなものじゃないんですか?実際、私やシュリさん達だけでなく他の”使徒”の人達とも”そう言う事”をしているとの事ですし。」

(ハハハハハハハッ!確かにそう見られてもおかしくないだの!)

「…………どうやら後で”使徒”について、しっかりと教える必要があるようだな。」

不思議そうな表情で尋ねたエオリアの問いかけにハイシェラは腹を抱えて大声で笑い、セリカは顔に青筋を立てて静かに呟いた。



「”使徒”?何だそりゃ?」

「まずはその”使徒”とやらを説明してもらうわよ?」

そしてセリカとエオリアは二人に”使徒”についての説明と、エオリアがセリカの”使徒”になった理由を説明した。



「つ、つまりエオリア。お前、もう”人間”じゃなくなったって事か?」

話を聞き終えたトヴァルは信じられない表情でエオリアを見つめて尋ね

「ええ。まあ、正直身体能力が驚異的に上がった事と私の身に秘められている魔力が上がった事を除けば、何も変わっていないですよ?ただ、セリカさん達の話では”不老”の存在になっているそうですけど……」

「”使徒”になった理由とか色々突っ込みたい所だけど、今はそれよりも……―――セリカ、エオリア。行方をくらましてまでクロスベルから離れた理由を説明してもらうわよ。」

エオリアの話を聞いたサラ教官は真剣な表情でエオリアとセリカを見つめた。



「俺達がクロスベルを離れたのはクロイス家がついに本格的に動いたから、クロイス家への反撃に備えて予めクロスベルから脱出した。―――それだけだ。」

「”クロイス家”だと……?」

「――――クロスベル市長ディーター・クロイスね。……あんた達は一体何を知っているのかしら?」

セリカの説明を聞いたトヴァルは眉を顰め、サラ教官は真剣な表情で尋ねた。



「あまり詳しい事は説明できませんけど……クロイス家は代々”至宝”を人工的に生み出す為に”銀行家”という表の仮面をかぶって、裏で研究を続けていたそうです。」

「”至宝”ですって!?」

「…………それは確かな情報なのか?」

エオリアの話を聞いたサラ教官は声をあげ、トヴァルは真剣な表情で尋ねた。



「ああ。しかも話によると奴等―――クロイス家は”D∴G教団”を裏から操っていた事に加えて奴等の資金源でもあったそうだ。」

「何ですって!?」

「………………そんなとんでもない事実、一体どうやって知ったんだ?」

「リウイ達から聞いた。」

「ハアッ!?”英雄王”達がどこでそんな情報を手に入れたのよ!?」

トヴァルの問いに答えたセリカの話を聞いたサラ教官は信じられない表情で尋ねた。



「”教団”の生き残り―――ヨアヒム・ギュンターによるクロスベル襲撃事件があったでしょう?あの後のクロスベルの復興を手伝っていた間に”殲滅天使”が部下の兵士達と共にクロスベルにある遺跡―――”星見の塔”に修められていた膨大な数の古文書をコピーして、本国に持ち帰って解析した時にわかったそうです。」

「って事はプリネやレーヴェ達もその情報も知っているのでしょうね……」

「ああ、確実に知っているだろう。…………待てよ?まさかメンフィルが”六銃士”をクロスベルの警察、警備隊の上層部に推薦した理由はその時に備えてか?連中も例の口座凍結宣言後”六銃士派”と一緒に姿を消したって話だしな。」

「それについては俺は何も聞いていないから知らん。それと既に七耀教会の者達もその時に備えて動いている。」

「七耀教会…………―――――!!まさか……!」

「―――”星杯騎士団”か。」

セリカの説明を聞いたサラ教官は血相を変え、トヴァルは真剣な表情で呟いた。



「ええ。以前クロスベル大聖堂に”星杯騎士”である事を隠して赴任して来たシスターとセリカさんが例の”影の国”の件で知り合い同士になったそうでして……そのシスターに協力を請われたセリカさんがクロスベルの”至宝”の件に介入する事にしたんです。」

「―――リウイ達から聞いていたクロイス家が隠し持っている”至宝”に秘められる”力”は俺にとっても無視できない”力”だ。あいつらに頼まれなくても、元々介入するつもりだったから、あいつらの頼みに応じたまでだ。」

「という事はあんた達、もしかして”星杯騎士団”の連中と一緒に行動しているのかしら?」

二人の話を聞いたサラ教官はある事を察して尋ねた。



「はい。まあ、今回の学院祭に顔を出したのはセリカさんの個人的な理由ですけど……」

「…………………―――お前達に話せる情報はここまでだ。行くぞ、エオリア。」

「はい、セリカさん。」

「―――待ちなさい。後一つだけ聞きたい事があるわ。」

そしてその場から去ろうとしているセリカとエオリアをサラ教官は呼び止めた。



「ゼムリア大陸で起こる出来事とは関係のない異世界出身のメンフィルやあんた自らが動く程の”至宝”に秘められている”力”って一体どんな”力”なのよ?」

「…………………………クロスベルの”至宝”に関わらないお前達に教える必要はない。」

サラ教官の問いかけにセリカは答えを誤魔化し、エオリアと共にその場から去って行った。



「とんでもない話だったな……」

「ええ……まさか”至宝”が出てくるとは思わなかったわよ。けど、これでようやく腑に落ちたわね。何故ディーター・クロイスがあそこまで強気に出られるのか。」

「いざとなれば”至宝”の力で大国が派遣する軍を撃退するんだろうな。……………!まさか…………そう言う事か……!」

「?どうしたのかしら?」

何かに気付いて突然顔色を変えたトヴァルの様子を見たサラ教官は真剣な表情で尋ねた。



「ああ……”六銃士”達がクロスベル警察、警備隊の上層部に推薦された事……”通商会議”で”鉄血宰相”とロックスミス大統領を罠に嵌めてクロスベルを守った事……そして大勢の”六銃士派”の連中と一緒に姿を消した事。”その全てにメンフィルが関わっている。”」

「!?ちょっと待って!”六銃士派”の連中が姿を消した事は幾ら何でもメンフィルは関わっていないでしょう?話によると全員、自分の意志で姿を消したって話だし……」

「……行方知れずの大勢の連中の食糧とかを用意できそうな”連中”も例の襲撃事件によって都合よく姿を消しているだろう?」

「!!”ラギール商会”……!まさかメンフィルは”六銃士”達にディーター・クロイス政権に対するクーデターを起こさせるつもり……!?」

「ああ……しかも”六銃士”の連中はクロスベルの市民達にとってあのアリオスさんをも超える”英雄”的な存在だからな。案外あっさり成功すると思うぞ。」

「そして”六銃士”達がトップに居座ったクロスベルを裏から操るって寸法ね……けど、それだと一つだけ疑問が残るわ。”六銃士”達の今までの行動とかを考えると、大国の”狗”に成り下がるような連中とはとても思えないけど…………―――――!!」

トヴァルと共にある事を推測したサラ教官は不思議そうな表情をしたがある人物達の話を思い出した。



しかし……話を聞く限り、クロスベルという地域にはお父様どころかかのユン・ガソルの国王ギュランドロス・ヴァスガンと”三銃士”達が共に手を取り合っているのですから、近い将来クロスベルは”覇道”を歩む事になるかもしれませんね



フッ、俺も最初聞いた時は正気かと思った程だぞ?何せギュランドロス・ヴァスガンはクロスベルをいつか支配し、ゼムリア大陸の国家間の力関係を変えてクロスベルを大国へと成長させると豪語していたからな



―――1つ言っておきましょう。”覇王”の資質を秘めている方が戦場の指揮をすればどのような逆境であろうと勝利に導くのが”覇王”です。実際かつてそれほど領地がなかったセンタクス領の領主であったお父様も各国や他のメルキア領に戦争を仕掛け、全て勝利しましたから。―――しかもお父様に加えてギュランドロス国王や”三銃士”もいるのなら、もはや手は付けられないと思いますよ?



「……………………………」

ある人物達―――メサイアとレーヴェが口にした”六銃士”の性格や話を思い出したサラ教官は厳しい表情で黙り込み

「おい、サラ?どうしたんだ?何か気付いた事があるのか?」

サラ教官の様子に気付いたトヴァルは尋ねたが

「…………何でもないわ。(幾ら何でもメンフィルが”六銃士”と協力してエレボニアとカルバードに戦争を仕掛けるなんて、荒唐無稽な話ね。第一もしそうだとしても、オリヴァルト殿下によるプリネ達の留学の要請に応えるなんて、ありえないわ。)」

サラ教官は首を横に振って答えを誤魔化した。


 
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