英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第87話
~グリューネ門~
カシウス、モルガン、ユリアを護衛に連れた女王と、ヨシュア達が到着して、ロレント側の街道を見るとそこには大勢のメンフィル兵達が整列していた。
「なっ…………!なんだ、この数は……!1個中隊どころか、2個中隊近くはいるぞ!?」
その光景をグリューネ門の城壁の上から見たモルガンは驚いた。
「あれは……”飛竜”………まさか”竜騎士”までいるとは………」
一方ユリアは整列しているメンフィル兵達の内の数十名の傍に控えている飛竜を見て驚いていた。
「……あの蛇のような生物は何でしょうか、プリネ姫。」
一方カシウスは飛竜と同じように、数十名のメンフィル兵達の傍に控えている大蛇――”水竜”に気づき、プリネに尋ねた。
「あれは”水竜”ですね。……水竜が兵達の傍に控えているという事は………彼らは”水竜騎士”ですね。」
「彼らが”海の王者”の異名を持つ”水竜騎士”…………」
プリネの説明を聞いたモルガンは驚いた表情で見ていた。
「そういえば、クローディア。貴女はファラ・サウリン卿とルーハンス卿と面識があるのかしら?モルガン将軍の報告では貴女の伝令によってお二方の護衛部隊がボースに来ることを聞いたと、聞きましたが。」
「…………はい。私やお祖母様だけでなく………ヨシュアさんやカシウスさんを含めたここにいる皆さんも存じている方ですよ。」
女王に尋ねられたクローゼは静かに頷いて答えた。
「え………僕や父さんも……?」
「………………………(一体誰だ…………?)…………」
クローゼの答えを聞いたヨシュアが驚き、カシウスが考え込んだその時
「………失礼します!」
グリューネ門の守備隊長が女王達の元にやってきた。
「”ファラ・サウリン”卿並びに”ルーハンス”卿がお見えになりました!」
「………わかりました。こちらにご案内してください。」
隊長の言葉に女王が頷き、指示をしたその時
「――――いえ、その必要はありません。」
「え…………」
「な………………」
自分達にとって馴染みがあり、聞き覚えのある声を聞いたヨシュアとカシウスは驚いた!そしてメンフィルの親衛隊員を両脇に控えさせたマントを羽織り、黒を基調とし、大きめの白銀の襟がある服と黒色のスカートを着たミント、そして同じようにマントを羽織り、髪飾りを付け、緑を基調とし、大きめの紫の襟がある服と緑色のスカートを着たエステルが女王達の前に姿を現した!
「な、な…………!」
「「「…………………」」」
「エ、エステル……?それにミントも………君達は”ファラ・サウリン”卿と”ルーハンス”卿を迎えに行ったんじゃ………それにそのマントや服、傍に控えているメンフィル兵達は一体何だい?」
エステルとミントを見たモルガンは信じられない表情でエステルを見て、カシウス、女王、ユリアもまた目を見開いて驚いて2人を見て、ヨシュアは驚きながら尋ねた。そしてエステルは会釈をして、厳かな口調で自己紹介をした。
「”お初”にお目にかかります、リベール国王、アリシア女王陛下。私の名はエステル。エステル・ファラ・サウリン・ブライト。………若輩の身ながらシルヴァン皇帝陛下より”侯爵”の位を授けられている者です。」
「えっと………ミント・ルーハンス・ブライトです。”ルーハンス”家の当主です。マ………ファラ・サウリン卿とは義理の関係になりますが親娘です。」
エステルに続くようにミントも会釈をして自己紹介をした。
「「な!?」」
「…………おぬし……いや、貴女達がファラ・サウリン卿にルーハンス卿…………」
「……………………………」
エステルとミントの自己紹介を聞いたヨシュアとカシウスは声を上げて驚き、モルガンは呆然とした表情で2人を見て呟き、ユリアは驚いた表情で言葉はなく、2人を見ていた。
「…………プリネ姫。ご本人達を目の前に失礼かと思いますが、お二方の言っている事は本当なのでしょうか……?」
一方女王は驚いた表情だったが、すぐに気を取り直してプリネに尋ねた。
「ええ。お二人は間違いなく、ファラ・サウリン卿とルーハンス卿です。お二人の栄典式の場にいた私やクローディア姫が保証します。」
「………プリネ姫のおっしゃる通り、私もその場にいました。間違いありません、お祖母様。」
女王に尋ねられたプリネは静かに答え、クローゼはプリネの言葉に頷いて答えた。
(フフ………2人ともやっぱり驚いたわね。)
(シェラさん、僕がいない間に一体何があったんですか!?)
事情を知っていそうなシェラザードにヨシュアは小声で尋ねた。
(詳しい事は省くけど、2人はロレントの昏睡事件を解決した”報酬”としてメンフィルの本国でプリネさんの親戚――メンフィル皇家の一族達の前でシルヴァン皇帝陛下より貴族の位を頂いたのよ。)
(な………!)
(オイオイオイオイ………!エステルちゃんに一体何があったんや!?)
シェラザードの小声の言葉を聞いたヨシュアと横で聞いていたケビンは驚いた。
(ハッハッハ!久しぶりにヨシュア君の驚いた顔が見れたよ♪)
(こんな時にまでふざけた事、言ってんじゃねえよ………)
(あう~………こうして見るとやっぱり2人が遠く感じるよ………)
(フフ………ミントちゃんはともかく、エステルは威厳を纏っているね。あれだったら、本物の貴族に見えるね。)
(フム………………)
一方オリビエは呑気に笑い、それを見たアガットは呆れ、ティータは溜息を吐き、リタは可愛らしい笑顔で微笑み、ジンは真剣な表情でエステル達を見た。
「フフ、プリネ姫やクローディア姫と”公式”の場で会うのは私とミントの栄典式以来ですね。ルクセンベール卿と”公式”の場で会うのはこれで2度目ですね。あの時は娘共々ろくに挨拶もせず去ってしまい、申し訳ございませんでした。」
そしてエステルは優しい微笑みを浮かべてプリネとクローゼ、ツーヤを見て言った。
「いえ、お2人も私と同じようにマーシルン家の方達とお話をされてお忙しかったから、仕方ありません。……こちらこそ、ご挨拶をせず、申し訳ありませんでした。それとルーハンス卿も”お久しぶり”ですね。ファラ・サウリン卿とは相変わらず、本物の親娘のような親しい関係ですね。貴女と同じ種族の者として羨ましい限りです。」
一方ツーヤも微笑んで上品に答えた後、ミントを見て言った。
「え、えっと。……そちらこそ、ルクセンベール卿とプリネ姫の関係は同じ種族の者として、ミン……私では決して真似できないとても親しい関係ですね。」
そしてミントは戸惑いながら答えた。
「………失礼ですが、貴女もお二方と同じようにメンフィルの貴族の方なのでしょうか?」
ツーヤとミントの会話が途切れるとカシウスがツーヤを見て尋ねた。
「……ご紹介が遅れ、申し訳ありません。”ルクセンベール”家当主にして、プリネ姫の護衛騎士兼専属侍女、ツーヤ・ルクセンベールと申します。」
「ツ、ツーヤもメンフィルの貴族に………」
ツーヤの自己紹介を聞いたヨシュアは呆けた表情でツーヤを見た。
「……ご挨拶が遅れ、申し訳ありません。”初めまして”。リベール国王、アリシア・フォン・アウスレーゼと申します。」
「……リベール王国軍所属、将軍職を務めさせて頂いているモルガンと申します。……”竜騒動”の事件の際、ボースの復興の為にわざわざ護衛の兵達を派遣をして頂き、真にありがとうございました。」
「……同じくリベール王国軍所属、准将を務めさせて頂いているカシウス・ブライトと申します。”公式”の場で”お会い”するのは”初めて”ですな。」
「………リベール王室親衛隊隊長、ユリア・シュヴァルツと申します。以後、お見知りおきを。」
そして女王は会釈し、モルガン達は敬礼をして自己紹介をした。
「さて……自己紹介はこれぐらいにして、早速本題に入りましょう。今のリベールの状況ですと、お互い忙しい身でしょう。」
そしてエステルは凛とした表情で女王達を見て言った。
「ええ。……では、単刀直入に聞きます。この大勢のメンフィル兵達は一体何なのでしょうか?」
エステルに言われた女王は頷いた後、真剣な表情で尋ねた。
「えっと………女王陛下達が驚かれるのも無理はありません。……ここにいる私とファラ・サウリン卿の護衛部隊の兵達はみんな、私達の故郷――ここ、リベールを守る為にこちらに召集をしました。」
女王の疑問にミントは戸惑った表情をしたが、すぐに真剣な表情に戻して答えた。
「え………」
「「「な………!」」」
ミントの言葉を聞いた女王は驚き、カシウス達は信じられない表情で2人を見た。
「………ご存知かと思いますが、私はカシウス准将の娘にしてリベール出身。そして私の義娘――ミントもカシウス准将の義孫にしてリベール出身。………祖国の危機を知り、何かのお役に立てればと思い、私とミントの護衛部隊、総員約450名をこちらに召集しました。」
(450名…………王室親衛隊の数倍はいるぞ……)
「………………………」
エステルの説明を聞いたユリアは驚いた表情で整列しているメンフィル兵達を視線をやり、カシウスは真剣な表情でエステルを見ていた。
「申し出はありがたいのですが………本当によろしいのでしょうか?リウイ陛下やシルヴァン陛下に断りもなく、これほどの兵を派遣して頂くなんて……」
「フフ………こちらにいる護衛部隊の兵達は私とミントにも指揮権がありますし、リウイ陛下にも許可を頂いているのご安心下さい。(というか、リウイの奴があたし達に断りもなく勝手に押し付けやがったのよね………もう、余計なお世話……と言いたい所だけど、今のリベールの状況を考えたら、ありがたいわね………けど、後で覚えてなさい~!)」
「な………これほどの数の兵達の指揮権が貴女達に!?」
女王に尋ねられ、答えたエステルの説明を聞いたモルガンは驚いた表情でエステルとミントを見た。
「それで、これほどの兵達を前触れもなく召集していながら、勝手な提案と思われるのですが………私とミントはこの後、”外せない用事”があり、兵達を指揮できません。なので私達の代わりにカシウス准将が指揮して頂けませんでしょうか?」
「私が………ですか?」
エステルの提案にカシウスは驚いて尋ねた。
「ええ………フフ、かつて王都で貴方を尊敬しているリシャール大佐に聞きましたよ?あらゆる戦況に柔軟に対応できる立体的かつ多面的な指揮能力……。単なる戦術に留まらない、高度な戦略レベルでの部隊運用……。そしてモルガン将軍からは”稀代の戦略家”と評されるほどの勇将と。フフ、その娘の身としては誇らしい限りです。」
「ハッハッハ。お褒めに預かり、光栄です。」
上品に微笑みながら言ったエステルの賞賛の言葉にカシウスは笑いながら答えた。
「……ファラ・サウリン卿。確かに”大陸最強”と名高いメンフィル兵達の派遣は非常にありがたいのですが………この派遣はメンフィルの国益を考えての出兵ですか?」
そこにモルガンが重々しい口調で尋ねた。
「フフ、お忘れですか、将軍。私は”遊撃士”。遊撃士は国家権力に干渉できません。ですのでこの出兵は私達の”好意”です。国同士の関係はございませんのでご安心下さい。」
モルガンに尋ねられたエステルは微笑みながら答えた。
(………驚いたわね。まさに本物の貴族と変わらないほど、貴族として振る舞っているわね………デュナン公爵より、よっぽど貴族に見えるじゃない。)
(ええ………それにしても、エステル。いつの間にあんな風に振る舞えるようになったんでしょう………)
一方シェラザードは一連の会話を驚いた表情で呟き、ヨシュアは真剣な表情で頷いてエステルが貴族として立派に振る舞えている事に首を傾げていた。
「ボースの復興の件といい、本当にありがとうございます………貴女達のご好意………喜んで受けさせて頂きます。」
そして女王は微笑んで答えた。
「………………………」
女王の答えを聞いたエステルは静かに頷いた後、ミントと共に街道に整列しているメンフィル兵達に姿を見せた。エステル達の姿を見たメンフィル兵達は全員片膝を地面について、跪いた!そしてエステルとミントの両脇に控えていた親衛隊員もその場で片膝をついて、跪いた!
「……ファラ・サウリン護衛部隊総員に告げる!これより一時的に貴方達の指揮権をリベールの将、カシウス・ブライトに譲ります!私、もしくはリウイ陛下、そしてシルヴァン陛下より指示がない限り、彼の指示に従いなさい!」
「………同じく、ルーハンス護衛部隊総員もファラ・サウリン護衛部隊と同じ行動をするように!」
エステルは威厳を纏って全ての兵達に聞こえるように叫び、ミントも続いた。
「イエス、マイロード!!」
跪いたメンフィル兵達はエステルとミントの指示に大きな声で返事をした!メンフィル兵達の返事を聞いたエステルとミントは外套を翻して、女王達の所に近づいた。
「ルーハンス護衛部隊総員約200名、並びにファラ・サウリン護衛部隊総員約250名。………これより貴方に彼らを預けます。」
「……………お2人の大事な護衛兵………確かにお預かりしました。」
エステルに言われたカシウスは敬礼をして答えた。
「……………今度は絶対にお母さんを失わないよう、しっかり作戦を考えてね………父さん。」
そしてエステルは本来の笑顔と口調でカシウスに微笑んで言った。
「ああ、勿論だ。」
エステルの本来の笑顔を見たカシウスも笑顔で返した。そしてグリューネ門に集結していたメンフィル兵達やエステルとミントに控えていた親衛隊員達はカシウスの指示によって、いくつかの部隊に別れて、それぞれ指示された場所に向かった………………
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