英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第114話
居住区画を探索していたエステル達は他の建物と比べ、明らかに大きい建物を見つけ、その中に入り、探索を始めた。
~第35クレイドル市役所~
建物内にある端末を見つけ、エステル達は端末を調べ、”ゴスペルの再発行申請”という欄を選び、そして試しにクローゼが裏の”四輪の塔”で見つけたデータクリスタルに書かれてあった人物――セレスト・D・アウスレーゼを入力してみた。
「氏名…………………………該当者アリ。生体パターン………………73%合致。申請者本人を『セレスト・D・アウスレーゼ』であると暫定確認しました。”ゴスペル”の再発行を行います。」
端末は機械的な声を出した後、なんと”ゴスペル”が現れた!
「あ……」
「わわっ……!」
「空間転位か……まさか、これほどの技術があるとはな……」
現れたゴスペルにクローゼとエステルは驚き、リウイは真剣な表情で呟いた。
「……どうやら大昔に使われていた本物の”ゴスペル”みたいですね。」
「うん……。”結社”が造ったレプリカと雰囲気が似てるかも。」
クローゼの言葉にエステルは真剣な表情で頷いた。
「それにしてもまさか、生体パターンが私と似ていたなんて……。さすがに偶然によるものだと思いますけど……」
「えへへ、偶然じゃなくて女神様のお導きだったりしてね。とりあえず、持っていたら何かの役に立つかもしれないし……ありがたく貰っちゃいましょ。」
「うふふ、そうですね。」
エステルの推測に微笑んだクローゼは”ゴスペル”をエステルに手渡し、エステルは荷物の中に入れた。そしてエステル達は探索を再開し、エレベーターらしき足場に乗って、上昇した。すると”公園区画”の時と同じように周りを見渡せる場所に到着し、そして近くにあった端末を操作して、”レールハイロゥ”を起動させた。すると光の線路がひかれ、公園区画の方にあるはずの乗り物が光の線路を伝って、やって来た。
~第35クレイドル駅~
「来た……!」
やって来た乗り物を見たエステル達は乗り物の近くまで来た。
「さてと、これでやっとこの乗物が使えるのよね?」
「今は戻る必要もないし、後でいいだろう。」
「そうね。」
乗り物に乗ろうとしたエステルだったが、リウイの意見に頷いて乗るのをやめた後、仲間達と共に再び端末の所に行き、操作して、地下道のゲートのロックを解除しようとしたが、”アクシスピラー”の指示により認証が必要になったという警告が出た。
「って、何よそれ……」
「どうやら前のようには行かなくなったみたいだね。」
「しかし、さっきは可能だったのに”アクシスピラー”からの指示によって止められるとは……。おそらく、”結社”の仕業でしょうね。」
端末の文章を読んで驚いているエステルにヨシュアとクローゼは言った。
「そ、そんな……」
クローゼの推測に表情を暗くしたエステルだったが
「……先ほど手に入れた”ゴスペル”を使ったらどうだ?その端末にも”ゴスペル”を使用しろと書いてあるしな。」
「う、うん……」
リウイに言われ、エステルは先ほど手に入れた”ゴスペル”を端末の上に置いた。すると”ゴスペル”は今までのように妖しい黒い光を放った。
「当駅付近にあるゲートのロックを解除しました。地下道125号の利用が可能です。」
そして端末は機械的な声で報告した。
「やった……!」
「これで他の区画に行けるようになるね。」
「これからもこの”ゴスペル”が必要になってくるでしょう。大切に持っておきましょう。」
そしてエステル達は地下道を進み、次の区画に到着した。
~リベル=アーク・工業区画~
「ここは……」
「かなり広い場所に出たね……」
「道もかなり広いですし……一体どういう場所なんでしょう?」
「……恐らく工業エリアなのだろう。見渡す限り工場らしき大きな建造物も見えるしな。」
新たな区画の広さにエステルとヨシュアは驚き、クローゼの疑問にリウイは推測した意見を言った。
「なるほど、確かに言えてるかも。……よーし、さっそく探索を始めますか。」
そしてエステル達は探索を開始した。
~第7ファクトリア駅~
探索を開始したエステル達は今までの区画のように”駅”を見つけ、端末を操作して”レールハイロゥ”を起動させ、使えるようにした。
「えっと、これで3つの駅が使えるようになったのよね?」
「うん……かなり便利になったね。」
エステルの疑問にヨシュアは頷いた。そしてエステルは地下道のゲートのロックを解除しようとして、ゴスペルを置いたがパスワードを入力しろという警告が出た。
「パ、パスワードって……」
「ネットワークを管理する中枢から操作されたということか……。どうやら”結社”は都市機能をかなり掌握しつつあるみたいだ。」
「パスワードを手に入れるまで、今は放っておくしかなさそうですね……」
パスワードの存在に驚いているエステルにヨシュアは説明し、クローゼは提案した。そしてエステル達はさらに探索をすると驚くべき物を発見した。
~第3ファクトリア~
「―――まさか、こんな所まで連れて来られちまうなんてな。これから俺たち、何をさせられるっていうんだ?」
「さあな……。ただ、教授と執行者が揃って出かけたことを考えると大した任務は残っていないだろうさ。せいぜい、空賊のような連中を捕まえる程度じゃないか?」
「そういえば……たしかリベールの飛行船が不時着していたはずだろう。そちらへの対応はいいのか。しかもメンフィルの戦艦もそっちに着陸したんだろう?」
「教授たちが戻るまでは放置しておけとの命令だからな。ま、船を修理するまでは連中だって何もできないだろうさ。それにメンフィルも不時着した船の修理を手伝っているだろうから、こっちには来ないだろうよ。……というか来てほしくないぜ。」
「確かに……ロレントに向かい、殲滅された奴等で今回の戦力の7割が減ってしまったからな……もし、今の状況でメンフィルに攻められたらと思うと……ブルブル!想像したくねえ…………」
「縁起でもない事を言うなよ………」
エステル達が探索を始めた場所――そこには”グロリアス”が停泊していて、見張りの猟兵達が談笑していた。
(”グロリアス”……こんな所に停まってたんだ。)
(ジークの言っていた通り浮遊都市の東側でしたね……。それにしても、なんて大きい……)
物陰に隠れて様子を窺っていたエステルは真剣な表情でグロリアスを見つめ、クローゼはグロリアスの大きさに驚いていた。
(…………ファーミシルス、俺だ。例の”方舟”を見つけた。地上部隊の兵達を地下道を通らせて、こちらの近辺の地下道の出入り口付近に陣を作らせろ。……ただし、敵に気付かれない為に、地下道の中に陣を作らせろ。それと工作部隊に約~アージュの橋を2つ造らせておけ。勿論、迅速でな。)
(ハッ!)
一方リウイはエステル達から離れて、無線機らしき物でファーミシルスに連絡を取っていた。
(……どうやらドルンさん達を助けるチャンスみたいだね。)
(教授と執行者たちが出払っているようですからね。)
(空賊団の救出もあるし思い切って突入してみようか?)
一方リウイの様子に気付いていないヨシュアとクローゼは話し合っていたが
(ちょ、ちょっと待って。突入するのはいいけど、ジョゼットに声をかけた方がいいんじゃないの?あの子のお兄さんたちを救出するわけなんだし……)
エステルが慌てて提案した。
(エステル……)
(か、勘違いしないでよ?別にあの子を気遣ってるとかそういうわけじゃなくて……その……遊撃士としての仁義をねぇ。)
(うふふ、エステルさんらしいです。)
驚いているヨシュアに慌てた様子で説明しているエステルをクローゼは微笑みながら見つめた。
(そういえば、気になったんだけど、”グロリアス”の出入り口付近の横に大きな穴がいくつか空いているわね?)
(うん。……それにしてもあの”グロリアス”の装甲に穴を空けるなんて……一体どこの攻撃にやられたんだ?)
(………あのリウイ陛下。つかぬ事をお聞きしたいのですが、もしかしてモルテニアはグロリアスと交戦をしたのですか?)
そして猟兵達が守っている出入り口付近に空いている大きな穴を見たエステルは不思議そうな表情をし、ヨシュアは驚いた表情をしている所を、クローゼがいつの間にか戻って来たリウイに尋ねた。
(……ああ。あの穴はモルテニアの主砲とリフィア達が放った魔術によるものだ。)
(あ、あんですって~!?)
(あのグロリアスの装甲を貫く事も凄いですけど、まさかリフィア達もその原因の一つだなんて………)
(リフィアさん達が本気を出したら、一体どれほどの威力になるのでしょう?)
リウイの説明を聞いたエステル達は驚いた。
(……とにかく。あの空賊の娘を仲間に加えるのなら、一端戻るべきだろう。”レールハイロゥ”とやらのお蔭で移動も楽になっているだろうしな。)
(う、うん。)
その後エステル達は”レールハイロゥ”を使って、公園区画の駅まで戻って来た後、用事があるリウイと一端別れてジョゼットを探して、報告しジョゼットの希望によりエステル達はジョゼットを仲間に加えた。
~アルセイユ・ブリッジ~
「さ~てと。どうする?念の為にモルテニアまで行って、チキが持ってきた商品を見てみる?もしかしたら”執行者”と戦闘になるかもしれないし。強い武器はあっても損はないでしょ?」
「そうだね。彼女の商品はどれも一級品だし、それにモルテニアにいる仲間達を加えるのにもちょうどいいしね。……今から敵地の中に行くんだ。リウイ陛下達のような”英雄”クラスを連れて行った方がいいと思うよ。エステルの言う通り、残っている”執行者”と戦う事になるかもしれないし。」
「そうですね……実際、”執行者”である”幻惑の鈴”やあの”剣帝”すらも圧倒していましたからね……」
エステルとヨシュア、クローゼがこれからの事を話し合っているその時
「失礼します。」
一人のメンフィル兵がブリッジに入って来た。
「何用か?」
ブリッジの中にいたユリアはメンフィル兵に尋ねた。
「ハッ!これより”モルテニア”内に開かれる重要作戦の会議を開くため、”ファラ・サウリン”卿並びに”ルーハンス”卿、そしてヨシュア・ブライト殿に会議に出席して頂きたい事を伝えに参りました!」
ユリアに尋ねられたメンフィル兵は敬礼をして答えた。
「へ?その重要作戦の会議っていうのにメンフィルの貴族のあたしとミントが出席してほしい事はわかるけど、何でヨシュアまで??」
「……申し訳ございません。その理由は私の方では聞いておりませんので。」
「………ちなみにどんな作戦内容なんですか?」
エステルの問いに返せなかったメンフィル兵にヨシュアは真剣な表情で尋ねた。
「……それは我が軍の機密となりますので、私からはこの場で申せません。」
「へ?けど、その重要作戦の会議とやらにあたし達が出席したら、クローゼ達にも伝えるつもりよ?」
「……構いません。あくまで我等メンフィル軍の兵達が伝えてはいけない事になっておりますので。……”モルテニア”の出入り口付近に案内の兵がいますので準備が出来たら”モルテニア”に向かって下さい。」
「あ、うん。わかったわ。」
「……それでは失礼します。」
エステルの返事を聞いたメンフィル兵はブリッジから出て行った。
「……それにしてもメンフィルはこの状況で一体何をしようとしているのでしょうか……?」
「そんなのリウイ達に聞いてみないとわからないわ。全く……せめて王族のクローゼやオリビエも参加させればいいのにね。」
「…………………………」
クローゼの疑問にエステルは溜息を吐いて答え、ヨシュアは真剣な表情で考え込んでいた。
「ねえ……さっきから気になったんだけど、そのノーテンキ娘がメンフィルの貴族だとか、一体どういう話?」
一方エステルとミントの事情を知らないジョゼットはヨシュアに尋ねた。
「……詳しい事は今は省くけど、エステルとそれとミントっていうエステルの義理の娘なんだけど……2人はメンフィルの貴族になったんだ。」
「はあっ!?」
「ふふ~ん、驚いた?しかもあたしは”侯爵”の爵位を貰っているわよ♪」
ヨシュアの話を聞いて驚いているジョゼットにエステルは得意げな表情で言った。
「なっ!?あ、あははは!相変わらずノーテンキな女だね!あんたみたいなガサツな女が貴族になれる訳ないし、しかも”侯爵”なんて位を貰えるわけないでしょ?」
「ムカッ!そこまで言うなら見せてあげるわ!」
ジョゼットの言葉に怒ったエステルはブリッジから出て行き、空き室で貴族の服に着替えて、ブリッジに戻って来た。
「な、な、な………!」
貴族姿のエステルを見たジョゼットは驚きのあまり口をパクパクさせた。
「フフ、何を驚いているのですか?ジョゼット”さん”。」
そしてエステルは上品に笑いながら言った。
「ジョ、ジョゼット”さん”~!?あ、あんた一体どうしちゃった訳!?」
「どうしたも何も、本来の私を見せてあげたのですよ?」
「嘘言うんじゃないよ!絶対に演技だろ、その口調!」
「まあ……見抜かれるとは思いませんでしたけど、よりにもよって最初に出会った時、私のように演技をしていたジョゼットさんに指摘される筋合いはありませんわ。」
「うぐっ!」
挑戦的な笑みを浮かべたエステルの指摘にジョゼットは唸った。
「ジョゼット……信じられないのはわかるけど、本当の事なんだ。嘘だと思うなら、後でメンフィルの皇族のリフィア達に聞けばいい。彼女たちが証明してくれるよ。」
「ほ、本当にこのノーテンキ女が貴族だなんて………しかも”侯爵”って………”男爵”だったボク達より身分が圧倒的に上じゃないか~!よりにもよってこの女に抜かれるなんて、最悪~!」
「あ、あはは………」
「ふふ~んだ。思い知ったかしら♪」
ヨシュアの説明を聞いて信じられない表情で叫んでいるジョゼットを見たクローゼは苦笑し、エステルは得意げな表情をしていた。
その後エステルと同じように貴族の服に着替えたミントと共にエステルとヨシュアは”モルテニア”に向かい、出入り口にいた案内のメンフィル兵によって、会議室まで案内され、そして会議室に入った…………
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