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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第121話

その後課題を終えたリィン達は支部に戻って書類整理をした。



~夕方・遊撃士協会・レグラム支部~~



「あ、そちらは終わりました?」

「ああ、ようやく片付いてきたところだ。」

「やれやれ、なかなか骨が折れたな。」

「書類の量が凄かったですものね……」

疲れた表情で溜息を吐いたラウラの言葉にセレーネは頷いた。



「すー、すー……」

「むにゃむにゃ……」

「このガキ共は……二人揃ってのんびり昼寝とはいいご身分だな。年下のセレーネですら、手伝っているというのに。」

ソファーで眠っているミリアムとエヴリーヌをユーシスは睨んだ。



「あはは……地味な作業ですし仕方ないですよ。それに、こちらもそろそろ終わりそうですから。」

「はは、そうか。それにしても……改めてトヴァルさんの凄さがよくわかるよな。こういった雑用も依頼も、全部一人で回してるんだろう?」

「ああ、その上で他の地方にまで顔を出しているのだから恐れ入る。そのフットワークと解決能力はさすが遊撃士と言った所だろう。」

「撤退した今もなお、精力的に活動されてるみたいですね。私達をバリアハートで助けようとしたそうですし……膨大な記録を見るだけでも、人々からとても頼りにされてるのがわかります。」

「ふむ……確かにな。………」

リィン達のトヴァルへの評価にガイウスは頷いた後考え込んでいた。



「……どうした?」

「何か気になる事でもあるのですか?」

ガイウスの様子を見たユーシスとセレーネはそれぞれ尋ねた。



「いや……少し思ったのだが。”遊撃士”というものは、やはり必要なのではないか?」

「それは……」

「……確かにそうかもしれない。単純に治安維持以外のサービスだけじゃない……”民間人の保護”を第一とする彼らの精神には、ある意味高潔さすら感じられる。」

「あ、それはわたくしも思いました。”民の騎士”と言ってもおかしくないと思います。」

ガイウスの意見にエマが複雑そうな表情をしている中、リィンとセレーネはそれぞれ頷いて答えた。



「……高潔さに民の騎士、か。今の貴族が失いつつあるものかもしれんな……」

二人の意見を聞いたラウラは重々しい様子を纏って考え込み

「いや……一概には語れんだろう。ギルドはあまりにも理想的すぎる。公的援助や寄付金などで維持・運用費を賄うだけでは限界もあるはずだ。『今の帝国から排除されるのも当然だったと言えるだろう』―――……いつか兄上もそんな事を言っていた。」

ユーシスは静かな表情で語った。



「ユーシスさん……」

(お兄さんのことが気になっているみたいだな……)

「……なるほど。そういう見方もあるか。」

「どうしても冷たい物言いに聞こえてしまうが……あの御仁の言葉となると重みが違ってくるな。」

そしてリィン達がそれぞれ考え込んでいるとミリアムとエヴリーヌが呑気に寝言を呟いた。



「むにゃむにゃ……いいんちょのおっぱいおっきいね~……えへへ………ふかふかだ~……」

「すー……すー……エヴリーヌは……絶対プリネとの結婚を……認めないんだから……!」

二人の寝言を聞いたリィン達は脱力した。

「ミ、ミリアムちゃん……!?」

「えっと、もしかして夢の中でレーヴェさんに出会っているのでしょうか?」

「あ、ああ、多分な。」

エマは顔を赤らめ、セレーネとリィンは苦笑し

「……このガキ共は……」

ユーシスはジト目で呑気に眠っている二人を睨んだ。



「コホン、えっと……」

「ふふ、とりあえず書類整理も一通り片がつきそうだ。そろそろ戸締りをして子爵邸に戻るとしよう。」

「ああ、そうだな。」

そしてリィン達が戸締りをしようとしたその時、扉が勢いよく開かれた。



「す、すみません!誰かいませんか!」

「おや、そなたは”ワトー商会”の……」

支部に入ってきた娘を見たラウラは目を丸くした。



「ああっ、ラウラ様!?あ、あのっ!トヴァルさんか、セリカ様達のどなたかはいませんか!?」

「トヴァルさんなら今は出かけて、セリカ殿達は遊撃士の仕事の関係で留守にしていて、そろそろ帰ってくると思うけど……」

「……何かあったのか?」

「ア、アイツらが帰ってこないんです……――ユリアンとカルノが”お城”から帰ってこないんです!」

血相を変えた娘が声を上げるとリィン達も血相を変えた。



「そ、それって……」

「”お城”という事はまさか……」

「”ローエングリン城”のことか!?まさか……子供たちだけで湖に出てしまったのか!?」

町の子供達が湖に出た事にラウラは血相を変えて尋ねた。



「は、はい……『冒険に行くんだ』って、ボートで勝手に……ぐすっ、夕方になってもぜんぜん帰ってこなくて……!」

「……どうやら由々しき事態のようだな。」

「ああ、その上トヴァルさんやセリカ殿達も不在の今……とにかく、俺達で出来る限りの事をしてみるしかない。」

「そうだな……ただ待っているわけにもいかないだろう。」

「湖を探すとしたら代わりのボートが必要だな。すぐに爺に連絡して手配させよう。」

「私、その間にミリアムちゃんとエヴリーヌさんを起こして一端町の中を探してみますね!」

「あ、わたくしも手伝います!」

「フン、全員で手分けするか。」

話を聞き終えたリィン達は子供の捜索をする事を決めた。



「よ、よろしくお願いします!」

「ああ、ひとまず我らに任せておくといい。」

その後、リィン達は手分けして町の中をくまなく探したが、やはり子供達の姿はなく……やがて町の人々が騒ぎに気付く頃には、夜も更けてしまうのだった。

~夜・遊撃士協会・レグラム支部~



「やっぱり、男の子たちは町のどこにもいないか……やっぱり、湖に出たまま戻っていないみたいだな。」

「穏やかで波も立ってないから、転覆の心配はなさそうだが……」

「となると残る可能性は……」

「ふわ~あ……それじゃ、やっぱあのお城にいる可能性が高いんじゃないのー?

「かの”鉄騎隊”の本拠地、”ローエングリン城”……アルゼイド家で管理しているとはいえ、滅多に人が足を踏み入れない場所だ。何があったのか……心配だな。」

「城の探検をして迷っているか、最悪は魔獣に襲われて死んじゃったかもね。」

リィン達がそれぞれ話し合っているとエヴリーヌは静かに呟き

「そ、それは……」

「――ラウラ、”ローエングリン城”に魔獣は生息しているのか?」

エヴリーヌの推測を聞いたセレーネは表情を青褪めさせ、リィンは真剣な表情でラウラを見つめ

「いや……さすがに魔獣は生息していないし、もし一匹でも迷い込んでいた事がわかったら父上が門下生達と共に駆除しているだろう。」

ラウラは静かに首を横に振って答えた。



「……親御さんたちもかなり心配しているみたいです。今は家の方で帰りを待ってもらっていますけど……」

「とにかく、行ってみるしかあるまい。ボートの手配は済んでいるのだろう?」

「ああ、アルゼイド流の門下生たちが導力ボートを用意してくれている。少々霧が出始めているのが気がかりではあるが……」

「……今は波止場に向かおう。それと最低限の準備くらいは整えておいたほうがよさそうだ。」

「ああ、急ぐとしよう。」

そしてリィン達が出かける準備を素早く終えたその時、セリカ達が支部に戻ってきた。



「……おい、この町の騒ぎは一体何だ?」

「あら?トヴァルさんがいらっしゃいませんね……」

「一体どうなっているのだ?」

支部に戻ってきたセリカはリィン達を見回して尋ね、シュリはトヴァルがいない事に戸惑い、メティサーナは首を傾げて尋ねた。



「あ、セリカ達だ。」

「セリカ殿……!ちょうど良い所に戻ってきてくれて助かります!実は――――」

セリカ達の登場にエヴリーヌは目を丸くし、リィンは明るい表情をした後仲間達と共に事情を説明した。



「―――なるほどな。ならば俺達も子供達の捜索の為にお前達とあの城に向かう。シュリ、メティ、いいな?」

「はい、ご主人様が行く所はどこであろうと付いて行きます。」

「当然だ!それに天使としても、ほおっておけない状況だ!」

セリカの指示にシュリとメティサーナは頷き

「そんな……父上の客人達にそのようなお手を煩わせる訳にはいきません。」

ラウラは戸惑いの表情で言った。



「子爵にはしばらく屋敷に滞在させてもらった”恩”もある。その”恩”を返すだけだ。」

「セリカ殿……ありがとうございます。」

「うわ~、”嵐の剣神”が力を貸してくれるなんて、滅茶苦茶心強いね!」

セリカの答えを聞いたラウラは目を丸くした後会釈をし、ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべた。そしてセリカ達を加えたリィン達は波止場にいるアルゼイド流の門下生に近づいた。



~レグラム・波止場~



「どうやら導力ボートの準備はできているようだな。」

「お嬢様……ええ、先程準備が終わったところです。」

「導力ボートかぁ。ちょっと面白そうだねー。」

「ミ、ミリアムさん。」

「……はしゃいでいる場合か。」

興味ありげな表情をしているミリアムを見たセレーネは冷や汗をかき、ユーシスはジト目で指摘した。



「運転は私が引き受けよう。何度か経験があるからな。」

「ああ、よろしく頼む。」

「……お待ちください、お嬢様。やはり……捜索は自分達が!お嬢様の手をわざわざ煩わせる必要はないはずです!」

リィン達がボートに乗り込もうとすると門下生が呼び止めて真剣な表情で言った。



「……案じてくれるのはありがたいが、これも領主の娘としての役目だろう。それにトールズ士官学院・Ⅶ組の実習範囲でもある。」

「ああ……そうだな。」

「私達も力をつくさせてもらうつもりです。」

「さっさと見つけて帰ってくるから、心配いらないよ。」

門下生の言葉にラウラは答え、ラウラの意見にリィンは頷き、エマとエヴリーヌがそれぞれ門下生に言った。



「……わかりました。もう何も言いますまい。つい先日にも”城”の見回りが行われましたが、その時は魔獣もいませんでした。そこまで危険はないでしょう。」

「ふむ……そうなのか。確かにあの城の方角からは清らかな”風”を感じるが。」

「”聖域”ほどではないが、あの城から”聖気”が感じられるな。」

門下生の話を聞いたガイウスは不思議そうな表情でメティサーナと共にローエングリン城を見つめた。



「かの”聖女”と”鉄騎隊”のゆかりの地である古城は、清冽な気に満ちているという。魔獣が居つくこともほとんどないから、おそらくは子供達も無事だろう。何かしらの事故にあった可能性もあるが……」

「……とにかく急いで確かめに行かなくちゃな。」

「うん、早速出発しよう。みんな、準備はいいか?」

「ああ……って、このボートだと全員は乗れないんじゃないか?」

ラウラの言葉に頷いたリィンはボートの大きさを見て戸惑った。



「た、確かにこの大きさだと全員は無理ですね……」

「となると何人か待機する事になりますわね……」

ボートの大きさを見たエマとセレーネは考え込み

「えー、ボクは留守番は嫌だよー!」

「我儘を言うな、阿呆。というか貴様はあの飛行できる銀色の人形に乗っていけばいいだろうが。」

ミリアムの我儘を聞いたユーシスがジト目でミリアムを見つめたその時

「―――俺は飛行して向かうから船は必要ない。」

「へ……」

セリカが静かに呟き、セリカの言葉を聞いたリィンが呆けたその時



「―――メティ。」

「わかっている。(聖なる光よ、我が主の翼と化せ!)」

セリカの指示によってメティサーナはセリカの身体に戻るとなんとセリカの背中にメティサーナと同じ白と黒が一対になっている翼が生えた!



「ええっ!?」

「エ、エステルさんのように翼が……」

セリカの背に生えた翼を見たリィンは驚き、エマは目を丸くし、他の仲間達や周囲の人々が驚いている中、セリカは跳躍して空へと飛び立ち

「エヴリーヌも浮遊魔術で行くから船は必要ないよ。」

セリカに続くようにエヴリーヌも跳躍して浮遊魔術で空へと飛び立った。



「………………」

「凄いな。エヴリーヌは翼なしで飛べるのか。」

「一体どうやって飛んでいるのでしょうね?」

その様子を見守っていたリィンは口をパクパクさせ、ガイウスは目を丸くし、セレーネは苦笑しながら呟き

「いいな~、ボクもガーちゃんの協力無しで自分の力だけで飛んでみたいよ!」

「フフ、人間の我らでは無理だろう。」

興味ありげな表情で二人を見つめるミリアムの言葉にラウラは苦笑しながら答えた。



「フン、なら俺も飛んで行くか。――――アルバレア号!」

「ええっ!?その天馬(ペガサス)はまさか――――”聖獣ラウクソー”!?一体どうやって契約を……」

ユーシスが召喚したアルバレア号を見たシュリは驚き

「飛べ、アルバレア号!」

「ヒヒーン!」

ユーシスはアルバレア号に騎乗し、アルバレア号は翼で空高く舞い上がった。



「ユ、ユーシスまで……」

「え、えっと……ユーシスさん達がそれぞれの移動手段で向かうお蔭で人数も減りましたから、これなら何とか全員で乗れますね。」

その様子を見守っていたリィンは冷や汗をかき、エマは苦笑しながらボートを見つめ

「えっと、その……お嬢様のお知り合いは色々と変わった方が多いのですね。」

「ま、まあな。」

言い辛そうな表情をしている門下生に視線を向けられたラウラは冷や汗をかいて頷いた。



その後リィン達はボートに乗り込んでローエングリン城に向かい始めた。


~ローエングリン城~



「これが”ローエングリン城”……」

「救国の聖女が本拠地とし、歴戦の勇士たちが集まったとされる伝説の古城か……間近で見ると一際美しいが、これは……」

「な、なんかボ~ッと、青白く光ってない!?」

「私も以前から何度か訪れたことはあるが、こんな状況は初めてだ。」

「……何か、妙な”風”を感じる気がするな。魔獣ではなさそうだが……」

青白く光る城を見つめて呟いたガイウスの言葉が気になったリィン達はガイウスに視線を向けた。



「ふむ……?」

「……俺もだ。”何か”が蠢いているような……そんな気配がする。」

「な、何かってナニ~!?」

「もしかして幽霊か悪魔ですか……?」

リィンの推測を聞いたミリアムは怖がり、セレーネは不安そうな表情をした。



「この気配は”冥き途”の気配と似ていませんか、ご主人様?」

「ああ。霊体や不死者達の気配もする。」

「……しかし今までこんな気配は感じなかったのに、何故だ?」

シュリに尋ねられたセリカは頷き、メティサーナは考え込んだ。



「れ、霊体や不死者って事は……」

セリカ達の会話を聞いていたリィンは驚き

「ん。その城の中に確実に”いる”ね。霊体や不死者どころか、下級魔族の気配もするから、”魔”に属する奴等がうろついているよ。」

「…………………」

エヴリーヌは静かに答え、エマは真剣な表情で城を見つめ

「クッ、一体何が起こっているのかわからんが、子供達を一刻も早く見つけ出さないと子供達の身が危ない……!」

「ああ……細心の注意を払いながら進もう。」

唇を噛みしめたラウラの意見にリィンは頷いた後仲間達と共に城の中に入ると、突如背後の扉が音を立てて閉まった!



「ひゃあっ!?」

「きゃあっ!?」

扉が閉まる音にミリアムとセレーネは声を上げ、扉が閉まった事に気付いたリィンは振り向いて扉を開けようとしたが、扉は硬く閉ざされていた。



「くっ……開かない!」

「勝手に閉まったのか!?」

「こ、このぉ~っ!!」

扉が突如閉まり、開かない事に慌てたミリアムはアガートラムを召喚し

「やっちゃえ、ガーちゃん!!」

「―――」

アガートラムに強力な一撃を叩き込んだが何かの魔方陣に阻まれた!



「……まったく効いていないようだな。」

「そんな……一体どんな強固にできているんですか?」

その様子を見守っていたユーシスは呆れ、セレーネは驚き

「な、なんで~!?」

ミリアムは信じられない表情で声を上げた後地面に蹲った。



「アガートラムでも破壊できないなんて……」

「……どうやら”結界”が動いているみたいですね。」

「”結界”……さっき一瞬だけ見えた不思議な文様の事か?」

シュリが呟いた言葉を聞いたガイウスは目を丸くしてシュリを見つめた。



「ああ。恐らくこの城のどこかに侵入者を逃がさない為の結界の作動装置があり、それが作動したのだろう。」

「……ただ、もし子供達がこの城の中に入っていたら、先に作動しているはずですから、私達は中に入れないはずですから、何故私達が入った時に作動したのかが気になっているのですが……」

「――――まるで俺達を待ち構えていたかのようなタイミングと言った所か。」

(クク、”神殺し”の膨大な魔力に惹かれた何者かの仕業かもしれんな。)

メティサーナの説明を捕捉して不安そうな表情をしているシュリの言葉を聞いたセリカは静かな表情で答え、ハイシェラは口元に笑みを浮かべた。



「それは……」

「……………確かにセリカさんの推測も一理ありますね。」

「くふっ♪エヴリーヌに加えて”神殺し”もいるのに、こんな真似をするなんて、誰だか知らないけどいい度胸をしているね♪」

セリカの言葉を聞いたリィンとエマは真剣な表情になり、エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべた。するとその時鐘の音が聞こえて来た!



「ひっ!」

「これは……?」

「さっきの鐘の音……!?」

「何でしょう……?異世界で幽霊の方達と戦った時に感じたおぞましい気配が強く感じてきました……!」

鐘の音を聞いたミリアムは悲鳴を上げ、ガイウスとリィンは驚き、何かの気配を感じたセレーネは不安そうな表情をし

「――左右から来ます……!!」

エマが前方を見つめて警告したその時、突如得体の知れない魔獣が現れた!



「チッ……魔獣か!?」

「いや、普通の魔獣ではなさそうだ……!」

「―――迎え撃つぞ!」

その後リィン達は協力して襲い掛かってきた得体の知れない魔獣を倒した。



「……やったか。」

「何とか終わりましたね……」

「弱すぎ。拍子抜けだね。」

敵の消滅を確認したリィンとセレーネは安堵の表情をし、エヴリーヌはつまらなそうな表情をし

「あわわ……」

ミリアムは地面に跪いた。



「ミリアムちゃん、大丈夫ですか?」

「うう、今のなんだったの~……?」

「不可解な魔獣……いや”魔物”というべきか。一筋縄ではいかない相手だったな。」

「上位属性も働いていたみたいです。おそらくこの古城全体に作用しているんだと思います。」

「ああ……確かにそのように感じたな。さっきの鐘の音はよくはわからないが……」

エマの推測にガイウスは静かに頷いて考え込んだ。



「フン、想像以上に厄介な場所のようだ。”結界”とやらのせいで閉じ込められたことだし、脱出方法も探さなくてはな。」

「……セリカ殿、シュリさん、メティサーナさん、エヴリーヌさん。こう言った魔術的要素が絡んだ仕掛けの知識は貴方達の方が詳しいと思いますので、頼りにさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

リィンは魔術が盛んなディル・リフィーナ出身のセリカ達に視線を向け

「ああ。」

「はい、私の知識でよろしければ、存分にお貸しします……!」

「メティに任せておけ!」

「エヴリーヌはめんどくさいから、セリカ達に任せておくね。」

「エ、エヴリーヌさん……」

セリカ達がそれぞれ答える中、セリカ達に丸投げしたエヴリーヌの発言を聞いたエマは冷や汗をかいた。



「ならば急いだ方がいいだろう。あんな魔物が徘徊している以上、子供達の安否も心配だ。」

「そうだな……行くとしよう。」

「う~、もう出発するの~?もうちょっと休憩していこうよ~……」

「ふむ……」

「もしかして腰が抜けちゃったのか?」

未だに立ち上がらず、疲れた表情で文句を言ったミリアムの様子を不思議に思ったリィン達は興味ありげな表情でミリアムを見つめた。



「べ、別にそんなんじゃないケド。」

リィン達に見つめられたミリアムは視線を逸らして答えたが

「フン、なんだったらお前だけここで待っていても構わんぞ。」

「ひとりの方がヤダッ!」

ユーシスの言葉を聞いて慌てて立ち上がった。



「はは……とにかく探索を開始しよう。」

そしてリィン達が探索を開始し、リィン達と共に探索しているセリカはハイシェラに話しかけられた。



(セリカよ、気付いているな?この城に相当の力が持つ者がいる事を。)

(ああ。この城に漂う冥界の気配に混じっている凄まじい”聖気”。しかもこの圧倒的な気配は―――”神”だ。)

(……私も僅かですが感じています。それに何となくですがこの”神気”……どこかで感じた覚えがあるのです。)

ハイシェラとセリカの念話を聞いていたシュリは静かな表情で答え

(俺もだ。この懐かしくも感じる気配……一体誰だ?)

(何にしても油断せずに進む事だの。)

考え込みながら先へと進むセリカにハイシェラは忠告した。

 
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