戦国異伝
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第二百五十四話 決着その四
「すぐにでも消すべきであったわ」
「それは残念だったな」
「まことにな」
それを悔やむ言葉だった、明らかに。
「しかしじゃ、それをじゃ」
「今してか」
「この国を闇に堕してやるわ」
「あくまでそう言うか」
「ではな」
こう言ってだ、そしてだった。
信長に棒を出して向かった、それは漆黒いや闇の色をした杖だった。鋼のそれを出してだ。
信長と戦う、こうして魔界衆の棟梁達はそれぞれ最後の闘いに入った。
その勝負はまずは互角だった、だが。
まずは謙信がだ、楯岡の剣の隙を見てだった。
居合を放った、それで楯岡の腹を断ち切った。断ち切られた腹は刃が背中近くまで達していてだった。その腹から鮮血を噴き出し。
楯岡はがくりと膝を突き動かなくなった、それで言うのだった。
「抜かった・・・・・・」
「わたくしの勝ちですね」
「まさか拙者の剣をかわすとは」
「闇の動きがわかりました」
「闇というか」
「そうです、貴殿の剣にこもっているです」
まさにというのだ。
「その闇の動きがわかったので」
「それでか」
「あとはそれをかわして」
「そのうえでか」
「反撃を加えたのです」
「それで拙者を倒したか」
「苦しむことはない筈です」
その一撃があまりにも強く完全に命の流を絶ったからだ。
「逝くのです」
「無念・・・・・・」
楯岡は頭をがくりと落としてこと切れた、謙信はその彼を黙って見送った。
信玄は石川の煙管を軍配で受けてだ、返す刀で。
「しまいじゃ!」
もう片方の刀をだ、石川に繰り出した。それで身体の中心を一気に切ってだった。
そのうえでだ、真っ二つとはならなかったが中心の急所を全て断ち切られた石川を見据えながら問うた。
「どうじゃ、これで」
「ぬう・・・・・・」
「最早動けぬな」
「わしはこれで終わりか」
「そうじゃ」
その通りという返事だった。
「安心して死ぬがいい」
「本朝を闇に・・・・・・」
石川は最後にこう言ってだ、背中から倒れた。
そして氏康もだった、音羽の動きを見てだった。
その攻めが止まった一瞬にだ、その喉に。
剣を繰り出して貫いてだ、会心の声で言った。
「これで終わったな」
「うう・・・・・・」
「手強い相手であったが」
それでもというのだ。
「動きが止まったのがだ」
「わしの不覚だったか」
「どの様な激しい動きもだ」
「止まるか」
「必ずな」
それこそというのだ。
「そしてじゃ」
「その隙をか」
「こうして貫いたのよ」
「見事と言っておこう」
「その言葉受けた」
氏康は確かな声で応えた。
「ではな」
「死にたくはない・・・・・・」
音羽は最後にこう言ってだ、そのうえで。
氏康が喉から剣を抜くとだ、後ろから倒れた。
百地は元就と戦っていた、老齢とは思えぬ風の様な動きで攻めていたが。
元就はまずだった、百地の跳んで来たその足に。
一太刀浴びせた、それは彼の左の踵を切っていて。
舟に降りた百地は動けなくなりだ、そこにだった。
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