戦国異伝
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第二百五十四話 決着その七
「疲れる」
「しかし御主は」
「この程度ではじゃ」
「疲れぬというか」
「そうじゃ」
こう笑って言うのだった。
「まだな」
「かなり動いておるというのに」
「御主にとってはな」
崇伝には、というのだ。
「しかしじゃ」
「御主はか」
「これ位ではじゃ」
「何ともないか」
「わしはずっと戦の場で駆け馬に乗り槍も刀も振るってきた」
足軽から大名になってもだ、羽柴はそうしてきた。実際に。
「だからじゃ」
「この様なこともか」
「何ともないのじゃ」
「おのれ・・・・・・」
「ではな」
歯噛みする崇伝がだ、疲れが見えてきたところでだった。羽柴はその懐から小刀を出してそれを投げてだった。
崇伝の目と目の間、その急所を貫いた、これでだった。
崇伝は完全に動きを止めてだ、苦々しい声で言った。
「これは・・・・・・」
「目と目の間は急所の一つ」
人の、というのだ。
「それを貫いた、これでじゃ」
「わしは終わるのか」
「御主は魔界衆としても厄介じゃが」
崇伝自身を見ての言葉だ。
「それ以上にその心根、天下の災いとなるな」
「そう言うのか」
「学があれば曲げ口があれば偽る」
それがというのだ。
「御主じゃな」
「それの何処が悪い」
羽柴の言葉にもだ、崇伝は死ぬ中で居直って言った。
「学も口もその為にあろう」
「わしは学はない」
羽柴もこのことは認める、そもそも読み書きは不得手だ。
「しかしじゃ」
「それでもというか」
「ことの善し悪しはわかる、御主は後者じゃ」
つまり悪しだというのだ。
「だからな」
「それでか」
「御主をここで成敗出来て何よりじゃ」
「わしは生きたい・・・・・・」
「それが許されぬ心根の者もおる」
その他ならぬ崇伝への言葉だ。
「わかったら地獄へ行くのじゃ」
「うう・・・・・・」
崇伝は何とかもがこうとするが力尽きて死んだ。羽柴はこれでよしとした。
明智は天海と闘っていた、その時に。
天海のその顔を見てだ、こうしたことを言った。
「同じ者ではない筈なのに」
「それでもと言われるか」
「御主、わしに似ておる」
天海の年老いた顔を見ての言葉だ。
「わしが年老いて百を越えれば」
「こうした顔になるとか」
「そう思ったがな」
「御主は百二十まで生きるつもりか」
天海は己の歳から明智に問うた。
「そのつもりか」
「そうしたことには興味がない」
「長寿にはか」
「長く生きても無駄に、天下や民に害を為すよりはか」
それよりもというのだ。
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