深海棲艦の発生と艦娘の出自記録
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乙姫と話をした。
日付は1936年11月28日
伊賀崎:顔色が悪く見える。
乙姫:<沈黙>
伊賀崎:昨日も食事に手を付けていないらしいね、青鳥達が心配していた。
乙姫:<沈黙>
伊賀崎:処方されたお薬も飲んでいないらしいじゃないか。
乙姫:<沈黙>
伊賀崎:許可されていない活性化もしたみたいだね、理由を聞かせてくれないか?
乙姫:<沈黙>
伊賀崎:分かった、また日を改めよう。
押しかけて悪かったね。ゆっくり休んで。
ただ食事はちゃんととってくれ、頼むから。
乙姫:伊賀崎さん。
伊賀崎:どうした?
乙姫:姉がこの世界を苦しめていると知ってからずっと考えていました。
私が役立てる方法を。
ただ私、もしくはあなた方の誰かが姉に手をかけると考えると怖くなって……。
例えどんな状態でもずっと一緒に過ごした家族だから。
そう思うと頭の中がぐちゃぐちゃになって何も考えられなくなって。
きっと私は弱いのでしょう。
多分そこを攻撃されたんです。だから居場所も見つかって……姉は……。
いえ、姉の姿をした怪物とその"子供たち"は私を殺しに来た。
私が迷っていたせいで沢山の人が怪我をして、露木さんも……。
みんなこれからがあったのに。
伊賀崎:私達の仕事はとても……とても特別なものだ。
死者を代弁するなど愚かなことだが全ての者が一つの意志の下に集まっている。
命の危険を承知して、使命と覚悟を持って皆この仕事を選んだ。
私も、露木君も。
乙姫:あなたはどうしてそんなに……。
伊賀崎:冷酷だから……だと思う、この仕事では役に立つ。
君達の保護と水鬼達への対策を考え実行する。
何も変わらない、私達はやるべき事をやる。
乙姫:私は……。
私はこの世界に来て人間に会いました。
彼らは自然を愛し、家族や友人を愛していました。
私や私の仲間達と何も変わりません。
私は恐れられていました。
伊賀崎さん達がここへ連れてきたのも私への恐怖心からでしょう。
でも分かっています。
目で見て、触れ合って、会話をして。
あなた達は心を開いてくれた、見知らぬ場所にいる私にはそれがとても嬉しかった。
だからこそ考えてしまいます。
この人達をあの怪物から守るにはどうすれば良いのだろうかと。
ですが前から分かっていました、"子供たち"を見た時からずっと。
自分がどうするべきか……。
伊賀崎:もし……それを実行するなら我々は全力で支えよう。
乙姫:伊賀崎さん達はもちろんmiθraŋdirにも協力してもらわなければなりません。
私の命も危うくなるかもしれません。
ですが現状を変える為にはとても価値のある事です。
もう隠れるのはやめです。
記録終了
1937年2月16日
乙姫は決断してくれた。
彼女は死の淵を歩く事になる。
我々が出来るのは彼女の命を繋ぎ止める事だけだ。
露木君や他の職員が遺してくれた研究資料が役に立つ。
彼らは尊敬に値すべき素晴らしい仲間達だった。
忘れる事はないだろう。
少なくとも私が死を迎えるその瞬間までは。
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