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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第38話

エステルとケビンが王都に到着すると既に夜になっていた。



~王都グランセル・夜~



「ふう……日が暮れちゃったわね。エルベ離宮の方はどうなっているのかしら」

「ま、ギルドの方に連絡が入ってるかもな。はよ、行ってみようや。」

「うん………えっと、ケビンさん。さっきはゴメンね。当たり散らしちゃって。」

「ええて、ええて。カレシの事で頭ん中がグチャグチャしてたんやろ?気にしてへんから、安心し。」

謝罪するエステルにケビンは笑って気にしていない事を言った。

「えへへ、ありがと。でも悪いけど完全に信用できないっていうのは変わらないからね?」

「あいた、かなわんなぁ。まあ、ええわ。ギルドの方に連絡が入ってるかもな。はよ、行ってみようや。」

そして2人がギルドに向かおうとしたその時

「エステル様……!」

フィリップが慌てた様子で2人に近付いて来た。

「あれ、フィリップさん?」

「ど、どうも。今朝は大変失礼しました。あの、エステル様……どこかで公爵閣下を見かけていませんでしょうか?」

「へ……朝に会ったきりだけど……。公爵さん、どうかしたの?」

「昼過ぎに街に出かけたきり城にお戻りになっていないのです。閣下が行きそうな場所は一通り捜してみたのですが……」

「ああもう、この忙しい時に何をしてるんだか……。フィリップさん。これからギルドに戻るから一緒に付いて来て。公爵さんが迷惑をかけてたら連絡が入ってるのかもしれないし。」

フィリップからデュナンの事を聞いたエステルは呆れた後、提案をした。

「そ、そうですな……。それでは同行させて頂きます。……と、こちらの方は?」

「あ、七耀教会の巡回神父、ケビン・グラハム言いますわ。どぞ、よろしくー。」

「これはご丁寧に。私は公爵閣下の執事を務めてさせて頂いているフィリップと申す者でして……」

「あー、挨拶はあとあと。とっととギルドに戻りましょ!」

そして3人はギルドに向かった。



~遊撃士協会・グランセル支部~



「エルナンさん、ただい……」

エステルがギルドに入って受付を見ると、なんとエルナンが倒れていた。

「エ、エルナンさん!?」

「なんと……!?」

「クソ、そう来たかい!」

エルナンの状態に驚いた3人はエルナンに駆け寄った。

「エルナンさん!?エルナンさんってば!」

「呼吸は安定しとる……。どうやら眠っとるみたいやな。この人が王都支部の受付か?」

「う、うん……。……みんな!?」

エルナンの状態を調べたケビンの問いに答えたエステルは嫌な予感がして、2階に向かった。



「あ………」

エステルが2階に上がると、全員が倒れていた。

「アガット、オリビエ、ジンさん!」

アガット、オリビエ、ジンの3人は机にうつ伏せて、眠っていた。

「ミント、ティータ、クローゼ!」

ミント、ティータ、クロ―ゼの3人は本棚の近くで横になって倒れていた。

「あっちゃあ……。全員やられたみたいやね。」

そしてケビンがフィリップと共に2階に上がって来た。

「どや、無事そうか?」

「う、うん……。眠ってるみたいだけど……。一体全体、どうなっちゃってるのよ~!?」

「ふむ、どうやら一服、盛られてしまったようですな。皆さん、急に睡魔に襲われ崩れ落ちたように見受けられます。」

「た、確かに……」

「おお、鋭いですやん。」

フィリップの推測にエステルとケビンは感心した。

「あれ、この手紙………」

そして辺りを見回したエステルはアガット達が倒れている机の上に置かれてある手紙に気付いた。

「ちょっと待て……。それ、俺らが受け取った封筒と同じとちゃうか!?」

「う、うん!」

ケビンに急かされたエステルは手紙の内容を読み始めた。



娘と公爵は預かった。返して欲しくば『お茶会』に参加せよ。



「あ、あんですって~!?」

「こ、公爵閣下が……!?」

手紙の内容を読み終えたエステルは驚き、また内容を聞いていたフィリップも驚いた。

「『お茶会』の場所はやっぱり王都やったか……。そこに書いてある娘ってのは誰か分かるか?」

「はっ……!」

ケビンに言われたエステルはギルド内でまだ見かけていない人物の事に気づいた。

「レン!?レン、どこにいるの!?」

血相を変えたエステルは3階に上がって捜したが、レンはいなかった。

「どうやらその子が(さら)われたみたいやな……。エステルちゃんの仲間か?」

「ううん、ある事情で預かっている子なんだけど……。よりにもよってこんな事に巻き込んじゃうなんて……!」

「エステルちゃん……」

「エステル様……」

悔しさと悲しさが混じった表情をしているエステルを見て、ケビンとフィリップは心配した。そしてエステルは気を取り直して、フィリップに謝った。

「ごめん、フィリップさん……。ひょっとしたら公爵さんもとばっちりを受けたのかも……」

「いえ、そうとは限りますまい。仮にそうだとしてもこんな時間まで1人きりで遊び呆けている閣下の責任です。どうかご自分を責めないでください。」

「そうやで、エステルちゃん。まずは手紙の『お茶会』が何なのか突き止めるのが先や!」

「う、うん……」

2人に元気づけられたエステルは『お茶会』を突き止める為に手紙を読み直した。

「そういえば『お茶会』って特務兵の残党の話が出たときにエルナンさんが言ってたような……。……って、ケビンさん。さっき手紙を読んだとき、『やっぱり王都やったか』とか言ってなかった?」

「なんや、聞こえてたんか。んー、実はちょっとした事情があるんやけど……」

「……その事情はあたしから説明させてもらうわ。」

ケビンが事情を話そうとしたその時、シェラザードが下から上がって来た。



「お、ナイスタイミング!」

「へ……シェ、シェラ姉!?」

「久しぶりね、エステル。ずいぶん大変なことになっているみたいじゃない?しかしケビンさん。お互い間に合わなかったみたいね。」

「ええ、面目ないですわ。」

「ど、どうしてシェラ姉がここに……。それになんでケビンさんと話が通じちゃってるわけ!?」

ケビンと知り合いの様子のシェラザードに驚いたエステルは尋ねた。

「あたしとアネラスが特務兵のアジトを発見したのは聞いていると思うんだけど……。ちょうどその時、この人と知り合ってね。消えた残党の捜索に今まで協力してもらってたのよ」

「そ、そっか……。だから事情に詳しかったんだ。」

「へへ、そういうことや。」

「シェラ先輩!」

その時、アネラスも走って上がって来た。

「あ、アネラスさん!?」

「エステルちゃん!よかった、無事だったんだ!それにケビンさんもこっちに来てたんですね!?」

「ああ、オレの方も間に合わへんかったけどな。」

「で、下の通信器はどうだった?」

「駄目です……。パーツが抜き取られたらしくてすぐには使えそうにありません。」

「とすると……」

アネラスの報告を聞いたシェラザードは3階に備え付けて合った予備の通信器を調べた。

「駄目ね、こっちも同じだわ。」

「それって……『敵』が壊したってこと?」

「間違いないわ。一体、何を狙ってこんな事をしたのか……」

「そうだ、シェラ姉!この置手紙なんだけど……」

そしてエステルはシェラザード達に手紙を見せて、事情を説明した。



「『お茶会』……。ようやく全てが繋がったわね。その子と公爵を掠ったのは特務兵の残党に間違いないわ。しかも背後には『身喰らう蛇』以外の組織がいるはずよ。」

「うん、あたしたちも変な機械に襲われたし………って、『身喰らう蛇』以外の組織ってどういう事!?」

シェラザードの話を聞いたエステルは驚いて尋ねた。

「もう、知っているでしょうけど、あたし達も『結社』の『執行者』――カンパネルラに会ったわ。で、奴はこう言ったのよ。『今回の件に関しては結社は関わっていない』って。」

「あ、あんですって~!?」

「今はとにかく、『お茶会』が開かれる場所を捜すべきやで、エステルちゃん。」

「う、うん……でも『お茶会に来い』ってどこに行ったらいいのか……」

シェラザードの話を聞き驚いているエステルだったが、ケビンに言われて優先事項を思い出し、どうするべきか迷った。

「とにかく心当たりを捜してみるしかないわね。アネラス。一つ頼まれてくれない?」

「はい、何ですか?」

「『エルベ離宮』の警備本部にこの事を連絡してきてほしいの。周遊道に現れた武装集団はおそらく陽動に間違いないわ。」

「なるほど……」

「やはり狙いは王都やね。」

シェラザードの推測にエステルは頷き、ケビンは真剣な表情で呟いた。

「わかりました!それじゃあ離宮までひとっぱしりしてきます!」

「アネラスさん、気を付けて!」

「うん、エステルちゃんもね!」

そしてアネラスはエルベ離宮に急いで向かった。

「執事さんは悪いんだけどギルドで待機していてくれる?公爵閣下は必ず取り戻すから。」

「……かしこまりました。待機している間、皆さんの介抱をさせて頂きましょう。どうか閣下をお願いします。」

そしてエステル達はギルドを出た。



~エルベ離宮・紋章の間~



「現在、周遊道北西エリアで第1~第2小隊が展開中。まもなく包囲が完了します。」

「南東エリアでは特務兵数名がロマール池のさらに向こうに逃亡中。第3~第4小隊が追撃を続けています。」

一方その頃、シードは兵士達から現状の報告を聞いていた。

「ご苦労。現状を維持しつつ両集団の確保に努めてくれ。」

「は!」

シードの指示に敬礼をした兵士達はそれぞれの持ち場に戻った。

「しかし解せませんねぇ……。一体、何を考えているのやら。まさか陽動のつもりですかね?」

兵士達が去った後、シードの傍に控えた副官は特務兵達の行動がわからず、シードに尋ねた。

「グランセル城には一個中隊を配備している。我々をここに留めたところで彼らに制圧するのは不可能だ。それとも我々の知らない切り札があるというのか……?」

「切り札、ですか?」

「失礼します!」

シードの推測に副官が首を傾げたその時、一人の兵士が入って来た。

「どうした?」

「要塞司令部への連絡は完了。ただ、遊撃士協会の王都支部への連絡ですが……。何かトラブルでもあったのか先方に通じない状態です。」

「なに……?」

「いかがしますか?」

「ふむ、そうだな……。……念のため保険をつかわせてもらうか。副長、ここは任せた。私はしばらく通信室に詰める。」

「了解しました。して、どちらに連絡を?」

「もう一度、要塞司令部だ。」



そしてシードは通信室に向かい、誰かと通信をした。



一方その頃、エステル達はギルドを出た時、ジークが現れ、エステル達を案内するようにどこかにゆっくりと飛んで行ったのでエエステル達はシークを追って波止場に到着した………
 
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