英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第102話(SC篇終了)
~グロリアス・聖堂~
「ハア……まさか最後の最後であんなオチになるなんてね……何としても必ずバルバトス・ゲーティアから”輝く環”を取り戻さないと……ん?」
聖堂に戻ったカンパネルラは疲れた表情で溜息を吐いたが継続的に揺れ続けている大きな揺れに気づいて眉を顰めた。
「一体何が起こっているんだ……?え―――――」
グロリアス内の異変を調べる為にモニターでグロリアスの状況を調べ始めたカンパネルラはモニターに移る信じられない光景を見ると呆けた。
「ギャアアアアアアッ!?…………」
「ヒィィィッ!?ま、また爆発したぞ……!」
「クソッ、一体いつ、誰がこの艦内に俺達に悟られずに爆弾を仕掛けたんだ……!?」
慌てた様子でどこかに向かっている最中に突然起こった爆発に巻き込まれて絶命した強化猟兵を見た他の強化猟兵達は悲鳴を上げたり混乱していた。
~機関室~
「グアアアアアアッ!?」
「怯むな―――ッ!何としても消火しろ――――ッ!」
「応援をもっと呼べ―――ッ!!」
グロリアスのエンジンがある機関室は火の海と化し、炎に包まれているエンジンは何度も爆発を起こして消火活動を行っている強化猟兵達を絶命させたり、重傷を負わせていたりした。
~格納庫・赤の飛行艇内~
「クッ、カンパネルラ様はまだ見つからないのか!?」
「ブルブラン様の命令もあるからカンパネルラ様が見つからない限り、俺達は脱出もできないぞ!?」
「ううっ……ど、どうしてこんなことになったんだ~~~~!?」
脱出の為に格納庫にある飛行艇に待機している強化猟兵達が慌てている中、ギルバートは頭を抱えて悲鳴を上げた。
~聖堂~
「な、な、な……一体何が起こってこんな事になっているんだい!?」
「―――ようやく戻って来たか。」
モニターでグロリアス内の惨状を見て我に返ったカンパネルラが混乱していたその時ブルブランが現れた。
「”怪盗紳士”………一体何が起こったんだい!?」
「すまないが、私もわからない。突然大きな揺れがして一体何があったのかと思って艦内に入ったらこの有様になっていた。―――加えて妨害電波のようなものが艦内の至る所から発信されているようで操縦にも支障をきたしている上、エンジンも何者かが設置した爆薬によって全てやられたようでね……モニターに写っている通り機関室は火の海だ。」
「な――――――い、一体誰がそんな事を……!ヨシュアが以前仕掛けた艦内の仕掛けは全て解除したはずなのに……!」
ブルブランの口から出た驚愕の事実にカンパネルラは絶句した後信じられない表情で声を上げた。
「君の気持も理解できるが、今はそんな事を考えている時間はない。――――脱出用の飛行艇を既に確保させてある。急いで艦内から脱出しなければ、我々も浮遊都市と共にヴァレリア湖の藻屑と化するグロリアスの運命を共にしなければならないぞ?」
「……わかった。ハア……………”盟主”達になんて報告すればいいんだ?」
ブルブランの警告に頷いて疲れた表情で溜息を吐いたカンパネルラはブルブランと共にその場から消え、そしてギルバート達が確保した脱出艇を使ってグロリアスから脱出した。その後グロリアスは浮遊都市の崩壊に巻き込まれて破壊され、飛行艇が全て脱出した為脱出ができなかった多くの強化猟兵達は破壊されたグロリアスと運命を共にした。
こうしてエステル達はリベールの異変を食い止める事に成功し、更にレンと銀の暗躍によってグロリアスが爆破されて浮遊都市と共にヴァレリア湖の藻屑となり、結社は”グロリアス”を失うという想定外の甚大な損害を被ってしまった。そしてエステルを含めた仲間達はそれぞれの新たな道へと歩み始めた。
~数ヶ月後・ハーメル村~
リベールの異変より数ヶ月後、エステルとヨシュアはハーメル村のカリンの墓碑を訪ねていた。
「……姉さん、ただいま。」
エステルの隣にいたヨシュアは花束を墓碑に置いて黙祷した後、エステルも続くように黙祷した。
「あのさ、ヨシュア。」
「何、エステル?」
黙祷が終わったエステルに声をかけられたヨシュアは尋ね返した。
「何でカリンさんのお墓参りをしているの?」
「何でって………ここに姉さんが眠っていたのは違いないだろう?」
エステルに訊ねられたヨシュアは不思議そうな表情で答えた。
「あたしが言いたいのはそういう事じゃなくて……―――カリンさん、イオンさんのお陰で生き返って今も元気に生きているじゃない!しかもイオンさん達の話だと、ここに埋められていたカリンさんの遺体も掘り返した後イオンさんがアーティファクトの力で元通りにしてカリンさんを甦らせたんだから、遺体も無いじゃない!」
「ア、アハハ………」
ヨシュアの疑問に答えるかのようにエステルはジト目になってレーヴェと共に自分達を見守っているヨシュアと同じ黒髪と琥珀の瞳を持つ女性――――シスター服ではなくハーメルに住んでいた頃の私服を身に纏っているカリンを指差し、エステルの指摘にカリンは苦笑していた。
「………姉さんの”死”に囚われないという”けじめ”の為にもどうしても最後に一度だけよっておきたかったんだ。」
「ヨシュア……」
「……………」
ヨシュアの真意を知ったカリンとレーヴェは静かにヨシュアを見つめた。
「えっと………改めて言うのも変だけど、あたし、エステル。エステル・ブライトっていいます。弟さんの家族で、姉弟で……一応恋人って事になるのかなあ?」
「心外だな……一応なんてつけないでよ。」
恥ずかしそうに自己紹介をするエステルにヨシュアはジト目で指摘した。
「で、でも……まだ慣れないっていうか……その……気恥ずかしっていうか………」
「まったくもう………ま、そういう所もエステルらしいけどね。」
「むっ………なによ。一人で余裕ぶっちゃってさ。そう言うヨシュアだって二人っきりになったら………って、す、すみません。挨拶をしてる途中で……」
「クスクス、別にそんなに緊張しなくてもいいですよ。ステラだった時にヴァレリア湖でエステルさんに伝えたようにエステルさんはヨシュアには勿体ないくらい、素敵な女性ですから大切な弟の恋人になってくれて、とても嬉しいですよ。」
ヨシュアに指摘した後緊張した様子で自分を見つめるエステルはカリンは微笑ましく見守りながら答えた。
「えへへ………そう言えばずっと気になっていたんだけど、一体どうやって”ステラ・プレイス”って言う偽名を思いついたの?イオンさん達の話だと”ステラ・プレイス”はカリンさんが考えた名前だって言っていたけど……」
「―――”星の在り処”。それが”ステラ・プレイス”に秘められている意味だ。」
エステルの疑問を聞いたレーヴェは静かな笑みを浮かべて答えた。
「へっ!?そ、そうだったの!?」
「うん。”ステラ”は”星”を意味し、”プレイス”は”場所”等を意味する言葉……その二つを組み合わせれば”星の在り処”という意味になるんだ。」
「そうだったんだ………」
「フッ、ステラ・プレイスは”星の在り処”を得意としているカリンのもう一つの名として相応しかったな。」
「む。”星の在り処”だけを得意としている訳じゃないわよ?二人がいつもその曲を要求するから、吹いていただけなんだからね。」
ヨシュアの説明にエステルが呆けている中、静かな笑みを浮かべるレーヴェの指摘にカリンはジト目になって答えた後気を取り直してヨシュアにある事を訊ねた。
「ねえ、ヨシュア。ちなみにエステルさんのどんな所を好きになったのかしら?」
「ちょ、ちょっとカリンさん………!」
「エステルを好きになったのは色々あるけど………一番はいつも明るく、前向きでお日様みたいに輝いてて……。そんな所が好きになったんだ。」
「!!」
ヨシュアの惚気と言ってもおかしくない言葉を聞いたエステルは顔を赤らめて、恥ずかしさのあまり背を向けた。
「ま、まったくもう……。よくそんな恥ずかしい言葉をシレッと口にできるわね……」
「あれ、嬉しくない?」
「嬉しいわよ!わ、悪かったわね!」
「怒られても……」
「クスクス………」
「フッ…………」
エステルとヨシュアの痴話喧嘩にカリンとレーヴェはそれぞれ微笑ましく見守っていた。
「あ、そうだ………ここで姉さんに返す物があったんだ。」
その時カリンに返す物がある事を思い出したヨシュアは懐からある物を取り出そうとし
「私に返す物?一体、何かしら?」
「…………それは勿論、これに決まっているよ。」
不思議そうな表情で首を傾げているカリンに懐から取り出したエステルから返してもらったヨシュアにとって亡くなったカリンの形見であったハーモニカを手渡した。
「え………これは………」
「そのハーモニカは………」
「あ……それってヨシュアの………ううん、カリンさんの遺品の………」
「姉さんが逝ったあの時、手渡されたハーモニカ………ずっとそれを姉さんの代わりとして持っていたけど、姉さんが生きている以上それは僕が持つ物じゃないよ………それにやっぱりそのハーモニカは姉さんが持つべき物だもの。」
「ヨシュア…………ありがとう…………」
ヨシュアの話を聞いたカリンは優し気な微笑みを浮かべてハーモニカを両手で大事そうに包み込んだ。
「……そうだ!ねえねえ、カリンさん!せっかくだし、カリンさんのハーモニカで”星の在り処”をあたしにも聞かせてよ!ヨシュアがカリンさんがそのハーモニカで奏でる”星の在り処”の事をいつも口にしていたから、あたしもカリンさんがそのハーモニカで奏でる”星の在り処”がどんなのかずっと気になっていたんだ!」
「ちょっと、エステル……僕はそんな頻繁に姉さんのハーモニカの事を話した覚えはないけど?」
「フフ………―――わかりました。エステルさんには色々とお世話になりましたから、私のハーモニカでよければお安い御用です。」
「やった♪」
「フッ、久しぶりにカリンの”アレ”が聴けるな………」
カリンが自分の要望に応じた事にエステルが嬉しがっている中、レーヴェは静かな笑みを浮かべた。
「ちなみに確認しておきますけど、本当に”星の在り処”でいいんですか、エステルさん。他の曲も吹けますが………」
「うん!他の曲なんていらないわ!」
「だって姉さんには………」
「俺達が好きなあの曲………”星の在り処”が一番似合っているからな。」
「…………もうっ……………」
他の曲を奏でる必要があるかどうかエステルに確認したカリンだったが、3人とも自分にとって想い出深い曲である”星の在り処”のみを奏でて欲しい事を答えると恥ずかしそうに笑った後、ハーモニカで優しげな微笑みを浮かべながら”星の在り処”を吹き始めた。
~~~~~~~~~~~~♪
その後、エステルとヨシュアはリベールに戻るカリンとレーヴェに見送られながら道を歩いていた。
「………ねえ、本当にいいの?僕に付き合う形で本当にリベールから離れても………」
エステルと共に歩いていたヨシュアだったがふと立ち止まって複雑そうな表情でエステルに問いかけた。
「…………………」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルは立ち止まって、呆けた表情でヨシュアを見つめた。
「”結社”時代の償いのため、大陸各地を回るのは僕の問題だ。レーヴェに追いつくため、もっと強くなりたいっていうのも。君を巻き込んでいいのか正直……まだ迷っているんだ。」
「まったくもう………肝心なところで抜けているんだから。」
「え………」
呆れた表情で肩を落としているエステルの答えを聞いたヨシュアは呆けた表情でエステルを見つめた。
「レグナートも言ってたけどこれから先、いろいろなことがこの世界で起こるかもしれない。また、”身喰らう蛇”が何をしでかすかわからない。そのためにも、あたしは父さん以上に強くなっておきたい。あたしにとってはその修行の旅でもあるんだから。」
「父さん以上って………また大きく出たね。」
エステルの目標の高さを知ったヨシュアは苦笑しながらエステルを見つめた。
「どうせなら目標は大きくよ。レーヴェとカリンさんの約束もあるし、ユウナがどうしているのか気になるし。見たことのない土地を旅するのもすごく楽しみだし………それに………」
苦笑しているヨシュアにエステルは胸を張って答えた後、ヨシュアの手を握った。
「エ、エステル?」
「そもそもあたしとヨシュアが一緒にいるのに理由なんて必要?」
「あ…………。…………………うん………そうだね。そんなもの………必要ないかな。」
「でしょ?ほんとにヨシュアってば肝心なところで抜けているんだから。」
「はは………本当にそうだな。」
エステルの指摘に反論が出なかったヨシュアは苦笑しながら同意した後決意の表情でエステルを見つめて答えた。
「――行こう、エステル。道はどこに通じているのか今はまだわからないけど………きっとその先に何か見えてくると思うから。」
「うん………!あたし達のペースで一歩一歩、歩いて行こうね!」
そしてエステル達は新たなる道を進み始めた―――――
――――リベル=アーク崩壊より半年後、リベル=アークよりある光の欠片が零れ落ちる―――
―――光の欠片はさまざまな出会いや奇跡を起こす―――
――――ゼムリア大陸で奇蹟の復活を果たし、無知によって数え切れない多くの業を背負い、その業による罪を償う為に生き続ける”聖なる焔の光”は2度と会う事はないと思っていたかつての仲間達と……そしてかつての自分から変わった自分自身を見守り続けると約束した女性とも再会する―――――――
―――――かつての仲間達と、心の奥底では秘めたる思いがあった自分を見守り続ける女性と再会した”聖なる焔の光”は何を思うか………愛する”聖なる焔の光”との再会を心から望んでいた最後のユリアの末裔の選択とは――――――
――――光の欠片は様々な世界の人物達を巻き込んで新たなる冒険への扉を開く――――
――――”太陽の娘”、”聖なる焔の光”、”光の極光剣士”、”勇焔の剣士”、”聖女の英雄”、”瞬光の守護騎士”、”正義の継承者”………仲間達を導き、故郷を……世界を救った6人の英雄達と次なる舞台で新たなる”軌跡”を描く英雄が邂逅する時は近い―――
語り尽くせぬ幾多の思いが次なる舞台へと繋ぐ新たな”軌跡”を描き出す………!
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