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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第92話

~翡翠の塔・近辺~



「さてと……いよいよ調査開始ね。とにかく急いで屋上に向かわなくちゃ。」

「うん……でも様子が変だな。」

「えっ?」

地上に降り、呟いたヨシュアの言葉にエステルが首を傾げたその時

「あ、あんたたちは……!」

王国軍兵士がエステル達に慌てた様子で近づいて来た。

「ひょ、ひょっとして連絡にあった遊撃士かい?」

「うん、そうよ。」

「あなたは斥候部隊の?」

「あ、ああ……。あんたらに塔の状況を説明するために残っていたんだ。」

ヨシュアに尋ねられた兵士は頷いて答えた。

「何でも仮面の男にやられたそうやね?」

「そ、そうなんだけどそれだけじゃあないんだ。何と言うか……明らかにおかしいんだよ。」

「おかしいって……何が?」

「み、見れば分かる。とにかく入口に来てくれ。」

そしてエステル達は塔の入口に向かうと驚くべき光景を目にした。



「えっ……!?」

塔の入口が奇妙な色の結界らしきもので塞がれていたのを見たエステルは驚いた。

「あ、あれって……」

「何かの結界……!?」

結界らしきものを見たエステルは呆け、クローゼは真剣な表情で呟いた。

「俺たちが到着した時は既にこうなっていたんだ……。で、調べようとした矢先に例の仮面の男が現れて……」

「………………………………。中に入ることはできないんですか?」

「仮面の男はそのまま入っていったから大丈夫だとは思うけど……。追いかけようとも思ったけど仲間が全員やられちゃって……」

ヨシュアに尋ねられた兵士は肩を落として答えた。

「そっか……。ここはあたしたちに任せてあなたは部隊に戻って。」

「わ、わかった……。女神の加護を!」

そして兵士はどこかに去り、エステル達は塔の中へと入って行った。



~翡翠の塔・異空間~



「へっ……!?」

「ここは……」

エステル達が塔の中に入ると、そこは塔の光景とは全く異なり、広大な空間が見える場所だった。

「ちょ、ちょっと待って……。あたしたち、確かに塔の中に入ったはずよね!?」

「入口に入る時、”転移の時に感じる感覚を感じました。恐らく空間転位……。どこか別の場所に飛ばされたみたいですね。」

周りの光景を見て慌てているエステルにリタは説明した。

「あ、あんですって~!?そ、それじゃあ塔の屋上に登るなんて無理なんじゃ……!」

「落ち着いて、エステル。ブルブランが現れたということは必ず道はあるはずだよ。」

「た、確かに……。……うん!とにかく慎重に進みましょ!」

そしてエステル達は時折現れる機械人形達を倒しながら先を進んだ。



「あっ……」

先に進んでいた時、エステルは何かの装置を見つけた。

「これって……何かの装置みたいね。」

「ふーむ、見たところ何かの端末見たいやけど。」

「……調べてみようか。」

そしてヨシュアは装置を調べた。

「………………………………。……これだ」

ヨシュアがスイッチを押すと、装置が起動し、装置の上の空間に映像が映し出された。

「わわっ……!」

「どうやら情報が記録された端末みたいだ。内容を確認してみよう。」

そしてエステル達は情報を確認して、端末のメモリーである『データクリスタル』を取り出したて読み始めた。しかしほとんどの文字は読めないようになっており、わかったのは情報を記録したのが『セレスト・D・アウスレーゼ』 という人物だけだった。

「なによ、最初以外は読めなくなってるじゃない……って、この『アウスレーゼ』って。」

「はい……リベール王家の姓です。(ゆかり)のある方かもしれません。」

エステルに見られたクローゼは頷いて答えた。

「……どうやら重大なことが記されている可能性が高そうだ。何とかして読めればいいんだけど……」

「うーん……そうね。ま、役に立つかもしれないし一応取っておきますか。」

その後エステル達は周りの装置を起動させて、データクリスタルを回収し、屋上を目指した。



~翡翠の塔・頂上~



「こ、ここって……!?」

「塔の屋上みたいやけど、こいつは……」

「屋上を包んだ”結界”の内側ということか……」

「フフ……なかなか早かったようだね。」

屋上に到着し、周りを見ているエステル達に声がし、声がした方向を見るとそこには執行者――”怪盗紳士”ブルブランが”ゴスペル”を起動させた装置の傍で待ち構えていた。

「やっぱり来てたわね……この変態仮面。」

「フッ、はしたない物言いだ。我が挑戦に応えた事もあるのだから、品位を見せてもバチは当たるまい?」

エステルの言葉にブルブランは呆れた口調で言った。

「ひ、品が無くて悪かったわね!」

ブルブランに呆れられたエステルは言い返した。

「それはさておき……ずいぶん久しぶりだな。”漆黒の牙”―――ヨシュア・アストレイ。」

ブルブランはヨシュアを見て、口元に笑みを浮かべた。

「……そうだね。何故あなたが教授の計画に協力しているのか疑問だけど……」

「フフ、他の者はさておき私の場合は趣味を兼ねていてね。このリベールという国は不思議な気品に満ち溢れている。人も、土地も、空気すらも。その気品が本物かどうか見極めてみたいと思ったのだよ。困難に直面した時、それは一層輝くものだからね。」

「なるほどね……。ある意味、あなたは教授と似ているのかもしれない。」

ブルブランの話を聞いたヨシュアは納得した様子で頷いた。

「はは、私が求めるのは美だが、教授の場合は明らかに違う。それは君も知っているはずだ。」

「………………………………」

「しかし、まさか姫殿下がこの場に来られたとは……。私の崇拝を受け入れる気になったと考えてよろしいかな?」

「残念ですが……私は貴方の期待に応えられるような人間ではありません。真に気高き人間であるならどうして迷ったりするでしょう。”アルセイユ”を陛下に返す時、私は答えを出さなくてはいけない。私は……その時が恐いのです。」

ブルブランに尋ねられたクローゼは否定の言葉を答え、不安そうな表情になって答えた。

「クローゼ……」

「………………………………」

「フハハ!その畏れこそが気高さの証!地を這う虫けらが焦がれて止まぬ翼の輝きなのだ!」

クローゼの答えを聞いたブルブランは高笑いをしながら答えた後、ステッキを構えた!するとエステル達の左右に巨大な人形兵器が2体現れた!

「!」

「わわっ!?」

「強襲用人形兵器、”バランシングクラウン”!」

「さあ、見せてくれたまえ!影横たわる地すら照らし出すその輝きを!」

「霊体の本領を見せてあげる!」



そしてエステル達はブルブラン達との戦闘を開始した!


「みんな、行くわよ!……来て!テトリ!」

戦闘開始早々、エステルは全員に掛け声をかけて全員の闘志を高め、テトリを召喚した!

「後方で援護を頼むわ!」

「はい、わかりました!」

エステルの指示に頷いたテトリは後方で魔術の詠唱やオーブメントを駆動させ始めたクローゼとケビンの所まで下がった。

「それっ!」

しかし、そこにブルブランが特殊なカードを放ってダメージを与えるクラフト――ワイルドカードをエステル達に放った!

「きゃっ!?」

「あいたっ!?」

「うぁっ!」

「ぴえっ!?」

ブルブランが放ったクラフトに命中したエステル、ケビン、クローゼ、テトリは呻いたが

「朧!!」

ヨシュアはクラフトを放つ事によって、回避し、ブルブランを攻撃したが

「フフ………」

ブルブランはステッキで防御した!そして周りの人形兵器達は自分の身体から糸のようなものを元の位置に戻ったヨシュアに放った!

「!!」

敵の攻撃に気付いたヨシュアは一端後退して、回避し、そしてオーブメントを駆動させた!

「耐えられます?剛震突き!!」

そして霊体の為、ブルブランが放ったカードがすり抜けたリタがブルブランにクラフトを放った!

「フハハハハ………!」

しかしブルブランは不敵に笑いながら分身するクラフト――シャドウキャストを使い、3人に分身した!リタの攻撃は分身体のブルブランに命中した為、本体には当たらなかった!そして分身は消え、ブルブランは一人に戻った。

「…………厄介な技を持っていますね。」

ブルブランの技を見たリタは警戒した表情でブルブランを見た。



「今助けたるっ!そらっ!」

一方後方でケビンはクラフト――セイクリッドブレスを放って、効果範囲内にいる自分、クローゼ、テトリを回復した!

「癒しの闇よ!闇の息吹!!」

一方エステルも自分に治癒魔術をかけた。そしてヨシュアのオーブメントの駆動が終わり、さらにクローゼの詠唱も終わり、アーツと魔術が人形兵器達に放たれた!

「出でよ!氷剣!!」

「シャドウスピア!!」

2人が放った攻撃によって、敵達はそれぞれダメージを受けた!

「せいっ!!」

「フッ!!」

そしてエステルは棒で、ヨシュアは双剣でさらに攻撃したが

「「…………………」」

2体の敵は手に持っていた剣らしき武器で防御した!

「のびちゃえっ!重酸の地響き!!」

「怒りの炎よ、噴き上がれ!!ナパームブレス!!」

しかしそこにテトリの魔術とケビンのアーツが放たれ、敵の防御は崩された!

「「…………………」」

一方攻撃された敵達はケビンとテトリの足元に人1人分の穴を発生させ、2人を穴の中へと落とした後、2人がいた真上に転送した!

「へっ………んな、アホな~!?」

「ぴえええええ~!?」

穴に落ち、空中に転送された2人は悲鳴を上げながら落ちた!

「あいたっ!?」

「いたっ!?」

落ちた2人はダメージを受け、呻いた!



「や~っ!ラ・ティアラ!!」

ダメージに呻いている2人にクローゼはアーツを放って、2人の傷を回復した!

「助かったわ~。」

「ありがとうございます。」

回復された2人はクローゼにお礼を言った。

「おぉぉぉ!」

一方ヨシュアはクラフト――魔眼で敵達の動きを止め

「行くわよ~………瞬散撃!!」

エステルは棒で素早い突きで敵達を攻撃して、ダメージを与えた!

「もう、しまいにしよか…………ハァァァァァァ………!滅!!」

ケビンはクラフト――デスパニッシャーを放って、大ダメージを与え

「……行きます!凍結!!」

クローゼは魔術を放って、敵達を凍らせ

「これで終わりです!猛る大地よ、我が矢に力を!……大地の援護射撃!!」

とどめにテトリがSクラフトを放って、敵達を破壊し、倒した!



「やあっ!」

エステル達が人形兵器達と戦っている一方、リタはブルブランに攻撃したが

「フフ………」

ブルブランは回避し、そして

「こんなのはどうかな?」

杖から数本のナイフを素早く出し、敵に放つクラフト――マジックナイフをリタに放った!

「甘い。」

しかしリタは水でできた簡易結界をはって防御し、クラフトを放った!

「決める……!死角の投槍!!」

「フハハハハ………!」

しかしブルブランはクラフト――シャドウキャストを使って、3人に分身したが

「……かかりましたね。行けっ!」

リタは不敵な笑みを浮かべて1体ブルブランに当たる寸前で槍を操って狙いを変えて、他の1体のブルブランに攻撃した!

「何!っ!?」

リタの攻撃に驚き、そして脇腹に命中したブルブランは呻いた!するとブルブランの脇腹から大量の血が出て来た!



「フフ、私は分身に関しては”ある方”のお傍にいたお蔭で、見極められますので、無駄ですよ?」

「フハハハハ!幼いながら、中々やるじゃないか!ならば、君にふさわしい最期を贈ろう!」

リタの言葉に高笑いをしたブルブランはステッキを振るった!するとリタの背後から突如棺桶が現れ、リタを閉じ込めた!

「さあ、美しく散るがいい!!」

そしてブルブランは空中へと跳躍して、ステッキを剣に変え

「フハハハハハ、さらばだ!!」

剣をリタを閉じ込めている棺桶に放った!ブルブランの最高の奇術にしてSクラフト――デスマジックが命中した事に着地して、口元に笑みを浮かべたブルブランだったが

「フフ………」

なんと攻撃し終わった場所を見ると傷一つついていなく、不敵に笑っているリタがいた!

「馬鹿なっ!?」

傷ひとつついていないリタにブルブランは驚いた!

「エアリアル!!」

そしてリタはアーツを放った!

「くっ………!」

リタが放ったアーツで発生した竜巻によってブルブランはその場に留めさせられると同時にダメージを受けていた!

「フフ、”オーブメント”に”アーツ”といいましたか。身体能力を上げ、誰にでも魔術に似た力が使えて便利ですね。………ハッ!」

ダメージを受けているブルブランを見たリタは、自分が装着しているオーブメントを見て口元に笑みを浮かべた後、竜巻の発生が終わると同時にクラフト――薙ぎ払いを放った!

「はっ!?」

リタの攻撃によってブルブランは腹を斬られ、斬られた部分から血を出して呻いた!

「燃えなさい!火球!!」

「ハァァァァァ………紅燐剣!!」

「そこやっ!!」

「行けっ!水弾!!」

「ヤアッ!!」

さらにたたみ掛けるようにエステル達の魔術やクラフト、遠距離攻撃がブルブランを襲ったが

「ハッ!!」

ブルブランは命中する直前で大きく後ろに跳躍して、後退し、エステル達の攻撃を回避した!



「ふむ……思っていたよりもやる。ならばこちらも本気で―――」

エステル達から距離をとったブルブランが呟いたその時、塔の屋上の装置から出ていた奇妙な光が消え

「む!?」

「!」

屋上を覆っていた黒い光も消え失せた。

「あ……!」

「元に戻ったんか……!?」

「ふむ、どうやら役目はこれで終わりのようだな。……仕方あるまい。引き上げるとしようか。」

「へっ……」

ブルブランが呟いた事にエステルは驚き、仲間達と共にブルブランを見ると、ブルブランはステッキを構えた状態で、周りに薔薇の花びらが舞っていた。

「ちょ、ちょっと!?」

「ま、待ってください!」

ブルブランの行動を見たエステルとクローゼは制止の声を上げたが

「ハハ、殿下は勿論だが遊撃士諸君の戦いぶりにも輝きを感じさせてもらった。それが真実であるかは次の機会に確かめさせて頂こう。それでは諸君、失礼する。」

ブルブランは高笑いをしながら消えた。

「に、逃げられた……」

「残念です。このまま戦えば撃破できたのですが………」

ブルブランが消えた事にエステルはジト目で呟き、リタは残念そうな表情をして答えた。

「………………………………」

一方ヨシュアは真剣な表情になった後、エステル達と共に装置に装着されてある”ゴスペル”に近づいた。



「これが”β”……。”結社”が造ったゴスペルの最終型か。今までの新型よりもさらに一回り大きいみたいだ。」

「塔の屋上が元に戻ったのはいいんだけど……。問題はこれを使って何をしていたのかってことよね。」

「今まで動いていた装置もまた止まってもうたみたいや。何かイヤ~な予感がするわ。」

「竜を操っていた事といい、絶対に何かの悪い事に使われたのは確かだね。」

「それに、先ほどまで屋上を包んでいた結界……。あれは何だったのでしょう。」

ヨシュアの言葉にエステルは頷き、顔をしかめて言ったケビンの言葉にリタは頷き、クローゼは不安そうな表情で呟いた。

「………………………………。とりあえずこれでこの塔は元通りになったと思う。一旦、”アルセイユ”に戻ろう。」

「うん……。戻って博士に報告しないとね。」

その後アルセイユに戻ったエステル達は博士に塔の探索で手に入れたデータクリスタルやゴスペル、そして異空間になっていた塔内部や屋上の事を説明し、その後他の四輪の塔の新たな情報――”紅蓮の塔”にてヴァルターらしき人物が目撃されたのを聞き、アルセイユで紅蓮の塔の上空に向かった。



エステル達が紅蓮の塔に向かったその頃、紅蓮の塔付近の街道、トラッド平原道では結社の人形兵器達と王国軍、そしてエステル達が援軍に出したメンフィル兵達の戦いが繰り広げられていた……!







 
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