英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第166話
その後非常用通路を抜けてザクセン鉄鉱山に到着したリィン達はレンの案内によって最短ルートで鉱員達が閉じ込められている場所に到着した。
~ザクセン鉄鉱山~
「あっ……君達は!?」
「アリサちゃんか……!?」
リィン達の登場に鉱員達は驚き
「皆さん……!」
「よかった……ご無事でしたか。」
傷ついていない様子の鉱員達を見たアリサとセレーネは安堵の表情をした。
「そっちにいるのはアンゼリカかい……!?」
「フッ、みんな久しぶりだね。」
「とにかくすぐに扉を開けます!」
「レンさん、お願いします!」
「はいはい、わかっているわよ。」
そしてレンはハッキングで鉱員達を閉じ込めている場所の扉のロックを解除した。
「ふう……助かった。」
「ありがとう、君達。」
リィン達によって解放された鉱員達はリィン達に感謝し
「爆発物が使えたらもう少し早かったんだけど。」
「さすがに鉱山内じゃ崩落の危険もあるしな……」
「うふふ、だからこそレンも”パテル=マテル”を呼ばなかったのよ?」
「というか、”パテル=マテル”を鉱山に呼べば間違いなく鉱山が崩壊しますよ……」
フィーの言葉を聞いたリィンは考え込み、レンの話を聞いたツーヤは疲れた表情で指摘した。
「しかしアンゼリカ……少し見ない間に頼もしくなったね。」
「フッ、おかげさまでね。ここでバイトして心身を鍛えられたおかげでもあるだろう。」
「はは、よく言うぜ。」
(あはは……すごく親しいみたいだね。)
(ま、しばらく働いていたみたいだしな。)
(フフ、改めて思いましたけど大貴族の子女でありながら、色々と型破りな方ですね……)
鉱員達と親しそうに話しているアンゼリカをエリオットやクロウ、セレーネは微笑ましそうに見守っていた。
「ところで……人質はこれで全員ですか?」
「……そういえば、鉱山長たちは……!?」
マキアスの疑問を聞いてある事に気付いたアリサは血相を変えた。
「……鉱山長と他の鉱員たちは、奥の方に連れて行かれたんです。多分、奥の集中管理室に閉じ込められているんでしょう。」
「そうですか……」
「………急がないとな。」
鉱員の話を聞いたアリサとリィンはそれぞれ真剣な表情になった。
「………くっ、いてて……」
「ディックさん!」
「だ、大丈夫ですか!?」
「………怪我をしてるっぽいね。」
突如腹を抱えて呻き声を上げたエリオットは驚き、フィーは真剣な表情で呟いた。
「……はは、ちっとばかし抵抗しちまってな。なに、こんなのかすり傷だ。」
「あまり無理はしないほうが……」
「ど、どうする?怪我人もいるなら、このまま置いていくわけにもいかないが。」
「ああ、一旦彼らを連れて街に戻るべきかもしれないな……」
「あまり時間はなさそうだけど。」
「……ふむ、ジレンマだね。」
マキアスに判断を迫られたリィンは考え込み、フィーの言葉を聞いたアンゼリカは真剣な表情で考え込んだ。
「―――ったく、しゃーねえな。」
「クロウ……?」
「鉱員のオッサンたちはオレとツーヤが引き受ける。責任持って送り届けるから、お前達はこのまま先に進みな。」
「それって……!」
クロウの申し出を聞いたアリサは驚きの表情でクロウを見つめた。
「ま、状況を考えりゃ役割分担すんのがスジだろう。オレだったら一人でもジョルジュがいる地点まで護衛していけるはずだが、万が一の事を考えたら実力的に後一人腕利きの奴――――つまりこの中じゃツーヤが一番適任だ。そっちにはゼリカと大鎌使いのリアルチートお姫さんもいることだし、二人抜けたくらいなら大して痛くもねえだろうが?」
「なるほど……そういう事ですか。」
(ふぅん……?)
「し、しかし……」
「まあ、その点については概ね間違っていないな。アリサ君やフィー君、レン君とセレーネ君が離れるほうがよっぽど痛手だろう。ツーヤ君が抜けるだけでも、正直断腸の思いだよ。」
クロウの説明を聞いたツーヤは納得し、レンは探るような目でクロウを見つめ、マキアスは口ごもり、真剣な表情で答えたアンゼリカの話を聞いたリィン達は冷や汗をかいた。
「お前の趣味で言ってんじゃねーっつの。」
「で、でも確かに……クロウとツーヤの実力なら任せられるよね。」
「ときどき忘れそうになるがクロウはこれでも先輩だしな……」
「お姉様はわたくし達と比べると実戦経験が豊富ですから、二人でもきっと大丈夫でしょうね。」
「ん、妥当な役割分担だと思う。」
「……そうだな。二人ともよろしく頼む。」
「はい!」
「おう、任せときな。」
そしてリィン達はクロウとツーヤを鉱員達の護衛に回した。
「悪いな、兄ちゃん、姉ちゃん……街までよろしく頼むぜ。」
「はい、皆さんの事は必ずお守りしますので、ご安心ください。」
「クク、任せときな。たまにゃあ先輩らしい一面も見せなきゃいけないしな。―――ゼリカ、そっちは任せたぜ。」
「レンさんもリィンさん達の事、よろしくお願いします。」
鉱員の言葉に頷いたクロウとツーヤはそれぞれアンゼリカとレンを見つめ
「ええ、わかったわ。」
「フッ、言われるまでもないさ。みんなのことは頼んだよ。」
レンとアンゼリカはそれぞれ頷いた。
「どうか気をつけて……!」
「ああ、オッサンたちを送ったらすぐに戻ってくるからよ。そんじゃまた後でな。」
「殿はあたしがつくので鉱員の皆さんはクロウさんの先導に従ってついて行ってください。」
そしてツーヤとクロウは鉱員達と共にその場を去った。
「……行ってしまったか。」
「二人だったら大丈夫だと思うけど……」
「ああ、心配いらないさ。あれで頼りになる男だからね。」
「お姉様は成竜として何度も戦いを潜り抜けているそうですから、きっと大丈夫ですよ……」
「そうね。”リベールの異変”や”影の国”での修羅場を考えれば大した事はないわね。」
二人を心配するマキアスとエリオットの様子を見たアンゼリカとセレーネはそれぞれ心配は無用である事を口にし、セレーネの言葉にレンは頷いた。
「ひとまずあちらは任せましょう。―――俺達はこのまま奥へ向かうぞ。」
「ラジャ。」
「必ず鉱山町たちを助け出しましょう……!」
その後鉄鉱山の探索を再開したリィン達だったが途中のクロウとツーヤからの通信で崩落によって、二人とも離れ離れの状態で連絡道へのルートが塞がってしまった為、それぞれルートを探してリィン達に合流するという通信が来た後再び探索を再開し、終点近くに到着するとリィンのARCUSに通信が来た。
「こちら、リィンです。」
「―――ジョルジュだ。いま大丈夫かい?」
「ジョルジュ先輩……!」
「たった今、トワの方からまた連絡があってね。今回は直接話したいそうだからこれから通話を中継するよ。音質は悪いと思うから、スピーカーモードをオンにして待っててくれ。」
「ええ、わかりました。スピーカーモードをオン、と……」
通信相手であるジョルジュに指示をされたリィンはその場にいる全員に聞こえるようにスピーカーモードにした。
「―――リィン君たち、大丈夫!?」
「ハーシェル会長……!」
「ああ、みんな無事さ。」
「アンちゃん……よかった、声を聞けて!さっきもクロウ君とツーヤちゃんが崩落に巻き込まれたって聞いて本当に心配したんだから……!うう、こんなことならわたしもそっちに行けばよかったよ。」
「いえ……こうして声が聞けただけでも心強いです。」
「うんうん、サポートも頼りにさせてもらってますし!」
「はい!先輩方のサポートのおかげでわたくし達は先に進めるのですから……!」
「二人とも無事だそうだし、ひとまず安心するといい。」
「そっか……よかった。―――そ、そうだ聞いて!さっき情報が入って来て……鉄道憲兵隊に対して皇帝陛下から調査許可証が発行されたみたいなの!」
トワの話を聞いたリィン達は血相を変え
「へえ?さすがにザクセン鉄鉱山は速やかに奪還する必要があると判断したようね。」
レンは興味ありげな表情をし
「皇帝陛下の許可証……!」
マキアスは驚きの表情で声を上げた。
「うん、領邦軍もきっと無視できないと思う!もうすぐ鉄道憲兵隊の人達も突入できるはずだよ!」
「……いい報せですね。会長、俺達はこのまま奥へ進んでいくつもりです。」
「今なら裏をかいて人質を助けられそう。鉄道憲兵隊が突入できても領邦軍の妨害がないとは限らないしね。」
「ええ、鉱員たちの安全を考えたら悠長にはしていられません。」
「そっか……わかったよ。くれぐれも気を付けて!本当に危なくなったらちゃんと逃げるんだよっ?特にリィン君とアンちゃんは絶対に無茶しないこと!セレーネちゃん、リィン君の事を見張ってあげてね!」
「はい、わかりました……!」
「え、ええ……わかりました。」
「はは、名指しで釘を刺されてしまったか。必ず無事に戻ると約束しよう。」
「うん……待ってるから!それじゃあジョルジュ君に代わるね。」
「―――話は聞いた通りだ。みんな、女神の加護を………どうか気を付けてくれ。」
「ラジャ。」
「後は任せて下さい……!」
そしてリィンはARCUSの通信を切った。
「あはは……突入前に元気をもらった気がするね。」
「ああ……クロウやツーヤさん、先輩達とレン姫の助けでようやくここまで来れた。ここが正念場だ……気を引き締めて行くぞ!」
「ええ……!」
「フッ、派手に決めるとしよう………!」
「うふふ、”殲滅天使”がどれほど頼りになるかたっぷりと教えてあげるわ……!」
その後リィン達が終点に到着すると何とVとテロリスト達が待ち構えていた!
「クク……またしてもテメエらが現れるとはなぁ。」
「帝国解放戦線―――幹部”V”!」
「こ、この男が待ってたか……!」
「うふふ、少しは楽しめそうね。」
Vを見たリィンは声を上げ、マキアスは警戒の表情で不敵な笑みを浮かべるレンや仲間達と共に武器を構えた。
「フン………噂のテロリスト君達か。どうやら私達の侵入にとっくに気付いていたようだね。」
「おお、領邦軍の封鎖なんざ別に当てはしてねぇからな。鉄道憲兵隊が来ても迎え撃てる体制にはしているぜ。ま、お前らごときだったら俺達だけで十分すぎるがな。」
アンゼリカの言葉にVは凶悪な笑みを浮かべて頷いて答えた。
「言ってくれる……」
「気を付けろ……!この男、凄まじく強いぞ!」
「ガレリア要塞の時はナイトハルト教官とエヴリーヌがいたから何とか撃退できたけど……」
「どれだけ強くても皆さんで協力すればきっと勝てます……!
「うふふ、今度はレンがいるから大丈夫よ♪」
リィン達に警告するマキアスとエリオットの言葉を聞いたセレーネは真剣な表情で呟き、レンは不敵な笑みを浮かべて答えた。
「……やっと思い出した。猟兵団”アルンガルム”……その生き残りだったりしない?」
その時何かを思い出したフィーはVを見つめて尋ねた。
「はは、”西風の妖精”。お前さんが活躍する頃には無くなっちまってたんだがなぁ。」
「団長に聞いたことがある。何度か戦場でやり合った好敵手たちがいたって。」
「クク、かの”猟兵王”にそんな風に言ってもらえるとは光栄の極みだな。遅まきながら悔みを―――尊敬できる漢だったぜ。」
「……ありがと。」
Vの言葉を聞いたフィーは静かな表情で呟いた。
「貴方たち………どうしてこの鉄鉱山を?貴族派とは協力していても一枚岩ではなさそうだし……この鉄鉱山に何かあったら帝国そのものが危ないのよ!?」
「まあ、そうなんだけどよ。これも必要な作戦なのさ―――あのクソッタレな鉄血野郎をブッ殺すためにはなァ……!」
アリサの質問を聞いて頷いたVは憎しみの表情で声を上げると共に膨大な闘気を纏った!
「……っ………」
「な、なんでそんなに……」
「どうしてオズボーン宰相をそこまで憎むんだ……!?」
「……貴様らにはわかるまい……」
「あの男の改革の下……どれだけの人間が故郷を奪われ、生きる寄る辺を失ったか。」
リィン達の問いかけを聞いたテロリスト達は憎々しげな口調で呟いた。
「そ、それは……」
「宰相殿の”領土拡張主義”と、”鉄道網拡充政策”か…………」
「まあ、あの政策によって故郷を追われた人々が随分いる話は聞いていたけど……」
テロリスト達の話を聞いたマキアスは口ごもり、アンゼリカの言葉を聞いたレンは静かな表情でテロリスト達を見つめた。
「ま、それ以外にも色々だ。ギデオンの旦那は譲れない思想的な理由から…………スカーレットのやつは鉄道を強引に通されたせいで故郷を失くしたって聞いてるしな。」
「……そうだったの……」
「彼女にもそんな事情が………」
スカーレットの意外な過去にアリサとリィンは静かな表情で呟いた。
「そして俺はまァ、ただの”逆恨み”ってヤツだ。だからと言って止めるつもりはサラサラねぇんだけどな。猟兵団”アルンガルム”……そこそこのランクの団だった。団長は俺―――それなりのヤマを上手くこなすのがモットーだった。
ま、西風みてぇにスゲエ相手にはムキになって無茶をしたもんだが…………新入りが入ってきた時なんかはぬるい仕事ばかりを請けてたもんさ。……あの仕事もそのはずだった。
当時の貴族派から依頼された宰相になり立てのオズボーンを”脅しつける”だけの任務…………皇帝から直々に任命された軍部上がりの平民宰相に対して優位に立ちたかったんだろう。だが―――俺達の襲撃は鉄血に完璧に見抜かれていた。
……一方的な虐殺だった。こちらが投降する間もなく、徹底的な殲滅戦を仕掛けて来た。まだ少年と言っていい新入りや女性メンバーも例外なく…………団長である俺を除いて……部下達全員、骸と化した。………俺は―――俺はただ一人、その場所から生き延びちまった。
そして俺は……彷徨った挙句に”帝国解放戦線”に引き寄せられた。全てはあの野郎を……”鉄血”のクソ野郎をブチ殺して部下達の弔いをするために…………あの男が築き上げた全てを”無かったこと”にするためにな。」
「……………………」
「そんなことが……」
「……因果な話だ。」
「部下の方達が全員殺されたのはとても辛かったでしょうね……」
Vの過去を聞いたアリサは真剣な表情で黙り込み、フィーとアンゼリカ、セレーネは静かに呟いた。
「……アンタの事情には同情できなくもない…………だからといって宰相の対応が間違っていたともいえない……」
「そうだね……あまりにも非情だけど……」
「テロには断固たる対応を……それが常識でもあるからな。」
「うふふ、そうね。だからこそテロリストは”殺して当然の存在”だしねぇ?」
リィンの言葉にエリオットとマキアスはそれぞれ頷き、レンは不敵な笑みを浮かべてV達を見つめた。
「クク、その通りだ。コイツはな、どちらが”正しい”って話じゃねえのさ。俺達は全員、鉄血の野郎っていうデカイ”焔”の煽りを喰らっちまった。……だったら仕方ねぇだろう?ヤツを呑みこめるくらいの”ドデカイ焔”に俺達自身がなるしかなあッ……!それじゃあ、行くぜ、小僧ども……この”V(ヴァルカン)”の焔にあっさり呑みこまれちまわないようせいぜい足掻くんだなぁああっ!」
「来る……!」
「”Ⅶ組”A班、迎撃準備!」
「アンゼリカさん、レン姫、頼みます!」
「ああ、任されたッ!」
「うふふ、”殲滅天使”の力、思い知らせてあげるわ♪」
そしてリィン達はV―――ヴァルカン達との戦闘を開始した!
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