姉の結婚
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第三章
良は姉の幸せに乾杯した、そして家に帰ってだった。家に帰ると玄関まで迎えに来てくれた姉の静に言った。
静は細く黒い眉に丸い目、細面できめ細かい肌を持っている。鼻の高さは普通で唇は小さい。黒髪を少し波立たせて伸ばしている。背は一六〇程だ。胸があまりないがスタイルは脚が整っていて奇麗だ。
その今から寝ようというパジャマ姿の姉にだ、良は只今の挨拶をしてから尋ねた。
「待っていたんだ」
「少しね」
静は良に微笑んで答えた。
「もうそろそろって思ってたから」
「寝ててよかったのに」
「折角だから。じゃあお風呂入るわよね」
「置いてくれてたんだ、お風呂」
「ええ、帰って来るって連絡受けてたし」
それでというのだ。
「だからね」
「そうしてくれてたんだ」
「お風呂入りなさい」
優しい笑でだ、姉は弟に言った。
「これからね」
「うん、じゃあお風呂洗っておくよ」
「気を使わなくていいわよ」
「いいさ、それ位やるさ」
風呂に入った後の掃除はというのだ。
「姉ちゃんはもう寝なよ」
「そうしていいのね」
「ああ、後はさ」
「気を使わなくていいのよ」
「そういう訳じゃないさ」
良は姉に親しい笑みで返した。
「自分が最後に入るんだからさ」
「それでなのね」
「最後に洗うのは当然だろ」
「そう言うのね」
「もう遅いし」
「だから」
「寝なよ、もうすぐ大事な時なんだし」
結婚式のことだ、籍はその時に入れることになっている。
「それじゃあな」
「今日はもう寝て」
「休んでくれよ」
「わかったわ、じゃあね」
微笑んでだ、静は頷いてだった。
この日は寝た、そして良は風呂に入って実際に風呂を洗って寝た。そうして姉のことも気遣ったのだった。
そして結婚式の日だ、良は。
祝いの式に相応しいスーツを着てだ、にこにことしながらも今にも泣きそうな顔をしていた。その彼を見てだった。
親戚の面々はだ、彼に笑って言った。
「嬉しいのか?」
「それとも悲しいの?」
「静ちゃんが結婚して」
「どっちの気持ちなの?」
「嬉しいよ」
そちらだとだ、良はその顔で親戚に答えた。
「実際にね、ただね」
「それでもか」
「泣きそうになる」
「そうなのね」
「だって、姉ちゃんずっとね」
それこそというのだ。
「俺の為に頑張ってくれたんだから」
「姉弟二人きりでな」
「それで頑張ってきたのよね」
「それでか」
「余計に嬉しいのね」
「幸せになって欲しかったんだ」
心からの言葉だった、まさに。
「それでだからね」
「幸せになれるから」
「コーヒー相手の人も凄くいい人だし」
「だからか」
「嬉しくて仕方がないのね」
「それで泣きそうにもなっているんだな」
「そうだよ、本当に」
それこそと言うのだった。
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