英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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外伝~闇王の器~
リウイが誘導した場所は木で生い茂っていたが、セオビットによって更地となっていた。
~工匠都市ユイドラ・更地~
「ふふっ……さっきから逃げてばかりだったけど、ようやく諦めたのかしら?」
セオビットは今まで自分に背を向けてどこかに向かっていたリウイが足を止めて、レイピアを自分に向けているのを見て不敵に笑った。
「舐めるな。俺とお前が本気で戦えば周囲の者達に被害を与えてしまうから今まで防戦に徹していただけだ。だが………それも終わりだ。それとお前には聞きたい事があるしな。」
セオビットの挑発にリウイは乗らずに冷静に言った。
「ふふ…………何を聞きたいのかしら?今の私は気分がいいから、答えてあげてもいいわよ?」
「そうか。…………お前は本当に”この時代”の者か?」
「…………………何を言っているのか、理解できないわ。」
リウイの問いかけに一瞬驚いたセオビットだったが、すぐに表情を戻し、リウイを睨みながら尋ねた。
「古い文献でかつてのリガナールは人間から魔人に変貌した者によって支配されていた事が印された事を思い出した。その者の名は”イグナート”と。」
「…………………………」
リウイの話を聞いたセオビットは持っている魔剣に力を入れたまま、黙っていた。
「そして魔人イグナートはある理由で侵攻した国、ルア=グレイスメイルと取引をし、国と引き換えにルア=グレイスメイルのエルフの姫である”シルフィエッタ”を人質とし、傍に置いたと言う。…………先ほどお前はいったな。”イグナートの娘”と。」
「……………………………」
「だが、今はそんな魔人の名、聞いた事もない。半島とはいえ、島全体を支配している者の名なら我が国にも届いているだろうしな………まあ、聞き覚えがなくて当然かもしれんがな。奴に関する記述はある年で消え…」
「黙りなさい!」
リウイの話を聞いていたセオビットは突如激昂して、魔剣でリウイに襲いかかった!
「フッ!」
しかしリウイはレイピアでセオビットの攻撃を受け流した!
「………その様子だと、図星のようだな…………どのような手段でこの時代に来たのか知らんが……お前の故郷や両親はもう……」
「五月蠅い、五月蠅い!父様は絶対に生きているに決まっている!」
冷静なリウイに対してセオビットは激昂しながら激しい攻撃をリウイにしていたが、リウイは余裕の表情で攻撃を捌いていた。
「氷垢螺の氷柱!!」
そしてセオビットは魔術をリウイに放った!魔術によってできた巨大な氷の柱が上空が次々と落ちて来てリウイを襲ったが
「フレインバル!!」
リウイは炎の魔法剣で自分を襲う氷柱だけを消滅させた!そして周囲はセオビットの放った魔術によって氷の柱で囲まれた闘技場と化した。
「メーテアルザ!」
そして今度はリウイが攻撃を仕掛けた!
「!暗礁!冷却剣!!」
リウイの放った地属性の魔法剣に対し、セオビットは暗黒の力を得、剣に吹雪を纏わせた技――暗礁冷却剣で対抗し、リウイの攻撃を相殺した。
「行くぞ……!」
そしてリウイは目にも止まらぬ動作でセオビットに激しい連撃を仕掛けた!
「ハァァァァァァ……!」
しかしセオビットはリウイの激しい連撃を何度も捌いた!
「フェヒテンカイザ!!」
「暗礁!8連斬!!」
リウイが連続攻撃を仕掛ければ、セオビットも連続攻撃を放って相殺し
「エクステンケニヒ!!」
「深淵剣!!」
リウイが魔法剣を放てば、セオビットも魔法剣を放って相殺し
「ティルワンの闇界!!」
「ウィンディング!!」
セオビットが距離をとって魔術を放てばリウイは魔法剣で吹き飛ばすと、戦いは一進一退かのように思われたが
「セアッ!」
リウイはセオビットの隙を見つけ、皇技――フェヒテンケニヒを放った!
「グッ!?そ、そんな……!この私が一撃をもらうなんて……!」
リウイの攻撃が見切れず、横腹を斬られたセオビットは斬られ、血を流している部分を信じられない表情で手で抑えながら呻いた。セオビットはその身に秘められた力からして、現在のファーミシルスやカーリアンと並ぶほどの力はあるのだが、セオビットが今まで相手にして来たのは格下ばかりだったため、リウイやカーリアン達と比べ、圧倒的に経験不足だった。
「……実力は決して悪くない。だが、あまりにも経験不足だ。その様子だと今までは自分より格下の相手としか戦った事がないな?」
「…………クッ……!」
リウイの推測が当たっている事にセオビットは何も言い返せず、リウイを睨んだ。
「……その程度で俺とイリーナが追い求めた理想を……俺を信じ、先に逝った我が戦友達の思いを……阻めると思うな!」
「………!!(な、何よ……なんで震えているのよ………!」
セオビットはリウイがさらけ出す覇気に呑まれ、無意識に震え、自分が恐怖を感じている事に信じられない思いでいた。
「どうして………どうして”駒”ごときをそんなに大事にするのよ!(何で……何でこの男が父様とは比べ物にならないくらいの大きな存在に感じるの!?)」
セオビットはリウイの考えが理解できず、そして感じるリウイの存在の大きさに驚きながら叫んだ。
「ハアッ!!」
そこにリウイが怒気をさらしながらセオビットに攻撃した!
「!?キャアッ!!」
リウイの重く鋭い突きの攻撃をなんとか軌道をずらしたセオビットだったが、剣を持っている利き腕を斬られ、悲鳴を上げた後、後ろに大きく飛んで後退し、斬られて血を流している腕の部分をもう片方の腕で血を抑えていた。
「………もう一度、言ってみろ。…………我が戦友達を愚弄するつもりなら塵も残さず、貴様を消し飛ばす!」
リウイは闘気や怒気、魔力を最大限に纏いながらセオビットにレイピアを向け、睨みながら叫んだ。
「ウ………ウアアアアアアアア!!消えなさいっ!ヴォア・ラクテッ!!」
最大限の闘気や怒気、そして魔力を纏ったリウイに睨まれ、レイピアを向けられたセオビットはとてつもない恐怖を感じ、脅えの叫びをあげながら片手にとてつもない魔力を込め、リウイに放った!上位暗黒魔術、ティルワンをも超える暗黒の霧による波動がリウイを襲った!
「我が魔の力に呑まれよっ!魔血の目覚め!!」
しかしリウイは大技を放って、セオビットの魔術を吹き飛ばした!セオビットの魔術を吹き飛ばした魔の力が籠った衝撃波は消えず、セオビットを襲った!
「なっ!?キャアアアアアアアアア!!………ガハッ!?………………」
リウイに付けられた傷によってその場を動けなかったセオビットは衝撃波をまともに喰らい、悲鳴をあげながら自分が放った魔術によってできた氷柱に穴を空け、森の奥まで吹き飛ばされた!
~工匠都市ユイドラ・森~
「グッ……そ、そんな……この私が手も足も出ないなんて………」
吹き飛ばされたセオビットは立ち上がる事も出来ず、その場で蹲って信じられない思いで呻いていた。
「もう終わりか?」
そこにリウイがゆっくりとセオビットに近付いて来た。
「ヒッ!来ないで!」
近付いて来るリウイに悲鳴を上げたセオビットは痛む腕を無視して魔剣を震ったが
「ハッ!」
リウイはレイピアを震って、セオビットの手から魔剣を弾き飛ばした!弾き飛ばされた魔剣は近くの地面に刺さった。
「……………………」
武器を弾き飛ばされたセオビットは少しの間、弾き飛ばされた状態で放心した。
「ふふっ……まさかこの私を追い詰める者がこの世に存在するなんてね………止めを刺すなり、犯すなり、好きにしなさい………それが敗者の定めよ………」
そしてセオビットは自暴自棄になり、抵抗する事を諦めた。
「……………………………」
抵抗を諦めているセオビットを見て、リウイは両目を閉じて考えた後、やがて目を見開いて尋ねた。
「どうやって過去から”この時代”に来た。」
「ふふっ…………これから死に行く者に聞いても無駄な事を……まあ、いいわ…………」
そしてセオビットはリウイに時代を超えた理由を説明した。
セオビットは幼い頃から母には興味がなかったが、父の事は心から尊敬し、いつか父に褒めてもらおうと幼い頃から戦に参加し、活躍をして行ったがいくら活躍しても父が自分を褒める事はなく、父は自分の事はあくまで”駒”の一つとしてしか、見ていなかった事。それでもセオビットはいつか父に自分の力を認めて貰うために前線に参加するために城にある転移門に入った矢先、なんの因果か転移門の調子がおかしくなり、今の時代のどこかの荒野に転移してしまった事。そして訳がわからなったセオビットだったが、父がいるラエドア城があるリガナール半島に戻った時、島全体は腐敗と瘴気の土地と化し、生物が近寄れない土地と化していた。故郷どころか、島にも近寄れず、大陸に戻って来たセオビットだったが半魔人やプライドの高い自分自身の性格のため、同族達になじむ事もできず彷徨っている所をディアーネが軍を結成しているのを見て、暴れる事で現実を逃避するために今回の戦いに参加した事を話した。
「あなたなんかに!私の気持ちがわかるわけがないわ!」
話を終えたセオビットは涙を流しながらリウイを睨んで叫んだ。
「いや、わかる。」
「!?」
しかしリウイの言葉にセオビットは驚いた。
「俺もかつては人間に父を、母を奪われ、そして人間からは忌嫌われ、魔族達からは”半端者”として険悪され、孤独だった。」
「なんで………そんな事があって、なんで人間と魔族の共存を目指しているの!?」
「フッ…………皮肉な事に”人”の優しさや暖かさを知ったのも”人間”のお陰だ。そして何より………この俺に安らぎや”人”を愛する事を教えたのも人間だったしな………」
信じられない表情で尋ねるセオビットの疑問にリウイはかつての自分、そして自分に犯されても自分の事を一切恨まず、逆に自分に安らぎを与え、寿命が尽き幸せそうな表情で自分の傍にいれた事に感謝し、自分の真の幸せが来る事を願いながら逝ったティナ。そして自分が心から愛した女性――イリーナを遠い目で思い出していた。
「ふふっ…………認めたくないけど、貴方を羨ましいと思ってしまったわ……………私とは違って、貴方には”居場所”や自分を認めてくれる人がいるのね…………」
「……………………………」
寂しげに笑っているセオビットをリウイは黙って見ていた後、やがてオーブメントを駆動させた。
「水よ、かの者に慈悲を与えよ………ティア・オル!!」
リウイが放ったアーツによってセオビットの傷を完全に治癒した。
「なっ、一体何を………!」
リウイの行動にセオビットは訳がわからず、戸惑った。そして自分を見上げて戸惑っているセオビットにリウイは手を差し伸べて言った。
「………俺の手を取れ、セオビット。メンフィルは光にも闇にも属さず、どんな者でも受け入れる、………例え”半端者”として忌み嫌われる半魔人であろうと。」
「なっ………!正気!?さっきまで戦っていた相手に手を差し伸べるなんて………!」
セオビットは驚いてリウイを見ていた。
「ああ。”闇夜の眷属”と”人間”の共存………それが俺が心から愛した者と誓い、目指している理想だ。お前も”闇夜の眷属”の一人。二度と俺達に敵対しないと誓うなら、お前も受け入れる。」
「……………………」
どことなく優しさが混じっているリウイの顔をセオビットは少しの間見ていた後、やがて涙を流し始めた。
「う………ううっ………うあ…………うあああああああ………………!」
そしてリウイの胸に飛び込み、大声で泣いた。自分が無意識に求めていた”居場所”や自分を認めてくれる人ができた事の嬉しさや求めていた父の大らかな優しさを初めて受けた事にセオビットはリウイの胸で泣き続けた。
「やれやれ………見た目と反して、まだまだ子供だな…………これならまだ、エヴリーヌの方が大人だな………」
セオビットに抱きつかれたリウイは苦笑しながらセオビットの頭を優しく撫でていた。そしてしばらくの間泣いていたセオビットは泣き止んだ後、顔を上げてリウイを見た後、唐突に自分の唇をリウイの唇と合わせた。
「むっ!?」
「ん……………ちゅ………」
セオビットの行動に驚いたリウイは唇から舌をからめてくるセオビットにされるがままになった。
「ふふ………今のが私の初めてよ………光栄に思いなさい………」
そしてリウイとの深い口づけを終えたセオビットはリウイに微笑んだ後リウイから離れ、自分の服を脱ぎ、母親譲りの綺麗な肌や胸を隠す事なくリウイに見せた。
「………おい、何のつもりだ。」
「ふふっ………わかっている癖に………私の処女を………操を……貴方に捧げるわ………貴方の僕として……」
セオビットの行動に戸惑っているリウイにセオビットは魅惑的な微笑みでリウイに言った。
「………まだ、戦闘は続いているんだぞ。そんな事は後にしろ。」
「あら。さっきの貴方との戦闘で私の魔力はそんなに残っていないわ。新しい戦力をすぐに投入したいのなら、私を抱いて、魔力を分けたほうがいいでしょう?」
呆れている様子のリウイにセオビットは悪びれもなく言った。
「………俺の使い魔になるつもりか?共に来いとは言ったが………」
「ふふっ……私の心を奪ったんだから、絶対に貴方の傍から離れないつもりよ……まずは奉仕をしてあげるわね………」
そしてセオビットはリウイに処女を捧げ、リウイと契約してリウイの使い魔になり、リウイの魔力と同化した。
「フッ…………エヴリーヌがもう一人増えた気分だな…………セオビット!」
契約を終えたリウイは苦笑した後、新たな使い魔であり仲間でもあるセオビットを召喚した。
「………我が覇道を共に行く新たな仲間としてお前を歓迎しよう。」
「ふふっ………これからは貴方の僕として存分に役に立ってあげるわ、父様♪」
「………………おい。その呼び方はなんだ?」
セオビットの自分の呼び方を聞いたリウイは尋ねた。
「ふふっ…………それぐらい、自分で考えたら?それと私を抱きたければいつでも呼んでね♪私は品のない睡魔と違って、貴方にしか抱かせないんだから♪まあ、呼ばなくても私から貴方に迫る時もあるから、光栄に思いなさい♪」
セオビットはリウイに豊満な胸を押しつけて、幸せそうな表情でリウイを見て言った。
「(…………どうしてこう、俺の周りには一癖のある女ばかり集まるんだ?………後で、カーリアン達に何か言われそうだな………………)まあいい。ユイドラを襲う魔物達を殲滅させるために、力を貸せ。」
「はい、父様♪」
そしてリウイとセオビットはウィル達が戦っている戦場に向かった。
リウイがセオビットを仲間にし、戦場に向かった頃には街の中の戦闘は終結に向かっていた………
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