英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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~武術大会・1回戦~後篇
~グランアリーナ~
「にしても初戦の相手はアンタ達か。…………悪いけど、勝たせてもらうわよ。あのエステルって子や私と同じ控室にいた仮面を被った人間とも戦いたいしね♪」
「フッフッフ……余はエステル達との旅のお陰でさらに強くなった!今までのように行くと、思うなよ?」
「久しぶりに本気を出させてもらうね?キャハッ♪」
不敵な笑みを浮かべているカーリアンに対して、リフィアやエヴリーヌも同じように不敵な笑みを浮かべて言い返した。
「これより武術大会、本戦第三試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」
審判の言葉に頷いた両チームはそれぞれ、開始位置についた。
「双方、構え!」
両チームはそれぞれ武器を構えた。
「勝負始め!」
そしてリフィア達とカーリアンは試合を始めた!
「さあて……今までの旅でどれだけ強くなったか、お姉さんが確かめてあげるわ!それぇっ!」
試合開始早々、カーリアンは双剣を振って、衝撃波をリフィア達に放った!
「させぬわ!」
「ほい。」
リフィアは自分の目の前で結界を作って、カーリアンが出した衝撃波を防ぎ、エヴリーヌは上空へ転移をして回避した。そして上空からエヴリーヌはいつの間にか弓矢を構えて、カーリアンに向けて放った!
「行くよ……えいっ!」
常人には見えない指の動きでエヴリーヌは3本の矢を連射して放つクラフト――三連射撃をカーリアンに放った!
「それぇっ!」
神速に迫りくる3本の矢に対してカーリアンは3回攻撃をするクラフト――3段斬りで対抗し、矢を全て撃ち落とした。
「ゆけいっ!」
「甘いわよ!」
そこにリフィアが魔術――追尾弾を放った!襲いかかって来る魔力の弾をカーリアンは闘気を込めた双剣で真っ二つにした!
「古より伝わりし……」
「させないわよ!」
「ぬっ!?」
次の魔術の詠唱を始めたリフィアだったが、ダメージを与えず、相手の行動を無効化する特殊クラフト――双葉崩しを受けたため、詠唱が中断された。
「えーい!」
詠唱が止められ、結界を展開していないリフィアの隙を狙ってカーリアンは続けて攻撃しようとしたが
「させないよ!」
「!!」
エヴリーヌが上空から放ったクラフト――精密射撃に気付き、攻撃するのをやめて、大きく後ろに飛んで一端後退した。
「オオオオォォォォォォォォ!!!」
一進一退の互角の戦いに観客達は興奮して、声を上げた。
「へぇ~……動きが以前と比べて大分洗練されているわね。エヴリーヌなんか以前は周りを考えないで攻撃していたのに、連携やフォローをするようになったじゃない♪」
「当然だ!余は常に成長し続けている!」
「フフ……お兄ちゃん、褒めてくれるかな?」
カーリアンの感心の言葉を聞き、リフィアは胸を張り、エヴリーヌはリウイが自分を褒めてくれる光景を思い、口元に笑みを浮かべた。
「ま、それでもまだ私には届かないわね~。」
「フッフッフ……そう言ってられるのも、今の内だぞ。エヴリーヌ、余の力を受け取るがいい!」
「ん!」
不敵な笑みを浮かべたリフィアは地上に降りたエヴリーヌに大量の魔力を送った。リフィアに秘められている膨大な魔力を受けたエヴリーヌは弓を構え、クラフトを放った!
「「粉々になっちゃえ(れ)!」」
リフィアがエヴリーヌに魔力を供給し、供給した魔力を利用して放ったエヴリーヌの一本の矢は数千本の矢に分かれ、カーリアンを襲った!
「協力技か……当たれば結構な威力になりそうだけど、そうはいかないわよ♪」
迫りくる数千本の矢を見て、カーリアンは恐れず、不敵な笑みを浮かべ、双剣を構えて強力なクラフトを放った!
「激しいの、行くわよ♪………白露の桜吹雪!!」
カーリアンが自分の周りに放った衝撃波は襲いかかって来る数千本の矢とぶつかった。衝撃波とぶつかった矢は勢いがそがれて地面に落ち、消えて行った。
「かかったな♪それは囮だ!」
協力技が防御されたにも関わらず、リフィアは不敵な笑みを浮かべて、魔術を放った!
「………罪人を処断せし聖なる光よ!我が仇名す者に裁きの鉄槌を!贖罪の光霞!!」
リフィアが魔術を放つとカーリアンを逃がさぬよう、薄透明な壁がカーリアンを覆った。
「!大地の盾!……アースガード!」
次に起こる事を予測したカーリアンは持っているオーブメントを駆動させ、絶対防壁を発動させた。そして光と爆音がカーリアンを襲った!爆音はアリーナ全体に響き渡り、観客達を驚かせた。
「フハハハハハハ!さすがのカーリアン婆も魔術に対する抵抗力は低い上、威力の高い魔術を受ければただではすまないだろう!」
術がカーリアンに命中したのを確認したリフィアは、自分達の勝利を確信し、胸を張って大声で笑った。
「だ~れが、婆よ!」
しかし、光と爆音によってできた煙が晴れると、そこには傷一つついていないカーリアンがリフィア達を睨んでいた。
「なぬ!?」
「なんで傷一つついていないの?」
カーリアンの姿を見てリフィアは驚き、エヴリーヌも驚いた後、尋ねた。
「アーツといったかしら?これ、結構使えるわね♪」
驚いているリフィア達にカーリアンは得意げに自分が使っているオーブメントをリフィア達に見せた。
「……アースガードか。剣を振る事しか能のないカーリアン婆がアーツを使うとはな……油断した。」
カーリアンが見せたオーブメントに装着されてある複数の地属性のクオーツを見て、即座にカーリアンが絶対防壁のアーツを使った事に気付いたリフィアは苦い顔をした。
「あ~ん~た~ね~……!もう、怒ったわ!怪我を負わせるつもりはなかったけど、少し痛い目に合ってもらうわよ!」
リフィアの言葉に怒ったカーリアンは双剣を構えて、リフィア達に向かって行った!
「ぬ!」
「!!」
襲いかかって来るカーリアンを見て、リフィアとエヴリーヌは結界を張ろうとしたが
「遅いわよ!北斗斬り!!冥府斬り!!」
「なぬっ!?」
「きゃっ!?」
一瞬で近付いたカーリアンが放ったクラフトを受け、それぞれ足に掠り、痛みに呻いた後跪いて、立ち上がらなくなった。
「な、なぜ立てぬ!?」
「なんか……体中がピリピリする……」
立てない事にリフィアとエヴリーヌは呻いて、カーリアンを見た。
「足の神経に少し傷つけて、立てなくしただけよ。治癒魔術でも使えばすぐ直るわ。これでも手加減してあげたんだから、感謝しときなさいよ♪」
悔しそうに自分を見ているリフィアとエヴリーヌにカーリアンは得意げに説明した。
「勝負あり!紅の組、カーリアン選手の勝ち!!」
状況を見て、審判はカーリアンの勝利を宣言した。
「ワァァァァァァ………!!」
圧倒的な強さを見せたリフィアとエヴリーヌをたった一人で破ったカーリアンに観客達はより一層、歓声を上げた。
「リフィアさん達、負けちゃった………」
「あの2人が負けるなんて信じられないです………」
観客席からリフィア達の試合を観戦していたミントは残念そうな表情をし、ツーヤは信じられない表情で見ていた。
「あはは………カーリアン様相手ではさすがのお姉様達も分が悪いですよ………」
2人の様子を見て、プリネは苦笑しながら答えた。
「ご主人様……あたし、あの女の人とご主人様達が戦う事になったら、ご主人様が勝てるよう、精一杯応援します!」
「ミントも!だからプリネさん、がんばって!」
「フフ………ありがとう、2人とも。もしカーリアン様と当たる事になれば敵わないのはわかっていますが、勝利を諦めず、精一杯がんばってみますね。」
ツーヤとミントの励ましの言葉にプリネは微笑みながら答えた。そしてカーリアンは自分がいた控室へと戻って行き、リフィアとエヴリーヌは自分達自身にそれぞれ治癒魔術をかけて、回復した後、カーリアンと同じように自分がいた控室へと戻って行った。
~グランアリーナ・選手控室~
控室にカーリアンに負け、俯いているリフィア達が戻って来た。
「えと……あの、2人とも。気を落とさないでね?凄くいい勝負だったよ。」
俯いているリフィア達にエステルは遠慮気味に話しかけた。
「フフフフフ………」
「……………」
「2人とも、大丈夫かい?」
俯きながら微妙に笑っているリフィアと、何も答えないエヴリーヌを不思議に思い、ヨシュアは話しかけた。
「フハハハハ!カーリアンめ、この程度で余達が負けを認めるとは思うなよ!次は必ず勝つ!!エヴリーヌ、憂さ晴らしに街道の魔獣達を一掃するぞ!」
「ん!!」
そしてリフィアは高笑いをしながら、エヴリーヌと共に控室を出て行った。
「………………」
「ハハ……心配は必要ないみたいだったね。」
あっという間にいなくなったリフィア達をエステルは放心し、ヨシュアは苦笑した。
「ハッハッハ!あんな明るい姫君達がいるメンフィルは明るい未来が待っていそうだね。」
オリビエはリフィア達の前向きな思考に感心して、笑った。そして次の試合を継げるアナウンスが入った。
「続きまして、第四試合のカードを発表させていただきます。南、蒼の組―――空賊団 『カプア一家』所属。ドルン選手以下4名のチーム!北、紅の組―――王国軍情報部、特務部隊所属。ロランス少尉以下4名のチーム!」
「おーし、とうとう来たか!」
「初戦であいつらと当たるなんて、ついているね。」
「あの黒坊主どもに目にもの見せてやるぜ!」
自分達の出番にドルンは声をあげ、ジョゼットは初戦で特務兵達と当たった事に笑みを浮かべ、キールは意気込んだ。
「こうなったのも何かの縁ね。応援してあげるからめいっぱい頑張りなさいよ!」
「ロランス少尉は恐らくあの時いた仮面の隊長だろうね。…………敵の隊長には気を付けて。彼さえ自由にさせなかったら勝機は必ずあると思う。」
「う、うん……。……じゃなくてよ、余計なお世話だよっ!」
エステルとヨシュアの応援の言葉をジョゼットは照れながら答えた後、ドルン達と共にアリーナに向かった。
~グランアリーナ~
ザワザワザワ……………
「え、えーと……。事情を説明させていただきます。ご存知の方も多いとは思いますが、彼らはボース地方を騒がせた空賊団 『カプア一家』の者たちです。正々堂々と戦うことでこの武術大会を盛り上げたい……。そうすることで迷惑をかけた王国市民に償いたい……。その一心で、今回の武術大会への参加を強く希望したそうです。服役中の態度が真面目であったため、主催者である公爵閣下のはからいで今回の出場が実現した次第であります。皆様、どうかご了承ください。」
ドルン達の登場にざわめいている観客達に司会は事情を説明した。すると
「ワァァァァァァ………!!」
パチパチパチパチ…………!
観客達は歓声と拍手を送った。
「よお、仮面の兄ちゃん。待ってたぜ。借りを返せる機会をな。」
「へへ、あの公爵には感謝しなくちゃいけないな。」
「ふふ……」
ドルンとキールの不敵な笑みをロランスは口元に笑みを浮かべて返した。
「な、なにがおかしいのさ!?」
笑っているロランスをジョゼットは睨んで言った。
「エレボニアの没落貴族、カプア男爵家の遺児たち……。悪徳商人に領地を横取りされ、お家再興のために空賊稼業……。何とも涙ぐましい話だと思ってな。」
「て、てめえっ!?」
「どうして知ってるんだよ!?」
ロランスの言葉にドルンとキールは驚き、睨みながら尋ねた。
「我々が所属しているのが情報部だということを忘れたか?我々への復讐などあきらめて真面目に服役した方が身のためだ。どうやらお前たちは、悪党に向いていないようだからな。」
「な、なんだと~!?」
「ずいぶんとまあ、囀ってくれるじゃないの……」
「てめえなんざ導力砲の餌食にしてやらあ!」
ロランスの挑発にジョゼットは声をあげ、キールは静かな怒りを見せ、ドルンはロランス達を睨んで怒って言った。
「これより武術大会、本戦第四試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」
審判の言葉に頷き、一端怒りを引っ込めたドルン達とロランス達両チームはそれぞれ、開始位置についた。
「双方、構え!」
両チームはそれぞれ武器を構えた。
「勝負始め!」
そしてドルン達とロランス達は試合を始めた!
試合はドルン達は特務兵達相手に善戦していたが、ロランスが戦い始めると、ロランスの圧倒的な強さになすすべもなく敗北した。
「勝負あり!紅の組、ロランスチームの勝ち!」
「む~………あの人達、勝っちゃった。」
「ミ、ミントちゃん。これは試合なんだから仕方ないよ。」
ロランス達の勝利にミントは頬を膨らませているとことをツーヤが宥めていた。
「………………………」
「ご主人様?どうしたんですか?」
「!なんでもないわ。だから気にしないで。」
「あ、はい。」
アリーナから退場して行くロランスを凝視していたプリネにツーヤは首を傾げて尋ねたが、ツーヤの言葉に我に返って答えた。
(あの仮面の隊長を見た瞬間過ったこの懐かしい気持ちと心臓が掴まれる感覚は一体…………いけない!もしかしたら次の試合は彼らかもしれないし、気を引き締めないと!)
プリネはロランスを見た瞬間、自分自身に起こった感覚がわからず、人知れず戸惑っていたが次の試合で当たる事になるかもしれない事い気付き、気を引き締めた。
~グランアリーナ・選手控室~
「ああ……負けちゃったわ……」
「途中まではいい展開だったんだけどねぇ。あの赤い隊長殿が動き始めたら崩れてしまったね。」
「ふーむ……底の知れん相手だな。あれで本気とも思えんし、いまいち実力が読み切れねえ。」
ドルン達が負けた事にエステルは残念そうな表情をし、オリビエは試合の流れを説明し、ジンはロランスが本気でない事を悟った。
「え……今ので全力じゃないの!?」
ジンの言葉にエステルは驚いて尋ねた。
「……たぶん、違うよ。最後の技を放ったあとも気の集中が衰えていなかった。まだ余力を残していると思う。」
「と、とんでもないわね……」
ジンの言葉を補足するように説明したヨシュアの言葉を聞いて、エステルは口を開けて放心した。そして負けたにも関わらず、他のチームと同じように真面目に、そして一生懸命試合をしていたので観客達から惜しみない拍手と歓声の中でドルン達が控室に戻って来た。
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
「あ、あの……惜しかったわね。」
兄妹揃って無言でいるカプア一家にエステルは遠慮気味に話しかけた。
「なぐさめはいらねえ……。俺たちの完敗だったぜ……」
「くそっ……俺のサポートが甘かったからだ……」
「キール兄は悪くない……!ボクがあいつの斬り込みを崩せなかったからだよ……!」
エステルの慰めの言葉をドルンは首を横に振って自分達が完敗だった事に悔しさを露わにし、キールやジョゼットは自分達の力不足を口にして、悔しそうにしていた。
「………………………………。まあ、仕方ないでしょ。勝負は時の運とも言うんだし。あなたたちの仇は、もしあたし達があいつらと当たったらあたし達が絶対に討ってあげるわ!」
「なにィ……!?」
「おいおい……ずいぶん簡単に言うじゃないか。」
自信ありげに胸をはるエステルにドルンやキールは驚いた。
「そんな安請け合いできる相手じゃないと思うけど……」
「まあ、意気込みがないと勝てるモンも勝てなくなるからな。」
「フッ、根拠のない所がまたエステル君らしいねぇ。」
エステルの自信にヨシュアは呆れ、ジンは感心し、オリビエは相変わらずのエステルらしさに口元に笑みを浮かべていた。
「フン……やっと終わってくれたようだな。」
その時、ドルン達を連れて来た兵士達が控室に入って来た。
「ほら、グズグズするな!とっとと波止場に戻るぞ!」
「おいおい、冗談じゃねえぞ。」
「闘ったばかりなんだから少しくらい休ませてくれよ~。」
「フン……犯罪者の分際で甘えるな。」
兵士の言葉に反論したドルン達だったが、兵士は鼻をならしてドルン達の頼みを否定した。
「ほら、さっさと来ないか!」
「チッ……」
「ああ、疲れたぁ……」
「………………………………」
兵士に強く言われたドルンは舌打ちをし、キールは泣き言を言い、ジョゼットは黙って控室に出ようとした時、ジョゼットは立ち止まってエステル達の方に振り向いた。
「おい、あんたたち……」
「えっ……?」
ジョゼットに呼ばれ、エステルは首を傾げた。
「ボクたちはもう、明日からはここに来れないけど……。あんたたち、絶対に勝てよな!あんなふざけた連中に負けたりしたら許さないからねっ!」
「あ……。あったりまえでしょ!任せておきなさいってば!」
「絶対に……勝ってみせるよ。」
ジョゼットの応援の言葉にエステルとヨシュアは力強く頷いた。
「……気は済んだか。」
「ほら、手間を取らすんじゃない。」
そしてカプア一家は兵士達に連れられて、去って行った…………………
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