英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第7話
~サントクロワの森~
「ん……。……もう朝かぁ……。………………………………。!!!」
森の中で目覚めたエステルは眠る前までの状況を思い出し、すぐに身を起こした。
「え……。ここ、どこ……?たしか敵が襲ってきて……」
周囲の風景に戸惑い、エステルは周囲を見渡した。そこで、アネラスとミントが倒れていた。
「アネラスさん!ミント!起きて、2人とも!」
倒れている2人を見て、焦ったエステルは2人の身体を揺すりながら声をかけた。
「うーん……えへへ……。うさぎさんとー……くまさんのぬいぐるみ……。……どっちにしようかなー……」
「わあ………お祖母ちゃんのオムレツにー………ママのオムレツだー…………どっちから食べようかな~………?」
アネラスとミントは幸せそうな表情で夢を見ていた。
「な、なんの夢を見ているんだか……。………ちなみにミント、どっちを先に食べるのかな………?って今はそれどころじゃないって!2人とも!大変なの、起きてってば!」
「ん~……?」
「ふわあああ~……………」
エステルに起こされた2人は目を覚ました。
「あれ、エステルちゃん……。あ、そっかぁ……もう朝練の時間なんだ……」
「あ、ママ…………今日の朝ご飯に卵はある?」
「ガクッ……。朝練や朝ご飯どころじゃないってば。お願いだから目を醒ましてよ~!」
2人の寝ぼけた言葉を聞いたエステルは脱力した後、叫んだ。
「ふぇ……?」
「ママ………?」
エステルの様子からただ事ではない事を感じた2人は体を起こして周囲の風景を見渡した。
「………………………………。……えーと。何がどうなっちゃってるの?もしかして昨日の襲撃って、ただの夢?」
「夢じゃないとミントは思うけど…………」
「ミントの言う通り、夢じゃないと思うわ。2人とも昨日の事、覚えているでしょう?」
「あー、なるほどねー。いやー、これはお姉さん、一本取られちゃったなぁ。」
「アネラスさん……。まだ寝ぼけてるでしょ。」
能天気に笑い飛ばすアネラスを見てエステルは呆れて溜息を吐いた。そしてエステル達は状況確認の相談を始めた。
「えっと、まずは状況を整理してみようか。昨夜、猟兵団らしき集団が宿舎を襲撃してきて……。クルツ先輩が手傷を負って、私たちが駆けつけた直後に窓から敵が侵入してきて……。その直後、私たちはすぐに眠らされてしまった。」
「多分、あの時の煙を吸ってしまったから、ミント達は眠っちゃったんだろうな………」
「そうね。問題は、どうしてこんな所で目を醒ましたかなんだけど……」
アネラスとミントの言葉に頷いたエステルは自分達が目覚めた場所に首を傾げた。
「うん、確かにおかしいよね。持ち物の類は無くなってみたいだけど……。訓練の時に使っていた武具を取られちゃったみたい。」
「あ……ミントの剣がない!傷をちょっとずつ回復してくれる便利な剣だったのに………」
アネラスの言葉を聞いたミントは持ち物を探り、自分の武器である『アーナトス』がない事に気付いた。
「あ、あたしもだ。あの棒、リフィアが用意してくれた特注品だったのに…………っていうことは、あたしたちをこの場所に運んできたのって……襲撃してきた猟兵団?」
「うん……。そう考えるのが自然だけど……。ただ、私たちを拘束しないで放置した理由が分からないんだよね。」
「なんでミント達をどこかに閉じ込めていないんだろう?」
エステルの推測に頷いたアネラスは自分達を拘束しなかった事に首を傾げ、ミントも同じように頷いた。
「気絶したあたしたちをここに運んで武装解除した後……。何らかのアクシデントが起きて慌てて別の場所に移動したとか?」
「なるほど。それはイイ線行ってるかも。そうなると、この場所に長居をしていたら危険みたいね。エステルちゃん、地図は持ってる?」
「あ、うん。荷物は取られてないから……。……あったあった。」
アネラスの言葉に頷いたエステルはル=ロックルの地図を広げた。
「うん、やっぱりそうだ。ここは昨日訓練で使った『サントクロワの森』だと思う。」
「ということは……。当面の目的は、森を脱出して宿舎の様子を確かめるくらい?」
「後は奪われたミント達の武器を取り返さなくちゃね。ミント達が今持っている武器、練習用だからそんなに攻撃力ないし………」
アネラスの言葉を聞き、エステルとミントは当面の目的を確認した。
「そうね。武具を取り戻せるか微妙だけど、探したほうがいいだろうしね。それじゃあ、出発しようか。敵が近くにいるかもしれないし、慎重に行動した方がいいね。」
「うん、わかった。」
「はーい!」
そして3人は森を探索しながら出口に向かった。森を探索した際、以外な事に奪われた武具がところどころ隠されており、エステル達は自分達の武具を取り戻した。
~サントクロワの森・出口付近~
「アネラスさん、ミント!あそこが出口みたい!」
エステルが出口を見つけ、2人に言った。
「ふ~……。ようやく一息付けるねぇ。」
「やっと森を抜けられるね………」
出口を見つけ、アネラスとミントが安堵の溜息を吐いたその時
「あらあら……。ちょっと目を離したスキに逃げ出すなんて悪い子たちね。」
謎の声が聞こえた後、エステル達に銃弾が飛んできた!
「きゃ……!」
「わっ………!」
「くうっ……!」
いきなり飛んできた銃弾に驚いた3人はその場で伏せた。
「ふふ……。あたしの狩り場にようこそ。」
そして3人の目の前に銃を構えた女の声をした猟兵が現れた。
「お、女の人!?」
「えっ!?」
「エステルちゃん、ミントちゃん、気を付けて!この人……かなり強いよ!」
「あら……。それを見抜く力はあるのね。それに、あのガスを食らってもう目が醒めたのは驚きだわ。さすがは遊撃士。体力だけは無駄にあるみたいね。」
アネラスが自分の実力を見抜いた事と、エステル達がもう目覚めた事に猟兵は呆れ半分で感心していた。
「あ、あんたたち!いったい何が目的なの!?どうして訓練場を襲ったのよ!?」
「ふふ……。答える義理はないわね。あなたたちに選べるのは2つ。大人しく降伏するか、このままあたしに狩られるかよ。」
エステルの叫びを猟兵は不敵に笑いながら言った。
「くっ……。(回収した装備で何とか戦える……!?)」
エステルは今の自分達ならなんとか戦えると思い、アネラスとミントに声をかけた。
「アネラスさん!ミント!」
「「うんっ!」」
そして3人は取り戻した武器を構えた!
「ふふ……。いいわ、仔猫ちゃんたち。存分に狩らせてもらうわよ!」
そしてエステル達は猟兵との戦闘を開始した!
「ほらほら!」
「くっ………!」
「わっと!」
「くうっ……!」
猟兵の銃捌きにエステル達は近付く事ができず、防戦一方だった。
「くっ……なら!」
アネラスは近付いての攻撃からアーツによる遠距離での攻撃に切り替えるためにオーブメントを駆動させたが
「させないよ!」
「あうっ!?」
猟兵の妨害攻撃によって駆動は中断された上、ダメージを受けた。
「あったれ~………!ストーンフォール!!」
そこにミントの魔術が発動し、複数の岩が猟兵の頭上から落ちて来た!
「何!?」
自分に落ちて来る魔術に気付いた猟兵は驚いた後、回避に専念した。
「大丈夫?アネラスさん。………闇の息吹!!」
そしてエステルは猟兵が回避に専念している隙を狙って、アネラスに駆け寄って治癒魔術を施した。
「ありがとう、エステルちゃん!よ~し、今度こそ!」
エステルにお礼を言ったアネラスは再びオーブメントの駆動を始めた。
「好きにはさせな……」
「やっ!」
「!ぐっ!?」
アネラスの行動を見て、また妨害しようとした猟兵だったがエステルが放ったクラフト――捻糸棍を受けてしまい、のけ反った!そしてアネラスのアーツが発動した!
「やあっ!ソウルブラ―!!」
「ガッ!?くっ………」
アネラスのアーツ――ソウルブラ―を受けた猟兵はソウルブラ―の追加効果によって弱い気絶に陥り、すぐに攻撃にうつれなかった。
「燃えちゃえ~!ファイアシュート!!」
「行け!火弾!!」
さらに畳みかけるようにミントとエステルの魔術が猟兵を襲った!
「グア!?熱……!」
火の魔術を受けた猟兵は火の熱さに苦悶の声をあげた。そしてそこにアネラスが集中して剣に闘気を集めていた!
「はぁぁぁぁ……………!」
「!!チッ……!」
アネラスの行動を見て、猟兵は舌打ちをした後、銃を放って中断させようとしたが
「貫いちゃえ~!アイスニードル!!」
「!くっ!?」
ミントが放った魔術によっていきなり足元から氷の刃が飛び出たので、驚いた猟兵はアネラスに攻撃するのをやめて回避したが
「行くわよ~………!紅燐撃!!」
「ガッ!?」
エステルが放ったクラフトが命中し、ダメージを受けた!
「せいっ!」
「グアアア!?やるじゃないかい………」
そこにアネラスのSクラフト――光破斬が命中し、猟兵は戦闘不能になった!
「クッ……。少し甘く見ていたか……」
戦闘不能になり、地面に跪いている猟兵は舌打ちをした。
「はあはあ……。遊撃士を甘く見ないでよね!」
「ミント達は今まで厳しい戦いをして来たんだから!」
「小娘3人と侮ったのが運の尽きだったみたいだね!」
「フフ、威勢のいい仔猫ちゃんたちだこと……」
3人の威勢のいい言葉を聞いた猟兵は不敵に笑った後、立ち上がって発煙筒を投げた。
「またっ……」
「エステルちゃん、ミントちゃん、息を止めて!」
「うん!」
発煙筒によって辺りは煙だらけになり、何も見えなくなった。そして煙の中から猟兵の声が聞こえて来た。
「すでに方術使いは捕まえた。仔猫ちゃんたちの味方はいない。あきらめて投降することね……」
そして煙が消えた頃には猟兵の姿は消えていた。
「あ!いない!」
「逃げられたか……。アネラスさん。深追いしない方がいいよね?」
ミントは猟兵がいなくなった事に驚き、猟兵を捕まえられなかったエステルは悔しさの表情で溜息を吐いた後、アネラスに確認した。
「そうだね……。待ち伏せされる危険もあるし。ねえ、エステルちゃん、ミントちゃん。今の人が言ってた『方術使いは捕まえた』って……」
「あ……。うん……クルツさんのことだと思う。」
「クルツさん、あの人達に捕まったみたいだね…………」
「そっか……。………………………………」
エステルとミントの答えを聞いたアネラスは表情を曇らせた。
「だ、大丈夫だってば!仮に捕まったとしてもクルツさんなら無事だって!それに……こういう時こそ今までの訓練が活かせると思う。」
「そうだよ!なんたってお祖父ちゃんの次に強いって言われている人なんだから!」
表情を曇らせているアネラスを見てエステルとミントは励ました。
「あ……。非常時の行動、安全の確保、そしてカウンターテロ行動……。うん……確かにそうかも!教えてもらったことを活かしてクルツ先輩を助けなくっちゃ!」
エステルの言葉からある事をすべきと思いだしたアネラスは表情を凛とさせて言った。
「うんうん、その意気!ね、アネラスさん、ミント。とりあえず宿舎に戻らない?敵に占領されたままかどうか確かめた方がいいと思うし。」
「うん、そうだね。それじゃあ、出発しようか。」
「はーい!」
そしてエステル達は森を抜けて警戒しながら宿舎に向かった………………
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