女といえど
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第一章
女といえど
田所辰則は通っている高校で剣道部に所属している。段位は二段で練習試合や実際の試合でもかなりの勝率を誇っている。
長身でかつ動きは俊敏で体力もある、特にその長身を生かした面打ちが得意だ。
だから彼は自分の腕に自信がありだ、よく仲間達にこう言っていた。
「俺の腕もあるけれど剣道がな」
「一番強いか」
「そう言うんだな」
「ああ、やっぱり竹刀とか木刀持ってるからな」
武器があるからだとだ、彼は太い眉を持っている四角い顔で言うのだった。唇は厚く目は大きく丸い。髪は短く刈っている。
「それだけ強いだろ」
「まあ剣道初段で空手三段」
「それ位あるらしいな」
「確かに武器持ってるとな」
「それだけ強いな」
「剣道が一番強いだろ」
田所は実際にこう考えていた。
「やっぱりな」
「いや、何かな」
ここでだ、部員の一人が彼に言って来た。
「薙刀も強いらしいぞ」
「薙刀か?」
「ああ、そっちも相当にな」
「薙刀な」
薙刀と聞いてだ、田所は笑って言った。
「そんなに強いか?」
「らしいぜ」
「確かに間合いはあるな」
田所は薙刀を自分の頭の中で連想して言った。
「その分強いかもな、けれどな」
「それでもか」
「剣道の方が強いだろ」
そちらの方がというのだ。
「やっぱりな」
「そう言うんだな」
「ああ、こっちには色々な技があるからな」
だからだtいうのだ。
「それに足さばきだってあるからな」
「だからっていうんだな」
「剣道の方が強いだろ」
これが田所の持論であり実際に表に出した。
「薙刀よりもな」
「そうか、そう言うんだな」
「薙刀でも勝てるさ」
はっきりと言い切った。
そしてだ、彼はこうも言った。
「そもそもあれ女の子がするものだろ」
「薙刀はか」
「ああ、昔は弁慶とかもやってたけれどな」
それでもというのだ。
「やっぱりな」
「薙刀はか」
「女の子がするだろ、だったらな」
「その分か」
「体格とか運動神経とか違うからな」
「だからか」
「別に女の子が男より駄目とかじゃないけれどな」
それでもというのだ。
「やっぱりな」
「体格の分だけか」
「弱いだろ」
確信しての言葉だった。
「やっぱりな」
「だからか」
「ああ、剣道と薙刀じゃな」
「剣道の方が強いか」
「剣道より強い武道や格闘技はないさ」
田所は笑って言い切った、だが。
その話を聞いてだ、彼と同じ学校でしかも同じ学年であり薙刀部に所属している栗橋宮子が彼の席に来てだった。
むっとした顔だが口元に笑みを浮かべてだ、自分の席に座っている彼に声をかけた。
「薙刀について言ってくれたそうね」
「聞いたのか」
「今の返事は肯定ってことね」
切れ長の黒い目でだ、田所を見下ろしての言葉だ。
「つまりは」
「実際に言ったからな」
田所は臆面もなくだ、栗橋に言い返した。
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