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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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外伝~真の守るべきもの~前篇

~クロスベル市・港湾区~



「クロスベルに来て数日……中々現れませんね、マスター。」

「ええ。もしかしたら、クロスベルの市民達に驚かれ、怖がられたから、姿を現さないのかしら………?」

港湾区にある灯台の近くで、ある人物の登場を待っていたツーヤが尋ねた事にプリネは答えた。

「全く……このわたくしの気配を感じれば、出て来ると思ったのに一向に姿を現さないなんて、失礼ですわ!」

一方フィニリィは一向に現さない探し人に憤っていた。

「ねえ、プリネちゃん。そう言えば、お妃様はどこに行ったの?」

そこにリタがプリネにこの場にいないイリーナの事を尋ねた。

「イリーナさんには数日前に現れた巨大な幻獣――パラスケヴァスさんを手配魔獣にしないように、遊撃士協会に説明に行ってもらっているんです。」

「そうなんだ。プリネちゃんって、優しいね。」

プリネの話を聞いたリタは可愛らしく微笑んで、プリネを見た。

「フフ………それより、間違ってもイリーナさんの前で”お妃様”だなんて言わないで下さいね?」

「うん、わかっている。その身に眠る魂は強引に目覚めさせると、あまり良い事にはならないものね。……そう言えば、ナベリウスが言っていたけど、プリネちゃんの中に他の誰かの魂が感じられるって言っていたわ。」

「私に……ですか?」

リタの話を聞いたプリネは驚いて、リタを見た。

「うん。ただプリネちゃんの場合、プリネちゃん自身が知らない間に既に死んだ誰かの魂がプリネちゃんの中に宿ったから、珍しい転生だよ?プリネちゃん、ある時から何かが出来るようになったとかある?」

「………そう言えば。『星の在り処』……でしたか。幼い頃、急にその曲が頭に浮かび、出来るようになったんですよね……」

「きっと、その時ね。プリネちゃんの中には異世界の人の魂が宿っているようね。……ナベリウスの話だと、長い黒髪と琥珀の瞳の綺麗な女性がプリネちゃんの中から見えたそうよ?」

「黒髪……琥珀の瞳……それだと、ヨシュアさんの特徴に非常に似ていますね……(それに武術大会の時、一瞬見えた女性の姿に……まさかあの女性が………?)」

リタの話を聞いたプリネは考え込んでいた。



「マスター………」

その様子をツーヤは心配そうな表情で見ていた。

「……っと。ごめんね、ツーヤ。心配をかけてしまって。」

「いいえ。………例えマスターが何者であろうと、あたしにとっては唯一人のマスターです。」

「フフ、ありがとう。それを聞いて安心したわ。」

凛とした表情のツーヤの答えを聞いたプリネは優しげな様子で微笑んだ。

「いいな~、ツーヤちゃん……私も久しぶりに主に会いたいな……あら?」

「……何やら街の方が騒がしいですわね。」

その様子を羨ましそうに見ていリタは何かに気付き、フィニリィが続けた。そしてプリネ達が騒ぎがした方向を見ると、そこにはクロスベルの治安を守るクロスベル警察、警備隊の警官や刑事、警備隊員達が大人数で港湾区に現れた。

「……あの人達、みんな武装しているね、プリネちゃん。」

「こんな街の中で一体何をするつもりなんでしょうか………?」

リタやツーヤは港湾区に現れた人物達を見て、首を傾げていた。

「………まさか私がクロスベルに入国している事がわかったのかしら?今回は”不戦条約”の事も考えて名前を偽って、入国しているし……」

「……いえ。それなら皇女である貴女を歓迎するためにも、この街の市長であるイリーナという貴女の従者の祖父もいるはずですわ。まさか………!」

プリネの推測を否定したフィニリィはある事が思い浮かび、信じられない表情で武装した集団を見た。



「……何故、捜査一課の我々がこんな事をしなければ、ならないのでしょうね、ダドリーさん。他にもやる事はたくさん、あるというのに……」

武装した集団の中にいるクロスベル警察の中で最も優秀な部署――捜査一課の一員の女性、エマは自分の上司に不満を呟いていた。

「……局長の命令だ。何が『今、街を騒がしている怪物を退治する事によって、クロスベル警察と警備隊の威光を市民達に思い知らせるいい機会だ。』だ!下らない事で、私達捜査一課をこんな事に使って……!」

エマが話しかけた人物――スーツ姿で眼鏡をかけた青年――優秀な捜査一課の中でも実力が秀でている捜査官、ダドリーは怒りを露わにしていた。

「やれやれ……怪物退治か。そんなの遊撃士達にやらせればいいと思わないか?ミレイユ。」

一方クロスベル警備隊の一員である赤茶色の髪を持つ青年は横にいる灰色のベレー帽を被った同僚であり自分の上司である金髪の女性に話しかけた。

「……司令の命令なんだから、仕方ないでしょ。さっさと終わらせて、警備に戻るわよ。だから、だらけない!」

「イエス、マム。」

青年――ランディに話しかけられた金髪の女性――ミレイユは溜息を吐いた後、ランディを睨んで注意し、ランディは条件反射で敬礼をした。

「…………クロスベルを騒がせる怪物はこのあたしが絶対やっつける!」

その横でミレイユと同じように灰色のベレー帽を被った茶髪の少女は自分の獲物であるサブマシンガンを持って張り切っていた。

「おうおう。ノエルは張り切っているねぇ……」

少女――ノエルの様子を見たランディは感心していた。

「当り前です!それにほおっておいたらまた遊撃士協会に手柄をとられて、あたし達の評判は落ちるんですよ!?ランディ先輩をはそれでもいいんですか!?」

「別に評判が悪いのは今更じゃねえか……」

ノエルに指摘されたランディは呆れた表情で溜息を吐いた。

「曹長の言う通りよ。これ以上クロスベル警備隊の評判を落とす訳にはいかないのも事実よ。……もし、手を抜いたら貴方の給料を半年30%カットするわよ。」

「っと。さすがにそれをされたら、困るしねぇ………本気は出すから、給料は減らさないでくれよ。」

「全く………」

ランディの様子に呆れていたミレイユだったが、気を取り直して、警備隊員達の前に立ち、またダドリーも警察官や刑事達の前に立った。



「これより、クロスベルを騒がす怪物を退治する!銃を持つ者達は湖に向かって撃ちなさい!銃を持たない者達はアーツで湖を攻撃して、怪物をあぶり出しなさい!」

「イエス、マム!!」

「………我々も警備隊員達に続け!」

「はい!」

ミレイユとダドリーの号令の元、警察官や刑事、警備隊員達は湖に向かって攻撃し始めた!

「なっ……!」

「やはり……!」

その様子を見ていたプリネは驚き、フィニリィは怒りの表情でダドリー達の行動を見ていた。

「………確か話によると、パラスケヴァス……よね?その幻獣はまだ、人に危害を加えていないんだよね?」

「ええ……!あの者は見た目からして恐ろしい幻獣に勘違いされがちですが、戦いはあまり好まない温厚な者ですわ……!なのにあんな事を……!」

リタの疑問に答えたフィニリィは怒りの表情で見続けていた。

「!!マスター!湖が!」

何かの気配に気付いたツーヤは湖をプリネ達と共に見た。すると湖は大きな水音を立て、湖から何かが現れた!

「うわあっ!!」

「あ、あれが怪物……!大きい……!!」

湖から現れた自らの身体と同じぐらいの大きさの槌を持つ巨大な幻獣――パラスケヴァスを見た警察官や警備隊員達は驚き、家屋の2倍はあるパラスケヴァスの大きさに恐れた。

「現れたわね!総員、攻撃開始!!」

「イエス、マム!!」

そしてミレイユの号令の元、警備隊員達は攻撃を開始した!

「こちらもさっさと終わらせて、それぞれの職務に戻れ!」

「はい!」

続くように言ったダドリーの号令に頷いた警察官や刑事達は銃で攻撃し始めた!

「……………………」

一方攻撃されたパラスケヴァスは反撃もせず、自分を攻撃する人間達をどこか悲しそうな雰囲気を纏わせて見続けていたその時



「やめなさい!!」

プリネ達がそれぞれの身体能力を生かし、パラスケヴァスの前に飛び込んで来た!。

「!?総員、攻撃をやめなさい!」

プリネ達の登場に驚いたミレイユは警備隊員達に攻撃をやめさせた。それを見たダドリーも警察官達にも攻撃をやめさせた。

「ヒュ~。これはまた可愛い娘が勢ぞろいしているねぇ……特に黒髪の娘なんて、スタイルもあの中で際立っていいし、声をかけようかね~。」

「ランディ先輩!こんな時にふざけないで下さい!」

プリネ達の容姿を見てだらけているランディを見たノエルはランディを睨んで注意した。

「……見た所、市民ではないようだが……関係のない者は引っ込んでもらおうか。」

プリネ達の登場に驚いたダドリーだったが、冷静な様子でプリネ達に忠告した。

「いいえ!私の後ろにいる幻獣はこの娘の知り合いです!……だから、攻撃なんてやめて下さい!」

プリネは必死な様子でダドリー達を説得しようとしたが

「……だとしても、その怪物は討伐する事は決定事項よ。悪いけど、どいてもらうわよ。」

ミレイユはプリネの説得を無視し、警備隊員達に再攻撃の合図をした。



「………仕方ありません。申し訳ありませんが、みなさんには少しの間、眠ってもらいます。ツーヤ、リタさん。力を貸してくれますか?」

「はい!」

「うん。何も危害を加えていないのに一方的に攻撃するなんて許せないもの………!」

ミレイユ達の様子を見たプリネは鞘からレイピアを抜き、ツーヤは抜刀の構えをし、リタはミレイユ達を睨んだ。

「フィニリィ。貴女はパラスケヴァスさんにどこかに逃げるよう、説得して下さい。」

「………わかりましたわ。」

プリネの指示に頷いたフィニリィは飛び上がって、パラスケヴァスの説得を始めた。

「ペルル!アムドシアス!」

そしてプリネはペルルとアムドシアスを召喚した!

「お願いします!力を貸して下さい!」

「うん!任せて!闇夜の眷属と人間が仲良く暮らしていける為にも……こんな事はあってはならないもの!」

「異世界にて奏でよう!ソロモンの一柱たる我が曲を!」

プリネに頼まれたペルル、アムドシアスはそれぞれ攻撃態勢に入った!

「あくまで阻むというのか………公務執行妨害でお前達を逮捕する。怪物の前にいる少女達を確保、そして怪物を退治しろ!」

「はい!」

プリネ達の様子を見たダドリーは部下達に号令をかけた!

「へえ………あの少女が”闇の聖女”の娘か………”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”という2つ名を持つ割には中々、勇ましいね♪それにあの魔槍に座っている少女……フフ、”彼”が彼女を見たら、どう思い、そしてどうするのかな?どちらにせよ、面白い展開だね。」

一方遠巻きに見ている野次馬の中にいたエメラルドグリーンの髪を持ち、薄い緑が入った黄色の瞳を持つ少年が口元に笑みを浮かべていた。

「…………………………」

また、建物の屋根から白と青の毛皮を持つ普通の狼より一回り大きい狼がその様子を見ていた。



そしてプリネ達は僅か数名という絶対的な不利な数でクロスベル警察、警備隊員達との戦闘を開始した………!






 
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