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予言

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3部分:第三章


第三章

「けれど全部外れてるでしょ」
「そうだよな。じゃあ絶対に当たるんじゃないんだな」
「それどころか全然当たっていないじゃない」
 泰子はこのことをはっきりと指摘したのだった。
「昔の本に書いてあることって」
「何だよ、こんなもんだったのかよ」
 そのことがわかって拍子抜けしたような声をあげる実だった。
「全くよ」
「私も昨日笑ったわよ」
 今度は笑みを浮かべて話す泰子だった。
「もうね。あまりにも酷いから」
「よくこんなので本書けるよな」
「言った者勝ちってことじゃないの?」
 中学生にしては大人びた泰子の言葉だった。だがこの年頃の女の子の言葉だと考えれば相応ではあった。生意気な感じもしないわけではないが。
「こういうのって」
「本当にいい加減だな」
「そのいい加減な本を信じられる?」
 ここで実に対して問うてきた。
「あんた。そこんところどうなの?」
「いや」
 泰子のその問いには首を横に振る実だった。
「そんなわけねえだろ」
「じゃあ答えは出たわね」
「ああ」
 自分の持っている本のカバーをつまらなそうな目で見ていた。
「そうだな。全く、騙されたぜ」
「これからは予言は信じないわね」
「っていうか笑えるな」
 こう言うのだった。
「こうして読んでみるとな」
「そうね。確かに」
 今の実の言葉には素直に笑うことができた泰子だった。
「あまりにも滅茶苦茶だからね。言ってることが」
「何かよ。俺思ったんだけれどよ」
「何を?」
「いやさ、この本の書いてること適当にばらすだろ」
 こう泰子に言う。
「そうしてそっからつなぎ合わせたら意味わかるのかなってな」
「まあわからないでしょうね」
 泰子は彼のその考えを聞いてすぐにこう返した。
「ただでさえ滅茶苦茶な内容なのに」
「やっぱりそうなるか」
 泰子の言葉にまた納得した顔で頷いた。
「こんな内容じゃな」
「それでその本どうするの?」
「これか?」
「ええ。もう信じていないでしょ」
 またこのことを実に話す。しかし先程とはその言葉のニュアンスが変わってきていた。
「それだったら。捨てるの?」
「いや」
 だが実は康子のこの言葉に首を横に振るのだった。
「捨てはしないさ」
「勿体ないから?折角買ったから」
「面白いからだよ」
 笑っての言葉だった。その笑顔は泰子と同じものになっていた。
「こうしてみるとな。面白いよな」
「そうでしょ。それはね」
 伊達に彼女も夜遅くまで笑い転げたわけではなかった。このことはよくわかるのだった。
「まだ腹筋痛いし」
「そうだよな。じゃあこれからは」
「どうするの?」
「予言じゃなくてギャグだって思って読むことにするぜ」
 先程までのつまらなさそうな顔は消えていた。そのかわりに楽しむ笑みになっていた。
「思う存分な」
「そうね。そっちの方がね」
「面白いからな」
「じゃあ今度からはそうやって読むのね」
「怖がるより笑う方がいいしな」
 本の表紙を笑いながら見ている。
「そうするさ」
 言いながら本を開きだす実だった。そこには先程までの恐怖で震えるものはなかった。そして読むにつれ笑みを深めていくのだった。秘密がわかればどうということはないことであった。どれだけ恐ろしいことが書いてある本も。


予言   完


                 2008・11・15
 
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