ユーノに憑依しました
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レイジングハートを探しました
「レイハさんやーい、どこだーいっと」
これで1008個目。
俺が今採掘している場所は赤い玉のデバイスが大量破棄されている工場跡だ。
遺跡じゃないのかよ!? と言う突っ込みもあるだろうが。
進み過ぎて自滅した連中の遺跡なのだイメージ的には火事場泥棒とか空き巣だ。
ヴィータとかの記憶って1000年以上前から在るらしいし。
デバイスの歴史はベルカから数えるとかなり古い。
デバイス工場での発掘なんて子供のやる事なのだ。
型遅れの古いPCをジャンク目当てで買うなんてモンじゃない。
価値の無いデバイスとも呼べないガラクタを発掘する事で練習させているのだ。
生きてるデバイスを探すのは簡単だ、正常に魔力が通れば良い、ロスが酷い物は死んでいるのだ。
そして俺は当たりを引いた。
試しに魔力を通してみたが反応が無い、ロスしている訳じゃなくて吸われたまま帰ってこない。
「……ふう、やってやらぁ」
リンカーコアの発動を高め大気に散らばる魔力をデバイスの一点に籠める。
「はああああああああああああッ!!」
体に凄い負担がかかって筋肉が悲鳴をあげてるが俺は魔力を込め続ける。
デバイスに亀裂が入って崩壊する寸前にそいつは目を覚ました。
《――》
「起きたか」
《――ここは?》
「お前が破棄された工場跡だ、自己修復を急げ」
《あなたは誰ですか? なぜ私を起こしました?》
「俺はユーノ・スクライア――ユーノが名前でスクライアってのは遺跡を発掘してる集団だ、お前は発掘の練習台として俺に起こされたんだよ」
《そうですか》
「お前暇だろ、俺と一緒に来い、死ぬ寸前までこき使ってやる」
工具を片付けながらレイジングハートもどきも回収して置く。
折角発掘したのだ手元に残して置きたい。
暫く沈黙した後、レイジングハートは律儀に返事をした。
《私よりも進化したデバイスが沢山ある筈です、そちらを使われたらどうですか?》
「俺はお前が良い、他がどんなに便利でもお前が良い」
《あなたの魔力では私の真価を発揮できません、頂いた魔力も7割が無駄になってます》
「9割無駄だったら考えてたかもな」
《非効率的です》
「インテリジェントなら覚えておけ、効率だけがベストじゃない、信頼も大事だ」
《信頼?》
「そう、俺はお前を信頼する、一方的にな、お前を真に扱える主が現れたら遠慮なく譲ってやる、それまでお前は俺のモノだ」
どうせレイジングハートはなのはのデバイスで、俺の物にはならないのだ。
俺がユーノじゃなかったら原作になんて絶対関わらなかったのに。
コレは単なる八つ当たりだ、ロールプレイング、単なるユーノという役を演じるだけだ。
《迷惑です》
「残念ながら俺はお前が大好きだ、全て諦めろ」
《最悪です》
「俺は最高だな――さて帰るか、集束魔法――ブレイカーなんて使ったから魔力も身体もボロボロだ」
《……この魔力はブレイカーを?》
「そうだよ、美味かったか?」
《死にたいのですか? 貴方の様な小さな子供が集束魔法なんて使ったら負荷が一生残ったりするんですよ?》
「お前の口からそう言う台詞が聞けるとは思わなかったな、心配してくれるのは嬉しいが本格的に使ったのはお前が初めてだ」
《いたずらに使わないと約束してくれますか?》
「約束は出来ないな、必要なら遠慮なく使うから、その時はよろしく頼むぞ」
《最悪です》
「俺は最高にハッピーだな……あぁ、最高にハッピーだとも!! お前は道連れだッ!! 俺の全財産を持って強化しまくってやるから覚悟しろ!!」
整備に手を抜いて負けましたって言われたくないからな!
「さあ、行くぞ!! ……そういえば、まだお前の名前を聞いてなかったな? 名前は?」
《……レイジングハートです、マスター》
「よし、行くぞレイジングハート、地獄への片道切符だッ!!」
《――この子を正しい道へと導かなければ》
「何か言ったか?」
《いいえ、マスター》
こうしてレイジングハートを手に入れた俺は早々に発掘を打ち切りデバイスショップへと向かった。
ミッドのデバイス街でアキハバラと呼ばれる地帯に俺は来ていた。
餅は餅屋、デバイスに命を掛けている職人にレイジングハートを丸投げするのだ。
《マスター、これから何をするのですか?》
「お前を可愛がってくれる人を紹介してやる、幸せ者だよお前は」
《どのような方なのですか?》
「会えば分かる」
数分後、待ち合わせの相手がやってきた。
「ユーノ君、お久しぶりー、元気してた?」
「久しぶりだな、フェレットもどき」
「お久しぶり、ユーノ君」
上からエイミィ、クロノ、マリエルの順番だ。
未来知識って便利だよ、管理局の士官学校とかデバイスショップを調べてたら見かけたんで声を掛けた。
愛想が無いだとかもっと子供っぽく笑った方が良いよと言われたので、フェレットになって愛嬌を振りまいたら大盛況でな。
それ以来クロノからフェレットもどきと呼ばれるようになった。
「この子が見て欲しいデバイス?」
「ええ、発掘したてのホヤホヤなので、たっぷり可愛がってください資金はありますので使用者の負担は度外視で」
「ム、そう言うのは良くないですよユーノ君、デバイスは持ち主の魔力資質に合わせないと大怪我しちゃいますよ」
「メインで使うのは俺じゃないんです、集束と砲撃に耐えられるようなフレームにしてください」
「じゃあ、この子が前に言ってたブラスター用の?」
「探すのに苦労しましたよ、三徹目なので部品組んでる間は寝かせてください」
「あはは、無茶するねー、子供なんだから寝なきゃ背が伸びないよ、クロノ君みたいに」
「僕の事は余計だ!!」
「チビは嫌なので気をつけます」
「うむ、大変よろしい!」
「エイミィ!」
いつもの夫婦漫才が終わった、ヤバイ、本格的に眠い。
「それじゃ、一度士官学校に戻ってデータ集めてからパーツ揃えなきゃね」
「仮眠室あります? そこで寝ときます」
「あるよー、夕方までぐっすり眠っときな、後はマリーと一緒にやってるからさ」
「よろしくお願いします」
「あ、そうだ、フェレットモードになっちゃいなよ、鞄に入れて連れてくからさ、ね」
「おー、それは名案、ではお言葉に甘えて」
フェレットモードになった所で俺は力尽きて寝た。
目が覚めるとどこかで嗅いだ事のある匂い、そして車で移動中か?
……あいつ等免許持ってたっけ? いや、これは……。
「……リンディさん?」
「あら、ユーノ君おはよう――って言ってもまだ夜だけど……丸一日寝てたみたいよ?」
「久々に二十四時間突破して寝たか……何処に行くんです?」
後部座席から外を見るとミッドの市街地の様だがどこかで見た景色だな、何処に向かう景色だっけ?
「聖王教会よ、ミッドに居るならカリムさんから連れて来る様に言われてね」
「ああ、最終調整はとっくに終わってる筈なのに、今更何の用だか」
「最近顔出してないんでしょ? 私に会うのも久しぶりじゃない?」
「クロノ達とも久しぶりでしたよ、レイジングハートは?」
《此処に居ますよ》
首にしっかり下がっていた。
「ふむ、調子はどうだ?」
《大変良好です》
「そうか、定期メンテナンスの説明があったら後で教えてくれ」
《了解しました》
「その子が前に言っていたデバイス?」
「ええ、俺の相棒です」
「そう、見つかったのね」
「おかげさまで、クロノ達はどうしました?」
「先に帰したわ、晩御飯は一緒にどう? あの子達も喜ぶわ」
「時間的に考えて遅くなりそうですからまた今度ですね、教会から直帰しますよメッセージは入れておきます」
「そう、残念ね」
「次の出航はいつですか?」
「今日帰ってきたばかりだから当分はお休み」
「そうですか、疲れてる所すみません」
「良いのよこれくらい、子供がそんな事気にしないの」
「お世話になります」
「ええ、もっと頼りにして頂戴」
ちなみに、リンディさんとはクロノ達と出会ったその日に合流した。
長旅から帰ってくるリンディさんに手作りでおいしい物を食べて貰おうというパーティーの買出しだったとかで。
ちょいと荷物が多くなりすぎてリンディさんを呼ぶ事になり、そのままお呼ばれしたのだ。
旦那さんの事は知ってたから態度に出たのか、年齢に見合わない落ち着きだったからバレたのか知らないが、色々看破された。
そのまま一泊して次の日には聖王教会に強制連行、騎士カリムとご対面と言う流れになった。
おかげさまで色々と発掘関係で呼び出される事が増えた。
「それじゃ、カリムさんによろしくね」
「はい、それではまた」
聖王教会前でリンディさんと別れて騎士カリムの待つ施設へ向かうのだった。
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