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おぢばにおかえり

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第二十八話 誤解のもとその九

「案内するわよ」
「じゃあ中にとか?」
「ああ、それは駄目よ」
「駄目っていいますと」
「東寮は男子禁制」
 寮長は男の方の学校の先生でも基本的にはそうです。
「入ったら只じゃ済まないわよ」
「何かそれって今時凄くないですか?」
「そう?」
 こう言われても今一つ自覚はありません。
「別に普通でしょ」
「いや、普通じゃないですよ」
「だって女の子の寮よ」
 このことがまず前提としてあります。
「だったら用心に用心を重ねないと」
「そんなものですか」
「お父さんでも面会室までにしか入られないのに」
 これは事実です。こうしたところは男の子の北寮とは全然違います。そういえば自宅生の女の子達も東寮にはあまり来ないです。
「天理高校の男の子が入られる筈ないじゃない」
「それもそうですか」
「そうよ。間違っても入ったらね」
 ここはかなり注意します。
「酷いことになるなんてものじゃないからね」
「一応わかりました」
「一応って」
 今の言葉に溜息です。
「本当にお気楽なんだから、阿波野君は」
「お気楽でも何でもいいじゃないですか」
 ああ言えばこう言うです。
「深刻に考えても仕方ないですよ」
「まあそうだけれどね」
「とにかく先輩」
 ここで阿波野君の方から言ってきました。
「そろそろですよね」
「そろそろって?」
「僕食べ終わりましたし」
 こう言ってくるのでした。
「先輩が食べ終わったら」
「食べるの早いわね」
 私はまだ半分も食べていないのにです。本当に早いです。
「またかなり」
「食べるのは早いんですよ、子供の頃から」
「よく噛んで食べないと駄目よ」
 子供の頃からよく言われていることを阿波野君にも言いました。
「身体に悪いから」
「何かその言葉ってお姉さんみたいですけれど」
「そうかしら」
 そう言われても。あまり自覚が。
「別にそうは思わないけれど」
「じゃあいいですけれど」
「まあとにかくね」
 私も言いました。
「食べ終わったら」
「ええ。帰られるんですね」
「阿波野君はどうするの?」
「まだ色々とおぢば歩き回ろうかなって思ってます」
 かなり時間があるみたいです。
「何か色々とある場所みたいですしね」
「そうね。色々あるのは確かね」
 これはその通りです。おぢばは何年歩いても気付かないような場所があったりして。かなり面白い場所でもあります。おぢばがえりの時なんかは特にです。 
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