英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第89話
~居住区画・空き家~
「―――そんなわけで俺たちは”山猫号”の修理をとっとと始めちまうつもりだ。幸い、材料は調達してあるから何とかなるとは思うんだが……」
「機体はともかく問題は例の『導力停止現象』だ。要するに、無理して飛んだとしても都市から離れた途端に墜落するんだろ?」
脱出が成功し、落ち着いた場所でエステル達と情報交換をドルンと共に行ったキールはエステル達に確認した。
「うーん……。『零力場発生器』の大型版がないとそうなっちゃうと思うわ。」
「アルセイユのラッセル博士に応援を頼んでおこうか?」
キールの質問にエステルは考え込みながら答え、ヨシュアは応援を申し出た。
「ま、都市の中なら導力通信も使えるみたいだから必要ならこちらから連絡するさ。それよりも、お前らの方はこのまま”輝く環”を探すのかよ?」
「うん、そのつもりだよ。」
「それがこの浮遊都市に来たあたしたちの本当の目的だし。」
「あ、そういえばそんな事も言ってたっけ……。宝探しとかじゃなかったんだ?」
「あのね……あんたたちと一緒にしないでよ。」
ジョゼットの呑気な推測を聞いたエステルはジト目でジョゼットに指摘した。するとその時ドルンと共に考え込んでいたキールが驚くべき提案をジョゼットにした。
「……だったら、ジョゼット。お前、このままヨシュアたちと一緒に行動したらどうだ?」
「えっ……!?」
「”山猫号”の修理は俺たちだけでも充分だからな。お前にはどちらかっていうと情報収集をしてもらいてぇのよ。」
「あ、なるほど……」
「確かにこうなった以上、アルセイユと山猫号の間の連絡役も必要になりそうだし……。いいかもしれないね。」
「うん、あたしも同感。”結社”に対抗するためには味方は一人でも多い方がいいしね。ジョゼットだったらサポート役としても信頼できるし、来てくれたら助かっちゃうわ。」
「………………………………」
いつも言い合いをしていた相手であるエステルが自分を高評価している事に驚いたジョゼットは呆けた表情でエステルを見つめた。
「あれ、どうしたの?」
「いや、その、何て言うか……」
エステルに訊ねられたジョゼットは答えを濁してヨシュアに小声で訊ねた。
(……ねえヨシュア。これって本気で言ってるわけ?)
(はは……そういう子だからね。)
(アタマ痛くなってきた……)
「な、なによ。その微妙に呆れた顔は?」
ヨシュアの話を聞いて呆れている表情をしているジョゼットに気づいたエステルはジョゼットを睨んだ。
「いや、微妙じゃなくて思いっきり呆れてるんだけど。」
「あ、あんですって~!?」
「ガッハッハッ。どうやら話はまとまったか。」
「それじゃあ俺たちは”山猫号”に戻るぜ。ジョゼット。くれぐれも気をつけろよ。」
「あ、うん……。兄貴たちも気を付けてよね。多分大丈夫だと思うけど、もしかしたら”結社”の”執行者”っていう連中が襲ってこないとも限らないし。」
「ガハハ、心配するなって!」
「ま、せいぜい気をつけるさ。」
その後探索を再開したエステル達は一旦アルセイユに戻ってメンバーを編成しなおして探索を再開した。
~公園区画”カルマーレ”~
「……意外と早かったわね?”グロリアス”への”仕込み”が終わるのは都市中央にある高い塔の攻略を開始する頃くらいかと思っていたけど。」
エステル達が探索を再開した頃、人気のない場所まで移動したレンは独り言を呟いた。
「フフ、お前達があの紅き戦艦の内部で派手に暴れてくれた事によって敵の目はお前達に集中したからな。お陰で”仕込み”の時間も当初予定していた時間を大幅に下回った。」
すると銀がレンの背後の空間から現れた!
「うふふ、ちなみにレンの”お手伝い”は役に立ったかしら?」
「クク、存分に活用させてもらった。機関部のエンジン全てにもお前に渡された遠隔操作でハッキングができる装置や爆薬が仕掛けてある。―――これでいつでもお前の思うがままに、あの紅き戦艦を海の藻屑と化させるという事だ。」
「ご苦労さま♪後はこの浮遊都市の件を解決して”結社”の撤退を確認した後、ママを護衛している”西風の旅団”の人達に護衛期間の終了をレンの代わりに伝えてくれれば、”今回の依頼”はそれで終了よ。」
「ほう?あの中央の塔の攻略には手を貸さなくてよいのか?」
レンの説明を聞き、浮遊都市の攻略に自分の手を借りさせる推測していたが、レンの答えが予想と違った事に若干驚いた銀は意外そうな様子でレンに訊ねた。
「そっちの方は貴方に手を貸してもらう程、戦力が不足していないから別に必要はないし、もし”結社”に貴方までエステル達と一緒にこの浮遊都市に来てエステル達に力を貸している事を知られたら、”グロリアス”を沈めたのがレン―――いえ、リベールの”報復”だと疑われて、リベール―――最悪は貴方を雇ったレン自身が”結社”に必要以上の恨みを買う事になるでしょう?それだけは可能な限り避けたいのよ。」
「クク、さすが遊撃士協会本部に手を回して私や”西風の旅団”を合法的に雇っただけあって、自身や周りの者達への配慮は徹底しているな。」
「うふふ、それ程でもないわよ♪―――それに貴方とはこれからも長く付き合っていきたいから、レンと貴方が繋がっている事は可能な限り誰にも知られたくないしね♪エステル達にも貴方とレンの繋がりは今回限りだと説明しておくつもりよ。」
「ほう……?それはつまり私と長期の契約を結びたいと言う事でいいのか?」
レンの話を聞き、レンが自分と長期の契約を結ぶつもりである事を悟った銀はレンに問いかけた。
「ええ。普段は他の人達からの依頼を請けてもらって構わないわ。レンが貴方の力が必要な時だけレンの依頼を優先してくれればいいし、勿論その度に”別口”として”報酬”を支払う上、万が一レンの依頼のせいで他の人の依頼が実行できなかった時は貴方が請けた他の人の依頼の2倍を賠償金として支払うわ。長期契約金はそうね……毎年10億ミラでどうかしら?」
「フム………悪くない話だが万が一私が請けた他の仕事でお前と敵対する場面になった場合はどうするつもりだ?」
「その時は互いに敵同士として振る舞っていいわよ。その方が”お互いの為”になるでしょう?」
「クク、敵になる可能性がある者と契約を結ぼうとはつくづく変わった娘だ。」
意味ありげな笑みを浮かべるレンに対し、銀は怪しげな笑みを浮かべていた。
「あら、そうかしら?貴方は活動をカルバードを主としていて、レンの活動はリベールが主なのだからそれぞれの仕事で敵対する可能性は低いでしょうし、そもそも貴方は誰にも気づかれないように仕事を終えているでしょうから、それも考えるとレンと敵対する可能性は非常に低いでしょう?」
「クク、一理あるな。…………―――よかろう。この浮遊都市の件が終わってから1ヵ月以内に先程お前が口にした年間の契約金である10億ミラをこの紙に書かれている方法で支払えば契約完了だ。」
レンの言葉に口元に笑みを浮かべて答えた銀は契約金を支払う特殊な方法が書いてある紙をレンに手渡し
「了解。―――それじゃあ、”今後も”よろしくね♪」
紙に書かれてある事を一瞬で暗記して紙を懐にしまったレンは小悪魔な笑みを浮かべて答えた。
こうして……レンは人知れず”銀”との長期に渡る契約を結んだ。一方探索を続けていたエステル達はついに浮遊都市の真ん中に位置し、とてつもなく高い塔でえある”中枢塔”に到着した後一旦アルセイユに戻って同行メンバーをルーク、クローゼ、オリビエ、レイスに編成し直し、装備等を整えた後”アクシスピラー”の攻略を開始した。
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