英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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~武術大会・2回戦~中篇
~グランアリーナ~
「………特務兵の中でも選りすぐりの兵である事を、闇夜の眷属達に思い知らせてやれ。」
「「「ハッ!」」」
ロランスの言葉に特務兵達は威勢良く答えた。
「………仮面の男は私が抑えます。みなさんは予選通り基本、各個撃破で。ですが、誰かが窮地に陥っていたら援護を忘れぬよう、お願いします。」
「わかった!ボクに任せて!」
「了解………しました………」
「フフ…………誰に言っているのですか?私がいるのですから、敗北等ありえませんわ!」
プリネの作戦にペルルやマーリオンは頷き、フィニリィは胸を張って答えた。
「期待していますよ。………来ます!」
使い魔達の頼もしい言葉にプリネは微笑んだ後、自分達に攻撃を仕掛けてくる特務兵達に気付いて、真剣な表情でレイピアを構えた。
「えいっ!」
「させん!」
「水よ、行け………!」
「!!」
「行きなさい!………粒子弾!!」
「ハッ!」
ペルル達の攻撃を特務兵達はそれぞれ回避した。そしてそれぞれペルル達に向かって、攻撃を仕掛けた。
「「「行くぞ!!影縫い!!」」」
「っつ!」
「…………!」
「させませんわ!」
突進力を利用し、さまざまな状態異常を起こす特務兵達のクラフトをペルルは翼で、マーリオンは水の結界で、フィニリィは槍で防御した。
「援護します!……戦士の付術!!魔術師の付術!!」
ペルル達の後方にいたプリネは魔術でペルル達の能力を強化した。
「さて………お手並み拝見だ。銀の楔よ………我が敵を滅せよ!………シルバーソーン!!」
攻防を続けている特務兵とペルル達を見たロランスが放ったアーツはプリネを閉じ込めるかのように次々と上空から宝石のついた銀色の楔が降って来た。
「!!」
嫌な予感がしたプリネは急いでその場から離れ、銀色の楔の外に出た。するとプリネが楔の外に出ると同時に楔の宝石部分が光り、囲んでいる部分に怪しい紫色の光を放たれた。
「(あんなアーツ、あったかしら?………いけない!今は目の前の敵に集中すべきね!)烈輝の陣!!イオ=ルーン!!」
見覚えのないアーツに首を傾げたプリネだったが、戦闘中である事にすぐに気付き、魔術をロランスに放った!
「!!」
プリネが魔術を放った事に気付いたロランスは横に飛んで、プリネの魔術を回避した。
「…………行くぞ!」
そしてロランスは最初の標的をプリネにするかのように、プリネを襲った!
「せいっ!」
「ヤァッ!」
ロランスの剣での攻撃に対して、プリネはレイピアで対抗して、防御した。
「そこだっ!」
攻撃を防御されたロランスは一端下がってクラフト――零ストームをプリネに放った!
「フッ!」
しかしプリネは持ち前の身体能力を生かして、自分に襲いかかって来る衝撃波の竜巻を回避した。
「フェヒテンイング!!」
そして一瞬でロランスに詰め寄り、クラフトを放った!
「させん!」
しかしロランスは連続するプリネの攻撃を全て捌き切った。
(!この男………強い!!どうやらペルル達の援護をしながらの戦いは無理そうですね………)
クラフトが防御され、一端下がったプリネはロランスの強さに驚き、横目で特務兵達と戦っているペルル達を見て、援護はできない事を悟った。
「………さすが”剣皇”の娘。やはり最初から本気で行くべきだったな。大佐からは本気を出す事を止められていたが……今は特務兵の隊長ではなく一人の剣士として挑まさせてもらおう………行くぞ!」
「!!」
再び襲いかかって来るロランスを見て、プリネは気を引き締めた。
「「ハァァァァァ!!」」
キンキンキンキン!!ヒュッ!!キンキンキン!!ヒュッ!!
乱戦の中、常人には見えないロランスの剣とプリネのレイピアによる激しい剣撃や回避の攻防が続けられた。
「……プリネったら、本気を出していないのかな?ただの人間相手にあんなに手間取っているなんて。」
一方観客席でプリネとロランスの戦いを見ていたエヴリーヌはいまだに勝負がつかないことに首を傾げていた。
「がんばって~!プリネさん!!」
「ファイトですっ!!ご主人様っ!!」
ミントとツーヤは椅子から立ち上がって、大声でプリネ達を応援していた。
「………プリネの表情を見てみろ、エヴリーヌ。あれは本気を出している時の表情だ。……それにあのロランスという男、かなりの実力を持っておる。」
「………確かにそこそこの腕はあるようだけど、お兄ちゃんほどじゃないでしょう?”力”を解放すれば簡単に勝てると思うけど。」
リフィアのロランスに対する評価を聞いたエヴリーヌは少しの間、ロランスの動きを見て納得したが、プリネが”魔神”の力を解放すれば一瞬で勝負が決まるのに、それをしない事に首を傾げていた。
「恐らくだが、時間稼ぎをしながらその機会をどのタイミングで放つか考えているのだろう。”力”を放てば短期決戦で決めなければ、敗北は必須だからな。」
「ふ~ん………ま、プリネなら大丈夫だね。なんたってエヴリーヌ達が鍛えてあげたんだから。」
「うむ!妹を信じてやるのも姉の役目だぞ、エヴリーヌ。」
「ん。」
そしてリフィア達は激闘を続けているプリネ達の試合を再び、見始めた。
一方、特務兵達と戦っていたペルル達は決死の覚悟で襲いかかって来る特務兵達相手に多少手こずったが、対するペルル達はみなそれぞれディル・リフィーナの英傑達と共に歴史に語られる激しい戦いを生き抜いて来た精霊や使い魔。だんだんと特務兵達を押し始めて来た。
「超・ねこ、パ~ンチ!!」
「………貫け…………水刃!」
「ハァッ!」
ペルルは翼でクラフトを、マーリオンは魔力の水でできた刃を、フィニリィは槍による斬撃を地に這わせると共に雷を宿らせるクラフト――雷波走りを特務兵達に向けて放った!
「ぐっ!?」
「ギャアッ!?」
「ぐあっ!?」
いつもより激しい動きをしたため、体力が低下し、疲弊した特務兵達はペルル達のクラフトを避けれず、受けてしまい、悲鳴を上げた。
「さ~て!久しぶりに使っちゃうよ!……これで………どう♪」
「「「!!」」」
ペルルが放った魔術――淫魔の魅惑を受けてしまった特務兵達は正気を失くし、同士討ちを始めた。
「貴女、性魔術が使えたのですか。…………まあ、そのお気楽な性格は睡魔族とたいして変わりませんから、使えても可笑しくありませんわね。」
「ちょっと~!それ、褒めてるの!?」
フィニリィの言葉にペルルは怒って、フィニリィを睨んだ。
「あの………敵が混乱している今が………好機なのでは………」
「おっと、そうだね。速くやっつけて、プリネを援護しないと!」
「そうですわね。さっさと決めますわよ!」
マーリオンの言葉に頷いたペルルとフィニリィはそれぞれ攻撃の構えや魔術の詠唱を始めた。
「行っくよ………それぇっ!!」
「「「ぐぎゃっ!?」」」
体全体を回転させて突進するクラフト――”恐怖の逆ごろごろ”を受けた特務兵達は悲鳴をあげた。
「出でよ……荒ぶる水……!溺水……!」
「「「ガハッ!?」」」
そこにマーリオンの魔術が発動し、特務兵達の真上から滝のような大量の水が発生し、男を地面に叩きつけた!
「私の最高の魔術、ご覧あれ!……超越せし純粋よ、今ここに集い、我が仇名す愚か者達に滅びの鐘を奏でよっ!!…………ルン=アウエラ!!」
「「「ガァァァァァァ!!!???」」」
止めに放ったフィニリィが使える最強の魔術であり、純粋属性の中でも最高峰の一つに数えられる超越した爆発――ルン=アウエラはアリーナ全体を響き渡せる大爆音を響かせ、特務兵達に断末魔をあげさせた。そして煙が晴れると焼け焦げ、体から煙が出ている特務兵達がピクリともせず、倒れていた。
「ウフフフフ!私が本気を出せば、こんなもんですわ!!」
魔術が命中した事を確認したフィニリィは胸を張って得意げに笑っていた。
「うわぁ~………さすがにあれはちょっと、やりすぎだと思うんだけど……?死んでないよね??」
ペルルは特務兵達の状態を見て、冷や汗を垂らしながら尋ねた。
「それは大丈夫ですわ。見た目は酷いように見えますが、せいぜい半殺し程度の威力に抑えてますわ。……まあ、心配だと思うなら回復してやりなさい。どの道、あの状態ならもう戦闘の続行は不可能でしょう。」
「では、私が回復を………癒しの雨!!」
マーリオンは倒れて、ピクリともしない特務兵達の頭上に雨を降らした。すると特務兵達の傷跡がなくなっていった。
「これで……大丈夫です……」
「わかった!じゃあ、プリネを援護しに行こうか!」
「ええ!さっさと試合を終わらせますわよ!」
そしてペルル達はロランスと激闘をしているプリネを援護をしに行った。
ペルル達が特務兵達を倒す少し前、プリネとロランスは一進一退の激しい攻防を続けていた。
「そこだっ!」
「ハッ!」
ロランスがクラフト――零ストームを放つとプリネは回避し
「出でよ魔槍!狂気の槍!!」
「せいっ!」
プリネが放った魔術によって空間から出た暗黒の槍がロランスを襲ったが、ロランスは持っている剣に闘気を込めて弾き飛ばし
「闇よ、集え!!……黒の闇界!!」
「大地の盾!!……アースガード!!」
続けて放ったプリネの魔術を絶対防壁のアーツで防いだ跡、一気にプリネに詰め寄って攻撃を仕掛けた!
「ハァァァァァ!」
「っ!」
ロランスの連続攻撃をプリネは必死に捌いていた。
「せいっ!」
「ハァッ!!」
連続攻撃をした後、最後に跳躍して攻撃するクラフト――破砕剣に対してプリネは重い一撃を放つクラフト――フェヒテンバルで対抗した。お互いのクラフトがぶつかりあい、2人は鍔迫り合いの状態になった。
「まさかここまでの腕とは………正直驚いた。」
鍔迫り合いをしながらロランスは口元に笑みを浮かべた。
「………これでもお父様達から鍛えられている身なので、そう簡単には負けません!(どうしてこんなにも心が痛いの!?まるで戦うのを拒否しているかのように………!)」
ロランスの称賛の言葉にプリネは悲痛な叫びをあげている自分の心を顔に出さないよう、必死の形相で答えた。
「フッ………”姫の中の姫”と評されている姫にしては、中々勇ましい姫だ。(何故だ。何故今、”あいつ”の姿が頭の中に浮かぶ……!何故、奴を攻撃するなと人を捨てた俺の心が訴える…!)」
「余計なお世話です!」
一方ロランスも顔には出さず、プリネを攻撃する事を拒否している自分の心に戸惑っていた。
「……姫よ、いくつか尋ねたい事がある。」
「………今の状況で……何を……尋ねるつもりですかっ!」
鍔迫り合いをしながらロランスはプリネに尋ね、プリネは今の状況で質問をするロランスの狙いが理解できなかった。
「…………”ハーメル”。この名前に聞き覚えは?」
「……!何故、貴方がその名を……!その名はもう、この世に存在しないはずですっ!」
ロランスの言葉にプリネは信じられない表情で驚いた。
「ほう。さすがはメンフィル。その情報も手に入れていたか。(………やはり、俺の思い過ごしか……)では、もう一つ。”カリン”。この人物に心当たりは?」
プリネの答えにロランスは心の中で失望した後、もう一つ尋ねた。
「え。…………」
一方プリネはロランスの口から出たある言葉を聞くと、放心して力が抜けた。
「せいっ!」
「!!キャッ!?」
力が緩んだプリネの隙を狙って、ロランスはプリネを吹っ飛ばした!吹っ飛ばされたプリネは我に返り、空中で受け身を取って着地した。
(カリンの名を聞いて、あの様子……プリネ姫。お前は一体………)
ロランスはレイピアを構えて攻撃の機会を探っているプリネを睨みながら、プリネが何者か気になった。
「くっ……戦闘中に放心するなんて私もまだまだですね…………(今、頭の中に過った女性がまるで自分のように感じたのは一体…………)」
一方プリネもロランスからの反撃を警戒しながら、ロランスから聞いたある名前を聞いた時、腰までなびかせる美しい黒髪と琥珀の瞳をした優しげな女性が思い浮かんだ事に戸惑っていた。
「水よ、行け………!水弾………!!」
「出でよ、烈輝の陣!レイ=ルーン!!」
「!!」
その時、マーリオンとフィニリィがプリネの後方からロランス目がけて魔術を放った。マーリオン達の魔術攻撃に気付いたロランスは素早くその場から離脱した。
「超・ねこ、パ~ンチ!!」
「フッ!」
そこにペルルが攻撃を仕掛けたが、ロランスは回避した。
「嘘!?ボクの攻撃は避けられないと思ったのに!?」
攻撃を回避されたペルルは驚いた。
「みなさん!特務兵達は倒したのですか?」
一方ペルル達の援護に驚いたプリネはペルル達に尋ねた。
「うん!結構手強かったけど、ボク達にかかれば楽勝だよ!」
「よくそんな事が言えますわね。止めをさしたのはこの私ですわよ?」
「あの……まだ戦闘中なので……そんな水を差すような言葉は………」
胸を張って得意げに語るペルルにフィニリィは呆れた表情で答えた。また、マーリオンはフィニリィを諌めていた。
「選りすぐりの特務兵であるあいつらを倒したか。やはり”闇夜の眷属”は油断できんな。だが……これならどうかな?」
倒れている特務兵達を横目で見たロランスはなんと、分身のクラフトを使って、自分と同じ姿の分身を一人作った。
「え!?」
「同じ生命の息吹が………」
「幻術……ではありませんわね。恐らくあれが話に聞く所の”分け身”。まさか、こっちの世界の人間も使えるなんて………」
ロランスが分身した事にペルル達は驚いた。
「分身……ですか。本体を叩けば、恐らくなくなると思いますが………みなさんは分身の相手をお願いします。」
「うん!」
「はい………」
「フフ……さっさと倒して、援護してあげますわ!」
プリネの作戦に頷いたペルル達は片方のロランスに向かって攻撃を仕掛けた!
「やあっ!」
「いけ………連続水弾……!」
「ハッ!」
ペルルとフィニリィは翼や槍で攻撃を、マーリオンは魔術でロランスの分身に攻撃を仕掛けたが。
「フッ……」
本物のロランスと同じように回避して、逆にペルル達に攻撃を仕掛けた!
「甘いっ!」
「おっと!?」
「!!」
「させませんわっ!」
分身のロランスが放ったクラフト――零ストームをペルル達が回避した所を
「せいっ!」
「わっ!」
「くっ…………」
「人間の癖に、この私に攻撃するなんて生意気ですわよ!」
分身のロランスは素早くペルル達に攻撃した。さすがのペルル達も分身とはいえ、ロランスが相手だったので苦戦した。
「フッ………これで邪魔者はいなくなったな。」
一方本物のロランスは分身と戦っているペルル達を横目で見た後、その場で剣を腰だめにして構えた。
(何か大技をするようですね………では私も………!)
ロランスの構えを見て、大技をする事を察したプリネはレイピアに魔力を流し始めた!
「「ハァァァァァァァァァッ!!」」
ロランスとプリネ、お互い武器に闘気や魔力を流しこみ始めた!!
「むんっ!受けて見ろ、荒ぶる炎の渦を!!」
「全てを燃やしつくし、暗黒の炎よ……今、燃えがれッ!!」
ロランスの剣には闘気によってできた赤き業火が、プリネのレイピアには魔力によって紫色に妖しく燃える妖炎が宿った!
「鬼炎斬!!」
「暗礁!火炎剣!!」
そして2人は同時にSクラフトを放った!2人が放った技は拮抗し、そしてお互いの技は相殺して消えた!
「!!」
「くっ!?」
相殺した際にできた衝撃波によって、ロランスとプリネは吹っ飛ばされ、お互い空中で受け身を取って着地した!
「……そこだっ!………凍てつく魂の叫び、その身に刻め…………おぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・」
プリネが次の攻撃に移る前にロランスが放った剣に高めた剣気が周囲の熱を奪い去り、砕き散らす絶技――冥皇剣が地面を凍らせながら、プリネを襲った!
「くっ……体が……!」
足元から体全体が凍り始め、プリネは身動きがとれなくなったところを
「絶!!」
「カハッ!?」
技の最後に凍った地面に放ったロランスの一撃が震動してプリネに命中し、プリネは呻いた。
「クッ…………」
強力な一撃を受けたプリネだったが、何とかレイピアを構え直した。
「ほう、今のを喰らっても、まだ体力がもつか。(………何だ?この後悔感は………)」
心にプリネに強烈な一撃を当てた事を後悔している事を顔に出さず、ロランスは未だに戦闘の続行をしようとするプリネに感心した。
「この程度の傷で私を倒そうなんて、甘いです!」
「フッ………その強がりがどこまで続くかな?………そろそろ終わりにしてやろうっ!」
プリネの言葉に不敵な笑みを浮かべたロランスはプリネに止めを刺すために襲いかかった!
「(…………私はプリネ・マーシルン。誇り高き”闇王”と優しき混沌の”聖女”の娘!ツーヤの”パートナー”としても、孤児院の放火に関わった特務兵達に負ける訳にはいきませんっ!!例え心があの人を攻撃するなと訴えかけようと、迷ってはいけない!)行きます……ハァッ!!」
襲いかかって来るロランスをプリネは静かに見て、自分が何者かを心の中で確認し、悲痛な叫びをあげている心を無視するかのように決意の表情になった後、自身に秘めたる真の力を解放した!
「!?(何だ!?この威圧感は……!)」
母譲りの夕焼けのような赤髪が美しい銀髪に、父親譲りの紅い瞳が妖しく光る覚醒したプリネの姿にロランスは驚いた後、プリネがさらけ出している”魔神”の力を感じ取り、威圧感に圧されて足が動かなくなった。
「よし!ついにプリネが”力”を解放したな!」
「キャハッ♪これでもう勝負は決まったもんだね!」
「わぁ………プリネさん、なんだか凄い気を纏っているね!」
一方観客席でプリネの覚醒した姿を見たリフィア達ははしゃいだ。
「ご主人様……………」
いつも纏っている優しい雰囲気がなくなり、威圧感だけしか感じられないプリネをツーヤは元のプリネに戻るか心配した。
「そんな顔をするな、ツーヤ。あれもプリネが持つ雰囲気の一つだ。元の姿に戻ればいつもの雰囲気に戻る。」
「はい。最初はびっくりしちゃいましたけど、今は大丈夫です。……いつも優しいご主人様にもあんな雰囲気を出せるんですね。」
リフィアの言葉にツーヤは頷いた後、銀髪のプリネを見ながら呟いた。
「うむ!プリネはああ見えて、猛者揃いの我が国の兵達を率いる必要がある者。優しいだけでは我が軍の兵士達はついてこんからな。」
「そうなんですか。(ご主人様の隣に並んで当然のドラゴンになれるよう、もっとがんばらないと!)」
リフィアの説明に頷いたツーヤはより一層強くなる事を決意した。
「ふえ~………あれがプリネの”魔神”としての力を解放した時の姿か………キレイ…………小さい時にお母さんが読んでくれた本で出て来る”白き魔女”みたい………」
「おおっ!?美しい………まるで夜闇の中で輝く月のようだ………」
一方控室からプリネの覚醒した姿を見たエステルは以前にシェラザードからプリネが”魔神”としての力を解放した時の説明された姿を思い出した後、プリネの美しい銀髪を見て思わず声に出した。また、オリビエはプリネの姿を魅入っていた。
「フム。まさかあんな隠し玉があったとはな………纏っている気配や先ほどの剣撃といい、ただ者ではないな。」
ジンはプリネが纏っている気配を感じ取り、プリネがただ者ではない事を悟った。
「……………………(クッ……どうしてあの2人の戦いを止めたがっているんだ……?それに今、見えている光景は一体……………)」
一方ヨシュアはプリネ達の戦いを辛そうな表情で見ていながら、プリネが黒髪と琥珀の瞳の女性に、ロランスが銀髪と紫の瞳の青年に見える自分に心の中で戸惑っていた。
「どうしました?体が震えてますよ?」
「!?」
プリネの言葉にロランスは無意識に震えている事と冷や汗が垂れている事に気付き、自分自身に驚いた。
「………正直、この”力”はカーリアン様と戦う時以外は使わないと思っていましたが………貴方を侮っていたようです。………申し訳ありませんが、一気に決めさせていただきます!」
そしてプリネは残像が見えるほどの神速でロランスに一気に詰め寄り、クラフトを放った!
「ハッ、セイッ、ヤァッ!!」
「グッ!?(クッ………一撃一撃が先ほどとは比べ物にならないぐらいの重さだ………これが”剣皇”の娘の真の力か………)」
プリネが放った連続攻撃のクラフト――フェヒテンイングを剣で防御しながら、ロランスは剣から伝わる振動に驚いた。
「ハァァァァァァ…………!!」
「オォォォォ………!!」
次々と自分に来るプリネの激しく、重い攻撃をロランスは必死に捌いていたが
「ハァッ!!」
「くっ!?しまった………!剣が……!」
普段の倍以上の威力と重い一撃を放つクラフト――フェヒテンバルを片手では防御仕切れず、持っていた剣が弾き飛ばされた!
「これで決めます!!我に眠りし魔よ………今ここに具現せよ……!」
プリネが言い終わると黒々と燃える暗黒の細剣が異空間より武器を握っていない片方のプリネの手に現れた。
「聖なる力よ……我が剣に宿れ………!」
そしてプリネが持っているレイピアにはプリネに眠る僅かな姫神の力によって、聖なる力が宿り、神々しい光をレイピアに纏わせた。
「我に眠りし、真なる血の力……思いしれっ!ブラッディ!!」
そしてプリネは相反する力を宿したレイピアでロランスを神官が十字架をきるかのように、ロランスの横を駆け抜けながら十字に斬った!!
「クロス!!」
駆け抜けたプリネがロランスの背後に立つと、ロランスの背中から血が大量に出た!
「ガハッ!?…………見事だ…………」
プリネに背中を斬られたロランスはその場で跪き、立ち上がらなくなった。一方ペルル達と戦っていたロランスの分身もロランスが跪くとその場で消えた。
「勝負あり!蒼の組、プリネチームの勝ち!」
そして審判はロランス達の状態を見て、プリネ達の勝利を宣言した……………
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