英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第110話
PM9:00―――
~トールズ士官学院・学院長室~
夜、サラ教官、ナイトハルト教官、レーヴェはヴァンダイク学院長に”特別実習”について報告していた。
「―――以上が、次の”特別実習”のスケジュールになります。バレスタイン教官の方は如何か?」
「ええ、各方面にもすでに連絡がついています。3人の編入生を含めた班分けも検討済みです。」
「ふむ、結構。」
ナイトハルト教官とサラ教官の報告を聞いたヴァンダイク学院長は頷き
「……レオンハルト教官。一つ尋ねたい事があるのだが。」
「……何だ?」
ナイトハルト教官に視線を向けられたレーヴェはナイトハルト教官を見つめ返した。
「何故よりにもよって”通商会議”の時期にマーシルン、ルクセンベール、そして貴殿の3名がクロスベルで……それも”特務支援課”の元で”特別実習”をする事になっているのだ?」
「……先程も説明したと思うが常任理事の一人であるリウイ陛下の意向だ。」
探るような目で自分を見つめるナイトハルト教官の質問にレーヴェは答え
「リウイ陛下じゃなく”メンフィル帝国”じゃないのかしら?」
「………………」
真剣な表情のサラ教官の問いかけにヴァンダイク学院長は黙ってレーヴェを見つめた。
「―――だとしてもお前達に話す義務はないな。”クリムゾン商会”―――いや、あの悪名高き猟兵団――――”赤い星座”と契約してクロスベルに滞在させ、それどころかクロスベル政府に通商会議中”帝国解放戦線”が仕掛けてくる可能性が非常に高い事を話していないお前達―――エレボニア帝国のように。」
「まあ、それは一理あるわねぇ。エレボニア帝国政府……いえ、オズボーン宰相は一体何を考えているのやら。特に”リベールの異変”にも関わった”赤い星座”を雇うなんて正気の沙汰じゃないわよ?」
「…………自分は軍人だ。軍は政府の判断に従うだけだ。」
「…………」
レーヴェの指摘にサラ教官は頷いた後ジト目でナイトハルト教官を見つめ、ナイトハルト教官は複雑そうな表情をした後すぐに気を取り直して静かに呟き、ヴァンダイク学院長は目を伏せて黙り込んでいた。
「!!それより”帝国解放戦線”の動きを”情報局”が掴んでいるという情報……一体どこで知った?」
そしてすぐにレーヴェが軍や政府の機密情報を知っている事に気付いたナイトハルト教官は血相を変えてレーヴェを見つめ
「フッ、”その程度”の情報、メンフィル帝国が知らないとでも?」
「……………………」
静かな笑みを浮かべ、挑発とも取れるレーヴェの言葉を聞き、厳しい表情でレーヴェを見つめたが
「貴殿が”メンフィルに亡命する以前に所属していた組織”からの情報なのではないか?」
「フッ、”リベールの異変”の”導力停止現象”の際、絶妙なタイミングで蒸気の戦車でハーケン門に現れたエレボニア帝国軍が、かつて”結社”に属していた俺相手によくそのような質問ができるものだな?」
「ッ……!我らエレボニア帝国が”結社”と繋がっていると言いたいのか!?」
不敵な笑みを浮かべるレーヴェの言葉を聞いてレーヴェを睨んだ。
「そんなつもりで言った覚えはないのだが?―――まあ、”詫び”のついでに一つだけ良い事を教えてやろう。今回の”通商会議”……”クロスベルを守る為”に”六銃士”も動いている。」
「なっ……!?”六銃士”だと!?」
「彼らが……」
「そんな事を知っているってことは、やっぱり”六銃士”とグルだったのかしら?確か彼らをクロスベル警察、警備隊の上層部に推薦したのはリウイ陛下を始めとしたメンフィル帝国の皇族達だったわよねぇ?」
レーヴェの口から出た予想外の人物達を聞いたナイトハルト教官はかつて自分達―――エレボニア帝国軍に屈辱と共に恐怖を与えた相手が動いている事に血相を変え、ヴァンダイク学院長は驚き、サラ教官は真剣な表情でレーヴェを見つめて尋ねた。
「―――俺が知る限りはそう言った動きは見られていないな。それに陛下達は二大国の干渉によって腐敗したクロスベルの警察と警備隊を嘆き、それを改善する為に市民達の味方であり続けた”六銃士”を推薦しただけで、その後は何の干渉もしていない。陛下達―――いや、メンフィル帝国を汚職に塗れ、挙句の果てにはかの”教団”の生き残りの司祭であるヨアヒム・ギュンターと繋がっていたハルトマン元議長を始めとしたエレボニア帝国派議員と繋がっていたエレボニア帝国と一緒にしないでもらおうか?」
「クッ……!先程の発言と言い、我らエレボニア帝国を愚弄しているのか!?それにあの件はハルトマン元議長達の独断だ!エレボニア帝国は一切関与していない!第一あの事件を盾にクロスベルの領有権問題に強引に介入して来たメンフィル帝国が干渉していない等、よくもぬけぬけと言えるものだな!?」
不敵な笑みを浮かべるレーヴェに見つめられたナイトハルト教官は唇を噛みしめた後声を上げてレーヴェを睨み
「はいはい、もう完全に話がそれまくっていますよ?あたし達はあくまで生徒達に勉学を教える教官の立場。今この場に政治や国の威信の話は関係ないと思いますよ?」
「うむ、サラ教官の言う通りじゃ。二人ともそこまでにしておくのじゃ。」
二人の様子を見たサラ教官は呆れた表情で手を叩いて話を中断させ、ヴァンダイク学院長も頷いて二人を見つめた。
「……ハッ。」
「……話を逸らせて申し訳ありませんでした。」
ヴァンダイク学院長の言葉に二人はそれぞれ静かな表情で会釈した。
「では、最後にもう一度確認しておきたいのだが……―――3人とも”賛成”ということでいいのかな?」
「ふう……少し早いとは思いますけどまあ、仕方ないでしょう。この学院に来た以上、あの子達には必要な事だと思いますし。」
「自分の方は元より。すでに中将の許可も得ています。」
「……こちらも異存はない。留学している5人にとっても、勉強になる事でしょうし。」
ヴァンダイク学院長に尋ねられた3人はそれぞれ頷いた。
「あい分かった。ならば予定通りに進めよう。………”Ⅶ組”の諸君には厳しい現実を突きつけることになるかもしれぬが……これが彼らの導きとなることを期待しておくとしよう―――」
3人の答えを聞いたヴァンダイク学院長は重々しい様子を纏って呟いた。
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