英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第107話
~エルベ離宮・応接室~
「本当に……申しわけありませんでした。私が不甲斐なかったばかりにこのような苦労をおかけして……。出来ることなら、至らぬ我が身をこの手で引き裂いてやりたかった……」
「そんなこと言わないでください。お互い、こうして無事に再会できただけでも嬉しいです。助けにきてくれて……本当にありがとうございました。」
責任を感じているユリアにクロ―ゼは優しい微笑みで諭した。
「殿下……」
「えっと、感動してるところをちょっと悪いんですけど……。なんでジークがここにいるの?」
「ピュイ?」
エステルの疑問を聞いたジークは首を傾げた。
「はは、ジークは殿下の護衛であると同時に、親衛隊の伝令係でもあるんだ。君たちのホテルにも手紙を届かせただろう?」
「あ……あの夜の!」
「やっぱりそうだったんですか。それでは、女王陛下の依頼をユリアさんが知っていたのも……」
ユリアの説明を聞いたエステルは驚き、ヨシュアは納得した。
「ああ、女王宮の陛下から直接、ジークを介して教えていただいた。だが、殿下がいたあの広間にはジークの侵入できる窓が無くてね。連絡できなくて本当に心配したよ。」
「まったくもう……。驚かせてくれるじゃない。こら、ジーク。黙って手紙を置いていくなんてちょっと薄情じゃないの?」
「そうだよ?ミントやツーヤちゃんにも教えてくれないなんて酷いよ。」
「まあまあ、ミントちゃん。ジークは話せないんだから、しょうがないよ。」
エステルの言葉に続くようにミントは頬を弱冠膨らませてすね、その様子を見たツーヤが宥めた。
「ピュイ~……」
「ふふ……『ごめんよ』ですって。」
申し訳なさそうな鳴声をするジークの言葉をクロ―ゼは上品に笑いながら代わりに答えた。
「あはは、まあいいか。ところで、特務兵たちはもうほとんどやっつけたの?」
「離宮に詰めていた部隊はほとんど拘束することができた。しかし、グランセル城内にはまだ相当数が残っているはずだ。」
「各地の王国軍も、いまだに情報部のコントロール下にある。下手をしたら、反乱軍としてこの場所を鎮圧されかねないわ。」
エステルの疑問にユリアは答えた後、真剣な表情になった。そしてシェラザードもユリアの情報を続けるように説明した。
「へ~………それならまだまだ楽しめそうね♪」
「キャハッ♪次は何人と遊べるかな♪」
「全く、この戦闘狂共が…………」
ユリアやシェラザードの情報を聞き、好戦的な笑みを浮かべているカーリアンやエヴリーヌを見たリフィアは呆れて溜息を吐いた。
「うわ……。そこまでは考えてなかったわね。」
「そうですね……。クローゼだけでも、別の場所に避難させた方がいいかもしれません。」
「………………………………」
ヨシュアの提案を聞いたクロ―ゼは黙っていた。
「ならば、エレボニア帝国か共和国の大使館に保護を求めてはどうかな?大使館内は治外法権……。簡単に手出しはできないからね。」
「さっきの作戦で鹵獲した飛行艇で亡命する手もあるな。根本的な解決にはならんが、時間を稼ぐにはちょうどいい。」
「フム。なんならエヴリーヌに頼んで、メンフィル大使館に送ってやってもよいぞ?保護の件でのリウイへの口利きは余がしておこう。エヴリーヌ、よいな?」
「ん。別にいいよ。」
「そうだな……。どうお逃がしするべきか……」
オリビエやジン、リフィアの提案を聞いたユリアは考えた。
「………………………………。あの……みなさん。この状況で、私が遊撃士の皆さんに依頼をすることは可能でしょうか?」
そこに黙っていたクロ―ゼが意外な申し出をした。
「え……」
「人質救出のミッションは完了したから大丈夫だと思うよ。もちろん、依頼内容にもよるけどね。」
クロ―ゼの申し出にエステルは驚き、ヨシュアは頷いた後、依頼を受けれる事を言った。
「でしたら……無理を承知でお願いします。王城の解放と、陛下の救出を手伝っていただけないでしょうか?」
「で、殿下……」
クロ―ゼの依頼を聞いたユリアは驚いた。
「そっか……そうよね。今度は女王様を助けないと!」
「正直言って、その話にはなるんじゃないかと思ったぜ。だが、姫殿下……その依頼はかなりの難物だ。」
クロ―ゼの依頼内容を聞いたエステルは納得し、ジンは難しそうな表情をした。
「そうね……。ここにいる戦力を全員集めても正面から落とすのは不可能だわ。」
「あら。この私がいるのに、そんな事を言うのかしら?」
「余達を忘れるなよ、シェラザード?」
シェラザードの言葉を聞いたカーリアンやリフィアは意外そうな表情をして尋ねた。
「そ、そういえばそうでしたね………リフィアさん達はともかく、カーリアン様。貴女もクロ―ディア姫の依頼を手伝ってくれるのですか?」
2人の言葉を聞いたシェラザードは戸惑いながら頷いた後、カーリアンを見て、恐る恐る尋ねた。
「ええ。リベール王家には結構世話になったから、リウイ達の代わりに手伝ってあげるわよ♪」
尋ねられたカーリアンはウインクをして答えた。
「正面を落とせたとしても、正面を落としている間に女王陛下をどこかに移動されると厄介ですね。あの特務艇を使えば可能性はあると思いますが……。ただ、よほど上手い仕掛けが必要になりそうですね。」
「……私に考えがあります。皆さん、これを見て頂けますか?」
ヨシュアの言葉を聞いたクロ―ゼは一枚の古い地図を出した。
「これって……どこの地図?」
「王都の地下水路の内部構造を記した古文書です。これに、王城地下に通じる隠し水路の存在が記されています。」
そしてエステル達はグランセル城解放と女王救出作戦の内容を話しあった。
「…………以上が作戦内容となります。みなさん、よろしくお願いします。」
作戦内容を話し終え、クロ―ゼはエステル達に頭を下げた。
「任せて!」
「了解。」
「ミントも頑張るね!頑張ろうね、ツーヤちゃん!」
「うん!」
その時、現在の状況を通信でリウイに報告しに行っていたプリネが部屋に戻って来た。
「………遅くなって申し訳ありません。それで、今後はどうするのですか?」
「うん。実は…………」
事情がわかっていないプリネにエステルが説明した。
「…………なるほど、わかりました。……そうだ、リフィアお姉様。例の物を渡す時間を早めるよう、お父様に頼んだそうですが……?」
「うむ。確かに言ったぞ。それがどうかしたか?」
「えっと………2人とも、何の話をしているの??」
プリネとリフィアの会話内容が理解できなかったエステルは尋ねた。
「それは秘密だ。まあ、その内わかる。」
「??」
リフィアの言葉を聞いたエステルは首を傾げた。
「それで、何か問題があったのか?」
「いえ。ただお父様の話ではファーミシルス様に届けさせると………」
「ほう?」
「げっ。何でファーミがこっちに来るのよ~………」
プリネの説明を聞いたリフィアは意外そうな顔をし、カーリアンは嫌そうな顔をして溜息を吐いた。
「あの……プリネさん。話の内容はよくわかりませんが、ファーミシルス大将軍も王都に来られるのですか?」
一方プリネ達の会話からファーミシルスがグランセルに来る事に驚いたクロ―ゼは尋ねた。
「はい。いつ頃に来るかは聞いていませんが、明日には来るそうです。」
「へ!?でも、今王都は封鎖されているんじゃ……」
プリネの説明を聞いたエステルは現在の王都の状況を思い出して、驚いた。
「まあ、正攻法では無理だな。……だが、ファーミシルスには翼がある。ここまで言えばわかるな?」
「まさか空を跳んで、関所を越えてくるのかい!?」
リフィアの説明を聞き、ファーミシルスの王都への潜入方法がわかったヨシュアは驚いた。
「ハハ。”闇夜の眷属”しかとれない方法だな。」
「ええ。……ファーミシルス大将軍まで来るなんて、思ってもいなかったわ。」
ジンの頷きに答えたシェラザードはファーミシルスが来る事に心強さを感じた。
(で、殿下………よろしいのでしょうか?)
他国の軍のトップであるファーミシルスが参戦するかもしれない事にユリアは驚いた後、クロ―ゼに小声で尋ねた。
(……恐らくメンフィルにも何か思惑があっての事かもしれませんが、せっかくのご好意ですし、今は一人でも多くの戦力が必要です。ここは素直に受けましょう。
……”百日戦役”の”ロレント返還”の件や今までの付き合いを考えれば、そんな無茶な要求はして来ないと思います。)
(し、しかし…………)
(……すみません、ユリアさん。私はどうしてもお祖母様を助けたいのです………)
(殿下…………)
申し訳なさそうにしているクロ―ゼを見て、ユリアは何も言えなくなった。そしてエステル達は見張りは親衛達達に任せて明日に備え、戦いで疲れた身体を休めた。
~グランセル城内~
「ど、どういう事ですの!?『エルベ離宮』との連絡が途絶えてしまっただなんて!」
一方その頃、カノーネはエルベ離宮と連絡できなかった事にうろたえ、ロランスを問いただしていた。
「親衛隊か遊撃士……。どちらかに落とされた可能性があると言うことかな。」
「ぬ、ぬけぬけと……。連中を指揮していたのは少尉、あなたでしょうに!」
冷静に答えるロランスをカノーネは睨んで責めた。
「これは面目ない。だが、済んでしまったことはとやかく言っても詮無きことだ。この上、陛下まで奪われぬよう城の守りを固めるべきだろうな。」
「い、言われなくてもわかっていますわ!」
ロランスの忠告を聞いたカノーネはロランスを睨んだ後、命令を待っている特務兵達に号令をかけた。
「城門を完全封鎖!誰が来ても入れないように!以後は、空からの襲撃にのみ備えることにしなさい!」
「了解しました!」
「それと、各地の部隊に連絡してエルベ離宮に向かわせること!名目は、王族を騙ったテロリスト集団の鎮圧です!」
「イエス・マム!」
特務兵達はカノーネに敬礼をした後、早速行動に移るためにどこかに行った。
「ふふ、見事なお手並みだ。」
「フン、当然でしょう。新参者のあなたとは違います。……閣下の留守はわたくしが絶対に守りますわ!」
ロランスの感心の言葉をカノーネは鼻をならして答えた後、決意の表情をした。
そして翌朝………!
ページ上へ戻る