英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第127話
リィン達はサラ教官にレグラムであった出来事を説明した。
~列車内~
「―――なるほど。A班も色々あったみたいね。」
「うーん、異世界の女神様が”聖女の城”で倒れていて、みんなと一緒に行動したなんて、正直信じられないよ……」
「やれやれ、夢でも見たんじゃないのか?」
「フン、言ってるがいい。」
「夢も何も、その本人はさっきまでエヴリーヌ達と一緒に行動していたんだけど。」
「アイドス様を一目見れば、皆さんも女神様だと信じると思いますよ?」
呆れた表情のマキアスの指摘にユーシスは鼻を鳴らし、エヴリーヌはジト目になり、セレーネは苦笑しながら言った。
「んー、”嵐の剣神”の妹を名乗ったその自称女神はちょっと気になるけどとりあえずその話は置いといていいでしょ。それより、トヴァルと”光の剣匠”が出かけたってのは気になるわね……カイエン公なんていう大物中の大物が動いてるみたいだし。」
一方サラ教官は考え込んだ後真剣な表情で答えた。
(じ、”自称女神”ですか……)
(アイドス自身から感じた霊圧や神気からして本物の女神なんだけどねぇ。)
(ふふふ、本物の”女神”とわかった時にはどのような反応をする事やら。)
サラ教官のある言葉が気になったメサイアは表情を引き攣らせ、ベルフェゴールは苦笑し、リザイラは静かな笑みを浮かべていた。
「B班の行った”ジュライ特区”ではそういう話はなかったわね……まあ、帝国政府の直轄地だから貴族が治めている場所じゃないけど。」
「たしか8年前に併合された地域だったか?」
「ああ、特に揉めることなく帝国領になったパターンだな。沿岸地域の経済特区になってなかなか賑わってたぜ。」
アリサの話に続いたガイウスの質問にクロウは頷いた後自分が見て来た事を口にした。
「そこでの税収は貴族ではなく帝国政府に直接入って来る……フン、革新派が力を入れるのもわかるというものだ。」
「まあ、それはともかく。クロスベルでの通商会議が始まるタイミングというのは気になるわね。例の”帝国解放戦線”があれ以来、静かなのも気になるし。」
「そう言えば……」
「確かに不自然だな……」
「何もないなんて、逆に不気味ですね……」
サラ教官の話を聞いてある事を思い出したリィンとラウラは真剣な表情になり、セレーネは不安そうな表情をし
「私達がガレリア要塞に行くのも、そのあたりと関係が……?」
ある事に気付いたエマはサラ教官に質問した。
「んー、直接は関係ないけど完全に無関係でもないわね。ま、そのへんは現地に到着してのお楽しみってことで。ちなみにこの中で、ガレリア要塞を列車で通った事がある人は?」
サラ教官の質問を聞いたミリアムは元気よく手を上げ、クロウは口元に笑みを浮かべ、エリオットは苦笑し、フィーは静かな表情でそれぞれ頷いた。
「ふむ、なるほどね。」
「へー、これだけなんだ。」
「はは、こりゃあ反応がちょっと楽しみだな。」
「……確かに……」
「あはは……」
ガレリア要塞の事を知る人物達の言葉を聞いたリィン達は首を傾げた。
「どういうことだ?」
「えっと、写真でなら見た事はあるけど……」
「……正直、実物は引くレベル。」
「うんうん、帝国の玄関口なのにオトナゲないなーって思うよね。まあ、セントアークやケルディックの国境にあるメンフィルの要塞もいい勝負をしていると思うけど。」
「……何でそこでエヴリーヌを見るの?」
ミリアムの言葉にリィン達は冷や汗をかき、ミリアムに見つめられたエヴリーヌは首を傾げた。
「な、なんだそれは……」
「フン、帝国の玄関口にして帝国正規軍の一大拠点か……」
「では、この目でしかと確かめさせてもらうとしよう。」
こうして―――Ⅶ組を乗せた列車は大陸横断鉄道を一路東へと向かった。途中、領邦軍の拠点である”双龍橋”や幾つかの駅を通り過ぎた後……東部国境―――クロスベル自治州を臨む”ガレリア要塞”に到着するのだった。
同日、11:20―――
本日は大陸横断鉄道をご利用いただき誠にありがとうございました。次はガレリア要塞、ガレリア要塞。5分ほどの停車となりますが関係者以外の降車は認められておりませんので、ご注意ください。なお、ガレリア要塞内を導力カメラなどで撮影することは帝国法で固く禁じられています。カメラの没収、および取調べの対象になる可能性がありますのでくれぐれもご注意ください。
「……ん?ついたの?」
「今の警告は……」
「……随分と居丈高ね。」
放送によって今まで眠っていたエヴリーヌは目覚め、放送の内容にガイウスは驚き、アリサはジト目になり
「ま、まあ軍事施設を通過する以上当然の警告だとは思うが……」
「そ、そうですね。何も知らない方が取調べをされない為の注意でしょうし。」
マキアスとセレーネは戸惑いの表情で言った。
「フン、そういう問題か?」
「……確かに外国の方が聞いたらあまり印象は良くないでしょうね。」
「……ふむ。到着したようだな……なんだアレは。」
その時窓越しに見える”ガレリア要塞”の凄まじさを見たラウラは目を丸くした。
~東部国境・ガレリア要塞~
「…………………」
窓から見えるガレリア要塞の物々しさにマキアスは呆け
「……正気か……?」
「なんて物々しい雰囲気……」
ユーシスは信じられない表情をし、セレーネは不安そうな表情をし
「こ、これが……”ガレリア要塞”……」
「……これが全て鉄とコンクリートでできているのか……」
「ど、どれだけのミラをつぎ込んでいるのよ……」
エマやガイウス、アリサは驚きの表情で見つめていた。
「ハハ、予想通りだったか。」
「無理もないよ……僕だって同じだったもん。」
「まあ、クロスベル側はほとんど崖になってるけど。」
「でも、列車砲がある場所は向こうに突き出してるんだよねー。」
「……サラ教官。この場所で俺達に何を見せるつもりですか?」
「―――決まってるわ。”軍隊”というものの本質……その根底にある”チカラ”がどういったものであるのか―――これ以上ないくらい解かりやすく見せてあげるわ。」
その後列車はガレリア要塞に停車し、リィン達は降車した。
~ホーム~
リィン達が降車すると列車から作業員達が出て来た。
「あの人達は……?」
「整備員や出入りの業者ね。あまりに巨大な要塞だから関係者も少なくないのよ。」
「……なるほど。」
「ちょっとした街くらいはありそうな雰囲気ね……」
リィンの質問に答えたサラ教官の話を聞いたラウラは頷き、アリサは呆れた表情で溜息を吐いた。
「たしかこの先は……”クロスベル市”でしたか。」
「こんな軍事施設のすぐ先に巨大な貿易都市があるんですね……」
「ええ、ここから30分くらいね。通商会議が開かれる”超高層ビル”っていうのもこの要塞の屋上から見えるわよ。」
「う”ー……エヴリーヌもあの列車に乗ってクロスベルに行きたかったな~。」
エヴリーヌが去って行った列車を見つめて不満げに呟いたその時
「――来たか。」
ナイトハルト教官がリィン達に近づいてきた。
「あ……」
「あ……ナイトハルト教官!」
「どうも教官……いえ、ナイトハルト少佐殿。トールズ士官学院1年特科クラス”Ⅶ組”。担任教官を含め、マーシルン、ルクセンベール、副担任を除いた全員の到着を報告します。」
「11:30―――了解した。ようこそ”ガレリア要塞”へ。」
サラ教官の敬礼に対し、ナイトハルト教官も敬礼で答えた。
「改めて―――帝国軍・第四機甲師団に所属するナイトハルト少佐だ。実習期間中、お前達の案内役、および特別講義の教官を担当する。それでは付いてくるがいい―――」
その後リィン達はナイトハルト少佐の案内によって、要塞内を進み、自分達が泊まる部屋に荷物を置いた後会議室に向かった。
一方その頃、”クロスベル自治州”では”西ゼムリア通商会議”に参加する各国のVIP達が次々とクロスベルに到着し始めていた。
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