英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第121話
~王都グランセル 東街区・夕方~
一方エステルはヨシュアの後ろ姿を見て走って、ヨシュアの近くに着いた後声をかけた。
「ごめん、遅くなっちゃって!ものすごく混んでてさ~。ようやくゲットできたのよ。」
「そっか、ご苦労さま。ありがたくご馳走になるよ。」
ヨシュアはエステルにワイスマンが去った後した、自分の決意がわからないよう、いつもの様子で答えて両手に持っているアイスの片方をエステルから受け取った。
「……うん……。えっと、さっきの事だけど……」
「ああ、さっきはゴメン。紛らわしい言い方しちゃって。確かにあれじゃあ出来の悪い告白みたいだよね。」
「え……うん……。出来が悪いってことはないけど……」
ヨシュアの軽い謝罪にエステルはどもりながら答えた。
「まあ、考えてみればそう結論を急ぐこともないよね。正遊撃士になったからといって別の仕事についてもいいわけだし。ここはお互い、将来についてじっくり考えるべきかもしれないな。」
「た、確かに……。(結婚なんかしちゃったら子育てなんかもしなくちゃいけないし……。……だから!先走りすぎだっての、あたし!)」
ヨシュアの『将来』という言葉に反応したエステルは色々想像してしまい、心の中で想像してしまった自分を突っ込んだ。
「さてと、そろそろリフィア達が乗る飛行船の時間だし、食べながら空港に行こうか。」
「………………………………。……ヨシュア?」
笑顔で空港へ行く事を提案したヨシュアの雰囲気に違和感を感じたエステルは真剣な表情で呟いたが
「どうしたの、エステル。将来についての相談があるとか?」
「ち、違うってば!さっさと空港に行きましょ!」
ヨシュアの言葉に気が散ってしまい、ヨシュアに雰囲気がおかしいことを尋ねるのを忘れいっしょに空港へ向かった。
((……………………))
(どうしたの、2人とも?)
(何かあったんですか?)
一方エステルの身体の中で成り行きを見守っていたサエラブやニルは厳しい表情でヨシュアを見て、その様子を不思議に思ったパズモとテトリは話しかけた。
(………いや、気にするな。我の思い過ごしかもしれん………)
(ええ、ニル達の杞憂かもしれないから、そんなに気にしないで。(……ただの思い過ごしだといいんだけど………))
2人に尋ねられたサエラブは気にする必要はないという事を言い、ニルも同じように答えた後、ヨシュアを見て考えていた。
~グランセル国際空港・夕方~
エステル達は今までの旅の仲間であったリフィア達やリスティ、カーリアン、ティア、チキの見送りに来た。
「さて………と。今まで世話になったな。エステル、ヨシュア。」
「エステル達と旅をして、楽しかったよ。……ありがとう。」
「今までありがとうございました。」
「ううん。こっちこそ、今までありがとう!……それと剣の修復、よろしくね!」
「うむ!」
口々にお礼を言うリフィア達にエステルもお礼を言った後、リフィアにテレサから貰った折れた剣を渡した。
「リフィア達のお陰で助かった事もあったから、お互い様だよ。今まで本当にありがとう。」
ヨシュアもお礼を言い、エステルとヨシュアはそれぞれ順番にリフィア達と握手をした。
「そう言えば……大将軍さんがいないけど、どこに行ったの?武器を届けに来てくれた事とかでお礼を言おうと思っていたんだけど……」
エステルはリフィア達を見て、ファーミシルスがいない事に気付き尋ねた。
「あいつならアリシア女王達に挨拶した後、さっさと大使館に帰ったわ。ホント、相変わらず冷たい女よ。」
カーリアンは嫌そうな表情をして答えた。
「そうなんだ………」
「もしよろしければ、エステルさんがお礼を言った事を伝えておきましょうか?」
「ううん………お母さんの事でもお礼を言いたいし、今度会った時にお礼を言うわ!」
ティアの申し出をエステルは首を横に振って答えた。
「ツーヤちゃん……」
「ミントちゃん……」
一方ミントとツーヤはお互い名残惜しそうな表情で、お互いの両手を握って見つめていた。
「ミント……気持ちはわかるけど………」
「……うん、わかっている!」
エステルに言われたミントは笑顔になった。
「ツーヤちゃん、離れていてもミント達はこれからも友達だよ!」
「うん……!ずっと………とも……だち……だよ……!グス……」
ミントの言葉にツーヤは泣くのを必死に我慢して、涙を流しながら笑顔を見せた。
「もう……ツーヤちゃんったら、泣いたらダメ……だよ………ヒック………笑って……お別れ……しよう……?」
一方ミントも笑顔だったが、涙をポロポロと流し始めた。
「そう……だね……………」
ミントの言葉に頷いたツーヤは手で無理やり涙を拭った後、笑顔を見せた。また、ミントも同じように涙を拭って、笑顔を見せた。
「今度会うときまでには、あたし、必ずご主人様の立派な”パートナー”になる!だから、ミントちゃんも頑張って!」
「うん!」
そして2人はお互いの手を放して、それぞれのパートナーの傍に行った。
ロレント方面行き定期飛行船、まもなく離陸します。ご利用の方はお急ぎください。
「時間だ。みな行くぞ。……またな、3人共。再会の時を楽しみにしているぞ。」
定期船出発の放送を聞いたリフィアはプリネ達に飛行船に乗るよう促した。
「ん。……3人共、またね。」
「じゃね♪今度会う時はもっと強くなっているのを楽しみにしているわ♪」
「みなさん、怪我や病気には気をつけて下さいね。」
「いつか……こちらにも……私の……店を出しますので……よろしく……お願い……します……みなさんなら……お安く……お売りします……」
「またいつか、会いましょうです~。」
「私達は大使館に住んでいるので、いつでも遊びに来て下さい。お父様共々歓迎します。」
リフィア達に促されたエヴリーヌ達はそれぞれ別れの言葉をエステル達にかけた。
「みんな!いつかまた会おうね!」
「お元気で!」
そしてリフィア達は定期船に乗り込み、定期船は飛び立って行った。
「………………寂しくなるわね。」
「うん、そうだね。」
定期船を見送り呟いたエステルの言葉にヨシュアも頷いた。
「じゃあ、お城に行こう!ミント、楽しみだな!」
「ミント。」
「何、ママ?」
明るい表情のミントにエステルは優しそうな顔をして話しかけた。
「今は無理しなくていいのよ。ほら、お母さんが胸を貸してあげるから。」
「……………………」
エステルに言われたミントは笑顔を今にも泣きそうな顔をして、顔を隠すようにエステルに抱きついた。そしてやがて大声で泣き出した。
「…………うわああああああああん!!」
ミントが泣きだした同時期、ツーヤも定期船の中でプリネに抱きついて大声で泣いていた。その後エステル達は城に向かった。
~グランセル城客室・女性部屋・夜~
「うーん……」
夕食後、エステルは部屋の中を何度もうろうろした。
「何よ、エステル。さっきからそわそわして。なにか気になることでもあるの?」
シェラザードはエステルのおかしな態度を見て尋ねた。
「う、うん……ねえ、シェラ姉……。食事の時……ヨシュア、変じゃなかった?」
シェラザードの疑問にエステルは真剣な表情で聞き返した。
「???変なのはあんたの方でしょ。あの子はいつも通り落ち着いてたじゃないの。」
「それはそうなんだけど……」
言葉を返されたエステルは何かが脳裏の奥に引っ掛かってなんともいえない表情になった。
「ハッハーン。そっか、そういうことか。」
「な、なによいきなり……」
エステルの言葉を聞いてある事に思い当たり悪戯をしそうな表情をしたシェラザードに、エステルは何を考えているかわからず尋ねた。
「隠さない、隠さない♪そんな雰囲気はしたけど……。やっぱり自覚しちゃったわけね。ヨシュアのこと……好きになっちゃったんでしょ?」
「……うっ…………………………や、やっぱり分かっちゃう?」
シェラザードの言葉に顔を赤くしたエステルは聞き返した。
「悪いけど、丸わかりよ。でも、その様子じゃ、ヨシュアにはちゃんと伝わっていないみたいね。」
「うん……そうだと思う……。ヨシュアって、こういうこと昔からニブいところあったし……。ってあたしも人のこと言えないか。」
「ああもう、初々しいわねぇ。あの花よりダンゴだったエステルがよくぞここまで……。おねーさん、感激しちゃうわ!」
恋のカケラも感じさせなかった妹分の初恋にシェラザードは喜び、茶化した。
「……もうシェラ姉にはこんりんざい相談しない……」
茶化されたエステルはジト目でシェラザードを見て呟いた。その呟きを聞いてシェラザードは謝った後、真剣にエステルの相談に乗った。
「ウソウソ。からかって悪かったわ。でも、そうね……。考えてみれば、あんたたちは思春期に入る前に出会ったのよね。なかなか、お互いの気持ちに気付かないのは仕方ないか……」
「そ、そういうものなのかな……。あたしは、旅をしてる最中にちょっとしたきっかけで意識して……。い、いちど、気になりだしたらどんどん意識するようになって……。ああもう、こんなのあたしのキャラじゃないのに~!」
「ふふ……。咲かない蕾はないってね。女の子はみんなそういうものよ。」
「シェラ姉……」
自分の悩みに真剣に考えてくれるシェラザードにエステルは感激した。
「あまり軽率なことは言うつもりはないんだけど……。覚悟が決まってるなら打ち明けた方がいいんじゃない?ふんきりがつかないのならちょっと占ってあげよっか?」
「ううん……。実はもう、覚悟が決まってるの。話を聞いてもらう約束もしたし。」
不安を取り除くためにシェラザードは占いの提案をしたがエステルは首を横にふって断った。
「そっか……。よし、それでこそあたしの妹分!ああもう!おねーさん、泣けてくるわっ!」
「それはもうええっちゅーねん。でも、ありがと、シェラ姉。なんだか少し勇気が出てきたわ。あたし、ちょっとヨシュアのところに行ってくるね。」
またもや自分を茶化したシェラザードに突っ込んだエステルはヨシュアのところに行くことを言った後、シェラザードに励ましの言葉を受け部屋を飛び出した。
「……初恋かぁ……。うまく行くといいんだけどね……」
エステルが部屋を飛び出すのを見送った後、シェラザードは一枚のタロットカードを見て、複雑そうな表情で呟いた。
~グランセル城内・廊下~
「あ、ママ!」
ヨシュアを探して廊下を歩いていたエステルはミントに声をかけられた。
「ミント。どうしたの?」
「あのね。今日はティータちゃんの部屋で寝てもいいかな?ティータちゃんとも、明日にはお別れしないと駄目だし……」
「ええ、いいわよ。」
「ホント!?ありがとう、ママ!」
エステルの了承を聞いたミントは明るい表情をした。
「それよりヨシュアを見ていない?」
「ヨシュアさん?うん、会ったよ。……でもヨシュアさん、ミントに会った時、変な事を頼んだ……」
ミントが答えかけたその時
~~~~~♪
ハーモニカの聞き覚えのある音が聞こえて来た。
「わあ………綺麗な音…………」
「ヨシュアが吹いているみたいね。全く、相変わらずカッコつけなんだから……」
「え!?このハーモニカの音って、ヨシュアさんが吹いているんだ!」
エステルの呟きを聞いたミントは驚いた。
「うん。………そうだ、ミント。ひょっとしたらパパが出来るかもしれないわよ?」
「え……それ、本当!?」
「約束はできないけどね……でも、絶対ミントにヨシュアの事を”パパ”って言わせるように頑張るわ!」
「わあ………ママ、やっぱりヨシュアさんの事が好きだったんだ!」
エステルの答えを聞いたミントは顔を輝かせて言った。
「ミントにまでバレていたとはね……はぁ………あたしもつくづく、鈍感ね……じゃあ、行って来るわ、ミント!」
「うん!」
そしてエステルはハーモニカの音を頼りにヨシュアを探すためにどこかに行った。
「そういえば、ヨシュアさん。どうしてあんな事をミントに頼んだんだろう?『エステルをこれからもずっと支えてくれ』って…………」
エステルが去った後、ミントはヨシュアに頼まれた事を思い出して呟き、一人首を傾げていた…………………
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