英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第84話
~グロリアス・格納庫~
「あはは、やるじゃない。ヨシュアは当然だけど、お姉さんの筋も悪くないね。それにお姉さんが連れている人達も強いねぇ♪ヴァルターが手酷くやられたのも頷けるよ♪特にそこの大きな獣とは戦いたくないものだね♪」
「あ、あんたね~……。悪ふざけも大概にしなさいよ!」
戦闘が終了し拍手をして感心しているカンパネルラを見たエステルは棒を構えて、カンパネルラを睨んだ。
「怒らない、怒らない。さて、出番が終わった道化師は退場しようかな。」
「!?」
しかしカンパネルラの言葉に驚いた。
「うふふ……それじゃあ2人とも。近いうちにまた会おう。」
そしてカンパネルラはエステル達に恭しく礼をした状態で炎に包まれて消えた。
「き、消えた……。」
「幻術の一種だ。気にするほどじゃない。それよりも早く―――」
カンパネルラの行動に呆けているエステルにヨシュアが忠告しようとしたその時
「おい、本当にこっちに来たのか!?」
「ああ……間違いない!」
エステル達の背後から猟兵達の声が聞こえてきた!
「エステル、急いで!」
「う、うん!っと、その前にちょっとでも時間を稼がないとね!」
ヨシュアの忠告に頷いたエステルはクーを見て、指示した!
「クーちゃん!ブレスを吐いて、あいつらを吹っ飛ばしちゃって!」
「クー!!」
エステルの指示に頷いたクーはクラフト――アクアブレスをエステル達の背後に放った!
「グワアッ!?」
「クッ………こっちにいるのは間違いない!怯むな!急げ!」
するとエステル達の背後から猟兵達の慌ただしい会話が聞こえてきた。
「カファルー!炎の壁を作る事はできる!?」
「グオッ!」
エステルの言葉に頷いたカファルーはすざましい炎を口に溜め、そして!
「グオオオオオッ!!」
天井にも届くほどのすざましい炎を吐いて、エステル達の背後に炎の壁を作った!
「ギャアッ!?クッ………炎の壁だと!?」
「クソ………早く消火しろ!」
炎の壁の登場に猟兵達はさらに慌てた。
「さて………と。せっかく敵の拠点にいるんだし、今までリベールを散々引っ掻き廻した仕返しをちょっとでもしないとね!ヨシュア!脱出用の飛行艇ってどれ!?」
「………あれだけど、一体何をするつもりなんだい?」
エステルに尋ねられたヨシュアは確保した飛行艇に目を向けた後、尋ねた。
「このあたしを攫ったらどれだけ後悔するか………結社や教授達に思い知らせてやるのよ!みんな!あの飛行艇以外の飛行艇をできるだけぶっ壊しちゃって!!」
ヨシュアに尋ねられたエステルは不敵な笑みを浮かべてとんでもない指示をした!
(ええ!滅しなさい!黒ゼレフの電撃!!)
(クク……脱出の際の置き土産にはちょうどいい………!獄炎の大渦!!)
「え、えっと……後で恨まれないといいのですが………大地よ………我が呼びかけに応え、真なる猛りを!ベーセ=ファセト!!」
「フフ、とんでもない事を思いつく娘ね♪罪人を処断せし聖なる光よ!我が仇名す者に裁きの鉄槌を!贖罪の光霞!!」
エステルの指示に頷いたパズモ達はそれぞれ飛行艇に魔術や炎を放って、飛行艇を1機破壊した!
「クー!!」
一方クーもハイアクアブレスを吐いて、飛行艇の1機に大穴を開けて破壊した!
「グオオオオオオオオオッ!!」
そしてカファルーはクラフト――獄蓮の翼を放って、1機を破壊し
「…………グオオオオオオッ!!」
さらに口からすざましい炎を溜めた後、獄熱ブレスを吐いて、また1機の一部を炎によって溶かすと同時に飛行艇の燃料タンクの中にある油に引火させて飛行艇を爆発させ、そして炎によって”グロリアス”の壁を溶かして、穴を開けた!さらにカファルーの炎の攻撃やブレス、そして破壊された飛行艇の爆発によって、グロリアスの一部が爆発して煙を上げ始めた!その場にある飛行艇はエステルの指示で攻撃を受けなかった飛行艇と攻撃範囲外に停泊している飛行艇の2機しか残らなかった!
「……………………………」
一連の流れをヨシュアは呆けた表情で見ていた。
「ふふ~んだ!このあたしを攫ったらどうなるか、思い知らせてやったわよ!みんな、ありがとう!全員戻って!」
一方エステル口元に笑みを浮かべた後、パズモ達を戻した。
「………とんでもない事を考えるのは相変わらずだね………というか、以前より数倍に増しているのじゃないか?エステル。」
「う、うるさいわね!たくさんのエンジンを細工して、この船を落とそうとしたヨシュアに言われたくないわよ!」
呆れた様子で語るヨシュアにエステルは焦って指摘した。
「………まあ、追手の数が減るのはいい事だけど。急ぐよ、エステル。」
「うん!」
そしてエステルとヨシュアはエステルの指示によって無事だった残りの1機の飛行艇に乗り込んだ。
~赤の飛行艇内~
「扉をロックして。すぐに船を発進させる。」
「わ、分かった!」
エステルに指示したヨシュアは操縦席に座って操作をし始めた。
(起動キー認識……。認証コード入力……。……よし!)
ヨシュアが操作すると飛行艇内の導力機関が起動し始めた!
「わわっ……」
「遠隔操作でハッチを解放する。すぐに発進するから席に座って。」
「……うん!」
そして2人が乗った飛行艇はハッチを開けて、カファルーの攻撃によって一部から煙を上げているグロリアスから脱出した!
「お、おのれ……!」
「ここまで暴れておいて、逃がすものか!」
「我々も飛行艇で出るぞ!」
炎の壁を消火し、周りの惨状を見て怒りに震えた猟兵達は無事だった飛行艇の所まで戻って、飛行艇を操作し、エステル達が乗っている飛行艇の追跡を始めた!
~赤の飛行艇内~
「わわっ……。これってレーダーよね。光が3つ、近づいてきてるわよ!」
一方飛行艇の中の席に座っているエステルは目の前にあるディスプレイに写った画面を見て慌てた。
「ああ、追っ手だ。何とかして撒く必要がありそうだな。」
「ヨシュアって……飛行艇の操作ができたんだ?」
「一通りはね。ただ、この船には武装が積まれていないんだ。あまりいい状況じゃない。」
「そっか……。って、なんでわざわざ武装がない船にしたの?」
ヨシュアの話を聞いて頷いたエステルはある事が気になって尋ねた。
「……この船だけ整備中でセキュリティが甘かったんだ。緊急の事態だったから選んでいる余裕がなくてね。」
「緊急の事態って……。あの……ひょっとして……あたしが”グロリアス”に捕まっちゃったこと……?」
「………………………………。お喋りは終わりだ。揺れるから気を付けて。」
気まずそうな表情で尋ねるエステルに答えず、ヨシュアは警告した。すると銃撃の音がした後、飛行艇が揺れた!
「わわわっ……」
3機の飛行艇はエステルとヨシュアが乗っている飛行艇を執拗に追い、攻撃していた。
「くっ……まずいな。」
「追撃してきているヤツ、なかなか上手いわね……」
「”結社”の強化プログラムで操縦技術を修得したんだろう。応用は利かないけれど一方的な展開になると手強い。」
「そっか……。でも、応用が利かないってことは何かアクシデントが起これば―――」
ヨシュアの説明を聞いて溜息を吐いたエステルが呟いたその時、外で何かが命中したような爆音がした!
「あ、当たった!?」
「いや……この船じゃない!」
慌てて言ったエステルの言葉にヨシュアは驚いた表情で否定した。
エステル外を覗くとがエステル達を追っていた3機の飛行艇の内の1機を撃墜した飛行艇――”山猫号”がエステル達の乗っている飛行艇の隣に飛んで来た!
「あ、あれって!?」
「”山猫号”……どうして?」
「……ヨシュア!そこにいるのはヨシュアだよね!?」
山猫号の登場にエステルとヨシュアが驚いたその時、スピーカーからジョゼットの声が聞こえてきた。
(この声……)
ジョゼットの声を聞いたエステルは不機嫌そうな表情になった。
「ああ……ここにいる!どうして君たちがこんな所にいるんだ!?とっくにリベールを発ったと思ったのに……!」
一方エステルの様子に気づいていないヨシュアは信じられない様子で尋ねた。
「へへ、あんたが困ってないか兄貴たちが心配しちゃってさ。それであのデカブツの様子を遠くから伺っていたんだ。」
「へへ、よく言うぜ。必死な顔で頼んできたのは誰だったかな~っと。」
「キ、キール兄!」
「ま、俺たちも”結社”には色々と借りがあるからな。リベールを発つのは借りを返してからにするぜ。」
ヨシュアがスピーカーに尋ねるとジョゼット達、カプア三兄妹の声が聞こえた。
「……そうか……。ありがとう、助かるよ。」
「へへっ……せいぜい感謝しなよね!」
「しかし、さっきから見てると反撃してないみたいだな。何か問題でもあるのか?」
ヨシュアの官舎の言葉にジョゼットは答え、キールはある事を尋ねた。
「武装を外した船しか調達できなくてね。ちょっと困っていたんだ。」
「そうか……」
「ど、どうしよう……」
「……よーし、こうなったらこのまま二手に分かれるぞ!一隻だったら振り切れるな?」
ヨシュアの話を聞いたキールとジョゼットは考え込んでいたが、ドルンはある事を提案して尋ねた。
「うん……問題ない。」
尋ねられたヨシュアは頷いて答えた。
「おーし、女神の加護を!」
「ヨシュア……気を付けてよね!。」
そしてエステルとヨシュアが乗った赤い飛行艇と山猫号は二手に分かれ、追手も二手に分かれてそれぞれ追って行った。
~数十分後~
「エステル、レーダーは?」
「うん……もう光は消えたみたい。完全に振り切れたみたいね。」
数十分後、追手を振り切ったヨシュアはエステルに尋ねた。
「そうか……。………………………………」
「……………………………………」
エステルの答えを聞いたヨシュアは頷いて黙り、エステルも黙った為、その場は静寂に包まれた。
「え、えっと……。あの空賊たち、けっこう気のいい連中だったみたいね。まさかあのタイミングで助けに来てくれるなんて……。すごく見直しちゃったわ。」
やがてエステルが勇気を出して話し始めた。
「そうだね……。契約上の関係だと割り切っていたけど……人と人の関係はそう単純じゃないらしい。」
「あはは……今さら何を言ってるんだか。顔を突き合わせてれば仲良くなったり、ケンカしたり、色々とあるわよ。それが人の付き合いでしょ?」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルは苦笑した後、尋ねた。
「ああ……。でもそれは、僕の生きてきた世界では当たり前じゃなかった。」
「あ……」
「殺すか、殺されるか。奪うか、奪われるか。僕は君と出会うまでそんな事ばかり繰り返してきた。」
「で、でも……。お姉さんとレーヴェと一緒にいて幸せだった頃もあるのよね……?」
ヨシュアの話を聞いたエステルは恐る恐る尋ねた。
「……レーヴェが話したのか。………………………………。その記憶はあるけどまるで他人事みたいなんだ……」
「え……」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルは呆け
「心が壊れた時……僕はハーメルの思い出は自分の物じゃなくなった。人であることを辞めて人形になったからだと思う。」
「………………………………」
「姉さんが死んだ時の記憶もはっきりと覚えてはいるんだ。あの時、僕と姉さんは待ち伏せしていた男に襲われた。男は僕を殴り飛ばして……姉さんの上にのしかかった。」
「…………ッ………………」
そしてヨシュアの話を聞いて顔を青褪めさせた。
「幼い僕は、それが意味することは分からなかったけど……それでも嫌な感じがして男の背中に掴みかかっていた。もみくちゃになった挙句、すぐに弾き飛ばされたけど……。いつの間にか、僕の手には男の銃が握られていた。」
「………………………………」
「思えば、あの時から僕には人殺しの才能があったんだろう。教わりもしないのに銃のセーフティを外した僕はためらうことなく引金を引いた。喉に穴を穿たれた男は不思議そうな顔をしてから口から血を吐いてうずくまった。そこで僕は、ようやく自分が人を撃ったことに気付いた。」
「………………………………」
寂しげな笑みを浮かべて語るヨシュアの話をエステルは悲しそうな表情で何も返さず、聞いていた。
「でも、男はまだ死んでいなかった。血走った目でヒュウヒュウと喘ぎながら軍刀を抜いて躍りかかってきた。獣に襲われた時のように僕は身を竦めて目を閉じたけど……衝撃はなく、柔らかいものにぎゅっと抱きしめられていた。」
「………………………………」
「目を開いた時、そこには微笑む姉さんの顔があった。いつの間にか男は倒れ……呆然としたレーヴェがいた。レーヴェに支えられた姉さんはハーモニカを僕に渡して……そしてゆっくりと目を閉じた。」
「………………………………」
ヨシュアの話をさらに聞いたエステルは辛そうな表情になった。
「……よく覚えているだろう?でも、こんな風に話してても僕はあんまり哀しくないんだ。他人の日記を読んでいるような……そんな不思議な違和感しかない。そしてそれは……君と一緒にいる時も同じだった。」
「………え………………」
そして唐突に自分の事を出されたエステルは呆けた声を出した。
「君の暖かさに触れて確かに僕は変われたと思う。君と共にいることに喜びを覚え、君を愛しく思うようにもなった。だけど僕は、どこかそれを他人事のように感じていたんだ。」
自分の言葉に呆けているエステルにヨシュアは寂しげに語った。
「―――それは多分……本当の僕が感じていたんだと思う。虚ろで空っぽな……できそこないの人形みたいな僕が。」
その後2人を乗せた飛行艇はルーアン地方のメ―ヴェ海道の海辺に着水した………………
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