英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第63話
~遊撃士協会・ボース支部~
「……とりあえず、みんな、ご苦労じゃったの。ハーケン門の王国軍部隊がすぐに駆けつけるそうじゃ。ボースマーケットの管理や焼けた家屋の修復はそちらに任せるといいじゃろう。」
エステル達の報告を聞いたルグランは言った後、ある事に気づいた。
「そういえば……プリネ姫達が見当たらんがどこにいるのかの?」
「プリネちゃんはティアさん……だったかな?その人を含めたイーリュン信徒の方達がこちらに来てもらうために、今、緊急用の連絡手段でティアさんに直接連絡を取っている最中だよ。」
「そうか……イーリュン教の信者達までこちらに来ようとするとは………それはありがたいの。」
リタの説明を聞いたルグランは安堵の溜息を吐いた。
「……でも、まさか”竜”を持ち出してくるなんて………しかもあのロランス少尉が……」
「執行者No.Ⅱ。『剣帝』レオンハルト。通称、『レーヴェ』か……」
「フッ、とうとう正体が明らかになったということだね。」
「グランセル城で会った時は、このような非道なことをする人には見えませんでしたが……」
「………やっぱりあの人、孤児院を焼いた人達と同じ事をする人だったのかな………?」
「ふむ……」
ロランス――レーヴェの正体を知ったエステル達はそれぞれ複雑な思いを抱えていた。
「あ、あの、ルグランお爺さん……。アガットさんからまだ連絡はありませんか?」
レーヴェの事で悩んでいたエステル達の中からティータが心配そうな表情で尋ねた。
「ああ……。うむ……残念ながらの。あの鉄砲玉め……いったい何をしておるのじゃ。」
ティータの疑問に答えたルグランは頷いた後、この場にいないアガットに呆れて溜息を吐いたその時、通信器が鳴った。
「あ……」
「ひょっとして……!」
エステル達はアガットからの連絡と思い、通信器で話しているルグランを見ていた。
「こちら遊撃士協会、ボース支部じゃが……。おお、あんたか。一体どうしたんじゃ……。………………………………………………………………。……なんじゃと!?」
(ど、どうしたのかな……)
(ただ事じゃない雰囲気ね……)
通信器で話し、驚いているルグランを見たエステルは首を傾げ、シェラザードは真剣な表情になった。
「うむ、了解した。すぐに他の連中を送ろう。うむ、うむ、気をしっかりな。」
そして通信器を置いたルグランは、会話の内容を説明した。
「……ラヴェンヌ村のライゼン村長からの連絡じゃ。先ほど、あの竜がラヴェンヌ村を襲ったらしい。」
「!!!」
「何ですって!?」
「そんな!?」
ルグランの説明を聞いたエステルは驚き、シェラザードは声を上げ、ミントは信じられない表情をした。
「竜は果樹園を焼き払ってからすぐに飛び去ったらしい。その直後、アガットが現れて消火活動を手伝ったそうじゃが……」
「分かった!あたしたちも行ってみるわ!」
「お、お姉ちゃん!私も連れていって!」
ルグランの話を聞き、ラヴェンヌ村に急ごうとしたエステルを見たティータは真っ先に名乗りを上げた。
「えっ……!?」
「ティータちゃん?」
名乗り上げたティータを見たエステルとミントは驚いた。
「空飛ぶ竜が相手だったら導力砲が役に立つと思うし……。それに……それに……」
「……うん、分かった。でも……無茶をしたらダメだからね?」
アガットが心配なティータの気持ちを汲み取ったエステルは静かに頷いた。
「はいっ!」
エステルの答えを聞いたティータは明るい表情で頷いた。
「………私も同行してもよろしいでしょうか?」
その時、ツーヤを伴ったプリネがギルドに入って来た。
「あ、プリネ。ティアさん達はいつごろ、来れそうなの?」
「……運良く、まだ大使館にいらっしゃいましたから、本日の夕方、もしくは夜にはロレントの信徒の方達を連れたティア様がいらっしゃる予定です。また、翌日には他国の信徒の方達をロレントを経由して、陸路でこちらに来るよう、手配するそうです。」
「フム、そうか………ならば、ここにいる何人かは今からロレントに向かって、イーリュンの信者達の護衛に向かった方がよさそうじゃな……イーリュンの信者達は争う手段を持っていないと聞いておるし。」
プリネの説明を聞いたルグランは頷いた後、提案した。
「………助かります。ティアお姉様もロレントのギルドに依頼を出すとおっしゃっていましたから……それと翌日に来る予定の信徒の方達の護衛はティアお姉様や私に配属されているメンフィルの護衛部隊の兵や親衛隊員達が護衛する予定となっているのでそちらの点は心配しないでください。」
「へ!?プリネもそうだけど、ティアさん、メンフィルの兵士さん達の命令ができるの!?」
プリネの説明を聞いたエステルは驚いて尋ねた。
「エステルさん、お姉様や私は”皇族”なのですから、護衛部隊は当然ありますよ?……付け加えて言うなら、エステルさんやミント、それにツーヤにも護衛部隊がありますよ?」
エステルの様子を見たプリネは苦笑しながら答えた。
「え!?」
「あ、あたしやミントにも!?なんで!?」
プリネの説明を聞いたミントは驚き、エステルもさらに驚いた後、尋ねた。
「フフ……あたしとミントちゃんはマスタ―達――マーシルン家と縁が深い”ルクセンベール”家と”ルーハンス”家の当主。エステルさんはシルヴァン陛下からは爵位を頂き、さらにあたしとミントちゃんと同じマーシルン家と縁が深い”ファラ・サウリン”家の一員ですから、あたし達を守る護衛部隊はいて当然ですよ?」
驚いているエステルとミントにツーヤは苦笑しながら答えた。
「ん!?エステル、一体何があったのじゃ?」
一方事情がわからないルグランはエステルに説明を求めた。
「あ、うん。実は………」
そしてエステルはルグランにメンフィルの本国であった件を説明した。
「な、なんと………まさか2人がメンフィルの貴族になっていたとは…………」
エステルの説明を聞いたルグランは驚いた表情をしていた。
「……確かによく考えたら、今のエステルさん達はメンフィルの貴族……それも皇家と縁が深い貴族なのですから、メンフィル兵の護衛部隊がいてもおかしくありませんね………」
ツーヤの説明を聞いたクローゼは納得した表情で頷いた。
「それにしてもプリネやティアさん、ツーヤはわかるけど、あ、あたしとミントにもメンフィルの兵士さん達の護衛部隊がいるって……」
「何だか、実感がわかないね、ママ………」
一方エステルとミントは自分にメンフィルの護衛部隊が配属されている事に戸惑っていた。
「フフ………まあ、普段は正規軍や親衛隊に配属されていますから。………それでどうしますか?お二人はそれぞれの護衛部隊の命令の権利はありますから、お二人が直接命令を出したなら、それぞれの護衛部隊をこちらに来させることは可能ですが。……ちなみにツーヤの部隊は私やティアお姉様の部隊と同じ行動をする事になっています。」
戸惑っているエステル達にプリネは微笑んだ後、尋ねた。
「へ!?う~ん…………えっと、プリネ。一つ聞いていいかな?」
プリネに尋ねられたエステルは考え込んだ後、尋ねた。
「何でしょうか?」
「あたしとミントはそれぞれの護衛部隊に命令できるっていう話だけど………どんな事でも命令できるのかな?」
「……といいますと?」
「その………さっきの竜のせいで滅茶苦茶になったボースやラヴェンヌ村の復旧作業を手伝うとか。」
「可能ですが……さすがにそれはリベール王家の許可を頂かないと、内政干渉に発展する恐れがありますから、今すぐその命令を実行するのは難しいかと………ここはメンフィル領ではなく、リベール領なのですから。」
エステルの疑問に答えたプリネはクローゼを見て答えた。
「……構いません。どうか少しでも早くボースが復旧するようにしてただけませんでしょうか、エステルさん、ミントちゃん。モルガン将軍には後で私が説明しますので。」
プリネに見られたクローゼは静かな様子で頷いて、エステルとミントを見た。
「クローゼ……いいの?」
「はい。……ボースの市民の方達の生活が少しでも早く戻るようにお願いします、”ファラ・サウリン”卿、”ルーハンス”卿。」
エステルに尋ねられたクローゼはエステルとミントに頭を下げた。
「あ、頭をあげてよ、クローゼさん!」
「そうそう!あたし達の仲じゃない!それにその呼び方はやめてって言ったじゃない~。慣れないし、あたし達じゃないみたいに聞こえるんだから~!」
クローゼに頭を下げられたミントとエステルは慌てて言った。
「フフ……すみません。……でも、リベール王女の”けじめ”としてやっておかなくてはいけませんし………今のエステルさん達は他国の王族といってもおかしくない貴族ですから………」
エステルとミントに言われたクローゼは頭を上げた後、苦笑した。
「ただ、命令を実行するにしてもお二人のどちらかとリベール王家の一員――クローゼさんが大使館に来て、お父様に直接説明する必要がありますが………」
「わかりました。私は構いません。」
「……じゃあ、ミントがクローゼさんと一緒に行く!ママはアガットさんを追いかけて!」
プリネの説明を聞いたクローゼは頷き、ミントは名乗り上げて、エステルを見た。
「わかったわ!……それとさっきプリネも同行したいって言っていたけど、何で?」
ミントに答えたエステルはある事を思い出して、プリネに尋ねた。
「えっと、その………もし先ほどの執行者――”剣帝”とアガットさんが戦っているのなら、彼と戦った事がある私が行って、加勢すべきだと思いますし……」
エステルに尋ねられたプリネは一瞬言葉を詰まらせた後、答えた。
「そういえばプリネは”剣帝”と戦って一人で勝ったわね………そうね!わかったわ!」
プリネの説明を聞いたエステルは武術大会でプリネとレーヴェが戦い、プリネが勝利したことを思い出して納得した。
「もちろん、あたしも一緒に行きます。」
「同じ”竜”のツーヤがいたら、心強いわね………わかったわ!」
同じように申し出たツーヤを見て、エステルは頷いた。
そしてエステルはティータ、シェラザード、プリネ、ツーヤをメンバーにしてラヴェンヌ村に向かい、残りのメンバーは急いでロレントに向かった………
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