英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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外伝~魂の覚醒、奇跡の復活~
~???・エステル~
「あ…………」
意識を失ったエステルが目を開けると、エステルは何もない真っ暗な空間に倒れていた。
「!?ど、どこよ、ここ!」
周囲の風景を見渡して、エステルが焦ったその時
「フフ…………まさか、こんな形で会う事になるとはね。」
「……そんなに慌てるな。お前に宿った者として、恥ずかしいぞ。」
なんとエステルの目の前に二つの光が発生し、そして光は人の形になった後、光から黒髪の女性と金髪の女性が現れた!
「あ………も、もしかして……!」
黒髪の女性と金髪の女性を見たエステルは信じられない表情で2人を見ていた。
「……バルジア領主。リン・ファラ・バルジアーナ。武術大会の時以来だな。」
「……セルノ領主、イオーノ・サウリンの妹、ラピス・サウリン。……ようやく会えたわね、エステル。」
金髪の女性――リンは口元に笑みを浮かべ、黒髪の女性――ラピスは優しい微笑みをエステルに見せて言った。
~???・プリネ~
エステルが謎の空間でラピスとリンに出会った一方、意識を失ったプリネもまた、謎の真っ暗な空間にいた。
「ここは一体………」
プリネが周囲を見渡したその時、プリネの目の前に何かの風景が現れた!その風景にはアッシュブロンドの髪を持つ青年――クーデター事件以降行方をくらませたロランスらしき青年が木刀を持って、素振りをしていた。
「!?あの人はまさか……ロランス少尉!?」
ロランスらしき青年を見たプリネは驚いた。そして青年が素振りを終えると、黒髪と琥珀の瞳を持つ優しげな女性と、女性と同じく黒髪と琥珀の瞳を持つ男の子が青年に近付いて来た。
「あの男の子は……もしかして、ヨシュアさん?……それにあの女性はあの時、一瞬見えた女性………!」
男の子の容姿を見たプリネはヨシュアの幼い頃と推測し、そして女性を見たプリネは武術大会でロランスと戦った時、一瞬見えた女性である事に気付き、驚いた。そして青年は自分に近づいて来る2人に気付き、優しい微笑みを2人に見せた。
「……あの優しい微笑みは一体………」
プリネが青年の笑顔に驚いている中、風景が進み、3人は青空の下、草むらの上で食事をしている風景になり、そして3人の会話が聞こえて来た。
~???~
「あ、ちょうちょだー。待って~………」
食事を終えた男の子はちょうちょに気付き、呑気に追っていた。
「フフ……」
「ハハ……」
男の子の無邪気な様子を見た女性と青年はそれぞれ優しく微笑んで、見守っていた。そして微笑んでいた女性は青年の肩にもたれかかって、青年を見上げて尋ねた。
「……ヨシュアに聞いたわ、レーヴェ。遊撃士になりたいって本当なの?」
女性は青年――レーヴェを心配そうな表情で見て、尋ねた。
「……ああ。この世界では非力な人間に辛いことばかりだ。力を持つ者が非力な者を守るのは当然の事だろ。……だから俺はその為に、遊撃士になる。」
レーヴェは目を閉じた後、口元に笑みを浮かべて静かに語った。
「……そうね。でも、その力を持つ人を……レーヴェを守ってくれるのは誰?レーヴェを失うことがあったら私は……嫌だわ……」
「……………」
目を伏せている女性をレーヴェは黙って見つめた後、女性の頭を優しく自分の肩に乗せた後、優しい微笑みを見せて言った。
「………自分の事は自分で守るさ。お前と………ヨシュアと俺と……全部、俺が守る。お前を1人にはしない……絶対に。」
「レーヴェ…………」
そしてレーヴェと女性は見つめ合った。
「ねえねえ、2人とも、何しているの~?」
そこに男の子――幼いヨシュアが2人をジッと見て尋ねた。
「「…………!!」」
ヨシュアに気付いた2人は慌てて目線をそらした。
「な、何でもないのよ、ヨシュア!」
「もう~。たまにお姉ちゃんはそうやって誤魔化す~。」
慌てた様子で誤魔化している女性にヨシュアは頬を膨らませた。
「ハハ……………カリン。」
女性――カリンとヨシュアのやり取りに笑ったレーヴェはカリンの名を呼んだ。
「ん?どうしたの?」
「”あれ”、聴きたいな。」
首を傾げて自分を見るカリンにレーヴェはある事を尋ねた。
「……またあの曲?昨日も吹いたじゃないー。」
レーヴェの頼みにカリンは呆れた様子で答えた。
「好きなんだ、あの曲が。……特にカリンが吹くあの曲が……な。」
「僕も好きーっ。」
レーヴェに続くようにヨシュアも無邪気な笑顔を見せて言った。
「……………もうっ……………」
2人の答えを聞いたカリンは恥ずかしそうに笑った後、ハーモニカを取り出し、そして優しい微笑みを見せながらハーモニカを吹き始めた。
~~~~~~~♪
~???・プリネ~
「”星の在り処”…………カリン…………レーヴェ………ヨシュア…………あ…………どうして涙が………!」
風景を見続けていたプリネは涙を流しながら呟き、風景を見ていた。そして風景は突然変わり、村が燃えている風景に変わった!
「なっ!?これは一体………!」
プリネは燃えている村を見て、信じられない表情になった。そして燃えている村の中は逃げ惑う村人達が武装した男達によって、次々と殺されていった!
「ひ、酷い………!」
その様子を見ていたプリネは悲痛そうな表情で見ていた。そしてヨシュア、レーヴェ、カリンも逃げている風景が見え、レーヴェが武装した男達と戦い、カリンとヨシュアだけが逃げていた。しかし
「!!何てこと!」待ち伏せまでしてあるなんて……!」
なんと2人の道を塞ぐように1人の武装した男が2人に銃を構えていた!そして2人は男に背を向けて、逃げようとしたがカリンの足が撃たれ、カリンは倒れた!そして男は倒れたカリンに呼びかけているヨシュアを殴り飛ばし、下卑た笑みを浮かべてカリンの上にのしかかった!
「!!やめて!」
犯されようとしているカリンを見て、プリネは声を上げたが意味はなかった。そして突き飛ばされたヨシュアは男にしがみ付いて止めようとしたが、すぐに弾き飛ばされ、そして弾き飛ばされたヨシュアの近くには銃が落ちており、ヨシュアはその銃を拾って、そして――
「まさか!」
ヨシュアの行動を見て、プリネが血相を変えたその時、ヨシュアは男の喉に銃を撃った!喉を撃たれた男は口から血を吐き、蹲ったが、やがてヨシュアに目を向け、腰に刺していた剣を抜いて、ヨシュアに斬りかかった!
「ヨシュアさん!」
~???~
「え………」
男に斬りかかられてヨシュアは身をすくめて、目を閉じていたが衝撃はなく、何かに抱きしめられていた。
「ヨシュ……ア………大丈………夫………?」
「お……姉………ちゃん………?」
ヨシュアが目を開けると、そこには自分を抱きしめているカリンが背中を斬られながらも弱々しく優しく微笑んでいた。しかし
「殺す!殺す!殺す!」
男は何かにとりつかれたかのように、何度もカリンを斬った!
「………きゃあああああああっ!?………大丈夫よ………ヨシュアはちゃんと……お姉ちゃんが守ってあげるから………!」
カリンは悲鳴をあげながらも、ヨシュアを抱きしめ、男からの攻撃を庇っていた!
「う………うあああああああ…………!」
そしてヨシュアは混乱した様子で無意識に銃をまた構えて、男の額を撃った!額を撃たれた男は信じられない表情で後ずさった後、その場で倒れ絶命した!
「………ヨシュア………カリン………?」
そして少しするとそこには呆然とした様子のレーヴェが2人を見つめていた。
「………レーヴェ………!」
「!!ヨシュア!カリン!大丈夫か!!」
ヨシュアの泣き声でハッとしたレーヴェは2人に駆け寄った!
「よか………った………レーヴェ………無事だった………のね………」
「カリン!待ってろ、今すぐに………!」
瀕死になりながらも弱々しく微笑んでいるカリンを見て、レーヴェは抱き上げようとしたその時
「ヨシュアは……ヨシュアは無事……?」
「ああ、無事だ!それよりもカリン!お前の方がっ……!」
「ヨシュア………よかった……無事で………」
「お姉……ちゃん……?」
レーヴェに抱き抱えられ、弱々しい笑みを浮かべているカリンを見て、ヨシュアは呆然とした。
「こ………れ………を………」
「あ…………」
そしてカリンはハーモニカをヨシュアに手渡し、レーヴェを見た。
「レーヴェ……ヨシュアをお願い…………………」
レーヴェに遺言を残したカリンは穏やかで満ち足りた表情を浮かべ、そして静かに目を閉じた。
「おい、カリン!なんだよ、それ!カリン、カリン!カリン―――――!」
「う……うああああああ―――!」
自分達にとって最も大事で親しい人が逝った事に、レーヴェとヨシュアは夜の森の中、悲痛の叫びを上げた………
~???・プリネ~
「……………………ヨシュアさん。」
カリンが逝った瞬間を見ていたプリネは涙を流しながら目を伏せた。そして倒れているカリンから何かが出て来た。
「あれは………まさかカリンさんの魂………?」
そしてカリンの魂らしきものは大陸中を彷徨った後、ある場所に向かった。そこは――
「嘘……!?メンフィル大使館………!」
プリネが驚いている中、カリンの魂らしきものは母と共に幸せそうに眠っているプリネの元に行き、そしてプリネの身体の中に入った。
「…………そういう事……だったんです……ね。私の中にはカリンさんが………だから、”星の在り処”がひけたんですね………それに武術大会の時、ロラン……いえ、レーヴェさんと戦った時、感じた心が………」
呆然としていたプリネだったが、自分の身体を見て呟いたその時
「はい。……魂の波長があまりにも私と似ていたから、私は貴女に惹かれ、そして貴女の中に宿ったんです……」
「!!カリンさん!」
突如プリネの目の前に光が発生し、光からカリンが出て来て、カリンを見たプリネは驚いた。
エステルがラピスとリン、プリネがカリンと邂逅しているその頃、意識を失っているイリーナも同じように真っ暗な空間の中にいた。そしてイリーナもまた、エステルやプリネのように、ある人物との邂逅の時が迫っていた。
~???・イリーナ~
「ここは………?」
イリーナが周囲の風景を見て、首を傾げている中、イリーナの目の前に風景が写り、そしてそこにはある人物がいた。その人物は――
「嘘!?わ、私………!?」
そこには騎士の手を借り、馬車に乗り込んでいるドレス姿の自分と瓜二つの女性――”イリーナ”がいた。そして馬車は進んだが、ある場所まで来ると魔族や兵士達を率いたある人物によって、襲撃された!その率いている人物とは――
「へ、陛下!?」
魔族達を率いている人物――リウイを見たイリーナは驚いた。そしてリウイ達は馬車を守る騎士達を殺した後、リウイ達の仲間らしき盗賊風の女性が馬車の手綱を握り、リウイ達と共にどこかに向かい、そして馬車の中にいたイリーナは拘束され、当時のリウイ達の拠点――モルテニア城の地下牢に閉じ込められた。そして閉じ込められたイリーナの元にリウイがやって来て、なんとイリーナのドレスを破り、そして!
「そ、そんな………!」
ドレスを破かれたイリーナはリウイに犯され、その場面をイリーナは信じられない表情で見ていた。その後イリーナはリウイに使用人のような扱いをされていたが、風景が変わるごとに2人はどことなく惹かれあい、そしてある場面ではお互いを愛し合うような場面もあった。
「………………もしかしてあの方が、陛下の愛妻であった”イリーナ様”………?………犯されたのに、どうしてあんなに幸せそうに陛下のお傍にいるのかしら……?」
一連の流れを見たイリーナは顔を赤らめた後、リウイによって犯されたはずの”イリーナ”が幸せそうな表情でリウイの傍にいる事に疑問を感じた。そして場面はさらに変わり、リウイ達が出撃している間、”イリーナは”リウイの無事を祈っていた。そしてその時、老婆が現れ、老婆が”イリーナ”に何かを伝えた時、”イリーナ”は幸そうな笑顔を見せ、老婆が去ったその時風景が揺れ、そして”イリーナ”がいた部屋に下卑た笑みを浮かべた大剣を持つ戦士――リウイの父、グラザを討ったリウイの仇である勇者――ガーランドが”イリーナ”を見て、ニヤリとした。
「………!!お願い!逃げて!!」
その様子を見ていたイリーナは顔を青褪めさせ、そして叫んだ。イリーナの叫びに答えたのか”イリーナ”はガーランドから逃げ、いつの間にか現れた老婆の手引きによって”イリーナ”は隠し部屋の中に逃げ、老婆はガーランドによって討取られ、老婆がガーランドに斬られる音を震えながら聞いていた”イリーナ”はガーランドの気配が無くなった後、何度も老婆の名を呼び続けたが、答えは帰って来なかった。そして隠し部屋が揺れ、瓦礫が落ちて来て、”イリーナ”は瓦礫の下敷きになった!
「誰か!助けてあげて下さい!」
瓦礫の下敷きになった”イリーナ”を見た悲痛そうな叫びを上げた。そしてしばらくするとリウイ達が瓦礫をどけ、”イリーナ”を見つけた。見つけられた”イリーナ”は擦り傷等を負っていたが奇跡的に命に別状はなく、安堵の溜息を吐いているリウイの胸の中に身を任せ、幸せそうな表情をしていた。
「よかった……………」
”イリーナ”が助かった事にイリーナは安堵の溜息を吐いていた。そしてさらに風景は次々と変わり、イリーナに色々な場面を見せた。リウイを支え続ける”イリーナ”……”幻燐戦争”時、リウイと共に戦う”イリーナ”……そして、エクリアによって”イリーナ”が殺され、リウイの胸の中で息を引き取った場面をイリーナは見た。
「そんなっ……!こんな、こんな事って………!陛下………!」
”イリーナ”が死に、リウイが悲しみにくれている場面を見たイリーナは涙を流して、悲痛そうな表情をしていた。そして死んだ”イリーナ”の中から魂が出て来て、その後魔人ブレア―ドや邪竜アラケールに魂を囚われる場面もあったが、リウイ達や神殺し――セリカ・シルフィルとそして”イリーナ”を殺した人物――エクリアの活躍によって、魂は解放され、さまざまな大陸をめぐった”イリーナ”の魂はある場所の部屋に向かった。そこにいた人物とは――
「う、嘘!?お、お父様……!お母様……!」
そこには赤ん坊を抱いたイリーナの両親がいた。そして魂は赤ん坊の中に入り、その場面で風景は消えた。
「………………………そっか……………”イリーナ様”が私の中に………だから、私は陛下の事を………………」
呆然としていたイリーナだったが、今まで疑問に思っていた事が氷解し、静かに呟いた。
「ええ。………ごめんなさい。私が貴女に転生したせいで、貴女を混乱させてしまって………」
その時、静かに呟いているイリーナの目の前に光が発生し、その光の中からドレス姿のイリーナが申し訳なそうな表情をして、イリーナを見ていた。
「あ、貴女が”イリーナ様”…………」
「………初めまして、もう一人の私。……私の名はイリーナ。メンフィル王妃、イリーナ・マーシルン。……リウイの正室だった者です。」
「は、初めまして!イリーナ・マグダエルと申します!」
「フフ………そんなに謙遜しなくてもいいわよ。……それよりこうして会えたのだから、早速貴女がどうしたいのか、聞いていいかしら?」
「え………?どういう意味ですか………?」
”イリーナ”の言葉にイリーナは首を傾げていた。その一方、エステルやプリネもそれぞれが相対している人物達から同じような事を言われた。
~???・エステル~
「あたしがどうしたいかって………どういう意味??」
ラピスとリンから言われた事にエステルは首を傾げていた。
「説明が少し足りなかったようだな。………一つはこのまま、”自分自身”として生きていく。」
そう言って、リンは突如現れた光が輝く扉を促した。
「………もう一つは私達と一緒になり、今までとは別の”貴女”として生きていく。………そのどちらかになるわ。」
リンに続くようにラピスは説明した。
「貴女達と一緒になった別の”あたし”になるってどういう事……?」
「………私やラピスお姉様の記憶を引き継ぐ事だ。」
「……もし私達と一緒になれば、私達の技を受け継ぐ事ができて、貴女にとっても今後の為に良い事かもしれないけど、一つだけ欠点があるわ。」
「欠点??」
ラピスの言葉にエステルは首を傾げた。
「………ラピスお姉様が危惧しているのは私達の記憶を受け継ぐ事によって、エステルが”エステル”としていていられるかを心配しているのだ。」
「……………………そっか、ありがとう。じゃ、一緒になりましょうか!」
リンの話を聞いたエステルは少しの間考えていたが、明るい笑顔を2人に見せて言った。
「え………?」
「何……?」
エステルの答えに2人は驚いてエステルを見た後、尋ねた。
「………どうしてそんな簡単に私達と一緒になろうと思った。」
「リンの言う通りよ。………どうして、そんなにすぐに答えが出せたのかしら?」
エステルが答えを出し、2人に尋ねられたその頃、プリネやイリーナも同じ答えをそれぞれが相対している人物に答え、それぞれの人物達に尋ねられた。
~???・プリネ~
「本当にいいのですか?私と一緒になれば、今までの”貴女”でなくなるんですよ?」
「ええ。だって………」
~???・イリーナ~
「貴女はペテレーネの娘――プリネの傍に仕える事が夢だったんでしょう?それがもうすぐ叶いそうなのに、本当にそれでいいの?リウイが貴女が”私”の記憶を取り戻したと知れば、きっと貴女を愛し、そして貴女も陛下を愛し、陛下のお傍にいる事を望むわ。、貴女はそれでいいの……?」
「はい。プリネ様はツーヤちゃんがずっと支えてくれます。……私が陛下を思う気持ちは例えイリーナ様の影響を受けたとしても、陛下を愛するこの気持ちは本物です。それに………」
そしてエステル、プリネ、イリーナは全く同じ言葉をそれぞれの相対している人物達に言った。
「「「わたし(あたし)は貴女(達)。貴女(達)はわたし(あたし)。それだけです(よ)。」」」
~???・エステル~
「「………………………」」
エステルの言葉を聞いた2人は黙ってエステルを見ていたが
「………確かにお前の言う通りだな。」
「ええ。フフ………陛下達がエステルが私達の記憶を持っていると知れば、どう思うのかしらね?」
リンは口元に笑みを浮かべ、ラピスは優しげに微笑んだ。
「ねえねえ、一緒になるならなるでさっさとなりましょ!あたしにはまだやる事がたくさんあるんだから!」
「はいはい。……リン。」
「はい、ラピスお姉様。」
そして2人はエステルの手を握った。
「……できれば、これからも陛下の良き友人でいてあげてね。」
「……陛下が”あの方”と再会した時、私達の祝福の言葉を代わりに伝えてくれ。………お前の思い人と再会出来る事を心から願っているぞ。」
2人はそれぞれ笑みを浮かべた後、エステルの身体と同化し、そして消えた。
「………そっか。これが2人の記憶か……さて!そろそろ目覚めないとね!」
2人と同化したエステルは深呼吸をした後、光輝く扉をくぐった。エステルがラピス達と同化した同時刻、プリネやイリーナもそれぞれの相対している人物達と同化した。
~???・プリネ~
「レーヴェを……ヨシュアを………救わないと!」
一方、カリンと同化したプリネは決意の表情で光輝く扉をくぐった。
~???・イリーナ~
「あなた………ようやく会えますね………待っていて下さい……!」
そして”イリーナ”と同化したイリーナも優しい微笑みを浮かべた後、光輝く扉をくぐっていった。
~メンフィル大使館・プリネの私室~
「ン………?」
「!?マスター!目が覚めたんですね!!」
目が覚め、ベッドから起き上がったプリネに気付いたツーヤは心から嬉しそうな表情でプリネに言った。
「……ツーヤ………ありがとう、ずっと看病してくれていたのね……心配をかけて、ごめんね……」
「そんな……!あたしこそ、肝心な時にマスターをお守りできなくて……うっ……うっ……」
「もう……今の貴女は大人なんだから、そんなに泣かない。ほら、泣き止んで。」
涙を流して自分にすがるツーヤにプリネは苦笑しながら、ツーヤを優しく抱きしめて頭を撫でて慰めた。
「す、すみ……ません……………」
「フフ……気にしないで。………それより、ハーモニカを捜してくれるかしら?確か私の机の中にあるはずだから。……お願い。」
「え……?は、はい。」
プリネの突然の願いに驚いたツーヤだったが、部屋の中にあるプリネの机の引き出しからハーモニカを見つけ、プリネに渡した。
「フフ………ハーモニカを吹くのは本当に久しぶりね………」
ツーヤからハーモニカを渡されたプリネはカリンが見せたような優しい微笑みを浮かべた後、”星の在り処”を吹き始めた。
~~~~~~~♪
~同時刻・イリーナの私室~
プリネが”星の在り処”を吹き始めたその頃、ベッドで眠っていたイリーナも目を覚まして、ベッドから起き上がった。
「あなた………………」
「!?イリーナさん、起きたのね!」
イリーナが目を覚まし、ベッドから起き上がったその時、イリーナの部屋に入って来たペテレーネが驚いた後、イリーナに駆け寄った。
「ペテレーネ………貴女と会うのも本当に久しぶりね………」
自分に駆け寄って来たペテレーネを見て、イリーナは優しい微笑みを見せて言った。
「え?イ、イリーナ……さん………?」
イリーナが自分を呼び捨てにした事やイリーナの言葉に訳がわからなかったペテレーネは呆然とした状態でイリーナを見た。
「………まさか貴女が”神格者”になるなんて、思わなかったわ。”神格者”になってまで陛下を支え続けていたのね……本当にありがとう。こうしてまた貴女に会えて嬉しいわ。プリネの名はもしかしてプリゾア様の名前から頂いたのかしら?」
「!!!ど、どうしてプリゾア様の名前を………!ま、まさか……………!イ、イリーナ様なのですか………?」
イリーナの口から出た言葉やイリーナに教えていないはずのある人物の名が出た事に驚いたペテレーネは信じられない表情で、身体を震わせて尋ねた。
「正確に言えばかつての私ではないわ。もう一人の私――”イリーナ・マグダエル”の記憶や思い――”今の私”の妹、エリィや幼い頃に逝った両親。そしてプリネやリフィアに対する感謝や大切に思う気持ちもちゃんとあるわ………陛下の傍を離れて、百数十年。……本当に長かったわ………私がいない間、陛下を――リウイを支え続けてくれてありがとう。これからはまた、かつてのように一緒にリウイを支えましょうね。」
そしてイリーナは信じられない表情で自分を見ているペテレーネに優しく微笑んだ。
「―――――っつ!そ、そんな……!わ、私なんかが恐れ多いです……!ようやく、目覚められたのですね!!イリーナ様が目覚められるのをずっとお待ちしておりました!は、早くリウイ様にお知らせしないと……!失礼します!!」
イリーナの言葉に謙遜し、かつてのイリーナが戻って来た嬉しさのあまり、涙を流しながらその場で片膝をついて跪き会釈をしたペテレーネは慌てた様子で部屋を出た。
「フフ……ペテレーネったら、慌てすぎよ。」
ペテレーネが出て行った扉を見つめて、イリーナは苦笑していた。
2人が目覚めたその頃、意識を失ったエステルも目を覚ました……………
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