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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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FAIRYTAIL OF THE DEAD MEEEEEEEEEN

 
前書き
この話でウェンディがウェイトレスの格好のまま空飛んでるけど、つまり下から丸見えなんですかね?何がとは言いませんよ?一夜たちからは丸見えですよね?
というわけで、シリルも巻き沿い食らわすぞぉ!!
シリル「え?」 

 
「もう・・・何なのこのバイト・・・」

周りから好奇な視線を送られながら、タメ息を一つついているのは、ウサギの着ぐるみに身を包んだルーシィさん。しかも、その着ぐるみは太ももの付け根から生足が見えるようになっており、道行く人・・・特に男性陣は嬉しそうにそちらを見ている。

「ルーシィさんはまだいいじゃないですか・・・」

看板を持って項垂れている金髪の女性を見て、思わずタメ息をついてしまう。彼女の格好はまだ全然いい。むしろ俺がそれを着たいくらいだ。だって・・・

「なんで俺がウェイトレスなんですか!?」

俺はオレンジ色の肩や背中が大きく露出した、超絶ミニスカウェイトレス姿になっているのだから!!しかも、アームカバーや太ももの真ん中まであるニーハイソックスを履いているから、より女の子っぽい着こなし方になっている気がする。それはもう恥ずかしくて恥ずかしくて、運んでいった料理をお客さんたちに投げつけたいくらいだ。

「文句を言わず働くんだ。8アイランドマグノリア店のオープン記念だぞ!!」
「二号店出スちゃった」

俺たちにそういったのは、同様のウェイトレスの衣装に身を包み、髪型をツインテールにしているエルザさん。ちなみに彼女の髪型に対抗させられ、俺はポニーテールになっていたりする。

「「はぁ・・・」」

テンション高めのエルザさん。だけどそのやる気が俺たちには沸き起こらない。だって恥ずかしいんだもん。

「お前たちもいつまで遊んでるんだ!!」
「あ!!ごめんなさい!!」
「休憩時間だったのでつい・・・」

やる気満々のエルザさんは、周りが目をハートにして彼女に釘付けなことにも気付かず、堂々としている。緋色の女性は俺たちと同じようにウェイトレス姿になっているウェンディとジュビアさん、さらにシャルルとセシリーにそう言う。

「それよりエルザさん!!これ見てください!!」

すると、注意を受けたうちの一人、俺と同じ水の魔法を操る女性が、一冊の雑誌を彼女に見えるように持っていく。

「週ソラがどうした?」
「これです!!」

エルザさんは雑誌を受け取り、指定されたページに視線を落とす。彼女の後ろから俺もそのページを覗き込んで見ると、そこには上半身裸のスティングさんとローグさんとグラシアンさんが写っていた。

「イケメン魔導士ランキング?ほう、毎週こんな記事が・・・」

どうやら女性に人気のイケメン系統の魔導士たちでランキングを作成した記事が乗っているらしい。他にもイヴさんやレンさん、ヒビキさんといったお決まりの男性魔導士たちの写真も載っている。

「ほらここ!!グレイ様が載ってるんです!!すご~い!!」

雑誌のページをめくり、そこに写る上半身裸の黒髪の男性を指さし興奮しているジュビアさん。さっきのスティングさんたちの写真から予想するに、上位ランカーは上半身を露出した写真が載せられているみたいだ。

「何!?イケメンというのは一夜みたいのを言うのではないのか!?」
「「「えぇぇぇぇ!?」」」

すると、エルザさんが驚愕の表情を浮かべてとんでもないことをいい放つ。それを聞いていたジュビアさんとウェンディ、そして俺は思わず絶叫していた。

「だって・・・あいつはいつも自分のことをイケメンだと言っているだろ?」
「それは・・・自分でいう分には・・・」

周りからどう思われていようとも、自分が自分をカッコいいと思っていれば、イケメンだと自称することはできる。エルザさんはそれを鵜呑みにしていたらしく、衝撃を受けていたのだ。

「ほら!!グレイ様も他の魔導士も、一夜さんと全然違うじゃないですか!!」

週ソラのランキングのページを何度もめくり、エルザさんに本当のイケメンとはどういうものなのかを教えているジュビアさん。

「そうか・・・違うのか・・・」

それを聞いたエルザさんは、今までの自身の認識が誤っていたことにショックを受け、黄昏ている。

「エルザさんって、いつも驚きに溢れてるよね・・・」
「そ・・・そうね・・・」
「意外と無知な人だよね」
「天然なんだろうね~・・・」

普段は頼れるお姉さんといった感じなのに、一般常識になってくるとどうしても頭が足りていない感じがする妖精女王(ティターニア)。しかし、俺は彼女が持っている週ソラのあるページを見て、思わずそれを奪い取ってしまった。

「どうした?シリル」
「何かあったの?」

俺がある人物を見つけたページに釘付けになっていると、後ろからそれを覗き込んでくるエルザさんとルーシィさん。だが、彼女たちの言葉は俺には届かない。なぜなら、俺が見つけた人物があまりにも予想外だったからだ。

「なんで・・・」

あまりのことにプルプルと震えている。『イケメン魔導士ランキング』のトップ5が載っているページがあったのだが、そこの第三位の人物を見てショックを受けた。

「なんでレオンが載ってるんだぁ!!」

リオンさんやグレイさんといった誰から見てもイケメンだと思える人たちと同じように、ライバル(と勝手にシリルが思ってるだけ)であるレオンが載っていることに、敗北感を感じている。

「あれ・・・?ちょっと待てよ?」

しかし、俺は彼の姿を見てあることに気付いた。上半身裸でかっこよくポーズを決めているその少年。その姿に、見覚えがあった。

「この間の週ソラの撮影の時かな?」

以前ウェンディと一緒に週ソラの取材に呼ばれた際に、何かの写真を撮るために上半身を露出しているレオンに会ったことを思い出した。つまりこれは・・・

(俺の名前も載っているんじゃないか!?)

彼のような格好ではなかったが、同じ日に同じ雑誌で写真を撮られていたんだ。それは俺も同様にランキングに名前があったからなんじゃないか!?
そう考えてウキウキしながらランキングのページをめくり、己の名前を探していく。

「あ・・・シリル・・・」
「あまり今週のは見ない方がいいですよ?」

俺がソーサラーに見入っていると、慌てたようにウェンディとジュビアさんがそう言う。しかし、
俺は絶対に手を休めない。なぜなら、いい方向に傾く可能性は高いはずだからだ。

「あったぁぁぁ!!」

しばらく見ていると、自分の名前が載っているページを発見する。しかも割りと大きな文字で書かれていたので、実はいい順位に入っていたんじゃないか!?

「ウェンディ!!見てみて!!俺のなま・・・え・・・」

大好きな少女に大喜びでそのページを見せようとして、固まった。よく見てみると、そのページは『イケメン魔導士ランキング』のページではなかった。そのページに載っているランキングは・・・

『妹にしたい魔導士ランキング』

一位 シリル・アデナウアー
二位 ウェンディ・マーベル
三位 シェリア・ブレンディ
四位 ソフィア・バルザック
五位 カグラ・ミカヅチ




「・・・」

そのランキングと順位に何も言えなくなった。そして、見覚えがあるメンバーがフリフリの衣装を着て可愛らしいポーズを決めている写真がズラリと載せられており、撮影のことを思い出してあの時の恥ずかしさが脳裏を過る。

「ほう、妹にしたい魔導士ランキングか」
「なんか妥当な順位だね」
「うっ!!」

エルザさんとルーシィさんのその言葉が胸に突き刺さる。もしこれが『弟・妹にしたい』だったら大喜びだったんだけど、妹限定だからショックを隠せない。しかも載っている写真の恥ずかしいこと恥ずかしいこと・・・

「俺は・・・間違えていたのかもしれないな・・・性別を・・・」
「えぇ!?」
「今気付いたんですか!?」
「「遅ッ!!」
「そこは否定してよ!!」

冗談でそんなことを言うと、驚いているウェンディ以外のみんなはまるで今まで気付いていなかったことが不思議だと言わんばかりの反応をしてくる。それを聞いてさらにショックを受けたのは言うまでもない。

「そんなことより、ジェットとドロイ遅いなぁ」
「そんなこと!?」

すると、先程まで違うお客さんを接客していたレビィさんが現れそう言う。俺の悩みはそんなことで弾かれてしまうようなものだったのか・・・

「レビィちゃんのウェイトレス姿絶対見に行く!!って息巻いてたのにね」

シャドウギアというチームを結成しているレビィさんとジェットさんとドロイさん。その中で、ジェットさんとドロイさんはレビィさんに恋心を抱いている。でも、レビィさんは二人にそんな感情を抱いていないから、ただの仲間としか認識していないらしい。

「あ!!噂をすればなんとやら、ですよ」

ウェンディが街の方を見てそう言う。そこにはフラフラとおぼつかない足取りではあるが、シルエット的に間違いなく今話をしていた二人の人物だと認識できる。

「レビィ」
「レビィ」
「もう、遅かったじゃ・・・な・・・!?」

ようやく来たチームメイトに手を振る文学少女。しかし、彼女は彼らの顔を見て固まってしまう。それは、周囲にいた俺たちも同様だった。

「「メェーン」」

口の周りに色濃い青髭が浮き出し、四角のようにも捉えられるほどに変わっている顔の輪郭。それは、どこからどう見ても青い天馬(ブルーペガサス)の一夜さんのそれだった。

「「「「「きゃああああああああ!!」」」」」
「うわああああああああ!!」

それを見て悲鳴をあげるウェイトレスたち。体格や髪型はそのままで顔だけが一夜さんになっているため、普段の彼を見るよりもより衝撃が大きい。

「一夜!?これはどういうことだ!?」
「トラウマになりそう・・・」
「うぅ・・・」
「ウェンディ!!気を強く持って!!」
「は・・・吐き気が・・・」
「シリル~!!耐えて~!!」

あまりの衝撃にエルザさん以外の全員がその場に崩れ落ちる。ルーシィさんは顔を真っ青にしているし、ウェンディは大号泣。そして俺は乗り物酔いに勝るとも劣らない吐き気を感じている。

「ちょっ!!ちょっと!?何なの!?」
「「クンクン」」
「やめて!!匂いを嗅がないで!!」

俺たちが精神的苦痛を味わっていると、その後ろではレビィさんが一夜さんになっている二人に匂いを嗅がれ、悲鳴をあげていた。

「レビィちゃん!!」
「ルーシィさんストップ!!」
「ダメですよぉ!!」
「近づいてはいけない気がします!!」

ピンチの彼女を救おうと突撃しようとしているルーシィさんの腕を引っ張って引き留める。なんだか嫌な予感しかしない。

「でも・・・レビィちゃん!!」

しかし、ルーシィさんは友達のピンチにいてもたってもいられず、俺たちの制止を振り切り駆けていく。

「呼んだ?ルーちゃん。メェーン」
「いやああああああああ!!」

レビィさん救出に向かったルーシィさんだったが、彼女はすでに手遅れだった。レビィさんの顔も、ジェットさんたち同様に一夜さん化しており、それはそれは恐怖を駆り立ててくる。

「匂いを嗅がれると感染するの!?」
「何それ怖!!」
「ここから逃げるのよ!!」
「早くしないと~!!」

どうやら一夜さん化した人に匂いを嗅がれると、自分もあのようになってしまうらしい。それだけは絶対にやだ!!マジで!!

「おのれ一夜!!私が成敗してくれる!!」

こちらに向かってくる一夜ギア。俺たちの前に、エルザさんが週ソラを丸めて立ち塞がる。

「みんな!!逃げるんだ!!ここは私に任せろ!!」
「エルザ!!気を付けて!!」
「匂いを嗅がれたら一夜さんになっちゃいますよ!!」

こちらに視線を向けて逃げるように手を振るエルザさん。あんなのに立ち向かうなんて、勇気あるなぁ。

「心配ない。どうやらこの一夜たちは、動きが鈍いようだからな!!」

エルザさんはそう言うとレビィさんたちを一瞬で叩き倒す。やられた彼女たちは涙を浮かべているけど、可哀想とか一切思えないです。

「早くいきましょう!!」
「うん!!」
「ウェンディ!!逃げるよ!!」
(コクッコクッ)

エルザさんが引き受けてくれている隙にその場から立ち去る。その際ウェンディが異様なまでにショックを受けていたようで、言葉を発することすら出来なくなっているのが可哀想だった。



















「どうしよう・・・街中に一夜さんが・・・」
「どうなっているんでしょうか?」
「一種のホラーですね・・・」

8アイランドから逃げてきた俺たちは、今はマグノリアの中にある裏道の一つに逃げ込んでいる。そこから大通りに視線を向けると、そこはまさに地獄絵図。

「あれ!?ルーシィがいないわ!?」
「ホントだ~!!」
「はぐれちゃったんでしょうか?」
「動きにくそうな格好でしたもんね」
「ウサギの着ぐるみみたいなものですからね」

一緒に逃げていたはずのルーシィさんの姿がどこにもないことに気付く。でも助けに行くことはできない。下手に動いたら間違いなくやられるから。

「おい!!お前ら無事か!?」

これからどうすればいいのか、頭を悩ませているとそこに黒髪の青年がこちらに駆けてくるのに気付く。

「「グレイさん!!」」
「あ~ん!!真のイケメンがジュビアを助けに!!」

オレンジのシャツを前をはだけさせながらやってきたグレイさん。彼はどうやら一夜さんになっていないみたいで、助けに来てくれたみたいだ。

「こりゃ一体どうなってんだ?街中一夜だらけだ」
「ギルドの様子は?」
「・・・ひでぇ有り様だ」

グレイさんはギルドから難を逃れた人物らしいのだが、その場所はすでに全員が一夜さんへと変貌を遂げているらしい。想像しただけで嫌だな、そんなギルド。

「もうギルドには戻れないのね」
「特に、一夜になってもラクサスが手ぇつけられねぇ」
「強さはそのままなんですね」

一夜さん化したラクサスさんやミラさんのことを考えるだけで心を抉られていく。強さもそのままなら、戦って止めることも難しいだろうな。

「他に無事な奴は?」
「エルザさんとルーシィさんだよ~・・・たぶん・・・」
「はぐれちゃいましたけどね・・・」

シャツを脱ぎ捨て裸体を披露するグレイさん。そんな彼に恐怖と不安で押し潰されそうとしているジュビアさんがソッと抱きつく。

「グレイ様・・・怖いです・・・」
「ジュビア・・・」

今にも泣き出しそうになっている水の魔導士を見て一つ息をつくグレイさん。

「心配すんな」

彼はそう言うと、胸の中にいる女性をギュッと引き寄せる。

「「「「おおおお/////」」」」

それを見て顔を赤くさせている俺たち。とてもいい雰囲気になっている二人の男女のここからの展開を考えただけで、恥ずかしくなってくる。

「俺が匂いを嗅いでやる。クンクン。いい香り(パルファム)だ」
「「「「「うわああああああああ!!」」」」」

しかし、そう思ったのも束の間。先程まで雑誌に載せられるほどに整った顔だちをしていた彼のそれが
周囲にいる一般市民たちと同様のものへと変化していき、ジュビアさんの匂いを嗅いでしまっていた。それを見た瞬間、俺たちは迫ってきている危険を感じ取り、仲間を置き去りにした罪悪感に苛まれながら涙を流しながら逃げていった。






















「「「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」」」
「ごめんなさいジュビアさん・・・」

一夜さんのグレイさんから命からがら逃げてきた俺とウェンディたちは、人気の少ない場所に逃げ込み、呼吸を整えている。

「あれ?あそこにいるのって・・・」

すると、ウェンディが誰かを見つけたらしく、そちらに駆け出す。俺も彼女に付いていくと、そこには建物に片手をついて、同じように息を乱している男の子がいた。

「ロメロじゃなくて、ロメオくん!!」
「ロメオも無事だったんだ!!」

その少年はギルドで俺たちと同世代の唯一の魔導士であるロメオ。彼は俺たちが来たことに気付き、頬を緩ませる。

「ウェンディ姉!!シリルn・・・兄!!」
「なんで今姉って言おうとした!!」
「ごへんなはい」

シリル姉って言おうとしたロメオの頬を思いきり引っ張る。彼が痛みに耐えながら謝罪した後、それどころではないと思い直し、手を離す。

「ロメオくん、マカオさんたちは?」
「父ちゃんはもうダメだ。ワカバおじさんも」

彼の父親であるマカオさんの安否を確認したウェンディだったが、どうやら彼らももうダメだったらしい。まぁ、真っ先にやられそうな人たちだし、仕方ないかな。

「どうなっちゃうんだろう・・・」
「泣かないの、ウェンディ」
「弱音を吐いちゃダメよ!!」
「でもどうすればいいのかな~?」

泣きそうになっているウェンディを抱き締めてあやす。しかし、セシリーの言う通り、この状況をどうすればなんとかできるのかね?

「俺、あいつらの弱点見つけたかもしれねぇ」
「「「え!?」」」

何も思い付かない俺たちとは逆に、何やら彼らの弱点を見つけたと言うロメオ。

「ホント!?」
「確かめたいことがあるんだ!!付いてきた!!」
「う、うん!!」
「わかった!!」

そう言ってどこかに走り出すロメオの後に付いていく。しかし、その進路の先に、不審な人影が姿を見せる。

「逃がさんぞ」
「メェーン」
「クンクン、クンクン」
「しまった!!」

そこにいたのは最初にやられたと思われる一夜ギアの皆さん。彼らの後ろにも何人かの一夜さんたちがいて、突破はとてもじゃないができそうにない。

「なら後ろに・・・」
「こっちもダメみたい!!」
「「そんな・・・」」

後戻りしようとも考えたが、そちらにも大量の一夜さんがいる。四方を囲まれた形になった俺たちは、とこにも逃げる道がない。

「クソ」
「近づいてくるよ~!!」
「匂いを嗅がれるのも時間の問題ね」
「戦うわけにもいかないし」
「間を縫って逃げるのも無理だな」

どんどん距離を詰めてくる一夜さんたち。せっかくロメオが弱点を見つけてくれたのに、このままじゃやられてしまう。

「シリル姉!!ウェンディ姉!!シャルルとセシリーと飛んで逃げろ!!」
「だから間違ってるって!!」
「今はそれどころじゃないよシリル~!!」

ロメオがとうとう呼び方を直そうとすらしなくなったので声を荒げると、セシリーに頭を叩かれた。今のは俺が悪いのか?

「でも、それじゃあロメオくんが」
「そうだよ!!ロメオを置いてけないよ」

俺たちだけでも逃げるようにと言うロメオ。だけど、仲間である彼を見捨てるわけにはいかない。

「俺のことはいい!!それより空中に逃げたら、ナツ兄を探すんだ!!」
「ナツさんを!?なんで!?」
「ウェンディ!!行くわよ!!」
「逃げるよシリル~!!」
「ごめん!!ロメオ!!」

限界を感じたシャルルとセシリーが俺たちを掴んで空中へと飛び立つ。

「ロメオくん!!」
「頼んだぜ!!シリル姉!!ウェンディ姉!!ナツ兄は・・・きっと・・・」

取り残されたロメオは辺り一面に集まっていた一夜さんたちに取り押さえられ、姿を確認できなくなる。

「「ロメオ(くん!!)」」
「見ちゃダメ!!ウェンディ!!」
「もう無理だから~!!」

地上に残されたロメオ。再び彼の姿が俺たちの視界に入った時には、彼も周りの人々と同じような顔へと変わり果ててしまっていた。

「ああ・・・」
「ごめんロメオ・・・」

顔を押さえて涙を流すウェンディと彼の成れの果てに申し訳なくなった俺がそう言う。

「泣いてる暇はないわよ」
「ロメオくんのために、急いでナツくんを探さないと」
「だね」
「うん・・・」

シャルルとセシリーに言われ、気を取り直す二人の竜。眼下に広がるマグノリアの街は、どこを見ても一夜さんだらけになっている。ナツさんが無事ならいいんだけど・・・

「どう?ナツさん見える?」
「う~ん・・・」

空中から最後の希望(ナツさん)を探している俺たち。俺の目ならマグノリアの街にいる全員の顔をしっかり見ることができるんだけど、どこにも彼の姿がどこにも見当たらない。

「まさかナツももう・・・」
「いや・・・」

シャルルが最悪の事態を予想しているが、それを否定する。理由は彼が着ている服と同じものを着ている一夜さんがさんがいないからだ。つまり、彼はまだ無事!!・・・なはず。

ドゴォン

「「「「!!」」」」

ナツさんを探していると、突然大きな爆発音が聞こえてくる。そちらに目を向けると、そこには火柱と共に青い猫に持たれた二人の男女がいた。

「いたぁ!!」
「シャルル!!セシリー!!」
「わかったわ!!」
「任せて~!!」

目的の人物を見つけた俺たちは、すぐさま彼の元へと向かっていく。

「「ナツさん!!」」
「ハッピー!!」
「ルーシィさんも!!」
「おお!!」
「みんな無事だったのね!!」

俺たちが声をかけるとナツさんたちがそう言う。彼らを持っているハッピーは、シャルルとセシリーが無事だったことに涙を流して喜んでいる。

「ナツさん!!ロメオくんが一夜さんたちの弱点を見つけたらしいんです!!」
「ホント!?」
「ロメオはやられちゃいましたけど・・・」
「そうか・・・」
「それで、ロメオくんがナツさんを探せって!!」
「俺?・・・ロメオが・・・」

ナツさんにロメオが見つけた弱点について、知っていることを伝える。ナツさんはロメオがなぜ自分を探すようにと伝えたのか、懸命に頭を回転させて考えている。

「あ!!」
「ナツ?」
「何かわかったの!?」
「よかった~!!」

険しい表情を浮かべていたナツさんだったが、すぐに何のことか理解したらしい。

「ルーシィ!!俺を離せ!!」
「え!?」
「いいから早く!!」
「信じていいんだね?」
「ああ!!」

ナツさんは自分に背負われている格好のルーシィさんにそう指示する。ルーシィさんは一瞬離していいのか迷ったが、すぐに決心して彼を離す。

「ナツ!!お願い!!」
「俺に任せろ!!」

空から地上へと投下された彼は、炎を吐き出し着地のダメージを軽減させると、大量に街に存在している一夜さんの群れを高速移動しながら駆けていく。

「一夜たちがノロいのが幸いね」
「さすがです、ナツさん」
「かっこいい~!!」
「すごいなぁ」

どんどん加速しながらどこかに向かうナツさん。その方角にあるのは・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルド。

「あ!!」

それで俺はロメオが言っていた弱点が何なのかすぐにわかった。

「何?」
「どうしたの?シリル」
「何か思い付いたの~?」

俺が突然大きな声を発したから、驚いているウェンディたち。俺は彼らの見つけた弱点の正体を解説する。

「消臭魔水晶(ラクリマ)だよ!!」
「「「「「え!?」」」」」

今日開店の8アイランド。そのオープン記念に俺たちはウェイトレスのお手伝いをしていた訳なんだけど、他にもナツさんたちがお客としてやって来る予定だった。
その際、ギルドでエルザさんが汗臭いナツさんやロメオに臭い消しの応急処置として消臭魔水晶(ラクリマ)を手渡していたのを思い出した。
今回一夜ウイルスが広まっている原因は他人に匂いを嗅がれているから。つまり、その匂いを消してしまえば、元に戻せると彼らは考えたのだろう。

「そっか!!なるほどね!!」
「よくそんなの思い付いたわね」
「ナツくんとロメオくんに感謝だね~」

普段から余りお風呂に入っていなかったナツさんたちは、ちょいちょい悪臭を振り撒いており、エルザさんが怒っていたのだ。だけど、今回は彼らのその適当さがこの窮地からの脱出へと繋がったのだと考えると、ちょっとだけ感謝しなくちゃいけないな。お風呂にちゃんと入ってほしいけどね。






















「ったく、冗談じゃねぇ、一時はどうなるかと思ったぜ」
「恐ろしいですね、一夜ウイルス」

その後、ナツさんの活躍により街の人すべてを元通りにすることができた。そして今は、元通りになったギルドでゆっくりとお話ししている。

「結局何だったの?あれ」
「一夜が開発したイケメン薬らしい」

普段から香り(パルファム)魔法を使う一夜さんは、すべての人々をイケメンにする薬を開発していたらしい。何とも迷惑な話ですね。

「まさかマグノリアまでやって来るとはねぇ」
「イケメン?の執念だね」
「怖いね、イケメン(笑)の執念は~」

しかめっ面のシャルルに苦笑いのウェンディ、そして何とも言えない表情のセシリーがそう言った。

「さっさと禁止魔法薬に認定したから、もう安心だね」
「それはよかったです」

ヤジマさんからそれを聞いてホッとひと安心。まぁ、当然の結果ですよね。

「自分が一夜になっていたことを知って、立ち直るまでうんと苦労しそうなものも多いがな」
「そういえば、エルザも?」
「言ってくれるな・・・」

ラクサスさんやエルザさん、他にもレビィさんたちが相当にショックを受けているようで、表情が暗い。無理もないですけどね。

「それにしてもお手柄ね、ナツ」
「まぁな」
「イケメンじゃなくてもいい。心がカッコよければな」
「なんかムカつくな・・・」

鎧に覆われた自身の胸にナツさんを引き寄せてさらっと失礼なことを言うエルザさん。大変な一日だったが、みんな元通り戻れてよかったです。もうあんな地獄絵図は二度とごめんですけどね。








 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
以前シリルが週ソラに取材されたのは『妹にしたい魔導士ランキング』として出させていただきました。
イケメン上位ランカーのレオンと妹上位ランカーのシリル。何なんでしょうね、この扱いの違いは・・・ 
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